『新垣里沙の手記・其の二』



リゾナンターは実在したのか。
リゾナン史に興味を持たれている方にとっては愚かな問いかけに聞こえるだろう。
しかしリゾナン史の編纂に関わった初期の研究者の多くはその命題に頭を悩ませたのだ。
たとえば彼女たちの名称として使われる「リゾナンター」「リゾナンダー」「共鳴者」「リゾネイター」
彼女たちの果たすべき使命、「正義の味方として悪の組織ダークネスの野望を阻む」「巨大怪獣による地球の破壊を防ぐ」「日常を侵食する闇から生まれいずる人外の物を駆除する」「毎日を生き延びる」
リゾナン文書に綴られた多様なリゾナンター像に惑わされリゾナンターの実在を疑った者がいた。
他の能力者集団をリゾナンターと誤認しているのではないか懐疑的な考えを抱いた研究者もいた。

連想ゲームをしよう。
次の三つの言葉からあなたは何を思い浮かべるだろう。
動物、灰色、細長い身体器官。

同じ問いかけを私が教える学生達にしてみた結果、実にその九割までが鼠を連想した。
しかしながら私の思い描いた正解は……象である。
ある事象をいくつかの特徴をもって誰かに伝えるとき、特徴の一つ一つを正しく伝えたとしても、その事象そのものを正確に伝えられるとは限らない。
いくつものリゾナンター像という記述のぶれの原因は実のところこんなことではないかと私は考えている。
以下に紹介する「新垣里沙の手記」に綴られているリゾナンターをあなたたちはどう捉えるだろうか。

亀井絵里愛好家 エリソン・P・カーメイ



2007/6/5

上の人間の考えていることがわからない
せっかくi914を見つけたのに何故回収作業を行わないんだ
i914
確かに彼女は高レベルの能力者だ
私が確認したのはテレパシーだけだが本人によればテレポートも保有しているらしい
だがしかし私の目から見たあの女は躾の行き届いていない猿だ
回収担当の工作員の手を煩わせるまでもなく私一人でも蒼女を檻に閉じ込めることはできるのに、上の人間は何を考えているんだ
デパートで出会ったその日から、私の携帯にはあの女からの着信が絶え間ない  ------------------(注1)
よっぽど人との繋がりに飢えていたと見える
とりあず現在の住所は抑えてあるし姿を消す心配もないが一度顔を見せてご機嫌を取っておこう


2007/6/6
猿女と会った
今は喫茶店を開業する準備をしているらしい  -----------------(注2)
少し前から喫茶店を開きたいという願望あったらしいが私との出会いが背中を押したとか
ちょ何で勝手に私をあんたのプランに組み込むわけ
共同店主として運営に参加して欲しいとか冗談じゃない
あんな下品な山猿と肩を並べて仕事するなんてまっぴらごめんだ
そもそもあんな女が喫茶店を開いたって繁盛するとも思えない
いやパッと見だけはいいから顔や体目当てのエロおやじどもには人気が出るのかもしれないけど  ------------------(注3)
まあいい
ストレートに断ってご機嫌を損ねるのもマズい
今は別のところで働いてるとでも言っておくか
あの女と話すとイラついて血圧が上がりそうだ
メールを送っておこう


2007/6/9
ヤバい展開だ
しばらくあの女を泳がせておくとか
周辺を観察しておくとか
私がその監視役とか冗談じゃない
監視のための拠点作りとかふざけてんのか
ピン=チャボ―なんてブティックこの世に存在しないんだよ  ------------------(注4)
あの女に断りのメールを送る時になんとなくそんな名前を思いついただけなんだよ
実在しないんだったら既存の店の関係者の記憶を弄って会社名を変えさせろとかどれだけ腰を据えて観察するつもりなんだ
つうかどれだけピン=チャボ―が好きなんだよ
中澤さんに直訴しようにもこのところ連絡が取れなくなったし
もしかして避けられてるのか
安倍さんの状態も芳しくないし
ああ、ユウウツ


2007/6/11
あの女はバカだ
喫茶店のスタッフに加わってくれという頼みはなんとか断った
つうか一度や二度会っただけの人間を誘うかよ普通
私が働いているピン=チャボ―を見てみたいと言い出したのには困った
こんなこともあろうかと現在改装工事中のデパートで開業予定のアパレルを見つけてはいる
経営者の精神に干渉すればブティック、ピン=チャボ―の誕生だが正直そこまではしたくない
話を逸らすためになぜ喫茶店を開きたいのか尋ねてみたら興味深い話が聞けた
あの女が猿山から東京に出て来た時、一時期喫茶店に身を寄せていたらしい  -----------------(注5)
女性のマスターと先輩の女性
三人で暮らしていく中でいろんなことを学んだらしい
そして救われたとも言っていた
今度は自分が他の誰かを救いたいとも
猿女は今度開く喫茶店を自分のような能力者の為のシェルターにしたいような口ぶりだった
能力を持って生まれた故に苦しんだ者を救う為の城にしたいとも
私は感心した口ぶりで褒めておいた
まあその店が開店することはあっても繁盛することは無い
安倍さんを救う為にあの女には犠牲になってもらう
このことだけは確定しているんだから


2007/6/18
許せないあの猿女
安倍さんと一つ屋根の下で暮らしていただなんて
そればかりか手に手を取って色んなことを教わったとか
いや、それは全部夢
夢の中での出来事だ
安倍さんがそんな喫茶店のマスターをしていただなんてありえないし
ただあの女が東京に出て来た時期と安倍さんのキャリアの空白の時期とが微妙に重なるようなのが気にかかる
もういいあの女潰してやる
あの女の所為でここのところ私のペースは狂いっぱなしだ
あの女がいなければ私は白い家を拠点に洗脳屋の仕事をしながら安倍さんのお世話も出来たのに
あの無警戒な女を潰すのは簡単だが、私がやったことを上の連中に知られるのはやはりマズイ
藤本美貴
氷の魔女として恐れられている狂犬をあの女にぶつけてやろう
猿と犬が仲悪くケンカすればいいんだ


(注1) リゾ文書『(03)459 名無し募集中。。。 (メール三文字)』などで、高橋愛は仲間との連絡に関しては非常に素っ気ないことが知られている。
     そうした事実と高橋愛からの着信が多いという記述は矛盾すると考えられる方もいるだろう。
     そうした方にはこの時期の高橋愛と『~(メール三文字)』の頃の高橋愛では周囲を取り巻く環状が違うということを考慮していただきたい。

(注2) この時点では喫茶リゾナントは営業していなかったという事実を証明する記述であろう。

(注3) そんなエロおやじ共の中で名前が明らかになっている数少ない人物が間賀時夫氏であろう。
     リゾ文書『暁の戦隊』(3rdシーズン-第16話「HEY!未来」)において間賀氏は女性の太腿の画像データを7GB近く保有していたとされている。
     同じ時代に生まれ酒を酌み交わしたかったとつくづく思う。

(注4) 新垣里沙が服飾関係の会社に籍を置いていたことはいくつものリゾ文書で証明されている。
     しかしながらその会社名が明記されているリゾ文書は(18)117 『じゃじゃ馬パラダイス☆激闘編』程度しか発見されておらず、その信憑性が疑われることもあった。
     今回の手記は「ピンチャボ―」という店が実在したという説の信頼性を高める材料になったのではないだろうか。

(注5) マスターやウェイトレスの描写も併せれば、(13)304 『常夜を引き裂く照空灯』で描かれている喫茶店でないかと推定される。
     高橋高橋愛が祖母の元で暮らした時期と喫茶リゾナントのマスターとして仲間に囲まれていた日々を繋ぐミッシングリンクとなるのか。
     今後の検証を待ちたいと思う。





投稿日:2015/03/27(金) 18:26:22.94 0











































最終更新:2015年03月28日 00:23