『リゾナンター爻(シャオ)』 42話


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施設各所から吹き上げる炎の柱は、光の国の居城前からもはっきりと見ることができた。
炎の根元がどういう状況になっているかは、想像しなくても理解できる。

「どうしよう、このままじゃ遊びに来た人たちが!!」
「とにかく、助けなきゃ!!」
「その必要はないね」

リゾナンターたちの言葉を遮るように、一人の少女が目の前に降り立つ。
へそ出しショートパンツという軽装の、ポニーテール。
その顔には、見覚えがあった。

「こいつ…この前の譜久村さんに擬態してた!」

亜佑美が、思い出す。
確かに少女の顔はあの時の襲撃者のそれによく似ていた。が。

「ざけんな。あんな出来損ないと一緒にすんなって。まいいや、”のん”が面白い場所に、連れてってあげる」

それだけ言うと、右手をリゾナンターの面々に翳す。
何かの攻撃か。身構えた一同だったが、次の瞬間には少女は姿を消していた。


「何やったと、今のは…」

衣梨奈がそう言ってしまうほどに。
思わせぶりな登場の仕方にしては、拍子抜けな結末。
姿を消して不意打ちでも食わす、というわけでもなさそうだ。
しかし、傍らにいた優樹は気づいていた。重大なことに。

「生田さん…」
「何、優樹ちゃん」
「みんなが、いなくなっちゃいました」
「え!?」

優樹の言うとおりだった。
姿が、ない。
香音。春菜。遥。さくら。
四人の姿が、一緒に消えていたのだ。



視界が、歪んだと思ったら次の瞬間に。
香音は、目と鼻の先に自分によく似た人物が間抜けな顔をして突っ立っていることに気づく。

「ひゃあっ!?」

普段は滅多に出さない、女の子らしい声。
驚き後ろに飛び退くと、正面の相手も同じような格好で後ろへと飛んだ。

「もしかして…鏡?」

言いながら、右手を上げてみる。
やはり同じように、左手を上げるぽっちゃり娘。
間違いない。上げた手を正面につくと、ひんやりとした感触が伝わった。

「みんなは?」

辺りを見回す。
しかし目に映るのは、たくさんの戸惑っている香音だけ。
上下左右、あらゆるところが鏡張りになっているようだ。

― 鈴木さん、大丈夫ですか? ―

心の声が、訴えかけてくる。
この声は。


― 小田ちゃん? ―
― はい。今、どこにいますか? ―
― 何だか鏡だらけの場所にいるみたいで ―
― 私もです。どうやらミラーハウスみたいな場所に転送されたみたいで ―

「ちっ、四人しか転送できなかったか。しょぼい能力だししょうがないか」

そこへ割り込んでくる、少女の声。
先ほど香音たちの目の前に現れたあの少女のものだ。

「こんな場所に連れて来たのは、あんただね!」
「そうだよ。お前らが知ってるとおり、のんの能力は『擬態』。お前らの姿になら、いつでも化けられる。
鏡だらけのミラーハウスでそんな力を使われたら、どうなると思う?」

― 鈴木さん! 飯窪です! その人はきっと、私たちに擬態して混乱させるつもりです! ―

横から聞こえる、甲高い心の声。
さくらの他に、春菜も連れて来られたのか。敵の少女は確か四人連れて来たと言っていた。となるともう
一人、ミラーハウスにいるはず。

「鈴木さん!みんな!!ハルのところに合流してくださいっ!!」

鏡の向こうから、大声で叫ぶハスキーボイス。
最後の一人は遥だったか。擬態を得意とする相手、しかし春菜と遥がいればもしかしたら。


「わかった!こんな鏡なんてすり抜けて…」

香音の持つ「物質透過」があれば、鏡の障害などものの数ではない。
勢いよく鏡に向かって突っ込んでいった結果。

殴られた。

走りこんだ香音と同じようにこちら側に向かっていく彼女の鏡像は。
途中で動きを止め、それから「鏡」の世界の外側の香音に向かって、綺麗な右ストレートを決めたのだ。ひ
っくり返り倒れる香音。
香音が鏡だと思っていたのは、少女が香音に「擬態」した結果のもの。

「けけけ、騙されてんじゃねーよ。ばーか」

明らかに香音を馬鹿にした言葉を残し、少女は足早に走り去ってしまった。

鏡像と、「擬態」。この組み合わせは。
早く他の三人と合流しないと、まずいことになってしまう。
殴られたダメージはそれほどではない。おそらく途中で「物質透過」を使ったせいだろう。気を取り直し、
立ち上がる。聞こえてくる心の声を頼りに、香音はすぐ側のの鏡を通り抜けていった。





投稿日:2015/03/23(月) 14:16:44.15 0