(101)766 純々募集中。。。(熊猫vs人狼)


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「お前、獣化能力持ってるダナ」
突然現れた大柄な女の言葉に、買い物帰りの遥は戸惑った。
「何だよいきなり…っつーか、あんた何者?」
遥は仁王立ちで女を睨み付ける。が、レジ袋を両手に抱えたその姿からは、気迫はまるで感じられない。
「能力使え、あたしと戦ってみるダ」
女は遥の問いに答えない。
なんだよこいつ。意味わかんねーしなんか言葉おかしいし…外国人?
「っつーか、なんでハルのこと知ってんだよ」
女はそれに答える代わりに言った。
「くど遥。獣化能力。千里眼の力も持てル」
片言ではあったが、それは確かに遥の情報だった。
遥は困惑しながら考えを巡らせる。
まさか、かつて遥が所属していた組織の…いや、あの組織はこんな回りくどいことはしないだろう。
では、何か別の組織の刺客だろうか?

まだ獣化能力には自信がなかった。完全体にはなれるものの、それまでの体力の消耗がひどく、戦闘は到底できそうにない。
おまけに、今は遥一人。逃げるのもそう簡単ではないだろう。
どうしたものか。遥は仁王立ちのまま立ち尽くした。
そんな遥の思惑など気にもかけず、女はニヤリと笑う。
「ドウシタ、できないカ?大したことないダナ、『ハルちゃん』モ」
かあっと頭に血がのぼるのを感じた。

遥はレジ袋を投げ捨てる。足を大きく開き、吼えるように叫ぶ。その声が、徐々に獣の咆哮に変わっていく。
冷たい液体が、遥の体を覆う。瞬く間に、純白の体毛に変わる。
10秒とかからず、遥は白い狼の姿にーーー正確には、狼の皮を纏った姿に、変貌を遂げていた。





投稿日:2015/01/11(日) 18:17:24.49 0


(くっそー、やっぱキツいな)
狼の中で、遥は息を切らす。
しかし、ここまで来たら後には退けない。遥は己を奮い立たせる唸り声をあげ、女に思いきり体当たりをかました。

「ホー、なかなかのもんネー」

毛皮越しに伝わってきたのは、相手を弾き飛ばした感覚でもなく、弾き飛ばされた感覚でもない。
込めた力を全部吸い込まれたような、奇妙な感覚。
え、ちょ、今どうなってんの?
混乱する遥の視界が、突然1mほど上に上がる。
「ソーラ、たかいたかーいネー」
いや、浮かんだ高さは1mで済まないかもしれない。恐怖を覚えるくらいの浮遊感。地面に足がつかない。
「うわわわわっ!は、はは離せ離せ、降ろせーっ!わああぁっ!」
足をばたつかせることすらままならない。狼の姿のままぴーぴー喚く遥を、女はようやく地に降ろす。
地面に足が付くなり、狼はへなへなと崩れ落ちた。もう起き上がる体力も気力も残っていない。
「ちょっとダイジョブー?アララ、もうギブアップなのネ」
最初と一切テンポの変わらない、気だるそうな声。
遥は力を振り絞って声の方に首を向ける。寝転げた視界の端に映るのはーーー

パンダ?
あまりにも非現実的な情景に、遥は己の、いや、狼の目を疑う。
確かパンダってのはワシンなんちゃら条約ってのでホイホイ飼えなくて、第一ここは町なんだからパンダなんているわけがなくて、でも実際今パンダがここにいるぜぇ!で、そもそもパンダって喋らないわけで…あー、ハル頭おかしくなってる?
酸素不足も伴って脳がショートしそうな遥の視界に、なおもパンダが侵入してくる。
「何?ひょっとしてビクリしてるダ?自分は狼だってのにおかしな話ダ」
遥の前髪から幾つもの滴が落ちる。どうやら獣化の効き目が切れたようだ。横たわった遥の周りに水溜まりができていく。
「よっこ伊勢」
妙なイントネーションの掛け声と共に、再びパンダは遥を抱き上げた。
あー…パンダ…ふわふわしてる…なんかもう…ハル疲れたなー…
柔らかな感触の中で、遥は心地よい眠りに落ちた。


「まーた後先考えずそーゆーことをするぅ!」
聞き覚えのある声で目が覚めた。
「だってぇ、獣化能力アル子が入ったて聞いて、ジュンジュンずっと会ってみたくっテ」
続いて猫撫で声。ん?なんかこのしゃべり方どっかで…
「だぁからって初対面で戦いを挑む阿呆がどこにいるぅ!!」
昭和のオヤジ的なニュアンスを含んだ怒鳴り声が頭をガンガン刺激する。
「うるさっ…」
思わず声が漏れる。
「お、どぅー起きた」
頭の後ろから声がした。寝返りをうつと、優樹の顔があった。
「おはよう、くどぅー」
ついでに壁掛け時計に目をやる。時間は4時を少し過ぎた頃。明け方ではないだろう。
「おはようっつっても…ってかさ、ハル今」
「どっか痛い?」
「いや…まあ…頭痛いけど… 」
マイペースな優樹におされているうちに、ぼんやりと先程までの記憶が浮かんでくる。
「あれだっけ、ハル負けて…」
「そうそう。パンダさんに抱え込まれて来たんだよ」
「は?」
まーちゃん何言ってんだ、と思ったのもコンマ2秒。遥は自分の身に起きた非現実的な出来事を一瞬で思い出す。
「パ・ン・ダ。すっごいおっきかったよ」
「……マジかよ…」
あれは限界を迎えた自分の幻覚ではなかったのか。
「ジ、ジュ、ジュンジュンさん?って人がね、じゅんか能力の人なんだって」
「じゅん?あ、あぁ獣化能力ね。ジュンジュンに流されちゃってたから今」
言いながら遥は冷静になっていく。そうだ。獣化能力でパンダになるってのもありえる。
現にハルがそうじゃんか。いや、ハルはパンダじゃないけどさ。ワシントンだのと考えていた自分が恥ずかしい。


「こーらジュンジュン!まだ説教終わってないぞ!」
再びオヤジの怒鳴り声が飛ぶ。
「やーん、もうお代官サマーおやめくださーイ!」
「はっはっはよいではないかってアホか!」
うん、なんだこれ。
「まーちゃん、今下で叱られてるのがパンダの…」
「うん、新垣さん2時間くらいずっと怒ってるよ、アハハ」
ハルに言わせれば説教っていうよりコントだけど。
「まーったく…おーいさとー!くどーの様子どぉー?」
「あーにーがきさーん!工藤ー起床しましたー!スタンバーイオッケーでーす!!」
不必要に大きな声で優樹が叫ぶ。あーまた頭ガンガンする。っていうかスタンバイオッケーじゃないしそもそもスタンバイって何だ。
呆れているうちに、遥は優樹に引っ張られて階下に降りる。
遥が想像していた通り、里沙とあの大柄の女ーーージュンジュンが向かい合って座っていた。
おまけに1対1で正座アンド正座。里沙にいたっては胸の前で腕を組んでいる。
某ご長寿日曜アニメかよ。『バッカーモン』と喝が飛びそうな情景に、遥は思わず苦笑いをこぼした。
「ヨッ!ご両人!」
「イエース!」
ジュンジュンと優樹は、目が合うなり敬礼を交わしてみせる。とりあえずまーちゃんと同じテンションで話せるってことはぶっ飛んだ人だな、と遥は解釈した。
「佐藤と遊ばない!ほらジュンジュン、工藤に謝んなさい」
「フーイ」
生返事をして立ち上がったジュンジュンは遥に歩み寄る。
「ハルカ…」
ジュンジュンが低い声で言う。そして頭を下げられる…のかと思ったら、突然ぐっと親指を突き立てられた。
「ナイスファイト!」
その瞳には一片の曇りもない。
パーンと破裂するような音がした。
「ガッキッさーん!痛いネー何するダー」
「あんたの頭ん中の謝るはナイスファイトか!今すぐ辞書改訂しろ!」
「あっははージョーダンジョーダン、マイケルジョーダンネー」
しょうもないジョークに思わず里沙がずっこける。…厨房の笑い転げる声は聞こえなかったことにしよう。


「アっホっかアンタはー!」
「えーちょとガキさん何怒ってるダー」
「2時間説教しててわからんのかー!このバッカモーン!」
うわ、ホントに出たよバッカモーン。
「あっはっは、ガキさん頑固オヤジみたいダー」
「っだー!あーイライラする!工藤!あんたもあんただよ!」
やりきれない怒りの矛先が遥に向かう。
「ハ、ハルですかぁ!?」
「獣化なんてやっと完全体になれるくらいでしょー!?ジュンジュンとなんて戦えるわけないでしょー!?」
「だーってハルこの人がジュンジュンさんって知らないですしやるしかなかったんですよー!」
「第一レジ袋もほっぽってー!卵ほとんど割れちゃったんだからねー!!」
「そ、それはすいませんでしたけど!ハルがんばったんですよ!」
「そうヨガキさん、ハルちゃん頑張ったヨ、叱らない叱らナイ」
「偉そうにたしなめるなー!」
「ハルちゃんって言うなー!」
「あのー…ケーキできましたよー」
おずおずと厨房から聖が出てくる。え、ケーキ?
「おーすごいネ!ミズキたちミンナ料理上手!」

ーーーどうやら、今日はジュンジュンさんの誕生日で、ジュンジュンさんははるばる中国からやって来たらしい。
展開が急すぎるとか、もう今日は12日だろとか、そういう所にはどうか目をつむっていただきたい。

色々と言いたいことはあるが、とりあえずハルだってケーキは食べたい。休戦協定を結ぶとするか…。
ん?なんかいつだったかこんなことあった気が…そういや正座もなんか…いや、気のせいかな?うん、デジャブってやつだろう。
「ナア、ハルカ」
「ふぁい?」
ケーキを頬張りながら振り向く。
「ハルカの獣化能力、正直なとこちょいビビッタヨー。きっと、これからもっと強くなってくダ」
「ほんとですか?」
「うん。だから、イッパイ特訓して強くなるダヨ、ハルちゃん」
「だからハルちゃんって言うなー!」





投稿日:2015/01/12(月) 11:19:03.03 0