『resonant colors』


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白、白、白、どこまでも、白。
白。白。白。上も下も右も左も、白。
白!白!白!視界を埋め尽くす、白!

「それで、」
句点、読点、感嘆符。最後に残ってしまった疑問符を、少女は彼女に投げかけた。
「こんな所で、私に、何のご用でしょうか?」
唯一色彩を放つ、二人の人間。
少女は白い服に白い靴。肌だけが、真っ白な空間に色彩を与えている。
そして、彼女の纏った色は…
「悪いね」
色彩の片割れである彼女は、少女に軽く手をあげて笑いかけてみせた。
「まあ、座ってよ」
彼女は何もない空間を指さす。どこからともなく、白い椅子が二脚現れた。
少女は動かない。ただ、その目は、鋭く彼女を見据えている。
彼女は今度は少し苦く笑って、目の前で手をスライドさせた。透明な膜が、少女と彼女、椅子と椅子の間を二つに分けた。
「どうかな」
クイズの答えを待っているような、期待を込めた目で少女を見つめる。
彼女から視線を外した少女の目は、対照。
真っ白な椅子に座り、諦めた目で彼女と目を合わせ直した。
その様子を見た彼女は、満足げな顔でもうひとつの椅子に腰かける。
「理解が早そうだから、結論から言っちゃうけど」
突然喋り出す彼女の口調はどこまでも軽く、弾んでいる。
「あたしたちの仲間になってほしい」
沈黙。
「面白い冗談ですね」
「ウケた?」
「全然笑えません」
「はははっ、あんた面白いねー。そだよねぇ、無理ないよねぇ…」
彼女は腕を組み、興味深げに少女の姿を眺めた。


「じゃ、最初から説明しようかな」
彼女は足を組む。長い話になりそうだ。少女は小さくため息をつきながら、姿勢を正した。
「まず、ここ、どこだかわかる?」
彼女は純白の空間を見回してみせる。少女もそれに倣って辺りに目を向けた。
やっぱり白。少しの混じりけもない白。それだけが、どこまでも続いている。
気がついたらここにいた。こんな空間は、見たことも聞いたこともない。
「いえ、さっぱりわかりません」
「はは、だよねぇ。ここはね、あたしの心の中。かな」
心の中。口の中で繰り返してみる。それで理解したことにしておいた。
「なるほど」
「理解が早くて助かるね。あたしはこうやって、心の中に空間を作ったり、そこに誰かを呼び込んだりすることができるの。それが、あたしの能力」
のう、りょく。もう一度繰り返す。今度はさすがに、ちょっと無理があった。
「ま、正確に言えば、人の心をあたしの心の中に連れてくる、ってとこかな」
人の心を…いや、もうよそう。
「他にも色々できるけどね。んで、能力を持ってるのはあたしだけじゃない。いろんなすごい能力を持った人たちが、世の中には意外といるもんなんだよね、これが」
非現実的な言葉にただ頷くことで、自分を理解した気にさせる。
「で、そういう能力を持った女の子たち…もうあたしは女の子じゃないけどね。が、集まる所があるの。そこが、」

リゾナント。

その言葉だけが、頭の中にひどく響いた。


ーresonantー

その単語の、意味はー

「…やっぱりね」
幾分か落ち着いた彼女の声で、反響から我に返った。
「よし、これにて説明かんりょー。お疲れさんでした」
彼女は椅子から立ち上がり、くるりと少女に背を向けた。
「きっとまた、いつか会うからね」
その言葉を引き金に、突然白い空間に亀裂が走った。
少女が動揺する間もなく、白は縦に、横に、収縮する。膨張する。揺れる!震える!完全な白が、崩れる。崩れる!
響きわたる衝撃の中で、最後に、また少女は、彼女に、
蒼いワンピース、蒼いパンプスの彼女に、疑問符をー

あなたは?

彼女はにっと微笑み、


そこは、ベッドの上。
薄暗い天井に、カーテンの隙間から漏れた白い光が、一筋だけ光る。

夢じゃない。
少女は確信していた。いや、わかっていた、という方が正しいかもしれない。

きっとまた、いつか会うからね。

カーテンを開く。冬の日射しが、眩しくも暖かい。
今日は、いい天気。
少女はいつまでも、晴れわたる青い空を見上げていた。





投稿日:2015/01/26(月) 22:30:23.56 0