幻の都


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「待ちなさい!」

その日、矢島舞美はある逃亡犯を追いかけていた。その逃亡犯は超能力で殺人を犯していた。
舞美は能力阻害デバイスを腕につけ、そして銃を手に持って追いかけていた。
すると逃亡犯は道を左に曲った。

「あそこは行き止まり。もう逃げられないわ。」
舞美は走るスピードをあげた。
逃亡犯は舞美のデバイスのせいで能力を使えないでいた。だから路地に追い込めばこっちのものだった。
しかし・・・

「あれ、いない?」

翌日・M日本支部
「はいはい、そうでっか。ほな。」
ガチャ!支部長室にいた女性は受話器を置いた。

稲葉貴子
M日本支部長。
ボスがM本部長に就任したために空席となっていた日本支部長の座についた女性。
ボスと同じ関西出身なので口調が関西弁である。

「あっちゃん、呼んだ?」
部屋に入ってきたのは安倍なつみだった。

「呼んだ、やないで?はよう報告書だしてもらえへんかな?」
「ごめんごめん、なんか忙しくて。」
「はよしてや。こっちも催促する暇ないんやから。」
「なんかあったの?」
「さっき、警視庁特殊課の課長から電話があったんや。能力者の凶悪犯を取り逃がしたんで協力を求めてきたんや。」
「珍しいね。」

実を言うと警察とMの間には少し溝がある。Mと自衛隊は保全部隊の創設もあって良好な関係ではあるものの
警察は治安維持をほぼ一手に請け負っている面では自分たちが一番だと自負をしている。
しかし当然ながら超能力犯罪においてはMが一足先に取り組んでいたので警察としてはMを出し抜きたいという気持ちがあり、めったなことでは協力なんて求めない。

「まぁ、あそこの課長は物分かりのええ人やから。アホな警察上層部とはえらい違いや。」
「でっ、あっちゃんはどうするの?」
「犯人が消えたポイント366を重点的に特殊課と協力して探すつもりや。」
「ポイント366・・・」

なつみが動揺していた。それに貴子も気がついた。
「なっち、どないしたんや?」
「いや、なんでもない。そうだ、その捜査私がやってもいい?」
「えっ、でも報告書が・・・」
「大丈夫だって、その事件の報告書と一緒にだすから。お願い!」

喫茶リゾナント
今日も平穏といつものように営業していた。

「メンソーレ!」
現れたのはガッタスの小隊長・里田まいだった。

「里田さん、久しぶりやの。」
「いったいどうしたとよ?」
「こないだ、沖縄行ってきたから。皆にお土産をね。」

すると里田は紙袋から沖縄の名産品をだした。
「わぁ、たくさんある。うへへ。」
「バナナはないか!」

絵里とジュンジュンはよだれをだしそうな勢いで飛びついた。
しかし里沙は箱に書いてある文字を見てあることに気付いた。

「お台場名産店?」
「ギクッ!」
「あれ?これにもお台場名産店って書いてマース!」
「小春、この店知ってますよ。お台場にしかなくて日本中の名産品を取り扱ってるんです。」

ジー!
全員の疑いの視線は里田に注がれた。

「もしかして、これ全部お台場から買ってきたんとちゃいますか?」
「嘘つきは泥棒の始まりなの!」

すると里田は・・・
「そうです・・・私沖縄に行ってません。」

それを聞いたリゾナンター全員溜息をついた。

「で、なんで嘘までついてここに来たと?」
「里田さんが来ると大抵良くないことが起こるの。」
「人を厄病神扱いしないで!これは稲葉さんに頼まれたことだから。」
「うん?どういうことやよ。」

里田はすべての事情を話した。
「実は先日警察が超能力を使った殺人犯を取り逃がしたの。その捜索をMが依頼されたんだけど、安倍さんがひとりで犯人を探してるみたいなの。」
「それは別に普通じゃないんですか。頼まれたんですから。」
「私も最初はそう思ってたんだけど、どうやら警察にも頼らないでひとりだけでなんかやろうとしてるみたいなの。
それで私が監視していたんだけど・・・巻かれちゃって。」

全員が再び溜息をついた。
「まさか、私たちに里田さんのしりぬぐいをやれとかじゃないですよね。」
「おお、カメちゃん。今日は冴てるね。」
「「「「「えー!」」」」

「もともとは里田さんがやってた仕事なの。里田さんひとりでやってください。」
「頼むよ、この通り!」
「でもあーしらは店があるしのぉ。」
「お願いします!」
「お前もMの一員だろう。自分のことぐらい自分でヤレ!」
「ねぇ、安倍さんの秘密を知りたくない?」

「安倍さんの秘密?」
全員が聞き流した言葉をひとりだけ聞き逃さなかった。
リゾナンターの面々が里田の頼みを聞かない中・・・

「やりましょう!」
「がきさん・・・」
「里沙ちゃん・・・」

「安倍さんの秘密。ミステリーサークルよりも謎が深いわ、燃えてきたわ。やるわよ、私はやるわよ!」

結局、里沙の異常なまでのやる気と里田の根気に負けてリゾナンターの安倍なつみ調査作戦は開始された。

M日本支部
なつみは毎日のように積りにつもった報告書を提出にきていた。
すると前から少女が走ってきてぶつかって転げた。

「イタタ、すんません。」
「大丈夫?あれ、あなたは確か?」
「あっ、はい。光井愛佳です。」
「そうよね、でもどうしてここに?」
「今、リゾナントのトレーニングルームがリフォーム中なんでここの訓練場を使っているんです。」
「へぇ、そうなんだ。あっ、ごめん。なっちこれから用事だから。」
「あっ、はい。」

なつみは急いでビルを後にした。
それを確かめて愛佳は無線のスイッチをいれた。

「発信機をつけました。これで安倍さんの後を追えます。」
「了解。」

なつみを見失った時のために小型発信機を取り付けた。
レーダー上に出る発信機の示す光はある一点に向かっていた。

「ポイント366。里田さんが言っていた犯人を見失った地点。」

リゾナンカーを目立たない所で降ろして、リゾナンターは舞美が犯人を見失った路地の近くまでなつみを尾行した。
そしてなつみは例の行き止まりに向かった。

「あそこは行き止まりなの。」
「あっ!」

突然、愛佳は叫んだ。
「愛佳、どうしたとよ。」
「皆さん、今から面倒な事になります。」
「面倒な事?」

「ちょっとすいません。」
後ろから誰かが呼んでいる。振り向いてみると・・・

「いったい、そこで何してるんですか?」
そこには仁王立ちしている舞美の姿が・・・
「えっ、いや。あのー。」

すると舞美は警察手帳をだした。
「事情を聞きたいので署までご同行願いますか。」

今、警察に行くとなつみを見失いかねない。
するとリンリンが空を指さした。

「あっ!あれはなんだ!」
「えっ!」

舞美は空に気をとられた。
「みんな、あーしに掴まれ!」

舞美は振り向いたときにはリゾナンターの姿はなかった。

その頃、なつみはある建物の一室で待たされていた。
「お待たせしました。どうぞ、こちらへ。」

なつみは奥の部屋に入った。
そこにはひとりの女性がいた。

「なっち、久しぶりね。」
「あやっぺ。元気そうで何よりね。」

なつみがあっている女性。石黒彩、かつてはMの精鋭部隊「ASEYAN」のメンバーとして活動していた女性である。

「なんかあったの?」
「実はね先日能力を使った殺人犯が行方をくらましたの。状況からここに逃げ込んだ可能性があるんだけど。」
「なるほどね、わかった。すぐに探し出すわ。ほんと、困っちゃうわね。時折そういうやつがどこからか噂を聞きつけてやってくるのよ。この『ファントム』に。」

「ファントム」
能力者という理由だけでいわれのない迫害や差別などを受けた人々を守るために東京の地下深くに秘密裏に建造された都市である。
ここの存在をMの人間で知っているのはなつみだけである。

彩は電話で部下に指示をだした後になつみと一緒に町に出た。
「前以上に活気が増したね。」
「なっちがいろいろ支援してくれたおかげよ。私だけじゃここまで大きくならなかった。」
「何言ってるのよ、あやっぺがここの治安をちゃんと維持してくれるから。この都市が表にばれずにみんな平和に暮らしてるんだから。」
「でも、いつかはみんなを表の世界に返したいわ。」
「そうね、いつまでも地下に閉じ込めるのもね。」
「そのためにも頑張らないとね。」
「お互いにね。」

お互いに笑っていると彩の携帯が鳴った。
「もしもし、見つかった?そう、やつが連れてきたの。すぐに行くわ。」
「あやっぺ、見つかったの?」
「うん、うちに部下が金掴まされて勝手に連れてきたらしい。」

ふたりはビルに戻った。
そこには舞美が取り逃がした男がリミッター付きの手錠をつけられた状態で座らされていた。
「なっち、こいつで間違いない?」
なつみは手配書で顔を確認した。

「うん、間違いないわ。」
「そう、じゃあこいつを連れてって。」
「うん、ありがとう。それじゃあね。」

なつみは男を連れて帰っていった。
そしてなつみが帰ったドアとは別のドアから男が入ってきた。

「ボス、お呼びでしょうか。」
「あんた、殺人犯を勝手にこの街にいれたらしいな。」
「いったい、何の事でしょう。」
「とぼけるな、そいつがすべてはいたよ。お前うちらの掟わかってるんだろうな。」

この町の掟のひとつ。それは犯罪者を正当な理由なしで匿ってはならない。

「この街はいわれのない迫害で苦しんでる人々のためにある。悪党や犯罪者を隠すためにあるんじゃない!」
「ボス、許してください!なんでもしますから。」

彩が男に背を向けた。
すると男は袖に隠した拳銃を抜いた。
「死ね!」
バン!
男は眉間に穴があいた状態で倒れた。
彩の手にはコンバットマグナムが握られていた。

「バカなことを。Mで拳銃の名手といわれてたうちに銃を向けるなんて。抵抗しなきゃ、牢屋に入れるだけで勘弁したのに。」

ファントム。それは苦しむ人々を救う最後の避難所。この秘密のベールは彩という存在がいる限り日の目を見ることはないかもしれない。

そういえば彼女たちの事を忘れていた。
「もう、どうして高尾山まで飛ばされなきゃいけないのよ。」
「小春、仕事に間に合いませんよ。」
「愛ちゃん、お願いもう一回飛んでなの。」
「無茶いわんといて、共鳴せずに9人いっぺんに飛んだから。力が出ないのよ。」
プルルルル
「あっ、里田さんや。もしもし。」
「愛ちゃん、安倍さんが例の犯人を捕まえて警察に引き渡したから調査はもういいよ。じゃあね。プツ!」
「れいなたち、骨折り損やったね。」

リゾナンター全員が思った。里田まいは厄病神だと。