『snow』


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白に浮かんだ紅に、眩暈がする。
粘っこい匂いに鼻を曲げながら、胃からせり上がる液体を堪えた。

「ああ―――」

数えきれないほどの「死」が目の前に広がる。
それは、目を逸らせない現実で、受け入れるべき真実で、自分でやったという事実。

これまで何人を斬り、雨を降らせただろう。血という名の、紅い雨を。
それが宿命だと分かっていた。
自らの信念を貫き、先代からの想いを紡いでいくには、それ以外の術はなかった。
人に何を言われても、それが非人道的だとしても、正義ではなかったとしても、それでもただ、前に進む以外に道はなかった。
たとえ、最後に立っているのが、私一人だとしても―――


コートの襟を立て、ため息を吐く。それは白く染まって空へと消えた。
季節はすっかり冬だ。寒さを増していく時間に、ひどく痛みを覚える。

刀身を収め、一歩踏み出す。
死体を踏みしめつつ、帰ろうとする。
帰る?ああ、そうだ。帰るんだ。自分の居場所に。


―――「破壊と絶望を振り翳し、世界を統一するための、狂気を」


脚が、動かなくなる。
受け入れて、くれるのか?
何度も何度も何度も何度も人を斬り続ける私を。
誰よりも多くの生命を奪い、いつ暴れ出すかもしれない狂気を抱えている私を。


―――大丈夫だよ


ふと、髪に何かが落ちてきた。
顔を上げると、それは舞い降りてきた。

「雪―――」

寒空を染める、白い雪。
それはまるで、天使の羽のようで、私はそっと右手を伸ばした。
次々と降り注ぐ雪は、私の髪に、肩に、そして手へと触れた。

冷たい初雪は、私が斬り捨てたたくさんの死体へも平等に舞い落ちた。
まるで罪を覆い隠すような天からの贈り物は、私の行為を嘲笑っているようにも感じられる。

手に触れた途端に、雪は水へと形を変えた。
それが、私の中に温もりが残っている事を教えてくれる。
ぎゅうっと両手を握りしめ、天を仰ぐ。

淡雪と彼女から託された想いを重ねながら、どうか見捨てないでと私は息を吐く。
それに縋ってみたところで、白の吐息は何も語らず、ただただ夜の闇へと溶けていった。





投稿日:2015/01/18(日) 02:46:34.36 0