アサシンガール


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(1)


その日、久住小春はドラマの撮影を終え、都内某所の自宅に帰宅している途中だった。
リゾナンター誘拐事件以来、なるべくひとりで行動しないようにしていたのだが、生活が不規則な小春には難しいことだったが、周りには気を掛けている。

「誰!」
小春が声をあげると暗闇から男たちが現れた。
「久住小春。やっと会えたな。」
「小春ははじめて会うけど、どうやらストーカーじゃないみたいね。」

よく見ると男たちは普通の格好をしていない。しいて言うなら忍者だ。
「その首いただくぞ!」

男たちが刀を抜いて小春にとびかかってきた。
小春は横に飛び退いた。すぐさま、男たちは小春を取り囲んだ。

(なんなの?ダークネスじゃないみたいだし。)

そうこう考えている内に男のひとりが刀で突いてきた。
小春はそれをかわし、男の首に手刀を叩きこむ。

「グワッ!」
男が落とした刀を小春はとっさに拾い、次に斬りかかったふたりの男の刀を受け流した。
その後も相手を受け流し続けるが、ついに刀の刃先が小春の顔をかすった。
そのため、小春が少し態勢を崩した。

「今だ、殺せ!」
男たちが一斉に距離を詰めようとした時・・・

どこからか鋼線が飛んできて、男たちの陣を崩した。
「じゃまが入ったか。退け!」

男たちは姿を消した。

「小春!」
走ってきたのは里沙だった。

「新垣さん。」
「小春、大丈夫?」
里沙はハンカチを取り出して、小春の顔から出ている血をぬぐった。

「大丈夫です、少しかすっただけですから。でも、よくここがわかりましたね。」
「あんな事件のあった後だからね。あの後、みんなのデバイスにすぐ位置がわかる機能をとりつけてもらったの。さぁ、家まで送るわ。」

翌日、喫茶リゾナントを里沙は訪れた。昨日のことを相談するためだった。

「ほうか、小春が。」
愛はコーヒーを里沙に出した。
「でも、忍者が今の時代にいるとは思えんちゃけど。」

れいなが昨日の出来事を半信半疑で聞いている。

「それが田中っち、単純にそうとは言い切れないのよ。私も聞いただけだから本当かわからないんだけど、今でも日本では忍者を育成して諜報活動しているって話があるのよ。」
「忍者か。水さんがやったらどんなにカッコイイかの?」
「愛ちゃん、真面目に聞いてるの?」
「あぁ、ごめんごめん。」
「そういえば・・・」

急に話に入ってきたのは喫茶リゾナントのアルバイトで小春のアイドル仲間の雪野のえるであった。

「のえるなんか心当たりでもあるっちゃか?」
「心当たりっていうわけでもないんですけど、久住さんは戦闘訓練って受けてたんですか。」
「いや、小春は訓練を嫌がってあんまりやらなかったわね。まぁ、元々動きは良い方だったから私もそこまで無理にやらせなかったんだけど。それがどうかしたの?」
「いや、うちも一時期とはいえ組織にいて訓練受けていたからわかるんですけど、久住さんの動きってかなり熟練の技のように思えて。」

ちなみに補足するとのえるは以前ダークネスのスパイとして喫茶リゾナントに潜り込んでいたのだが、里沙のようにリゾナンターと生活していく内にリゾナンターの味方になったのだ。
「熟練の技ね。」
里沙はふたたび考え込んだ。

その頃、愛佳は学校を終え、喫茶リゾナントに向かっていた。そして小春に電話していたのだ。

「みっつぃは本当に心配症だな。小春は平気だって。」
「何言ってますの。久住さんは愛佳みたいにひどい目にあってへんからそんなことが言えるんです。」
「だって、今からテレビ局で収録だもん。誰もこんな人の多いところで下手なことしないって。あっ、そろそろ支度するからまたね。」
「あっ、久住さん!」
プツ。ツーツーツー。

(全く緊張感がないんやから。)
以前、Mに攫われてから心配症になってしまった愛佳はことある毎に小春に電話していた。特にあの緊張感のない人には注意が必要だと思っていたからだ。

仕方がないと思い、愛佳は歩き出したが・・・
突如、愛佳の目に飛び込んできたのは。
爆発するスタジオ、そこには倒れた小春の姿が。

(まさか、そんな。)
愛佳は急いで小春に電話したが・・・
「現在、電源を入っていないためかかりません。」
「もう、こんな時に。」

今度は喫茶リゾナントに電話をかけた。
「はい、喫茶リゾナントです。」
「高橋さん、光井です。」
「おう、愛佳か。どうした?」
「実はさっき予知を見まして。」

愛佳は予知の内容を愛に話した。
「わかった。すぐにあーしらがテレビ局に行く。愛佳はまた何かが見えたら連絡して。」
「はい。」

愛は電話を切った。
「どうしたの、愛ちゃん。」
「愛佳が予知で小春が爆発に巻き込まれるのを見たみたいや。」
「えっ!」
「れいな、一緒に来て。のえるちゃん、すまんけど店番よろしくな。」
「はい。」

「私はみんなに知らせてからリゾナンカーで行くわ。」
「頼むわ、ガキさん。」

愛はすでに戦闘服を装着したれいなの手をつなぎ、瞬間移動した。

急ぎ、テレビ局の前に到着した愛佳は物陰に隠れて、デバイスで戦闘服を装着し、通信で愛に呼びかけた。
「高橋さん、どこにいます?」
「もう、テレビ局の中や。戦闘服の光学迷彩で小春のところに向かってる。」
「じゃあ、愛佳も向かいます。」

愛佳も光学迷彩のスイッチを入れて、テレビ局の裏口から入っていった。




(2)


小春のいるスタジオを見つけた愛とれいなであったが、爆弾がどこにあるのかはわからない。

「こんなに入り組んどったらどこに爆弾あるかわからんとよ。」
「それならデバイスを使ってください。」
「愛佳?」

テレビ局倉庫で愛佳が通信している。光学迷彩は声までは隠せないので小声で話している。
「デバイスには危険物探知機能をつけてます。念じたら自動的に起動します。」

愛がデバイスを起動させた時、小春の歌収録が始まっていた。

「まずい、小春が立っているスタジオの下に爆弾がある。」
「ほんと、愛ちゃん。」
「ああ、どんなものかわからんけど、あーし下にもぐって調べる。れいなはもしもの時には小春を。」
「OK。」


その頃、愛佳は美術倉庫で怪しい男たちを見つけた。見た目はテレビ局の関係者のように見えるが、何か様子がおかしい。
愛佳は物陰から様子をうかがうことに・・・

「爆弾のセットは完了したか。」
「はい、予定通りに今歌収録が始まりましたので後はこのスイッチを押すだけで。」

男は起爆装置を取り出して、スイッチに指をかけようとしていた。
それを見ていた愛佳は思わず、男にとびかかった。

「なんだ、貴様は!」
男と愛佳は床を転がっている。起爆装置も床に転がった。もうひとりの男がそれを押そうとする。

(まずい!)

愛佳が男の足に自分の足を引っかけた。
「うわっ!」
男は転げたものもすぐに態勢を立て直した。
「この!」

愛佳はもみあっている男とともに起爆装置を持った男にぶつかった。
3人はそろって段ボールの山に突っ込んだ。だが、その拍子にスイッチが入ってしまった。

スタジオの下で爆弾を見ていた愛は爆弾が動いたのを確認し、大声をあげた。
「爆弾や!はよ逃げ!」

その声にスタジオがパニックになった。
「えっ、爆弾!」
「小春!」

れいなが小春にとびかかった。
「きゃあ!」

小春がセットから弾きだされた瞬間、スタジオのセットが粉々になった。
「小春、大丈夫ちゃか?痛!」
「田中さん、腕を。」
「心配すんな、少し痛めただけとよ。そうだ、愛ちゃんは?」
「ここや、ケホケホ。」

愛が煙の中から出てきた。顔には少しよごれがついている。
「大丈夫と?」
「ああ、ケガはしてないよ。スタッフさんたちも無事みたい。」
「よかった。」

小春が安心して、溜息をついているとどこからか刃物が飛んできた。
「手裏剣?」

手裏剣には手紙が結ばれていた。小春がそれを読むと・・・
「仲間を預かった。すぐに屋上にこい。」

「仲間って。」
「そういえば、愛佳は?」

小春はすぐにスタジオを出た。
「小春!」

小春は屋上への階段を登っている。その途中でデバイスを起動させ、戦闘服を着用した。

バン!小春は屋上のドアをいきおいよく開けた。
そこにはヘリと忍者の格好をした男たち。そして・・・

「みっつぃ!」
「久住さん!」

戦闘服姿のまま縛られている愛佳の姿があった。
「ちゃんと来たよ。愛佳を離して!」
「そうはいかん。この娘は我々の計画を狂わせた。よって貴様もろともここで処刑する。」
「そうはさせない!」

小春が電撃を使おうとした。その時物陰から忍者のひとりが吹き矢を吹いた。
ブス!吹き矢が小春の首筋に命中した。

「こんなもん!」
小春はすぐに抜いて、電撃をしようとすると急にめまいが。

「今の吹き矢には毒が塗ってある。神経毒だからじきに動けなくなるぞ。さぁ早く首を討て。」

忍者のひとりが刀を抜いて、小春に迫る。小春は逃げたいが逃げようにも体が言うことを聞かない。

忍者の刀が振り下ろされ、小春は目を閉じた。
(小春、死んだの?あれ、痛くない。)

おそるおそる目を開けると、忍者の刀は別の刀で受け止められている。
そこには小春を襲った忍者とは別のいでたちの忍者がいた。

「貴様は!」
そう言われるのと同時に現れた忍者は小春を襲った忍者を斬り、ヘリの前の忍者たちに迫っていく。向かえ撃った者たちは一瞬のうちに斬られた。

「まずい、退くぞ!」
首領格の忍者が煙玉を使い、目くらましをした。
視界が開けるとすでにヘリは上空高く飛んでいった。

「「小春!」」
屋上の愛とれいなが遅れて到着した。小春の近くにいる忍者に反応して。

「なんね、あんたは!」
れいなは今にでも殴りかかってきそうだ。

「今はそれどころではない。彼女は毒に冒されている。」
忍者は持っていた水を口に含み首筋の傷に口を当てる。

「あっ、ちょっと!」
「毒を吸い出した。早く病院に連れていくんだ。!」

「愛ちゃん!」
上空にリゾナンカーが到着した。

「ちょうどええ。ガキさん、小春を病院に連れていく。」


国立特殊療法センター
ここはMをはじめとする特殊機関が出資して運営されている国の病院である。さゆみの父が院長をしており、母が婦長をしている。絵里もかつて先天性の心臓病の治療のために入院していたのもこの病院である。


小春はすぐに手術室に入った。
手術室前には愛佳を除くリゾナンターも勢ぞろいしており、あの謎の男も一緒だ。

手術中のランプが消えた。
「お父さん、小春ちゃんは?」
「ああ、毒が事前にある程度吸い出されていた。あの処置がなかったら助からなかった。毒は完全に除去したからもう大丈夫だ。」
「よかった。」

小春はそのまま、病室に移された。

男は小春が病室に移されたのを見て、その場を去ろうとする。
「待って!」

愛が呼びとめた。
「小春を助けてくれてありがとう。」
愛が礼をするとリゾナンターも全員礼をした。

「大したことはしていない。それじゃあ。」
「まだ話は終わっとらんよ。あんた、今回の事件について何か知っとるんやろ。」
「だったら、何だというのだ。お前たちには関係ないだろう。」

ジュンジュンが怒った。
「関係ないはないだろう!クスミは私たちの仲間だ!それにミツイも攫われた。これで関係ないなんて言わせないぞ!」
「これは我々だけの問題だ!」

「隼人!」
太い声が響いた。
そこには年配の大柄な男が立っていた。

「頭領。」
隼人と呼ばれた男は大柄な男に頭を下げた。
男はリゾナンターに近づいてきた。

「みなさん、はじめまして。私が小春の父です。」



(3)


小春が眠っている病院の個室にリゾナンターと隼人、そして小春の父が座っていた。

「この者は隼人。私の右腕です。」
「あの、小春ちゃんのおとうさんってなにしてらっしゃる方なんですか?なんか聞いていた話とは違うみたいですけど。」

さゆみが聞いた。小春からはずっと父は普通の会社員であるとしか聞いたことがなかった。

「実は私の本職は忍者なのです。」
「「「「「えっ!」」」」」
「静かに!ここは病院ですよ!」

看護婦さんに注意された。
「おう、忍者!カッコイイですね。じゃあクスミさんはくのいち。」
「そうです、われら久住家は代々忍びの一族として生きてきました。」
「でも、クスミはそんなこと一言も言ってないゾ。」
「それもそのはずです。あの子には忍びとして育った記憶がないのですから。」

その頃、愛佳は捕えられ、薄暗い部屋の中で椅子に座らされ、手足を縛られた状態にあった。
(ああ、またこんな目に。愛佳今年厄年だったかな?)

忍者の首領格は誰かに電話していた。
「はい、探らせた斥候によりますと久住小春は一命を取り留めた模様です。はい、隼人が現れたとなると連中も動き出すかと。はい、お任せください。こちらには人質がいますので。」

「いったい、あんたら何者やねん。なんで、久住さんを狙うんや。」
「われらは戦国時代から存在する忍びの一族・闇虎。久住小春の一族・闇龍とは長い間敵対関係にあった。」
「まさか、久住さんは忍者なんか?」
「ふふふ、あの女は殺人マシーンなんだよ。」

話の語り部は小春の父に移る。
「われら闇龍の一族は長い間日本を影から救ってきた。その一方で闇虎の一族は平穏な世の中を混乱させ続け、それを阻止してきたわれらと激しい争いを繰り広げてきた。そしてそんな中で小春が生まれた。私は小春の類まれなる才能に目をつけて、普通の生活をさせながらも訓練をさせてきた。」

「ダカラ、クスミさんは人並み外れた身体能力を持っていたワケネ。」
「だが、小春の才能に興味を持っていたのは闇虎も一緒だった。10年前、私が目を離したすきに闇虎の一族は幼い小春を連れ去り、自らの一員になるように洗脳したのだ。そして、われらは小春を連れ戻し闇虎との決着をつけるために戦いに出た。しかし悲劇は起きてしまった。」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「我々、闇虎は洗脳した久住小春を闇龍に差し向けた。われらの目論みどうり、あの女は家族にも容赦なく刃を向けた。後少しでうまくいくところだった。しかしあの女は暴走した。」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「小春は敵味方関係なく虐殺を始めた。私は決死の行動で小春の洗脳を解いた。だが、あの子のうけた心の傷はあまりにも大きかった。そこで知り合いのツテを頼って精神系能力者の元に小春を送った。」

「それってもしかして。」
「記憶の改竄。小春の中の忌まわしい記憶を封印したんですね。」

小春の父は里沙の問いかけにうなずいた。
「そうだ、あの子の忌まわしい記憶とともに忍びとしての記憶も忘れさせた。あの子に平穏が取り戻せたはずだった。だが、最近になって闇虎の一族が生き残っており、あの時の復讐を企てていることがわかった。」
「じゃあ、今小春ちゃんを襲っている忍者って。」
「ああ、闇虎の一族だ。私は急いで隼人を東京に向かわせた。だが、少し遅かった。」

バリーン!
病室の窓が割れ、手裏剣が小春の父の手に握られていた。またもや手紙つきだ。

「やつら、あなた方の仲間を人質にとって小春をおびき寄せるつもりです。」

愛は手紙を受け取った。
「今夜、0時に東京郊外迷いの森に来れり、こない場合は仲間の命は保証できない。」

「ここにある迷いの森っていうのは?」
「迷いの森はこの日本にいくつもの存在する忍びにとっての結界のようなものです。この森ではどんなハイテク機器も役には立てないでしょう。連中にとっては庭のようなもの。」
「まずいわね、そんなところに誘い込まれたら勝ち目はないわ。」
「ご安心をやつらにとって庭ならわれらにとっても同じこと。隼人、東京の闇龍の一族を至急呼び出せ。」
「はっ!」

隼人が部屋を後にするとれいなが後を追いかける。それを絵里とさゆみは不思議そうに見ていた。
「ちょっと待つとよ。」

隼人は足を止めた。
「なんだ。」
「あんた、小春の何?」
「どういう意味だ。」
「テレビ局であんたの小春を見る目は頭領の娘を見る目じゃなかったように感じたけん。」

隼人がため息交じりに答えた。
「幼馴染だ。あいつが記憶を消すまでずっと一緒にいた。」
「小春はあんたのことを。」
「いや、覚えていない。忍びに関するすべてを忘れさせたんだ。俺のことなんか・・・」
「あんたはそれでいいっちゃか?」
「小春の幸せのためだ。仕方がない。」

隼人は足早に去っていく。

「意外だったやよ。小春にそんな過去があったなんて。まるで昔のあーしみたい。」
愛はi914と呼ばれていた時を思い出した。

「そうね、愛ちゃんもi914としての記憶を封印していたものね。」
「あーしは自ら忌まわしい記憶を掘り起こしたけど、小春にはそんな記憶、思いだしてほしくないな。あんな目にあうのはあーしだけでいい。」

そんな話をしていると絵里が入ってきた。
「愛ちゃん、ガキさん。小春のお父さんが作戦会議したいって。」
「わかったやよ。ガキさん、この事は小春には伝えんとこうな。」
「うん、小春の事だから聞いたら飛んで行きそうだもの。」

ふたりは病室を後にした。しかしふたりは気付かなかった小春はすでに目を覚まし、ふたりの会話を聞いていたことを・・・




(4)

病院の別室で小春の父を中心として作戦会議が行われた。
「迷いの森の中ではみなさんの光学迷彩は役に立たないでしょう。闇虎の一族の相手は我々がします。みなさんは共鳴の力で捕らわれた光井さんを探してください。おそらく、迷いの森のどこかにいるはずです。」
「分かりました、みんな時間がない。準備して。」
「愛ちゃん。さゆみ、小春ちゃんを見張ってるようにお父さんに頼んでくる。」

さゆみが院長室に向かう途中ふと小春の病室を除くとベットに小春の姿がない。
「大変、みんな!」

小春はその頃、戦闘服に身を包んで迷いの森に向かっていた。
(愛佳、待ってて。すぐに行くから。)

その頃、愛佳は小屋の中でバランスの悪い椅子の上に立たされていた。手足は縛られたままで首にはロープが巻かれている。

「この椅子は壊れやすくてな、お前がバランスを崩すと椅子が壊れ、首が締まる寸法になっている。せいぜい、われらが久住を殺すまで耐えるんだな。」

(久住さん、きたらアカン。殺されてまう。)

小春は迷いの森の中にいた。
「来たな、久住小春。われら闇虎の一族の恨みをうけるがいい。」
「いったい、なんのことなのよ。あんたたちの恨みを買う覚えはないわ。」

どうやら小春は挑戦状のところしか聞いておらず、自分の過去の部分は聞いてなかったようだ。

「お前の親父は本当に記憶を変えたようだな。しかしそんなことはどうでもいい。われらの狙いは貴様の首をとることだ。」

暗闇の中から手裏剣が投げられた。小春は飛んできた方向に電撃を乱射した。いくつかは命中したが、まだ手裏剣は飛んでくる。小春は飛び退きながら、木の影に隠れた。
するといきなり首を絞められた。

「うっ!苦しい。」
木に擬態していた忍者が小春の首を後ろから絞めている。
小春は苦し紛れに肘打ちをした。
「ぐわっ!」

ひるんだすきに小春が回し蹴りで相手を吹き飛ばした。
しかしまだ体力が回復していない小春はすでに息も絶え絶えの状態である。

そんな小春を見て、闇虎の頭領が現れた。小春は頭領を見て
「小春は来たんだから、愛佳を返して!」
「残念だが、あの小娘はもう死んでるかもしれないぞ。」
「どういうこと!」
「あの小娘にはいずれ首が締まる仕掛けをしておいた。あの小娘の体力が落ちた時点であの世行きだ。」

その頃、リゾナンターたちも闇龍の忍者たちとともに迷いの森に到着した。
隼人はすでに小春を探すために森に潜入した。
「さぁ、みんな共鳴をして愛佳と小春を探すんや。れいなお願い。」
れいなの増幅をきっかけに全員の共鳴が始まった。

「もしも愛佳に何かあったら、絶対に許さない!」
小春が頭領に突っ込んでいった。

「ばかめ!」
頭領が小春の顔めがけて手裏剣を投げつけた。小春はそれを見たが、もうよけられない。
すると誰かが小春をかばった。

「あっ!」
小春をかばったのは隼人だった。手裏剣は胸元に刺さっていた。
「小春のために。」
「大丈夫だ。小春、けがはないか。」
「あなた、なんで小春の名前を。それにどこかで・・・」

小春の中で何かが弾けた。そして小春の脳裏に浮かんだのは小春が多くの人々を傷つけた様子。そして小春を抑えつける血まみれの少年。

「大丈夫だ。小春・・・」

「隼人。」

急に名前を呼ばれて隼人は驚いた。

「小春、お前まさか・・・」
「私、全部思い出した。」


小春の目に涙が浮かんでいた。

「そうか、思いだしたか。殺人マシーンよ。」
「闇虎、貴様!」

隼人が立ち上がろうとすると小春がそれを制した。

「隼人、刀を貸して。早く!」
隼人は背中に背負っている刀を抜いて、小春に渡した。
小春は刀を軽く回して、構えた。

「さぁ、かかってきなよ。」

「小癪な、切り刻んでやる。」
森の中から忍者が何十人も現れた。小春はそれに動ぜず突っ込んでいく。
小春の刀には電気が帯びており、斬られた忍者は斬られると同時に傷口から強力な電撃が流れていく。

「もらった。」
忍者のひとりが小春の背後から斬りかかるが、刀は小春をすり抜けた。小春は念写を使い、分身を大量に生み出した。忍者たちは次々斬りこんでいくがその度に分身に惑わされ、小春の刀の餌食になっていく。

そしてもはや闇虎の頭領のみとなった。
「あんただけだよ。」
「くそ、小娘が!」

頭領は目潰しを小春に向かって投げつけた。小春の顔に目潰しが当たったのを見て頭領は小春めがけて斬りこんでいった。
「どこ見てるの。私はここよ。」


いつの間にか、小春は頭領の背後を突いていた。気づいたときには小春の刀は頭領を貫いていた。頭領が倒れたのを確認して、小春は刀についた血をぬぐった。

「小春、やったな。」
「隼人、傷大丈夫。」
「ああ、鎖帷子に守られた。それより小春、目は大丈夫か。」
「大丈夫、あいつが目潰しをぶつけたのは小春の分身だから。それよりも愛佳を探さないと。」

愛佳の体力は限界だった。いつ椅子から滑り落ちてもおかしくなかった。
(あかん、もう限界や。)

その頃、森上空のリゾナンカーでは・・・
「まだ、愛佳の声が感じとれん。」
「小春ちゃんの共鳴があれば・・・」

「小春、共鳴しろ。」
「えっ?」
「お前の仲間たちがいま、必死に共鳴して仲間を探している。お前の力が加われば見つかるはずだ。」
「うん、わかった。」

小春は持てる力すべてを使って、共鳴を開始した。
(お願い、愛佳。答えて、答えて!)

(アカン、でもこのまま死んだらあいつの思いのままや。死んでたまるもんか、死んでたまるもんか!)

愛佳の生きたいという必死の願いが共鳴を引き起こした。

(これは愛佳の声!)
「愛ちゃん、愛佳の声とよ!」
「うん、感じたやよ。こっちや。」
リゾナンカーを急いで動かした。


愛佳のいる小屋では・・・
すでに愛佳の立たされている椅子の足が折れそうになっている。
メキメキメキ
(死んでたまるか!死んでたまるか!)

だが、ついに椅子の足が折れた。

(あっ、もうあかん!)
愛佳はあきらめて、目を閉じたがなぜか自分が浮いてる感じがする。

「間に合った!」
小春と隼人が愛佳を支えていた。
「待ってて、すぐに外すから。」
隼人が支えている間に小春が首のロープをはずして、縄をほどいた。

「久住さん!怖かった!愛佳、もう駄目かと思った!」
愛佳が小春に抱きついて大粒の涙を流した。

「ごめん、小春のために。」
その後、リゾナンターも到着した。

迷いの森の外には小春の父の姿があった。
「パパ。」
「小春。」
「私、思い出しちゃった。あの時のこと。」
「そうか、済まない。」
「いいの。私、よかったと思ってる。確かにつらい過去だけど、その中にはパパたちや隼人との思い出があるから。」

「小春。」
父は力いっぱい小春を抱きしめた。

その頃、ダークネス基地では中澤裕子と飯田圭織が密談していた。
「闇虎の一族はいいデータ収集になったで。これでダークネスは本格的なサイバー忍者部隊の育成に入れる。それにしても連中をそそのかすなんて。悪い奴やな。」
「予知する代わりに久住を始末するように言ったけど、どの道滅びの運命は変わらなかった。」

喫茶リゾナント
「こんにちは。」
「おお、ミツイ。もう大丈夫なのか?」
「もう、平気や。大した怪我してなかったから。そういえば、久住さんは?」

お客さんのテーブルに料理を出し終えたれいなが答えた。
「小春は里帰りしとるとよ。」


新潟に向かう新幹線の中で小春は父と語り合っていた。その傍らには隼人の姿も・・・

「ああ、早く故郷のみんなに会いたいな。」



  (完)