「Vanish!(6)『安らぎを奪いし刻』」


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こころとはその人の精神的強さや記憶、体調といった様々な要素によって構成された空間である。
それゆえに人によりこころのカタチは異なり、思い出なり感情によって特徴的な形態を取る。
小さい頃に大好きだった熊のぬいぐるみがあったり、高橋のこころに平和な「リゾナント」があったように

新垣の目の前に広がっていた世界は現実世界に非常に似ているものであった
ごくありふれた街の光景、信号機があり、車が行きかい、大勢の人が歩いている
そして、空の色も建物のカタチも現実の世界と比べても変なところはなにもなかった

しかし明らかな異常は簡単に見つかった
行きかう人々は会話をしているがそれが何語なのか判別できないことがまず一つ。日本語なのかすらわからない

そして、これが異様な光景と感じる原因なのであろうが、行きかう人々は2種類のタイプに分けられていた
一つは顔に眼、鼻、口がまったくないのっぺらぼう
もうひとつは顔だけでなく、胴体や服の上にまで目がついていて百目のようなだった
この2つのタイプの人間しかその世界には見てとれない
「なに、この世界・・・」
数多くの世界を視てきた新垣もさすがに驚愕の色を隠せない

とにかくこの世界のどこかに女の目的や素性のヒントとなるものがあるはずと新垣は動き出した
「大抵はこの世界の中でも中心になる部分にあるはずなんだけど・・・」
新垣が移動しながらも、どうしてもたくさんの眼から見られているようで気が落ち着かない
変に意識しようとしているわけではない、それでもただ前を向くだけでどれかの眼と視線が合ってしまう
「…気まずいなあ、なんだか」

しばらく走っていると1つの家の前で新垣は立ち止った。そこも特別変わったところの無い民家
しかし、新垣にはなんとなく『その家』に何かが隠されていると感じられた
それは長年サイコダイバーとして培ってきた経験に裏打ちされた勘であった
「お邪魔します」
もちろん誰も住んではいないのだが、新垣は昭和の女として、その言葉を言わずには侵入できなかった。

入った先は見た目以上に広い純和風な住宅で、奇妙な雰囲気が漂っていた
奥に進めば進むほどその異様な感じは増していき、一歩足を進めるたびに具合が悪くなる
足元には冷たい感覚が走り、だんだんと体が重くなっている、これは確信に近づいている証拠だと新垣は感じた

ある部屋のドアを開けると、そこは女の子の一人部屋でベッドの上で体育座りをして泣いている子の姿があった
しくしくと泣いている声が奇妙に反響し、耳鳴りが聞こえてしまう
新垣はその部屋に入り、女の子に声をかけた
「どうしたの?大丈夫?」

しかしその少女からの返信はなく、頭をうずめたまま泣き続けている。
新垣が困り、部屋の中を見渡していると少女のものと思われる机のうえにアルバムが置いてあった
この場所に居続けるわけにはいかないと思い、新垣は机の上に置いてあったアルバムに手を伸ばした。
アルバムの表紙に書いてあった文字を読みあげる新垣「『たいせつな人』」

その言葉に反応したのか泣いていた少女の声がピタッとやんだ
新垣はアルバムを手に持ったまま少女の方を振り返った
少女はまだ顔をうずめているが、新垣が向いたのを何となく感じたのであろう、ゆっくりと顔を上げた
「あなた、誰?」
新垣が少女に優しく声をかけた
「・・・みやび」
少女はゆっくりだがはっきりした声で答えた

確かにその少女の顔つきは幼いが、どことなく外で拘束したあの正体不明のこころの持ち主と似ている
はっきりとした目鼻立ちが目立ち、泣いていたからであろう少し目が赤い
「・・・お姉ちゃん、誰?」
「私はね、新垣っていうの。ガキさんって呼んでいいよ」
少ししゃがみこんで少女と目線の高さを新垣は揃えた

「お姉ちゃんにあなたのことを教えて貰ってもいいかな?」
敵意がないことを示すように笑いかけながら少女に問いかける
しかし、少女は新垣の声を聞かず手に持っていたアルバムに目を向けている

その視線に気がついた新垣は少女にアルバムを渡しながらいった
「あ、これはね、お姉ちゃんがみやびちゃんが泣きやむためにどうしたらいいのかなって思って手に取っちゃったんだ
 ごめんね、すぐに返すから、お話してくれる?」
少女の手は氷のように冷たく、驚いていたが・・・少女の声はもっと冷たかった

「私に近づかないで」
幼い外見には似つかわしくないくらいに低いトーンの声ではっきりと言った
「お姉ちゃんもあの人たちと同じなんでしょ!私はそんなにいい子じゃないんだから近づかないで!
 みんな来ないで!構わないで!!ほっといてよ!!!」
明らかに動揺し始めた少女は近くにあった枕を投げてきた

そんな少女を安心させるように新垣は少女を温かく包み込むように、母親のように抱きしめた
「大丈夫、お姉ちゃんはみやびちゃんの味方よ。誰もあなたを傷つけないから、落ち着いて」
新垣が目の前の少女を落ちつけさせようとしていると先ほど持ってきたアルバムが偶然開いた
そこには目の前の少女が少し成長した未来なのだろう、少し大人の女の子が写っていた
それも同じ人とばかりいっしょにいる写真ばかりが並んでおり、その人物を新垣は知っていた
もちろん、その人物も現在の姿と比べると多少若いがそれでも間違えるはずがない
「なんで、この子の『たいせつなひと』に載っているの?」

『それは私が私の心の支えだからよ』
見知った声が少女を抱きしめている新垣の背中にかけられた
『あなたが私の心の中に入ったんだから、ここにくるのは分かっていたわ。その写真は目的に繋がる』
見知った声が淡々と事実を話す
『その写真の人は私を救ってくれた大切な人なの。それをあなた達を奪っていった…
あの人と出会う前の私の姿、それがあなたの胸の中にいる女の子よ』
しかし、その声の人物がここにいるはずがない、そんなことを思いつつ新垣はゆっくりと振り返った

やはりかけられた声と目の前にいるのは…信じたくないが予想通りの人物だった
「田中っち・・・だよね?」

みやびの心に「田中れいな」がいること・・・そんなことを新垣は予想だにしなかった
この女、みやびは「田中れいな」の記憶を消してまわっていた
それならば普通は「田中れいな」を徹底的に嫌っているか、あるいはもっと大きな目的があるはず、と考える
しかし、この場に「田中れいな」のかたちをしたモノがいる…

「お前は『田中れいな』なのか?あ、ごめんね、ごめんね」
急に声を上げたので新垣が抱きしめている女の子がより強く抱いてきた
『私をおびえさせないでくれるかしら?さっきもいったけど、私は私のこころの支えよ
 なんていうのか専門用語は分かんないけど、こころの『しゅごきゃら』ってところかしら?』
おびえている少女を指さしながら、『田中れいな』の外見をもつ「ガーディアン」は答えた

(これがみやびの思う「田中れいな」の姿なのかしら?)

 ・・・それにしても新垣には気になっていることが先ほどあった
その姿はおそらく新垣がれいなと出会う前と推測され、14,5歳と考えられる。今よりもとげとげしい印象を受けた
しかし、新垣は言っていいのか迷ったが、さんざん迷った挙句、勇気をふりしぼり口に出した

「みやび、それがあなたの思っている田中っちの姿なのね?」
『・・・ええ、そうよ。私の知っている田中さん自身、そのものの姿よ』
「あ、そう・・・理想化にもほどがあるわね」
新垣は目の前にいる『田中れいな』の異常に膨らんだ胸のふくらみを見ながらぽつりと言った

しかし、そんなことを呑気に言ってはいられない事態だと新垣は考えていた
この心を守る「ガーディアン」が田中れいなのカタチを取っていることは衝撃的で、いつ襲ってくるか分からない
そして、なによりもこのみやびという女の目的、素性が何となくつかめた
新垣は急いで、この心から脱出しようと心を決めた

しかし・・・先ほどから新垣を抱きしめ続けている少女がいるため、簡単には脱出できない
新垣は小さく唇を噛んで、ニヤニヤ笑っている『田中れいな』の姿をしたガーディアンと対峙せざるを得なくなった
正直、敵の心を守るガーディアンといえども知り合いの姿をしていては非常に戦いにくい

『どうしたんですか?ガキさん?』
動けないことをわかっていながら『れいな』は話しかける
そのにやにや笑いが一層新垣をいらいらさせる。
(この少女が一瞬でも離れれば・・・)
そんなことを考えていた時、少女の新垣を抱きしめる力が弱くなり、ゆっくりと顔を上げた

(よかった、これで無事に脱出できる。そして急いで愛ちゃんと田中っちに連絡して・・・!!)

顔を上げた少女の顔をみた新垣は驚愕の色を浮かべずにいられなかった
新垣を見ているその顔は先ほどの少女の顔から、外に倒れているはずの女の大人の顔に変っていた
そして、少女の姿をしたその女は邪悪な笑みを浮かべながら、新垣の手首を強く握りしめた

れいなの姿をしたガーディアンの声が新垣に向けて発せられる
『現実世界の私はあなたによって床に倒せさせられている。無様にもね
 そして、あなたはチェーンで私の体の自由を奪っている…アルミニウム製のチェーンで』

掴まれた手を新垣は外そうと必死になって暴れた

『知ってますよね?アルミニウムってね、電気を通すんです。それも簡単に・・・
 だから、もし、ここに電気を流せたら、どうなっちゃうんだろうね~』

「!」

『じゃあ、ガキさん、私の記憶と今見たモノ全ての記憶を忘れるんだ。
 ちょっと痛かったけど、その痛みは我慢してあげるわ…全て、計画通りですよ』

新垣は体全身に衝撃が走ったのを感じ、その場で気を失った。

雅はゆっくりと自分を拘束した鎖をほどき、気絶した新垣に一度触れ、スタンガンを残して去って行った





(6日目) 
FROM みや
TO   れーな
  今日の夕方、駅前の●●というお店で待ってますね!!田中さんのお仕事の話楽しみにしてますよ!!
  今日は日曜ですけど、補修なんです…勉強嫌いですぅ


●月■日(日) PM 2:00

「おかしいの~ガキさんに連絡がつかない・・・」
高橋は自身の携帯電話で昨夜送ったままで返信の帰ってこない新垣への送信メールの履歴を見ていた
あんなに時間に関しては厳しい新垣がメールを返信してこないことはあまりなく奇妙に思えていた
そんな高橋を田中は朝から続いている笑顔で観察していた
「愛ちゃん、お客様おるんやから携帯しまっといたほうがいいと」
「あ、ごめん。れいな」

「でもガキさん、確かにおかしいっちゃね。
れーなも昨日、今日の夜にガキさんからサユにメールしたけど、どっちからも返信が来ないと」
「うん…もしかして、ガキさんになにかあったんじゃ?」
「それやったら愛ちゃん、『共鳴』して声が聞こえるっちゃろ?やけん、電池切れくらいだと思うとよ」
「それだったらいいんだけどね…いらっしゃいませ~」
「ほら、サユ来たと」

いつも通りの笑顔で道重は亀井とともに来たようだった
「愛ちゃん~いつものココアちょうだい~」
へにゃへにゃとした笑顔で亀井がカウンター前の亀井の『指定席』に座る
「さゆみは気まぐれプリンが食べたいの」
道重はカバンから鏡を取り出し、風で乱れた髪の毛を整え始めた
「どうなの?今日は外の風は温かい?それとも冷たい?」
「う~ん、まだ少し寒いですよ。春はもう少し先って感じなの」

だらしなくカウンターにもたれている亀井の前にカップが置かれ、亀井は一口含んだ
「いただきま~す…あつぃ!」「もう、絵里、しっかりしてよ」
そんな光景をみて高橋は今日も平和だなと幸せを噛みしめる

そんな二人の後ろではれいなが他のお客の食べ終えた食器の回収とお会計に回っていた
「はい、ランチAメロセットですね。」

「ところで愛ちゃん、質問なんですけど」
「あ、ちょっと待ってサユ。今、注文が入ったからちょっと待ってくれる?」
高橋がれいなの注文伝票を受け取り、調理に取りかかり、れいなも食器を洗うためにキッチンの奥へと入って行く
そんな二人を見ながら未だにフーフーとココアを冷まそうと苦戦している亀井と道重は何やら会話を始めた

「はい、れいな。それから、サユ来てくれたし、あのお客様の会計が終わったら、仕事終わっていいから」
「ありがとう!愛ちゃん。しっかり気分リフレッシュしてくると」
半ばスキップのような歩き方でレジへ行き会計を済ますと、そのまま二階の『れいな城』へと向かった。
そんなれいなを道重と亀井が視線で追っていると、高橋が二人の前に戻ってきた
「どうかしたんや?サユ?なんか相談事か?何か不思議そうな眼で見てたけど」
「…あのですね、あの人、今、二階に昇って行った人」
そう言って道重はれいなを指差した
「れいながどうかしたんか?」
「れいな…あのですね、愛ちゃん、あの人、一体誰ですか?いつから働いているんですか?」
「はぁ?」
「それ、絵里もず~~~~~~と気になってました。
この前、ここに絵里たちが来たときいなかったのに今日来たらいるんだもん」

「え?ちょ、ちょっと待って、何言ってるの?」
「さゆみ、前から言ってたじゃないですか?もし、愛ちゃんが大変ならさゆみが愛ちゃんの手伝いをするって
 それなのに、さゆみじゃない子を雇ったちゃんとした理由を教えてくださいよ」
「絵里にもわかるようにお願いしますね」
そう言う二人の眼はからかっているようなふざけているようには見えなかった

「な、何言ってるの?サユ、エリ?れいなはずっと、ここで…あ、ジュンジュン」
「高橋サン、何か作ってくだサイ、リンリンは今日バイトナノでリンリンの分も食べマス」
「あ、うん、でもちょっとだけ待ってくれる?れいな~ちょっと降りてきて~」
高橋は二階でおそらく服を選んでいるれいなを呼んだ
「なに~愛ちゃん。今、準備中やけん、手が離せないとよ」
「いいから、早く下りてきなさい!!」

珍しく高橋が命令口調で言ったこともあり、れいなはすごすごと階段を下りてきた
「愛ちゃん、今、ちょうど今日の服選んだところだったんやけど、これどうかいな?似合う?」
れいなはこれから楽しみにしている一時を邪魔されそうな気がして、眉間にしわをよせている
「本当にサユとエリはれいなのことを覚えてないの?」
「は、愛ちゃん、何言うとるかいな?サユとエリがれーなのことを忘れたぁ?」

道重をじっとれいなは睨みつけ、道重はビクッと思わずビビった
「あ、あの初めまして。道重さゆみと申します。こっちは亀井絵里です。よろしくお願いします
 あ、あの田中さんはいつからこちらで働いておられるんですか?教えていただけますでしょうか?」
「・・・へ?昔からやけど」
「そんなのウソダ!!」
突然ジュンジュンが大声を上げた
「ジュンジュン??」
「ジュンジュン、一年以上前からココ来テル。デモ、ジュンジュン、オマエ知らない。嘘言ってるダ」

「う、嘘、ジュンジュンも?な、何が起こっているの?」
「愛ちゃん、これどういうことなんかれーなにも分かるように説明して」
ようやくれいながこの状況を理解し出したようで、同じく困惑の色を浮かべている高橋に尋ねた
「愛ちゃんは知ってるよね?れいながずっとここで働いていて、一緒にダークネスと戦ってきたことを
 なんでサユもエリもジュンもれいなのことを覚えていないの?ねえ、教えてよ」

高橋が口を開く前に入口のベルが新たな訪問者を訪れたことを告げた
「・・・ガキさん」

ゴホンと咳をして新垣は首に巻いたマフラーをはずした
「ガキさん、仕事はいいの?今日は日曜日だから忙しいはずでしょ?」
「いや~それが風邪引いちゃってね~まいったまいった、オホンオホン」
マスク姿の新垣が苦しそうにまた咳き込んだ
「愛ちゃん、はちみつ入りの紅茶お願い。喉に効果あるってみのさんいってた、確か」

そういいながらカウンター席に座ろうとする
だが、新垣は周囲の空気がいつもと違っていることにようやく気がついた
「ん?どうしたの、ほら、ジュンジュンもそんなところに立っていないで、ここ座り」
自分の隣の椅子を指さしながら、新垣はジュンジュン、道重、亀井、高橋そしてれいなの顔を順番に見た
「どうしたの?みんな?私の顔に何か付いてる?」

「あ、あのガキさん…この子知ってますか?」
そう言って道重はおそるおそるれいなを指差した
「この子、ずっとここで働いているって言ってきかないんですけど、そんなわけないですよね?
 だって、さゆみたちはずっとここで何回も集まっているじゃないですか!!
 『れいな』って名前なんだそうですけど、ガキさんは知ってますか?」

そんな道重の質問をその場にいた全員はそれぞれの思いで受け止めていた
ある者は同じように不思議に思い、またある者は期待を抱き
ある者は新垣の答えがすべてであるように受け止めていた

れいなをじっくりと上から下まで調べるような目つきで見た新垣はゆっくりと口を開いた
「あ~ごめん、私も知らないわ。いつから働いているの?
 っていうか愛ちゃん、アルバイトを雇ったなら一言私に相談しなさいよ!色々な手続きがあるんだからね」

「そんな・・・ガキさんも覚えておらんと・・・」

●月■日(日) PM 4:00

リゾナントに『本日 臨時休業。』の札が出され、お客はすべて帰った。

「本当にガキさん、れいなのことを覚えていないの?サユもエリもジュンジュンも、みんなどうしたの?」
「そうっちゃ、どうして知らんふりをするとよ?」
喫茶リゾナントにはいつもと違い、重苦しい空気が流れている
その中心にいるのは『忘れられた存在』となった「田中れいな」自身だった

「愛ちゃん、どういうことやと思う?愛ちゃんはれーなのこともちろん覚えておるんやろ?」
そう言って目にうっすら涙を浮かべながられいなは高橋の手をとった
「ちょ、れ、れいな?どうしたの?もちろん、私が忘れるわけないでしょうが!!
 ほら、あのエプロンだってれいなとこの前一緒に買いに出かけたでしょ?」
道重が今つけているエプロンを指さしながら高橋はれいなの目をしっかりと見つめ返した
「ほんとうによかったと…なんで、みんなが忘れているのかがわからんけど・・・」
そういってれいなは恨めしげな視線を目の前にいる仲間達へと向けた

「そんなこといったってねえ…覚えていないんだよねえ、申し訳ないんだけどさ」
「そうなの、エリならまだしもガキさんが忘れるっていうことが考えられないの」
「ちょっと~エリだって大事なことは忘れないんだから~」
「ジュンジュンだって忘れないゾ。でも、その女は知らナイ」

「…ちょっとサユ、携帯を見せてくれない?写真を見たいの」「携帯ですか?はい、どうぞ」
道重は携帯のロックを外し高橋に渡した
暫くの間再び、気まずい沈黙が続き高橋の携帯をいじる音だけが不気味に耳に入ってくる
「・・・あった。みんな、これを見て」
高橋は道重の携帯からある画像を捜しだし、全員に見えるようにカウンターテーブルの上に置いた

「これは…」「ほら、れいなおるやん」「みんな、若いの…」「愛ちゃん髪が短い」「リンリンが細い」
携帯画面には携帯の持ち主である道重以外のリゾナンター全員で取った集合写真が映し出されていた。

「この写真…覚えとるよね?ねえ、ガキさん」
その画像を信じられないとでもいった表情で見ていた新垣は顔も上げずに答えた
「うん、これは…私がダークネスと共に闘う意思をみんなで決意した日の写真だよね
 私がまだ、みんなを裏切っていた頃の写真で、これを…あの人のもとに届けたから忘れられないよ」
新垣と同様に携帯の持ち主である道重も信じられないと言った表情で携帯を手にとってじっくりと見返した
「・・・さゆみがこの写真撮ったんだもん。でも、ここにれいなちゃんが写っている…
 なんで写っているの?ここにいるってことはリゾナンターなのに、覚えていないなんて」

「愛ちゃん、れいな、思うんやけどこれって間違いなくダークネスの仕業だよね?」
「…断言はできないけど、ほぼ間違いないと思う。ねえ、みんな最近、変ったこと無かった?」
そんな質問にも、4人は何も思い出せないようで黙ったままで徒に時間だけが過ぎて行く
「何か原因があるはずだけど、それがわからないと動きにくくてしょうがないわね…」
弱音ともとられてしまうため息を高橋はついてしまった

「あ!!愛ちゃん!!」
そんなため息をかき消すようにれいなが突然声を上げた
「どうした、れいな?何か思いついたんか?」
期待に満ちた10の瞳がれいなを捉える
「違うっちゃ。そろそろ約束の時間や!!愛ちゃん…悪いんだけど30分だけ出かけて来ると!!」
「ちょっとれいな?どこにいくのよ?」
「ミヤのところ!大丈夫、30分だけ話してすぐに戻ってくるっちゃ」

「れいな!メールじゃだめなの?緊急事態なんだから・・・」
「・・・いや、直接れーながミヤに会いに行かんといけないっちゃ。ごめん、これだけは無理と」
れいなはいつになく決然とした口調でそう言い勢い良くドアをドアを閉め、外へと飛び出して行った。

そんなれいなが走って行く姿をじっと見ながら高橋は不思議に思っていた
(こんな状況でも絶対に合わなくてはいけないなんて雅ちゃんとれいなにはどんな関係があったっていうの?)

走り去っていくれいなの後姿に高橋は自分の知らないれいなの姿を見たような気がした