『林檎の頬の少女』


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岨道流。

聞いたこともない、無名の武術。
聖は、そう侮っていた。
けれども今置かれている状況は、彼女の認識の甘さがもたらした以外の何物でもない。

「『りゅういし』に、ばかにし過ぎだと思います」

まるで林檎のように頬を紅潮させ、少女は言う。
彼女の言う「りゅういし」が、「流石」の誤読だと聖が知るのは、ずっと先のこと。

少女の小さな手から、荒縄が天井へと伸びていた。
梁を支えにして、垂直に垂れ下がる縄。聖の白い足を絡め、そして彼女のふくよかな肉体に巻き付いている。
つまるところの、逆さ吊り。

荒縄の存在にはまったく気付かなかった。
なぜなら聖には、彼女が何も持っていないようにしか見えなかったからだ。
どうぞかかってきてください。その言葉に甘えて、抱きつき、少女の甘い香りを堪能…ではなく、身動きを封
じるつもりでいた。一度聖の得意とする「フクムラロック」に捉えられたら、逃げることは至難の業。だった
はずなのに。

少女はいとも容易く聖の懐をすり抜け、引き倒し、そして次の瞬間には哀れ宙づりにされていた。
自分より大きい体の聖を投げ倒す柔術に加え、あっという間に拘束した捕縛術。見た目はリゾナンターの最年
少である遥や優樹よりもはるかに幼く見えるのに。なかなかやりおる、そんな感想さえ浮かんでくる。

「岨道流は。型無の武術、だそうです」
「かた…なし?」
「はい。有に見えて、無。無と見えて、有。無と有は巡り、螺旋を描き、やがて理に通ずる…んだそうです」

いかにも受け売りといった感のある口上。
言葉の意味はわからないけれど、とにかく。


「強い、んだね。朱音ちゃんは」
「はい。だってそれが、『姫』の嗜みですから」

そう言って館を立ち去る、朱音と呼ばれた少女。
それはつまり、「自分を仲間にするのは諦めろ」ということなのか。

冗談じゃない。遥々長野まで来たのは、ミノムシの真似をするためじゃないんだから!

ぶらんぶらんと体を揺らしながら、聖は。
好みの少女、いや新戦力となるであろう少女の攻略を既に考え始めていた。



参考






投稿日:2015/02/26(木) 22:15:08.66 0





















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