■ ラーフィングフォックス -田中れいな- ■


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■ ラーフィングフォックス -田中れいな- ■

その少女たちは、”突然”そこに現れた。

「ほーんとに突破してきたー。」

覆面の、二人の少女。
一人は肩までのセミロング、大柄で、ふくよかな上半身、白く長い手足。

「『でれ』さんの読み通りかー、ははあーすごいすごい。」

指先だけを合わせる、やる気のない拍手。

「でも残念でしたー、せっかく頑張ったのに、無駄でしたねー。」

縁日などでは、今でも売っているのだろうか?
古典的な、白い『きつね』のお面。

『きつね』の、少女。

「くっ!はなせ!こん糸ほどけ!」
テグスにからめとられ、うつぶせで地面に転がり、もがきつづける田中。

「あははーほどけと言われて『ほどくわけない』でしょ、ねぇ?」
身動きの取れない田中のそばにしゃがむ『きつね』の少女。

「くっ…アンタら何ん?!ガキさんに何しようと?!」
「はぁ?ガキさんって誰ですかぁ?知らないなぁー『ごりら』、知ってる?」


『ごりら』のゴムマスク。
ノリノリでゴリラになりきっている、後ろの少女に話しかける。

「ウホウホ!ウホッ!」

「ほーらみんな知らないって言ってますよー」
「ふざっくんな!」
田中は思い切り上体を反らし、見下ろす少女を睨み付ける。

しゃがんだ膝に肘を乗せ、頬杖をつき、見下ろす『きつね』。
「まー落ち着いてー」

その目にあいた、黒い穴。
瞳の光は、うかがい知れない。
だが、わかる。

―――なめられている。

こんガキ!れいなをなめくさっとる!

「鬼ごっこも疲れたんじゃないですかぁ?ちょっと休んでてくださいよ。ほら、」
ふと、『きつね』が背後の闇へ目を向け、立ち上がる。

「やーっと、鬼がきた。」
走ってくる足音。
鬼、いや『馬』の少女が追いついてくる。

「はぁはぁはぁ…はぁっ!まってって!はぁはぁ…ゆったのにっ」
日が暮れ、下がってきた気温に馬の口から湯気が、もわもわと漏れ出している。
激しい息遣い、すでにへとへとになっているようだ。


「あっはは、なにやってんの『ひくし』」
「なっ!あか…俺のことは『うま』ってきめたろ!『きつね』!」
「あれ?ご自慢の体力は?フラフラだけど?」
「しょ…しょうがないだろっ!」
「だっさー、それしか取り得ないのに。」
「るさいっ!あかっ…俺はっ、こうゆう【能力】だからっ!知ってんじゃん!」
「おっと『でれ』さんからだ…」

そう、知っている。
当然ながら、知っている。
知っていて、からかっている。
これは悪い。
この『きつね』、相当に、たちが悪い。

『きつね』は、尚も文句を言い募る『うま』を無視、
ポケットから携帯を取り出す。

「鹿十かよっ!」
完全に無視。
「ちぇもういいよっ!」
そのまま、携帯を耳に当てる。

沈黙。

「了解」
携帯をしまう。

「あっち、おわったってさ。」

「え?終わった?」
「うん、おわった。」


「…はぁー…」

へたり込む『うま』。

「良かったー」
「ウホウホーッウホッ」

安堵する『うま』を『ごりら』がよしよしする。

おわった、とは新垣のことだろうか?

緊張の糸が切れ、すっかりたるみきった二人をしり目に、
”最初からたるみきった”『きつね』が、
ふたたび田中のそばにしゃがみこむ。

「ききましたぁ?うちらの用事は済んだんで、もう帰りまーす。
田中さんも、帰ったほうがいいですよ。」
笑っている。
仮面越しにでも、わかる。
嘲笑している。
身動きできぬ田中を、あざけっている。

「このっ!済んだってなん?ガキさんになんしよったと!」
「だからしらないって」
瞬間湯沸かし器、田中の顔が怒りで紅潮する。

「打っ倒す!!とにかく!打っ倒す!」
「んへ?ウッタオ?何語それ?だっさ」

『きつね』が立ち上がる。


「まてっ!こん卑怯もんが!」
「うるさいなぁ…」

ひとつ大きく伸びをする。

「さっきからキャンキャンキャンキャン…『弱い』くせに。」
「なん?!」

見下ろす。

「ほんとは『弱い』んでしょ?田中さんって。」

『きつね』が田中を見下ろす。

「常人離れしたパワーとスピード、ねぇ…」
「…お前…」

知っている。

「そのテグス、切れないでしょ?」

この少女は理解している。

「田中さんのことは調べたうえで、この太さ、この本数、用意してるんで。
まー、あたしが調べたわけじゃないけど。」

高橋と出会う前、【共鳴増幅】に目覚める前の…


「パワー?スピード?出せなきゃ無いのと同じ、『弱い』のと同じ。で、あとの頼みは、」

…嫌い…

「【共鳴増幅】でしたっけ?この状況じゃ結局それ何の意味もないじゃん。」

…なにが【共鳴】だ…なにが…そんなもの…

『きつね』の面。
その目にあいた、黒い穴。

…まあ、いいや…

穴の向こう、『きつね』は田中を見下ろした。

「しばらくすれば、糸はほどけるんで、そのあとはご自由にお帰りく…」

いや、見下ろせない。

―――真に強烈な打撃は、人が吹き飛ぶことを許さない。―――

田中が、見えない。

―――足は地面に根が生えたかのごとく、その場にとどまり―――

穴の向こう、すべてが真っ暗に。

―――脱力した全身は弓なりに”垂れ下り”―――


いや、見えないのは、田中ではない。

―――重い頭は、突き刺さるがごとく―――

”田中しか”見えていない。

―――真っ直ぐに落下し―――

真っ暗になるほど、目の前に、

―――地面へと―――

『きつね』の顔面に、両足を揃えた”田中の足裏”が

   激突する。
―――激突する―――

「『打っ倒す!』そう言ったっちゃろ!」

田中は”空中で”そう、言い放つ。

テグスにからめとられ、相変わらず身動きできぬまま、

”空中で”

そう、言い放った。



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投稿日:2015/01/24(土) 06:18:44.89 0