『聖、許しませんわ』


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



第一話「衣梨奈 孤独の青春」


「ちょっとお嬢さんいいかな」
「はいっなんでキャァァァァッ」

リゾナントのある町の駅の裏通りに露出狂の変態が現れた
目撃者の証言によると中肉中背の男が着ていたコートの前をはだけると、それを見た被害者は悲鳴を上げ失神したという
被害者に事情を訊くために病院を訪れたリゾナンターの目に映ったのは「面会謝絶」の四文字
複数いる犠牲者はことごとく意識を取り戻さないという

(これはまさか能力者の仕業なの)

「こんな最低の変態野郎をこの町で生かしておくのは、カッコ悪い事だぜェーッ」
「積極的だね。だったらこの事件の捜査ははるなんが指揮して。聖、よくわかんな~い」
「ふ譜久村さ~ん(涙」

事件の性格から鑑みて捜査の前面には18歳以上のお姉さんチームが立つことになった

「いや~っ、お力になれなくて残念です」

尾形春水はニマニマ笑ってる

変態野郎を捕まえるには囮捜査だ
R18チームの4人は思い思いのセクシーな格好で、順番に裏通りを歩くことにした
状況によってU-18チームが応援に駆けつけるぞ

お洒落番長飯窪
セクシーナース譜久村
だーいし感満載石田

不発に終わった三人を尻目に真打登場とばかりに意気盛んなのはアマチュアゴルファー生田 飛距離230ヤード

「変態野郎のボールをカップインさせちゃるけん」

ドライバー片手に闘志満々

(すげー筋肉)とは誰も言えない

ゴルフウェアを身に着け駅前通りを歩く衣梨奈
中身はともかく外見はフォトジェニック
プロゴルファーの卵か何かと勘違いしたおじさん連中から握手や写真撮影を求められる始末
最初は笑顔で応じていた衣梨奈、しかしこれではいつまでたっても捜査に入れない

「帰れんっちゃけど」

不機嫌オーラ全開でおっさん連中を撃退だ
やれやれと一息ついた衣梨奈に迫る影

「ちょっとお嬢さん、いいかな」
「その言葉待っとっギャアアアアアアアッ」


今のは確かにえりぽんの悲鳴
あっドライバーが!  ここれはっまさかっえりぽんのドライバー!
そしてボタン! これはきっと変態野郎のコートのボタン!
うわーっこの残留思念の感覚は、そそんなーーっ!

「えりぽーーーーーーーーん!!」

「譜久村さん、ノリノリですね」
「うふっ!」

ここは敵地
どこかに変態野郎が潜んでいる
しかし聖は感情を抑えきれなかった
聖は叫んだ
衣梨奈の名を
春菜と亜佑美は流した
かなしみの涙を
けれども衣梨奈の名を呼んでも、返ってくるのは残酷な静寂ばかり
衣梨奈は気を失ったのだ
聖と春菜、亜佑美は静寂によってその事実を知ったのだ


CM 




~私の身体は~、わがダークネスの最高知能の結晶であり~ 誇りであるぅぅぅ!!
~【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレは世界一ィィィ!

次回「ワイルド7」




投稿日:2016/11/16(水) 06:12:00.56 0



第二話「ワイルド7」


(あいつはやばいっちゃ)

「えりぽーーーーーーーーん!!」

(あんなムキ出しのもん見せられたら正気を保つなんてむりやけん)

「誰がこんなひどい目に合わせたの」

(はよっあいつの正体を知らさんと)

「ねえ起きてよ。目を開けてえりぽん」

(う~みずき、苦しい喉が締まる)

「戻ってきて、戻ってきてえりぽん(バシッバシッ)」

(いけん、ええのが顎に入ってもう・・・・・)

介抱空しく意識を取り戻さない衣梨奈を抱えて泣き叫ぶ聖
囮捜査に従事した春菜と亜佑美も駆けつけたが、その表情はあ~やっちまったな感でいっぱいだ
衣梨奈を病院に搬送した後、リゾナントに戻った聖は犯人の者と思われるボタンから手がかりを掴もうとする

(?!これは!!)

「ねえ、二の腕見せてよ。きゅっと摘まんでみて」
「もう里保ちゃんったら」

どう見ても遠距離恋愛のカップルですごちそうさま

時刻は午前一時
スカイプを通して留学先の鞘師里保と話す聖
戦闘のエキスパートの里保にアドバイスを求めたのだ

「じゃあボタンから精神系の能力は感じられなかったんだね」
「何かの能力の残骸らしいものは感じ取れたんだけど」
「そもそもイクちゃんは精神攻撃には一番強いだろうし」
「といってただの変態野郎に後れを取るとは思えないし」
「防犯カメラには犯人がコートをはだけた瞬間が映ってたの?」
「後ろ姿だけどね」
「ひょっとしたら…」

格闘武術の造詣が深い里保の意見は気当たりや遠当ての一種ではないかというものだった

「こう少し前かがみになってコートの内側に気を溜めておいて、前を一気にはだけることで気を放出する感じ」

忘れてました。りほりほはけっこうなぽんこつですすいません

「こう弓を引き絞って射るみたいな感じ」

聖もかなりなアホですすいません

「そうそう」
「だったらどうすればいいと思う」
「こっちもやり返せばいいと思う。大丈夫リゾナンターは導かれし戦士の集団だからさ」
「でも」
「あっもうPCルームの使用時間が切れちゃうから。最後に二の腕見せてよ~」
「もう里保ちゃんったら」

翌日、リゾナントの地下で里保の発案による気の放出の特訓が始まった
傲然とそそりたつ二門の主砲を有する超弩級戦艦 聖 に相対する9人のリゾナンター
ピンク基調の戦闘服にカーキ系の革ジャンを羽織っている

「ふっ」 臍下丹田溜めた息を
「はっ」 革ジャンを脱ぐ動作と同時に一気に吐き出す
「ふっ」 呼吸を止めて
「はっ」 一気に吐き出す

「ふっはっふっはっ」
恋のダンスサイト状態で熱気が籠る室内に聖の声が響く

「ふっ」いいよあゆみん
「はっ」さくらちゃんグッド
「ふっ」もっといける野中ちゃんもっと自分を剥き出して
「はっ」真莉愛ちゃん恥ずかしがらないで
「ふっ」弾けてごらん朱音ちゃん
「はっ」ま~ちゃん最高
「ふっ」はいみんな止めて

壁際に立たされた飯窪春菜、工藤遥、尾形春水
トリプルAの三人に聖の怒声が飛ぶ

「もう遊びじゃないんだからね」
「でも~」
「えりぽんがあんな目に合わされて悔しくないんだ」
「私たちだって真剣に~」
「やる気が無いんだったら、今回は抜けてちょうだい」

同期の桜、生田衣梨奈の敵討ちとあって、いつになく気合が入る聖は感情的だ
残った六人を相手にふっはっを繰り返す
リストラされたトリプルAはorz状態で顔を上げられない

いったいどれくらいの時間が経ったのだろう
革ジャンを脱ぎ掛け、胸を突きだす度に見えない圧力のようなものを感じるようになってきた

これが、気当たり。
たとえ一人では負けていても七人そろったら、勝てるこの戦い!!

トリプルAを留守番役に夜の駅前に出撃したリゾナンター

見ていろ卑劣な変態野郎
我ら選ばれし精鋭、ワイルド7
鍛え上げしこの技で正義の鉄槌を下さん!


次回「残酷な天使のテーゼ」



投稿日:2016/11/17(木) 09:40:16.63 0


第三話「残酷なまーちゃんのテーゼ」


♪お前がやれぬことならば、俺がこの手でやってやる

譜久村聖が率いるワイルド7は陽気に肩を組み、駅前の通りを練り歩いている
セクシーな服を身に着けたお嬢さんたちは街の皆の目を引きまくっている

(♪おかしい、何かが間違っている)
(いや、これじゃ変態野郎が出てこれないでしょう)  

大人数での行動が変態野郎の犠牲になった衣梨奈の二の舞を踏むまいという配慮だということは理解できなくもない
しかしこの賑やかさでは犯人をおびき出せない気がする
あるいはここに飯窪春菜か工藤遥がいれば…
彼女たちとの会話を通して、聖に進言することもできる
しかし今彼女たちはいない
リゾナンターとしてほぼ同じキャリアを踏んでいる佐藤優樹はそういう役割は不向きだ
ならば、小田さくらは…

(あいつ、この状況を分かった上で楽しんでやがる)

そもそも一番現実的なプランは、年齢的に一番上な春菜を囮役にした上で他の面々は隠密行動を取ることだろう
しかしワイルド7から洩れた春菜の凹みようを見るとそんなことは言えない
はるなんは胸圧が足りないから、せめて囮役でもやってよねなんてことはとても言えない

(これはある意味はるなんの敵討ちでもある。だから私がしっかりしなくちゃ)

亜佑美はイリュージョナリービーストを召還することにした
今は亡き兄が闇を打ち払う為に亜佑美に託した三体の魔獣たち。
攻撃力ならリオン、防衛力ならバルクだが、この場合求められるのは変態野郎を追い詰める隠密機動性

(キミに決めた。スカークロウ、カムオン!!)

スケアクロウではないスカークロウと発音するのがなんかカッコいいという亜佑美なりの美学だった
渦巻いた空気の中で無数の麦わらが逆巻いている
麦わらは何かの核を覆うように一つの形を形成していく
それは亜佑美を遥かに見下ろす背の高い案山子
声なき狙撃手、スカークロウ

「え、あんたもまさか」

どこで見繕ってきたのかワイルド7同様、革ジャンを羽織っていた
まあがんばれ

◇     ◇     ◇

「いましたわ」

裏通りを抜けたあたり、少し開けた場所
ワンコインの駐車場や飲食店の裏口が立ち並ぶあたりに防犯カメラの映像で見覚えのあるコートを着た男がいた
帽子にサングラス、マスクまで着けて顔を完全防備したその男
ワイルド7に気がついても慌てたそぶりも見せない


駐車場の金網を背にした変態野郎を半円状に包囲したワイルド7とスカークロウ
男は落ち着いた様子でコートのボタンを外し…

「今ですわ」

機先を制するべく、臍下丹田に溜めた息を革ジャンを半脱ぎにするタイミングで放出するワイルド7とスカークロウ
7人と1体から放出された気は変態野郎をノックアウトすることもなく、男はボタンを外したコートの前をゆっくりと開いていく
(えっこんなゆっくりじゃ気の放出とかできないんじゃ)

【人体標本】
それが男の能力だった
発動させることにより筋肉の光の透過率が上がり、内部が透けた状態はまさに映画の「透明人間」そのままであった
それも白黒フィルム時代の安っぽい特撮ではなく、最新鋭のSFX技術で撮影された「インビジブル」状態
学校の理科室などに設置されている標本模型がリアルな形でそこに存在していた
作り物の模型とは違い、筋肉は生々しく震え、血管を通る血液の色は生々しく、所々から見える内臓は不規則に動いている
街灯の光も相まって、不気味さを増したその姿にワイルド7も次々に意識を刈り取られていく

「こうなったら、スカークロウ、アタックモード!!」

威力は小さいがスカークロウを男に体当たりさせ、危機を脱しようとした亜佑美だったが、彼女の目に映ったのは絶望だった

「お前もかよ」

そこには気を失い口と思わしき場所から泡を吹いて倒れているスカークロウの姿があった
戦闘力を失ってその体を構成している麦わらがボロボロと崩れていく
やがて風に吹かれてスカークロウであった麦わらは飛散して、そこには何も存在しなくなった
そして亜佑美の意識も

◇     ◇     ◇

男は落胆していた
勇ましい歌を歌いながら美女美少女が行進してきた時は、どんな攻防が繰り広げられるのか結構期待していたのだが、それはあっさり裏切られてしまった
もっといろんな段階、内臓をよりクリアに移したり骨格のみの姿で踊ってみたりして脅かしてみたかったのだが
仕方なくその場を立ち去ろうとした時だった

「うわぁスゴイね、おじさんの身体」

一人だけ平然とした様子の少女が居た
大人びているようでもあり、あどけなさも残しているその少女は恐れも見せず男に近づいてきた

「これ、全部本物だよね」
「ねえもっと心臓とかはっきり見えないの」
「血管だけ見せて、見せて」

まるで天使のようなおねだりを見せるその少女に男は本能的に恐れを感じた
こいつはヤバいと思った瞬間、男の全身を何かが通過した
な、なんだ今のは


超音波の発進、振動

「ねえねえ今、内臓がぷるっとしたよ。おさかなさんみたい。 おじさんまーちゃんのおさかなさんになってよ。ねえねえもっとやってもいいでしょ」

男は理解した
この少女には何を言っても多分通じない
この少女はまさしく天使なのだと
恐れも知らず、無邪気な天使
しかし天使とは時に残酷なものだ
人間の苦しみを理解することもなく無邪気に運命の糸で遊ぶ天使が今、目の前にいる
このままでは自分は魚のように捌かれる

「た、助けてくれぇぇぇぇ」

それが男の残した最後の言葉だった
度を越した超音波の発振を受けた男の肉体にどんな影響が及ぼされるのかはまださだかではない

佐藤優樹をのぞくワイルド7は、気を取り戻した衣梨奈と交代で病院に収容された
聖たちが戻ってくるまでリゾナントの切り盛りはどんよりモードのトリプルAと衣梨奈で切り盛りされた
優樹はというとあいかわらずみんなを振り回していた
まーちゃんは天使

「残酷なまーちゃんのテーゼ」終わり

次回「ゴールドフィンガー」




投稿日:2016/11/18(金) 16:15:25.24 0



第四話「ゴールドフィンガー」(自主規制ver)

「ふぅ、二人ともご苦労様」

その日、リゾナンターのリーダー譜久村聖は市内最大の総合病院に仕掛けられた爆弾の解体作業を行っていた
本来なら警察や自衛隊の爆弾処理班が行うべき作業をなぜ、聖が担っていたのか。
その理由はその爆弾の特異性にあった

“ジャガーノート”と名乗る犯人の作った爆弾は、これまで幾人もの犠牲者を出してきた。
そしてその犠牲者の割合は一般人よりも処理に当たった警察や自衛隊関係者が圧倒的に多いのだ
液体窒素で起爆装置を凍らせ安全な場所へ移動させるという爆弾処理の基本中の基本をはじめとしたあらゆる措置を想定した何重ものトラップが解体処理を阻んできたのだ
まるで爆破よりも処理に当たり人間を狙っているかのような卑劣な犯人に業を煮やした当局がリゾナンターに今回の処理を依頼してきたのだ

譜久村聖は【接触感応】というチカラを持つ能力者だ
その能力は物質に残った残留思念を読むというものだ
爆弾にどんなトラップが施されているか、リーディングしながら解体処理を行っていけば卑劣な犯人の意図を挫くことが出来るという期待から今回の任務は依頼された
そして聖はここまでその期待に十分に応えている
勿論聖一人の力ではなく、リゾナンターの仲間の協力も大きかった

光に反応する光電地への対策としては、【変身】による白狼の眼を持つ工藤遥による暗視
音センサー対策は振動を統べる能力者、佐藤優樹が行い、静電気対策としてはなんとなく良さげという理由で野中美希が【空気調律】によって室内の湿度をコントロール
各々のリゾナンターとの感覚を聖と共有する役目は【五感支配】の飯窪春菜が担った
一つの層をクリアするまでに同じ傾向のトラップが幾度も出現したかと思うと、唐突に別のトラップが出現する
まさに爆弾処理班殺しの爆弾に残る犯人の歪んだ思念に飲み込まれそうになりながら行ってきた解体作業もあと一息で終わる

最後の配電盤を前に、その部屋に残っているのは聖と春菜、遥の三人だけだ。

「あとこのボタンを押せば爆弾は止まるから」
「じゃさっさと押しちゃいましょうよ」

遥の言葉に微笑みで応えた聖。

「でもまあ万が一、てっていうが億が一ぐらいの可能性を考えて、このボタンは聖が時間ギリギリまで待って一人で押すから」

何気ない聖の言葉に遥は不穏なものを感じたようだが、春菜がその不安を打ち消すような物腰で室外に誘った

「避難の誘導も大事な仕事だからねっ」

聖は二人の背中を見送ると座禅をし、深呼吸を行い呼吸と気持ちを整える

「譜久村さん、そんなにマズイ事態なんですか」

一人戻ってきた春菜の言葉に聖は苦笑する

「もー最悪だよ」

最後のスイッチを押せば爆発は起こらない
そのこと自体は正しい
しかしその最後のスイッチに問題があった

「押し過ぎても押さな過ぎても爆発してしまう。ほんとミリ単位かさらに微妙な精密さで制御できないとドカーンだね」


石田亜佑美のイリュージョナリービーストによる遠隔作業、小田さくらの【時間編纂】によるバックアップ

「いろいろ考えたけどどれも帯に短し襷に長しでねえ」

逃げるという選択肢もあるがそれは出来ない
病院という場所柄、避難したくてもできない人もいる
医療装置の助けなしに救命が出来ない人もいる
だから逃げないと話す聖を春菜は見ていた

「だから避難可能なが避難できて、何か名案が思い付くかもしれないギリギリまで待って、聖がボタンを押す」
「私はご一緒しませんよ」

危険な最前線に聖を残していくという春菜
しかし聖はその言葉を当然のように受け止めていた

「聖、はるなんのそういうところが好きだよ。これがもしもえりぽんがいたらと思うとね」

譜久村聖の莫逆の友、生田衣梨奈がこの場にいればとんでもない悲嘆場が繰り広げられたであろうことは間違いない
自分もこの場に残ると言い出すか、あるいは自分一人でこの場に残り、聖を救おうとするか

「まだえりぽんよりも聖の方がきっちりボタンを押せる確率は高いから」
「ボタンといえば譜久村さんですから」
「そうそう」

時限装置のリミットが気になるのかスマホで時間を確認した聖は春菜に退去を促した

「もしもの時、リゾナンターのことをよろしくね」

聖がいなくなったら。
衣梨奈はリゾナンターを去るかもしれない
あるいは聖の意志を引き継ぎ、リーダーに名乗りを上げるかもしれない
聖のいなくなった事実に打ちのめされ、自分の足で立ち上がれない時が続くかもしれない

「まあどんな状況になってもはるなんに頼んどけばたいていのことは大丈夫だと思うからさ」
「譜久村さん、やっぱり私が…」
「気持ちは嬉しいけど、それはダメ」

リーダーは時に危険な役目をメンバーに担わせなければならない時があった
自分の身を安全圏に置きながら、冷徹な命令を下さなければならない時があった
心にもない厳しい言葉で後輩を正さねばならない時もあった
それは聖の性格からすれば辛いことでもあったが、そうしなければ先輩から引き継いできたものがダメになってしまうという思いで必死に務めてきた

「このボタンを押して爆発を止めるのは聖の役目。もしもそれが失敗した時にみんなの動揺を収めてまとめるのははるなんの役目」
「わかってます。でも、こんな卑劣なやり方で私たちが築いてきたものが壊されてしまうかもしれないのは悔しいです」


春菜の目が潤んでいるようだったが、聖にはよく見えなかった。
それは聖の目にも涙が湛えられているから。

「ホント、ミリ単位、ミクロン単位で指先を動かせるようなそんな職人さんがいれば助かるんだけど」

仮にそんな人間がいたとしても、危険な役目を負わせるような、そんな真似を聖がする筈も無い
わかりきったことを口にするのは諦めなのか、恨みからくる繰り言なのか

「やあ、みんな元気かな。お久しぶり、ゴッドフィンガータカさんだよ」

突如としてその現場に現れたのは茶髪に日焼けした肌、金の掛かっていそうな上下を着た男
その姿を見た聖の第一印象はチャラいお兄さんだったが、顔に刻まれた皺を見ると中年かあるいは初老に差し掛かっているようにも見える
とにかく心の中で注意のイエローシグナルが激しく点灯している

「ミリ単位、ミクロン単位で指が動かせる職人だって。だったら俺が適任だな。見てよほら九千人の女に潮を吹かせまくったこの俺の妙技を奥さんも味わってみるかい」

そう言って男は左掌を手首に添えた右の指先を細動させた
空気を振動させているのか、指先周辺は歪んで見える

「あの、せっかくのご申し出なのですが、ここはとても危険です。それと私のこと奥さんと呼ばれましたが、まだ二十ですし結婚もしてません」
「ふ~なんてこった。あのさ君、有名になりたくないかい。月に二日間撮影をこなしてキャンペーンで一週間ぐらい全国のビデオ屋さんを回って。大丈夫、君なら絶対専属契約取れるから」
「あっあなたはあのマッサージ屋さん」
「ああちょうど良かった。飯窪ちゃん、いやはるなんって呼んでもいい。この間はるなんがうちの店に来た時に漫画を忘れてったでしょ。それを届けに来たら大変なことになってるみたいだし」

ほんの数分前まで春菜との惜別の悲しみの涙で濡れていた聖の瞳が今度は怒りの炎で燃えている

「ふ~ん。はるないえ飯窪さんはこんな人とお付き合いがあるんだ。ふ~んマッサージ屋さんね」
「ちょ誤解です。私は野中ちゃんと待ち合わせた時にたまたま街頭アンケートを頼まれてですね」
「何ですって。野中ちゃんをこんないかがわしい人と会わせたですって」
「おいおいいかがわしいって失礼だな。それは俺は大人のビデオで男優をやってたけどそのことを恥ずかしいだなんて、ふごぉっ」

お黙りなさいという聖の張り手を食らったタカさんはその衝撃に顔を歪めながら、いいねいいね王道系で頭打ちになったらそっち系にも進出できるいいねと謎の呪文を呟く

「あなたは私より年上ですから、プライベートでどんなお付き合いがあってもそれに口出しするつもりはありません。でも未成年の子たちをいかがわしい世界に引き込むというなら、聖、許せませんわ」
「だから誤解ですって~」
「おいおいいかがわしいって失礼だな」

聖、春菜、タカ三人のあまりに不毛な堂々巡りの問答に呆れ返ったのか、爆弾も起爆を止めてしまった
よって爆弾処理のミッション成功

(タAカ)<「はははっ。ケンカはいけないな。そんな時は俺のゴールドフィンガーで二の腕をこう軽く撫でただけで」


ノノ∮‘ _l‘)<ああぁっふっふぅ!
 ノハ*゚ ゥ ゚)<はう!



投稿日:2016/11/22(火) 17:47:42.21 0













添付ファイル