愛あらばIT'S ALL RIGHT


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「愛あらばIT'S ALL RIGHT」(かなしみの人ver)

次回予告
ダークネスが送り込んだ生物兵器により高速道路で大規模な事故が発生!!
メンバーがすぐに収集されるが 愛と里沙がいない しかたなく出動するメンバー

なんと2人は事故に巻き込まれ 車両内に閉じ込められ身動きが取れない!
愛の腕は敵の攻撃から里沙をかばい大量に出血 気を失っている
救出を試みるが敵の攻撃が激しい為 うまく近づく事が出来ない・・・




「味方ごと巻き込むなんて・・私も捨て駒・・・愛・・かばってくれたと言うの?」
          「危ない!!」
     突如爆風で飛んできた車の破片が愛を襲う!
        里沙が起こした行動は・・・

病院の一室 横になって言葉を交わす女が2人 同じ腕に包帯を巻いている




「聞いたよ 代わりにガキさんがみんなの指揮を執ってくれたって」




「ねぇ 愛ちゃん聞いてほしいの・・・1匹のモグラがいてねそのモグラはある理由が
あって地上へは出られない・・でも地上からはたくさんの『愛』が降りそそいでいて 
その『愛』が暖かすぎて下まで伝わってくるの! だからいつも土の中では
行ったり来たり いつか暗い土の中から這い出る事が出来るのかなぁ・・」






   「今はいいんじゃないかな 地上でも地下でもさ」
  「『愛』がちゃんと伝わっているなら・・・ガキさん」


次回かなしみ戦隊リゾナンター「愛あらばIT'S ALL RIGHT」





          「うんっ」
     そして病室は消灯の時間を迎えた



【本編】
「愛あらばIT'S ALL RIGHT」(異能力の人ver)



【スパイ】
間諜、密偵、諜報員、工作員、情報員。
嫌な仕事。
沸き立つ感情は無い。
ただ、こうでもしなければ本当に守るべきものが守れないのならば
自分はどんな事でも手を汚してでもやり遂げる。
そう思っていた。

「平和」などという意味を道具のように振りかざし。
その「平和」を目指して戦う組織へと潜入した自分という存在。
気にはなっていた。

私の隣にいつも居るこの女性が抱く「平和」という価値。
いつから、こうして意識するようになったのだろう。

まるでモグラのような自分。
『愛』が近すぎて、暖かくて苦しくなってしまうんだ。
だから地上にあるものを傷つけて、人間を悲しませてしまうんだ。
生きるために頑張ってるのに、分かってくれる人が居ないんだ。

 ねぇ。私はいつまで、いつまで此処に居ればいいの?―――





リゾナンターへの緊急連絡。
それを知らされたのは高橋愛でも新垣里沙でも無く、田中れいなだった。
遊びに出かけていたれいなが喫茶「リゾナント」へとメンバーを収集させた時
誰も二人の行方を知る者は居なかった。

 「れいなも知らないの?」
 「朝にはおったとよ、でもれなも出かけとったけん、その後までは…」
 「連絡もつかないって事は、もしかしてもう現場に行ったとか?」
 「そうかもしれない…ひとまず向かおうっ」
 「「「「了解」」」」

絵里、れいな、さゆみを筆頭に出動する面々。
だが何処かで願っていた。
嫌な予感というものは、時として残酷な光景を見せつけるものだと知っているから。

現場に到着した時には、酷い有様だった。
ある者は景色に言葉を失い、ある者は目を覆いたくなる衝動に駆られる。
金縛りにあったように動けないメンバーを他の者が肩を抱く。

連絡ではダークネスの生物兵器による高速道路の襲撃。
漆黒のフード付きのマントに頭からつま先まで覆われた死神達が
ためらいも何もなく、機械的に、無差別に"作業"を開始している。
そうプログラミングされてるのだろう。
数は全部で四体。

 「…皆、行くよ!」

7人がもう少し早ければと後悔するのを堪え、敵の眼前へと立ち塞がる。
右も左も、上を見上げても黒煙によって塞がれてしまっていた。
元の形がどんな風だったか判別不可能な車。
乗りあがるようになっている大型バス。焼け焦げたニオイ。

タイヤやガラスの破片、車体の部品。それらが反対車線まで広がっている。
たくさんの負傷者、中には死者も居るかもしれない。
四方から、火の手と悲鳴が上がっている。
夥しい悲壮が、さゆみの所へと飛び込んできた。

だが膝は折らない。
他のメンバーもこれ以上の犠牲を出さないために奮闘する。
炎の色、血の色、黒く染まる空。
中には救助隊や特殊部隊が負傷者の避難や治療をする姿も見てとれた。
だが其処に、本来居るべき二人の姿がない。

与えられた役割を必死にし続けるメンバーに、焦りと疲労の表情が浮かび始める。

 (愛ちゃん…どこに居るの…!?)

さゆみは探す、【精神感応】という自身の能力を最大限に発動させて。
何百という痛み、哀しみ、辛さを全身で受け止めながら、必死に二人を捜索する。
その時、死角から敵の一撃が迫ってきていた。

 「道重サン、危ナイ!」

【獣化能力】で「鳥の羽」を持ったリンリンによって攻撃を回避するものの
背後からの奇襲に撃墜されてしまう。
二人の背後に現れたのは、漆黒の死神が打ち出す黒い重力球体。
それを間に入った小春が防御フィールドで押しとどめ、消失する。

 「大丈夫!?リンリン!」
 「アイヤー死ぬかと思ったデスヨ…」
 「どうするの!?このままだとこっちがやられちゃうよ!」
 「愛ちゃん達が居ないのっ、呼びかけてるのにっ…もしかして…もしかしてもう…」
 「あの二人がそんな簡単に負けるはず無いっちゃよ!」
 「ミチシゲ!もう一度ダ!」
 「皆、さゆを守るよ!」
 「「「「了解!」」」

絵里の一声に、敵の襲撃にいっそう力を入れるメンバー達。
さゆみもまた、リゾナンターが宿す『共鳴』の力を信じて二人を探し続けた。
たくさんの想いの中にある筈の、ただ一つの光を。

 (愛ちゃん、返事をして!愛ちゃん…!!)

そしてその"声"は、確かに存在していた。
だがあまりにも弱弱しく、さゆみはある一つの可能性を導きだす。
それは最初に感じていたある嫌な予感。

――― 一番起こってほしくなかった事態が、すぐそこで起きていた。

 「皆、そこから離れて!」
 「え!?」
 「早く!」

さゆみの言葉にれいな達がその場を離れる。
【予知能力】によって引き起こされる未来にある、一つの導火線。

 ――――――――――――!!!!!!!!!!!!!

ガソリンに火が移って爆発を起こした衝撃音が木霊する。
黒煙と火柱が上がり、爆風によって車体の部品が空中を舞う。
自然発火によって油断していた漆黒の生物兵器が溶け出して行く。

 さゆみは、その先に血塗れの二人の姿を見つけた。





なんて事だ。
何故こんな事になったのだろう。
自問自答をし続ける自分に気付いた苛立ちから、車体に拳を打ちつける。
気を失って目覚めてからまだ10分しか経っていない。
だが、この惨劇はものの3分足らずで引き起こされたのだろう。

喫茶「リゾナント」が休日だったこの機会を狙ったのは本当に偶然だった。
メンバーの為に早く帰ろうとしていた愛がこの道を走り始めた瞬間の襲撃。
視界に映った漆黒の死神がダークネスによる生物兵器だと知った時には、既に遅かった。

 「ガキさん!!」

その時の記憶は飛んでしまったらしく、気がついた時には愛が腕から血を流して気を失っていた。
大量の出血によって顔色が真っ青になっていく愛をタオルで止血しながら見つめる事しかできない。
熱気で頬の汗を拭いながら里沙は舌打ちをしながらも、愛の気持ちに疑問を抱いた。

 「味方ごと巻き込むなんて・・私も捨て駒・・・愛・・かばってくれたと言うの?」

だがこの行動は、里沙はどこかで分かっていたのかもしれない。
愛のいう「平和」がこうして人々を守るためのものであるものとだとすれば。
自分の命をかなぐり捨ててでも仲間の命を助けるだろうと。

 「私は、ダークネスのスパイ…リゾナンターの宿敵」

もしもこのままリゾナンターのリーダーである彼女を放っておけば、ショック死は免れない。
自分もこんな二重生活をしなくても済む上に、守らなければならないと身を削る事もなくなる。
そうだ、それこそが自身の「平和」だったのではないのか。

里沙はタオルを持っていた手の力を抜く。
その時、車内の窓からリゾナンターの面々の姿が見えた。
数は四体だが、その戦闘能力は並ではない。
そもそも指揮を取る人間が居ない為、その攻撃も全てがバラついていてダメージには至っていない。
あれでは押し切られるのも時間の問題だろう。

 「…モグラはモグラでしかないのよね」

降り注ぐ『愛』が暖かくて苦しくて、だから地上には出られない。
だが真っ暗な場所でそれだけを感じていたモグラは、いつしかそれに引かれるようになった。
自身の「平和」と、他人の「平和」を同時に受け止められる強い人間に、憧れるようになった。
では、そんな矛盾した世界でモグラは何を求めるのだろう。

 「―――上等じゃない」

瞬間、視界が光ったかと思うと、衝撃音が襲った。
爆風によって舞う車体の部品が里沙達の元へと降り注ぐ。
その時、なぜそんな事をしたのかは分からない。

激痛で覚醒した頭にはただ、守らなければいけないという本能のみが働いていた。
守りたい、守らないと、守らなきゃ、彼女を、―――高橋愛を、皆を―――。

 「うわああああああああああああああああああああ!!!!」




――――――――――――。

負傷者を多数出した今回の事件は幕を閉じた。
救助隊の力により奇跡的に死者が出なかったのは不幸中の幸いだっただろう。
その一番の要因はリゾナンターであり、ザブリーダーの指揮の元、生物兵器の殲滅によって
事態が拡大しなかった事にある。
現在、片腕の負傷によって都内の病院で入院している事を知っている人物は極僅かだ。

 「聞いたよ 代わりにガキさんがみんなの指揮を執ってくれたって」

ベットに横たわる愛は救助隊の活躍により、その命を取り留めた。
他のメンバーも歓声を上げ、泣き崩れる者も居た。
明日には退院できる事を聞かされ、その表情は柔らかな笑顔が浮かんでいる。

椅子に座る里沙もまた、同じ片腕に包帯を巻いていた。

 「ありがとうな、ガキさん。やっぱりさすがやよ」
 「ねぇ 愛ちゃん聞いてほしいの・・・」
 「ん?なに?」
 「もしも、もしもだよ。1匹のモグラがいてねそのモグラはある理由が
 あって地上へは出られない・・でも地上からはたくさんの『愛』が降りそそいでいて
 その『愛』が暖かすぎて下まで伝わってくるの! だからいつも土の中では
 行ったり来たり いつか暗い土の中から這い出る事が出来るのかなぁ・・」

里沙の言葉に、愛はきょとんとした表情を浮かべた。
だが後に浮かべたその笑顔は可笑しそうなそれではなく、優しくて、暖かい微笑みだった。

 「今はいいんじゃないかな 地上でも地下でもさ」
 「え?」
 「『愛』がちゃんと伝わっているなら・・・ガキさん」

例え暖かくて苦しいと思っても、それが思える心がある。
そしてその心は、それがちゃんと『愛』だと認識する力がある。
場所なんてものは関係ない。
繋がりを、『共鳴』を信じる人間は、どこでもその恩恵を受ける事が出来るのだから。

 「うんっ」

そして病室は消灯の時間を迎え、全てが眠りへと誘われる。


 信じるべき者と共に、『愛』を生む明日を迎える為に。






【解説】
i914、刃千吏、さえみ、共鳴増幅、喫茶リゾナント・・・。
リゾナンターに関して実に多くの設定が考え出されてきたが、その中でもっともスレ住人の心の琴線に触れた設定といえば、新垣里沙がダークネスのスパイだったというものだろう。
頼れるサブリーダーとしてメンバーに助言を与え、母親のように慕われる一方で、スパイとして探りえた情報を携帯のメールで送信する里沙。
ダークネスという組織とリゾナンターという仲間の狭間で揺れ動き苦悩する里沙の姿を描くことと、リゾナンターの物語を綴ることとが同義語だった時代が間違いなく存在した。

かなしみ戦隊第1シーズンの「愛あらばIT'S ALL RIGHT」もそんな作品の一つである。
「平和」の為に自分の力を役立てたいという話を持ちかけて、リゾナンターに潜入した里沙。
「闇」の領域で生きてきた里沙にとって「平和」とはさしたる意味を持たぬ言葉に過ぎなかった。
だからこそ高橋愛を信用させる道具として「平和」という言葉を利用できたのだが、調査対象として接しているうちに、愛にとって「平和」はどれほどの意味を持つのかという疑問を抱いてしまった。
疑問は里沙をスパイという道具から、問い掛ける人間へと変えた。
積み重なっていった思いは里沙を「闇」から「光」へと引き寄せる。
そしてそれを決定付けたのが、人々の「平和」な日常を破壊する生物兵器の攻撃から、里沙を庇った愛の行動だった。
人々の「平和」を守るために、里沙を助けるために自らが傷つくことを厭わなかった愛。
「味方」である自分を巻き添えにすることを承知で、生物兵器を展開したダークネス。
爆風が意識を失っている愛を襲った時、里沙は迷わずに行動した…。
事態が収拾してから里沙は愛に思いを語った。
自分のことを光の届かぬ地下でしか生きていけないモグラに準える里沙。
「いつか暗い土の中から這い出る事が出来るのかなぁ・・」
愛の答えは優しいものだった。「今はいいんじゃないかな 地上でも地下でもさ」
里沙の全てを受け容れて、その裏切りを許すかのように。 「愛」は思いを伝え、人を変える。
そこに「愛」があれば、乗り越えられない壁など存在しない。

異能力の人にとって言葉とは世界を作り出す道具であり、世界を構成する成分そのものだ。
異様なまでに緻密な「能力」の考察。 詩情感溢れる情景。 「血」への拘泥、そして濃密な「死」の気配。
人の心の襞まで表現するかのような細やかな心情描写。
積み重なった言葉は他の誰にも侵し得ない世界を形作り、「闇」のように深く根差す。

「愛あらばIT'S ALL RIGHT」のトリビュート作品においては、(道重さゆみ=予知能力者、リンリン=鳥化能力者という)かなしみ戦隊独自の設定を忠実に踏襲しながらも、異能力の世界特有の不穏な要素をも描いている。
結果としてかなしみの人の予告編から生まれた本編であると同時に、異能力シリーズの番外編という二つの顔を併せ持つ作品が生まれた。
現在もリゾスレで作品を発表する作者群の中で、最も遠く離れている作家の背中合わせのコラボ作品を堪能できただけでも、今回のトリビュートアルバム企画は大成功だと言えるだろう。







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