Dive into the“FUTURE”(後)


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その微笑みは春の風。

その唇は野花の吐息。

そのまなざしは、美しき闇。




里沙は、その名を知っている。
里沙は、その優しさを知っている。
里沙は、その強さを知っている。

その名は、安倍なつみ。
その優しさは、闇に囚われた心を淡雪で照らしてくれた。
その強さは、暗黒の中を生き抜く術を授けてくれた。

茫漠とした無機質に覆われた精神空間を、高橋愛の姿をした里沙は一歩ずつ踏みしめるように歩いていく。
この時、里沙はまだ気付いてはいない。
安倍なつみに近づいていくその歩みは、巣立ちなのだという事を。

「…ちょっとだけ…力を貸してね」

元の姿に戻った里沙のその言葉は、静かな声ではあったが、強い決意が込められていた。
里沙には戦う理由がある。
里沙は知らなければならない。里沙は取り戻さねばならない。

ガーディアン安倍なつみの両手から無数の白い破壊エネルギーの鷹が生み出された。
己の目の前にいるサイコ・ダイバーが先程まで相手にしていた者よりも相当に手ごわいと、そう察知したのだろう。
天空にかかる星座のように白の鷹が里沙を取り囲み、そして一斉に襲いかかった。

「発火ァ!」

一陣の炎が、空を駆ける竜のように里沙の手から放たれ、迫りくる破壊の鷹を焼き尽くす。
この力は紛れもなく、リゾナンター銭淋の発火能力だ。

ここにきて、吉澤ひとみは自分が里沙のために稼いだ1分間がどういうものであったかに思いを巡らせた。
考えてみれば、里沙は変身を得意とするダイバーである。
ものの1秒かそこらで猛禽の翼を生やしたり、四肢を獣に変えたり出来る里沙が、
良く知っている人間に化けるのに必要な時間が、たとえ能力を再現するとしても、1分というのは長過ぎる。

「まさか…あいつ…!?」

驚嘆に満ちた声が、吉澤の唇からこぼれ落ちたのと時を同じくして、
炎の壁の向こうから破壊エネルギーに生み出された白の虎が里沙の喉笛めがけ牙をむいた。
里沙は、すうっと息を吸って虎を睨みつけ、そしてその再び姿を変じた。

グロゥ!

一閃!
獣に変じた里沙の鉤爪が、虎の顔面を一瞬にして吹き飛ばした。
白い破壊エネルギーのスパークが、獣の腕をズタズタに引き裂きながら天に帰っていく。
ホワイトスノーを李純の獣化能力で『殴った』のだ。

破壊エネルギーの結晶を直接殴るなど、あまりにも無茶である。しかし、無茶はしても無謀はしないのが新垣里沙だ。
血を流す獣の腕が、人間のそれに戻ったと同時に、ガーディアン安倍なつみの右腕から鮮血が迸った。
なつみは、己の腕からこぼれ落ちる血に視線を落とし、そして里沙を不思議そうな顔で見つめた。

里沙の目は、真夜中の湖面にも似た静けさを湛えている。この静けさの持ち主は、亀井絵里をおいて他にはいない。
湖面の静けさが白い陶器のような肌と長い黒髪に彩られていくにつれ、里沙の傷がふさがっていく。
亀井絵里の傷の共有。そして道重さゆみの治癒能力。
ぐっ、と里沙は右手で拳を作った。こちらの傷は治ったという意思表示だろうか。

「あいつ…!一人でリゾナンターをやるつもりか!?」

里沙の1分は、つまり吉澤ひとみが命がけでもぎ取った1分は、つまりはこの為にあったのだ。
単独で安倍なつみに勝る能力者はいない。
ならば力を結集するしかない。
響き合う心の戦士達の力が、数多のたたかいで傷一つ負わなかったあの安倍なつみに一矢報いたのだ。

…忘れて、下さいね

先程の里沙の言葉が吉澤の脳裏に響いた。
新垣里沙はもう、こちら側の人間ではない。少なくとも心はこちら側にはない。
その事を、たったひとかけらの言葉も使わずに、諜報機関の長である吉澤の前で、あまりにも饒舌に物語ってしまっている。

「お前…何やってんだよ…」

かつて、里沙は己の精神干渉能力を“薄汚い力”だと自嘲した事があった。
サイコ・ダイバーは他人の心に潜り込み、操る。それを里沙は、薄汚い行為だと言った。
人の心は聖域なのだ。他人が気安く触れていいものでは決してない。その事を里沙は誰よりも強く知り抜いていた。

その新垣里沙が今、己の聖域をさらけ出しながらダークネス最強の能力者安倍なつみと死闘を繰り広げている。
それが何を意味しているのか、どれ程重大な事なのか、本人に自覚はあるのだろうか。
一体何がそうさせる?お前を衝き動かす力は何処から来ている?
吉澤は唇を噛みしめながら、かつての(最早そう言うべきだろう)部下のたたかいを目に焼き付けていた。

「忘れられる訳…ないだろうが」

ゆらり、と里沙が動いた。
このしなやかな四足獣を思わせる独特の緩急をつけた歩法は、田中れいなのそれだ。
迫りくる白の獣どもの攻撃を恐るべき反射神経と身体能力でくぐり抜け、そして更に久住小春の念写能力を併用し、
安倍なつみとの距離を詰めるのに最も適した位置へその身を滑り込ませていく。

―安倍さん。教えて下さい

迫りくる狼の一撃をすり抜けながら、里沙は思う。「いつからだろう?」と。
なつみの顔から微笑みが失われてしまったのは、一体いつからだろう。
心に一輪の花を咲かせてくれたあの微笑みは、何故失われたのだろう。

―もう一度、あの笑顔を見せて下さい。

里沙には分かるのは、きっとなつみは何かとてつもない運命と向き合っているという事だ。
誰よりも強く、誰よりも優しかった安倍なつみが、その笑顔を捨てて挑まざるをえない運命。
それが一体何なのか、ひょっとしたら飯田圭織の精神にその手掛かりがあるのではないか?
里沙の直感は、すがるような気持ちで吉澤の誘いに乗り、そして今、ガーディアン安倍なつみと対峙している。

―そのためなら私、安倍さんとだって…

ざりっ、と無機質の精神空間に里沙の足音がした。里沙が動きを止めたのだ。
いつの間にか、里沙の周囲をホワイトスノーの猛獣どもが取り囲んでいる。
意志を持つ破壊エネルギーは、すり抜けられていると見せながらも、巧妙に里沙の退路を塞いでいたのだった。
この手際のあざやかさは、安倍なつみという完成された一個の戦士が生み出した芸術であると言ってもいい。
最強の戦士の水も漏らさぬ包囲網が一斉に里沙に襲いかかった。

「戦います!」

里沙の姿がかき消えた。
次の瞬間、里沙の姿は安倍なつみの丁度真後ろにあった。空間を跳躍したのだ。
敵のすぐ後ろにテレポートして強烈な蹴りの一撃をお見舞いするというのは、高橋愛が最も得意とする戦法である。
実戦の中で磨き上げられてきたリゾナンター高橋愛の技が、里沙の道を切り開いた。
中空から里沙の右足が安倍なつみの後頭部へ振り下ろされようとしたその時、声が、聞こえた。

「…オリ…カオリ…」

里沙の動きが止まった。この声を聞き間違える事は絶対にない。

―安倍さんの声…?どこから?

なつみの口から発せられているものではない。
基本的にガーディアンは喋らない。喋る必要がないからだ。
里沙の視線が、なつみの右手から滴り落ちる血を捉えた。

―右手?右手から声が聞こえる?

里沙となつみの周りを、夥しい数の白い獣どもが取り囲み、そのまま動かずにじっとしている。
二人の距離があまりに近すぎるため、仕掛けようにも仕掛けられないのだ。
本物の安倍なつみならこの距離からでも相手を倒す手段は持っているのかもしれないが、飯田圭織にはその知識がない。
つまり、これ程なつみに肉薄した能力者の存在が皆無であったという事の証明でもある。

「待って!」

間合いを離そうとするなつみの右腕を、里沙は反射的に掴んだ。
なつみがその手を振り払おうとすると、血がしぶいて里沙の頬にかかった。
声が、さらに鮮明に聞こえてくる。

「どうしても…カオリが犠牲になんなきゃいけないの…?」
「犠牲だなんて思ってないわよ私は。こうするしかないからやるだけよ」

なつみの会話の相手は飯田圭織本人のようだ。
里沙はガーディアン安倍なつみを構成する精神が、この二人の会話による物だという事に気付いた。
熟練のダイバー二人を全く寄せ付けない圧倒的な戦力は、この時の飯田圭織の思いの強さの表れだったのだ。

「世界を守るためなら何でもやるって、決めたのはアンタでしょ」
「でも、だからってカオリが」
「私が消えなきゃダメなのよ。私は予知能力者なんだから」
「そんなのあんまりじゃない!」
「いい年こいて何甘ったれた事言ってんのよ!」

飯田圭織の声が荒くなると同時に、これまで殆ど無表情であった里沙を見つめるなつみの顔が悲痛な色に染まった。
まるで子供が「イヤイヤ」をするように、激しく手を振って里沙から逃れようとしている。
断片的な会話からではあるが、この時の二人が話している内容は、なつみと飯田圭織、組織についての重大な秘密に関わる物だと里沙は直感した。

「お願い!声を聞かせて!」

絶叫に近い声で、里沙は必死になつみの腕を掴む。
なつみが激しくもがく度、腕からの血が里沙の頬を濡らしていく。
声は、さらに鮮明さを増した。

「私の予知は当たるのよ」
「うん…知ってる」
「私の見た未来は、未来の世界は……」
「駄目…だったの?」
「組織は世界を征服しようなんてやってるけどさ、それは世界あっての話でしょ?」
「私達、あれだけの事したのに、まだ足りないの?」
「まだ足りないかどうかはもう私には分からない。でもアンタはやんなきゃなんない」
「未来に何の希望も無いんだったら、私だって頑張れないよ!」
「何の希望もない未来は、少なくとも私が見た未来は、私が責任持って連れていく」

―飯田さんの見た未来…?

数ある超能力の中で、予知能力というものは、最も特殊な力の一つであろう。
現に、リゾナンター7人の能力をコピーしてのけた里沙でさえ、光井愛佳の予知能力は再現できない。

「私が見た未来はね、“私ありきの未来”なのよ。だから私がいなくなれば、未来は変わるかもしれない」
「でも全然保証なんてないんでしょ?」
「私の予知は当たるの。何回も言わせないで」
「カオリ…」
「保証なんてこれっぽちも無いけどさ、私を未来に連れてくわけにはいかない」
「カオリが犠牲になんなくても、どうにかできる方法探そうよ?」
「なっちさあ…私、アンタのそういう優しい良い子ちゃんな所、昔っから嫌いだったのよね」

ガーディアン安倍なつみは里沙の顔を凝視したまま、その目から涙をこぼした。
里沙は今、紛れもなく飯田圭織の聖域を目の当たりにしている。
少女の坂をやっと登りきったばかりの里沙の胸に、一人の予知能力者の凄烈な決意がのしかかる。

「でも、信じてるからさ、なっちの事。アンタならやり遂げられる」
「私…そんなに強くないよ…」
「安倍なつみ!アンタは誰よりも強い!アンタがくじけたら世界はお終いなのよ!」
「私、強くなんなきゃいけないの…?」
「今まで私達はどれだけ血を流してきた?どれだけの屍を踏み越えてきた?7年前の中国の事、忘れてないよね?」
「忘れられる訳、ないよ」
「私達はまだ途中なの。私達は未来を次につながなきゃならない。それが私達の責任なのよ」
「私…今まで数えきれないくらい酷い事してきた。ここで逃げたら、私はただの酷い奴になっちゃう」
「そう。どっちにしろ私達のやってきた外道は消す事は出来ない。だったらせめてさ」
「世界を守った酷い奴になれって?」
「世界を守った酷い奴か!いいね、それ!」

ガーディアン安倍なつみは口を開け、何か言葉を発しようとしている。
ガーディアンが喋る。里沙の経験の中には前例が見当たらない。
それが、ホワイトスノーの獣どもの包囲網が狭まっていた事への里沙の反応が遅れた一因になった。

「カオリ!」

なつみがそう叫んだと同時に、白の破壊エネルギーが一斉に里沙となつみに襲いかかった。
きっと、飯田圭織が最後に聞いた言葉だったのだろう。
それがガーディアンごとこの聖域に踏み込んできたダイバーを排除するためのトリガーだったのだ。

「ちいい!」

とっさに里沙は高橋愛の姿を借りて瞬間移動能力を発動した。
とてもではないが、なつみを無理やり引っ張って跳ぶ余裕はなかった。
ギリギリのところで獣の脅威から逃れ、里沙は上空に身を躍らせた。

「安倍さん!」

上空から、破壊エネルギーのスパークが安倍なつみの小柄な体を飲み込んでいく光景が見えた。
まるで雪がなつみを覆い隠していくようだった。
白雪の光が収束した、と思った瞬間、なつみが立っていた場所から闇が奔流となって噴き上がってきた。

―くぅ!

闇は天空に立ち昇り、物質的な質量をもって里沙の体を包み込んでいく。
闇の奔流に翻弄されながらも、里沙は目を見開いて闇の奥を見通そうとした。
この闇。この闇こそが飯田圭織の精神のガーディアン安倍なつみが守ろうとした物に違いない。

―闇が溢れる…!これが飯田さんが予知した未来?

ガーディアンが消え去ると共に、飯田圭織のパンドラが開け放たれたのだ。
彼女はこの闇を抱え込んで己の精神を封じ込めたのだろう。
世界を闇に包みこませるわけにはいかない。そのために、飯田圭織は己の精神を殺した。
なつみはその意志を引き継ぎ、笑顔と、優しさを捨てたのだと、闇に包まれながら里沙は思った。

―真の闇…こんな物が世界を飲み込む未来が来てしまうの…?

絶望的な闇の奔流を受け止めながら里沙は、闇の奥にぽわんと揺れる、小さな光を発見した。
光はだんだんと里沙に近づいてくる。
そして近づくにつれ、光の中に浮かぶ風景が里沙の目に入ってくる。

夜の駅のホームで、制服姿の少女がベンチに座り、物憂げに俯いていた。
この少女を里沙は知っている。あまりにもよく知っている。

「光井…!」

飯田圭織が己の精神と引き換えに託した希望は、パンドラの底にあるものの名前は、光井愛佳であった。
リゾナンターの予知能力者、光井愛佳。もう一人の予知能力者であるこの少女に、彼女は未来を託したのだろうか?

里沙は闇の奔流をくぐり抜け、少女が浮かぶ光に手を触れた。
瞬間、光が弾けた。
一つの光が、九つの光となって、闇の中を天に昇っていく。
光の一つ一つに、ビジョンが浮かんでいる。すべて人の顔であった。
すべて里沙がよく知っている人物の顔だった。

高橋愛。
亀井絵里。
道重さゆみ。
田中れいな。
久住小春。
光井愛佳。
李純。
銭淋。
そして、新垣里沙。

―私?私がみんなと一緒にいる?
―私はリゾナンター?
―飯田さんが未来を託したのは私達?

瞬間、急速に里沙の意識が遠のいていった。



「……おい、生きてるか?」

里沙は、誰かに頬を叩かれた感触で意識を取り戻した。
ドッドッドッドと、地鳴りのような音がする。

「とんでもない奴だねえ、まったく」
「吉澤さん…?」
「あんだけやりゃ、もうヘロヘロだろ。乗んなよ」

そう言って吉澤は後ろに顎をしゃくった。
吉澤が作り出したバイクがエンジンを唸らせている。地鳴りのような音はこの音だったのだ。

「あの…吉澤さん」
「さっきの約束なら憶えてるよ、忘れろっつうんだろ?」
「すいません…」
「これ以上ここにいてもしょうがねえし、詳しい話は後にしよう」

吉澤は殆ど抱きかかえるようにして里沙をバイクに乗せ、出口へ向けて走り出す。
タンデムシートで里沙は吉澤に寄りかかりながら、全身を包む疲労感に身を任せていた。


午前3時。新宿。BAR『ドレイク』
落ち着いた内装と、アジアン・テイストの音楽が特徴のこのバーは、吉澤ひとみ行きつけのバーの一つである。
組織の転送ゲートが開く予定の時間まで、ここで里沙と吉澤の二人は時間を潰すことにした。
元々飲みに行くという名目で本部を抜け出してきたのだから、アルコールが入っていた方が都合がいい。

「で、何か収穫はあったかい?」

吉澤はマティーニに添えられたオリーブを弄びながら、里沙に声をかけた。
飯田圭織に一体何があったのか?その答えを手に入れなくては今夜の一件は完全に徒労である。

「飯田さんは、自分から眠りについたんです」
「自分から?何で?」
「…分かりません」

果たしてあの時の二人の会話を、誰か別の人間に話すべきなのかどうか、里沙には分からなかった。
自分がこの先どう振舞うべきなのか、それも里沙には分からなかった。

「そうか…分かった」
「え?」
「分からねえって事が分かったって事さ」

軽く微笑んで、吉澤はグラスに口を付けた。その仕草が様になっている。
里沙もそれに倣ってぐいっと喉の奥に流し込んだ。途端に胸が熱を帯びて、視界が揺れた。

「強いですね…コレ」
「マティーニ一気でいっちゃってまあ…大丈夫か?」

しかも、里沙が飲んだのは吉澤好みのとびきりドライなやつだ。
酔いが急に回り、里沙の口から滑るように言葉が吐きだされた。

「吉澤さん。私どうすればいいんでしょう」
「どうするって、何をだよ」
「分かりません」

「分かっている筈だ」吉澤は口に出さず、そう確信していた。
ガーディアン安倍なつみとの戦いで見せたあの力は、本人に自覚がなかったとしても、
その心が今何処にあるか何よりも雄弁に語っていたのだから。

―私と、この新垣と、何が違うのだろう?

吉澤ひとみにも新垣里沙にも守りたい物はある。きっと、安倍なつみにも、飯田圭織にもあったのだろう。
しかし、新垣里沙が守ろうとしている物は、他者のそれとは意味合いが違うのだ。
里沙が守りたい物は、こちら側にいては守り通せない。
だから里沙は、里沙の心はルビコンを越えた。
その事に自身が気付くにはもう少し時間がかかるかもしれないとしても、里沙は向こう側へ渡ったのだ。

何かかける言葉を探しながら里沙の方に視線を移すと、里沙はカウンターに肘をついたまま眠りに落ちていた。
限界を超える能力発動の疲労が、さっきの一杯でどっと表に出てきたのだろう。
その寝顔のあどけなさときたら、まるで子供かと思う程だ。この小さな体に、どれだけの決意が秘められているのだろうか。

「面倒な事になんなきゃいいけど…」

吉澤ひとみは里沙の寝顔と手元の酒を見比べながら、そうポツリと呟いた。