悲しき獣化能力者


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ジュンジュンはバナナを頬張りながら歩いていた。住み込みで働いている中華料理店での小遣いで大量のバナナを購入したのだ。

(やっぱり、バナナは最高の食べ物ダナ。)
そう思っていると、ジュンジュンは人ごみの中のある男に目が言った。

(ジャン?)
ジュンジュンが見た男は金髪を束ねている目が鋭いフランス人だ。

「間違いない、ジャン。でも何でアイツが日本にいる?」
バナナを頬張りながらジャンを追跡するジュンジュン。
声をかければいいのだが、ジャンの雰囲気がそれをさせなかった。

「あれ?どこいったんダ?」
するとジュンジュンは路地に引っ張り込まれた。

「なぜ、俺をつける?」
「ジャン、私だ!純だよ。」

ジャンは顔を確認して、やっと引っ張りこんだ女性がジュンジュンであると気付いた。
「お前、純か!ここで何している!」
「ジャンこそ何してるんだ。」



喫茶リゾナント
愛たちはテーブルに座るジュンジュンとジャンを不思議そうに見ている。
なぜなら、ジュンジュンが初めてリンリン以外の人をおまけに男を連れてきたのだ。
ジュンジュンは相変わらずバナナを食べており、ジャンはコーヒーを飲んでいる。

「リンリン、あの人知ってる?」
小春はリンリンに聞いてみた。長い付き合いのリンリンなら知ってると思ったからだ。
「私も初めて見る人デース。」

「純、相変わらずバナナばっかり食べてるな。」
「この味を教えたのはお前じゃないカ。」

ついに我慢できなくなりれいなが首を突っ込んできた。
「あのー、あんたジュンジュンの何?」
「ジュンジュン?」

ジャンは首をかしげた。すかさず、ジュンジュンが説明した。
「私が日本で名乗っている名前ダ。」
「そうか。俺はジャン。純とは昔なじみだ。」

それにリンリンも驚いた。フランス人の昔なじみがいるのは意外だったのだ。
「いったい、どこで知り合ったんだ。」
「昔、いろいろあってな中国に来た時にこいつの村で世話になったんだ。」
「私がかなり小さい時だからリンリンが知らないのも無理ないヨ。」

するとジャンの携帯が鳴った。
「はい、わかった。すぐにいく、すまん用事ができた。また今度な。」

ジャンはコーヒーの代金を置いて、足早に店を後にした。
「ずいぶん、気が合うみたいやのう。」
「ジャンはいろんな意味で私と同じなんです。」



霞が関某ビル
ジャンが部屋に入るとサラリーマン風の男がいた。

「いったいの何の用だ。」
「実は都内にある研究施設で獣化能力の研究を行われているらしい。」
「おい、それは確か違法じゃないのか?」
「そうだ、刃千吏の肝いりで獣化能力者の研究は人道的な面で禁止された。違反するだけでも国の権威を失墜させることができるほどの厳しい法律だ。」

刃千吏が数年前にダークネスによって神獣の一族の虐殺されたことに端を発して、全世界に獣化能力者たちを保護する法律の制定を国連に求めた。
中国の国家機関の強い要望もあり法案はあっさりと可決した、というよりも可決させたともいえる。刃千吏の実力と恐ろしさは裏の世界では知られている。
逆らって、獣化能力者の人体実験などをしたら国を滅ぼされかねない。

「で、そんな馬鹿をしているのはどこだ。」



深夜、中華料理店
ここはジュンジュンが住み込みで働いている中華料理店である。
ジュンジュンは眠っているが、何かを感じ目を覚ました。
店の人を起こさないようにこっそり裏口から外にでた。

気配の方に段々と近づいていく。これは闇の気配ではない、獣の匂いだ。
裏路地に入ると大きな犬のような怪物を見つけた。

だが、それは単に大きな犬ではない。頭が三つある。
ジュンジュンは即座にパンダに獣化した。

「グワー!」
ジュンジュンは巨大な怪物に突っ込んでいったが、三つの頭に持ち上げられて、後ろに投げ飛ばされた。

怪物はすぐに頭をジュンジュンに向けて牙をむいた。
ジュンジュンは真ん中の頭を押さえたが、左右の頭がジュンジュンの左肩と腹に噛みついた。牙がジュンジュンの体に食い込んで、体力を奪っていく。

このままだといずれ力が抜けて、真ん中の頭に喉笛を噛み切られるだろう。
徐々に抑えている頭がジュンジュンの喉に近づいていく。

バーン!
「グオー!」
怪物が背中を撃たれてひるんだ。
ジュンジュンはその隙に抜け出した。

「純、俺がいなかったら死んでるぞ。」

そこにいたのは大きなショットガンを持っているジャンがいる。
「こいつは俺が仕留める。」

ジャンはショットガンを立て続けに撃った。
怪物は苦しんでいるが倒れる様子はない。

「グオー!」
ジュンジュンはひるんだ怪物の右側の頭を吹き飛ばした。

「ジャン、こいつは何ダ。」
「バカな軍隊が作った生物兵器だ。この国は相変わらず平和ボケ過ぎだ。自分たちのお膝元であんなものが作られているのに気付かないんだからな。」
「そんなことよりあいつ、銃弾を受けても頭を噴きとばしても生きているぞ。」
「頭すべてつぶすしかない。」

そういうとジャンは人間離れのスピードで左側の頭の死角に入りショットガンを連発して頭を吹き飛ばした。
ジュンジュンが残りの頭を吹き飛ばそうとすると怪物は口から火を噴いた。

「これじゃあ近づけない。」
ジャンはすぐにショットガンを撃つが、弾丸は炎で溶かされた。
獣はジャンのほうに向かっている。

(まずい、あのままじゃあジャンが・・・)

ジュンジュンは怪物を口をふさいだ。しかし怪物は絶え間なく火を噴いてジュンジュンの手を焦がしていく。

「純!馬鹿野郎!」
バーン!
ショットガンが怪物の頭の付け根を吹き飛ばした。
三頭の怪物はやっと息絶えた。

ジャンはジュンジュンの手に包帯を巻いた。
「全く無茶しやがって。」

ふたりが話をしていると頭を失い、息絶えた怪物が体だけを動かしてとびかかった。
それにジャンはいち早く気づいた。

「ちっ!」
するとジャンの体が盛り上がり、獣の姿に変異した。
実はジャンはジュンジュンと同じ獣化能力者なのだ。

「ぐおー!」
獣と化したジャンは一撃で怪物の体を吹き飛ばした。
怪物が完全に沈黙したのを見届けたジャンは人間の姿に戻った。

「ジャン、お前その力コントロールできたんだな。」
「ああ、なんとか自分の力にすることができた。あいつを倒すためにな。」
「そうか、お前家族の仇をまだ追っているのか?」
「ああ、一度は仕留めかけたが取り逃がした。純、そういえばお前の村もやられたそうじゃないか。」

ジュンジュンの村はダークネスに襲撃され、ジュンジュンは家族を失った。日本に来た当初の目的はダークネスから逃れるだけでなく復讐のためでもあった。

「私は復讐のために生きてきたつもりだったけど、仲間と出会ってから変わった。復讐ではなにも生まれない。」
「そうか、あの店の連中と過ごす純の顔を見て、そんな感じはした。そろそろ俺はこの一件の報告にいかないとな。」
「待って!もし時間があればあの店に来いよ。」

去っていくジャンは振り向いた。
「ああ、気が向いたらくるよ。」

ジュンジュンはまたジャンに来てほしいと思っている互いに家族を失った悲しい宿命を持った者同士の心を癒す必要があると思ったからだ。