「Vanish!(8) 独占 ―はぶられいなと消失点― 第5部」


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「なぜ、そこまでして俺に向かってくるんだ、れいな?」
何度となく向かってくるれいなの疲労困憊な拳を受け止めた吉澤が尋ねる
「正直、お前もわかっているんだろう?『このままでは勝てない』ことくらい」

ゆっくりとキュィィンと吉澤の光弾を作り出す時の音が静かに鳴り響き始めた

「そうかもしれん・・・でも、れいなはあきらめんと!だって、守りたい人がおると!!」
れいなはもう力も入らなくなっている左手で吉澤を掴もうとした
「じゃあ、選びな」
吉澤は荒々しくれいなを突き放し、自分から距離をとった

「な、何をするつもりと!!」
吉澤は掌で小さな光弾を2つ作り、右手と左手で一つずつ持ちながられいなの方を向いた
「お前の『守りたい』奴が誰なのか、興味を持った」
右手を高橋に向け、左手を雅に向け顔を上げた
「どちらか一方を守るんだな。10秒だけ時間をやるから、決断するんだ」

れいなは自身の血が引いていくのを感じた。
あの光弾を何度もくらったれいなだからこそわかる、その破壊力
ボロボロになり命の灯が消えそうな高橋と実戦経験のない一般人の雅、どちらが受けても…命の保証はない
「愛ちゃん、ミヤ、逃げると!!」
れいなは座りこんでいる高橋、雅に声を荒げた
しかし高橋は立ち上がろうとしているが、もうこれ以上動けないようで目を丸くしてこちらを見ていた
(ご、ごめん、れいなちゃん、さっきから動きたいんだけど脚が言うことをきかないの)
そんな風に表情から伺われた

(あ、愛ちゃん達を守るためにれいなはここに来たっちゃ。だ、だけど・・・)
高橋から視線をそらすと雅が下を向いて俯き、震えていた
(いくらこの事件の原因やけど・・・ミヤを見捨てるわけにもいかんと・・・いったいどうすればいいと?)
普段あれほどはっきりしたれいなからは考えられないほど優柔不断になり、無情にもただ時間だけが過ぎて行く

「時間切れだ。解答を聞かせて貰おうか」
「れ、れいなには選べんと…」
「じゃあ、さよならを言うんだな。さらばリゾナンター」「!!」
1つは高橋に、もうひとつは雅に向かって音を上げ、空気を唸らせて向かっていく

高橋はどうにかして瞬間移動を試み、それは成功した
しかし・・・光弾は途中で向きを変え高橋を追うように向かってくる
「無駄だ、こいつらの操作なんてお手のモノなんだからな!!」
吉澤が指揮者のように腕を払うと弾は右に左にと跳びまわる。

一方、雅も必死に光弾を避けようと逃げ回っていた。高橋のように瞬間移動もできないため、息は上がり始めていた

(愛ちゃん・・・ミヤ・・・二人とも今は逃げ回っておられるけど、いつまでもこういうわけにはいかんと
 こうなったら、れいなにできることはただ一つっちゃ!!)

れいなは吉澤へと向かっていき、必死に腕の動きを止めようとがむしゃらに殴りかかった
それは拳法やボクシングのように洗練されたものではなく、野生の勘の現れであったのかもしれない
浮ける側の吉澤も光弾を放ちながらではさすがに動きは多少ながら、鈍っていた
そこを期せずして狙うことになった。

ただ、それはれいなが満身創痍でなかったならば成功しただけのこと・・・結局、吉澤に弾かれた
あっけなく殴られ、尻餅をついたれいなに向かい吉澤は静かに呟く
「誰を守るのか選べないんじゃ、結局誰も救えないのと一緒だ。れいな、無力だな。そこで最期を見てるんだな」
吉澤が右の拳を握った

高橋を追っていた光弾の速度が急激に上がり、そして輝きを増した―そう威力を増したように
途切れ途切れになった息の高橋ではこれ以上、避けられないのは明白になった
力を振り絞って動き続ける高橋に迫る光弾と恐怖を感じ、思わず目をつぶってしまう高橋

大きな炸裂音と共に部屋に粉塵が散った
「あ、愛ちゃ~~~~ん!!!!」

れいなは粉塵の中を高橋のもとへと急いで駈け寄っていく
(愛ちゃん!!どうか、大丈夫でいてほしいと・・・)
ようやく視界が開けてきたれいなが見たものはうずくまっている高橋の姿であった

「あ、愛ちゃん、大丈夫?」
ゆっくりと顔をあがながら高橋はむせながら、でもはっきりとした口調で答えた
「う、うん、れいな、私は大丈夫・・・で、でもあの子が」
「あの子?」
れいなは高橋の視線の先を向いた・・・その先には

「ミヤ!!」
辺りに焦げ付いた匂いが立ち込め、うつぶせになって倒れている雅が着ている上着には穴が開いていた

「た、田中さん・・・」
「しゃべるな、ミヤ。しゃべると傷が広がると!!」
「そ、その子が私をかばってくれたから。でも、そのせいで2つも・・・」

目の前に迫ってきた巨大な光弾
跳ぶ体力はほとんどなくなり、走馬灯が駆け巡った
―ああ、私は死ぬんだな、そう高橋は覚悟を決めた

しかし、目をつぶろうとした瞬間に高橋の目の前にかばうように影があらわれ…光を受けた
その影が、今、こうやって倒れ込んでいる雅であった

「た、高橋さん、大丈夫ですか?怪我・・してませんか」
「私は大丈夫、でも、雅ちゃんが」
「私なら、大丈夫、ですよ、よかった、高橋さんが、助かって」
切れ切れながらも雅は高橋に問いかけ、力ないながらも優しく笑みを浮かべた

「田中さん・・・わかりましたよ。どれだけこの人たちを大事にしているのかを」
れいなの方に顔だけを向けて自身に言い聞かせるようにゆっくりと語りだした
「何度も何度も挫かれても諦めずに向かっていく。田中さんの姿、本当に格好よかったです。
 やっぱり私、嫉妬しちゃうますよ、あんな姿勢見せつけられたら
 田中さんを守ることがしたかっただけなんですよ、ミヤは。本当にそれだけだったんです。
 だから・・・田中さんを守りたいものを、ミヤも守りたいって、ちょっとだけ思ったんですよね」
「だからって無理することなかろうと!やっぱミヤはバカっちゃ!!」
「バカだったからこんなこと、できたのかな?ハハハ…
 頭がいくら良くて何もできないより、バカでも本当に大事な人を守れることが人間らしいと思えませんか?」
「うん、うん、思うから、ミヤ、お願いやから静かにしててくれっちゃ!!傷口がひろがるとよ」

コツッコツッと革靴が地面をうつ音が近づき、れいなは音のする方に構えをとった
「なんだ、まだ生きているのかよ。しぶといな」
「・・・」
吉澤がゆっくりと近づいてきていた。その手にはもうすでに光弾を用意しながら・・・

「面白かったよ、リゾナンター、でも、これでさよながら」
悲しそうな眼をして、呟きながら吉澤はその手から光弾を発射した
それは一直線にれいな、雅、そして高橋のもとへと進み・・・衝撃波を生みだした
部屋は粉塵に再びつつまれた

「これでよかったんですか?吉澤さん」
マルシェが少し離れたところから問いかける
「あの方が言っておられましたよね、私達の目的のためには・・・」
「大丈夫だ。もうすでに許可は取ってある…さてと、首だけでも持って帰ってボスに報告しないと」

そんな気を抜いた瞬間にれいな達のいた方角から・・・エネルギー弾が返ってきた
「なに!?」
吉澤は体をひねりなんとか避け、放たれた光弾は壁に穴を開けた。

れいなは迫ってきた吉澤の光弾から雅を守るために、後ろを向いて自身も頭を抱え込むような姿勢でかばっていた
ゆっくりと自身が、雅が無事であることを確認したれいなは何が起きたのかを確認しようと前をゆっくりと向いた
といっても視界はまだ明瞭ではなく、しばらくは何が起こったのか分からなかった

粉塵が薄くなっていくにつれて何者かが、れいなの前で両手を前に出して立っている姿が鮮明になっていく
それは・・・

「愛ちゃん?」

高橋はゆっくりと振り返り・・・
「れいな・・・今まで良く頑張ってくれたね。おかげで思い出したよ…
 走馬灯として見た景色の中に・・・あなたが何度も写っていた…
 私達には大事な仲間がもう一人いたことを、れいな」

高橋はれいなに向けて白い歯を見せながら顔をくしゃくしゃにしながら言った
「ただいま、れいな」「愛ちゃん!!」