『狂気の紫』


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わたしの敵はわたしの中にいるとずっと思ってた。
“精神破壊”
人の精神を焼き尽くす狂気の焔を吐く悪竜。
それがわたしの中にいる化け物の正体だ。

かつてわたしには三十人の級友がいた。
ある日わたしは三十人の級友を失った。
それはわたしが三十人の級友を地獄に突き落としたせいだ。

わたしが作り出した地獄。
それは級友を発狂させ、級友同士で傷つけ合わせ、体にも心にも決して癒えることのない傷を負わせた。
三十人、いや家族を合わせれば百人以上の人生をわたしは一瞬で壊してしまった。
決して救われることのない地獄のど真ん中で私はけたけたと笑っていた。
誰もが救えないと諦めかけたわたしにただ一人手を差し伸べてくれたやつがいた。

“なぜ、泣いてるの?”

狂乱の現場から昏睡状態で搬出された先で目覚めた私が目にしたのはペットボトルを手にベッドの横で佇んでいたあいつだった。
喉の渇きを覚えペットボトルに物欲しげな視線を注ぐ私を無視して、看護士を呼び出してから病室の外に出て行ったあいつ。
あん時はすかして小憎らしい奴やと思った。

身体の傷が癒えるにつれ、混濁していた記憶が回復していく。
自分の犯した罪を受け止めきれないでいたわたしにカウンセラーの人は言ってくれた。
わたしが悪いんじゃない。
あれは能力が暴走した結果、起きた悲惨な事故なんだって。

そんな曖昧な言葉に縋りつき、足掻いていたわたしにあいつは言った。

「能力に勝手に手足が生えて、イクちゃんたちの前にやってきたんじゃない。 あれはイクちゃんがやったことなんだ。だから…」


チカラを手にしてしまった者の責任。
そのチカラで人を傷つけないこと。
そのチカラで人を救うこと。

だからわたしはわたしの心の中の刃を二度と抜かないと心に決めた。
“精神破壊”
人の心を焼き尽くす狂気の紫を二度と燃やしてはいけないと。

今あいつは傷つき倒れ地に伏している。
わたしとの鍛錬では見せたことがないほんとうの本気を込めた一撃は敵には届かず、逆に倒されてしまった。

あいつを倒した奴は戦鎌を手に視界を睥睨している。
奴があいつの命を刈らないのはそうすることでわたしをこの場に留め、そして討ち果たすため。
今わたしがやるべきことは、奴が望まないこと。
この場を外界から隔てている結界を内から打ち破り、襲撃の事実を隠蔽できなくすること。
そして他の仲間をこの場に呼び寄せ、何人がかりでも奴を制圧して、一分一秒でも早くあいつを治療すること。

わかってる。
そんなことはわかってる。
あいつだっていざというときの覚悟はできているはずだ。
傷ついているあいつに背を向けてこの場を去ったって、わたしを責めたりなんかしない。
むしろそれが最善手だって褒めてくれる。
あいつはそういうやつだ。
わたしにそうさせるために、あいつは傷ついた体でなおも奴を足止めしようとしてくれている。
あいつの努力を無駄にしないために、背を向けろ。
そして走れ、走れ、走れ。

うるしゃい、そげなこつはわかっちいる。
黙れ、黙っちょれ。


これからの一生ずっと。
許されるなんて思ってない。
許されたいなんて思ってない。
許されようとも思ってない。
それだけの罪をわたしは犯した。

わたしはわたしの犯してしまった過ちから決して逃げないと決めた。
そんなわたしがいまやるべきことは。
そんなわたしがいまやりたいことは。

目を背けるな、過去の過ちから。
目を逸らすな、目の前の脅威から。
消えてしまえ、わたしの中の恐怖心。
冷静な判断なんてクソ喰らえ。

燃えろ、狂気の焔。
わたしの心を紫で染めろ。
怯えを狂気で塗りつぶせ。
最善の判断なんて今はいらねえんだ。

わたしの敵はわたしの中にいると思っていた。
“精神破壊”
人の心を狂気の紫で焼き尽くす魔獣。
二度と目覚めさせないと誓った力。
今、その誓いを破ろう。
たとえこの身がどうなろうとも。
たとえこの心が破滅しようと。
わたしはわたしのなずべきことをする。
あいつの力が宿っている血刀を武器に。

「りほ、待っとき。 こんどはうちが救っちゃるよ」

共鳴セヨ…蒼キ憎シミ二
共鳴セヨ…紅キ怒リニ
共鳴セヨ…紫ノ狂気二



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投稿日:2014/11/15(土) 02:33:24.64 0





















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