『I miss you』的な何か


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155 :名無し募集中。。。@\(^o^)/:2014/11/03(月) 18:06:13.79 0.net
やばい!

譜久村家にセルシウス急襲!!!
急げふくちゃん!!!








「舞美、遅っ」

遅れて到着したリーダーをからかおうとして口にした言葉が途絶えた。
血が流れている。
矢島舞美の美しい顔から出血している。
誰にも傷つけることなどできないはずの“invincible”である筈の存在。
無敵でなければいけない矢島舞美の唇から血が流れているのだ。
驚かないわけには…。

「ひゅひゃあ、ついうっかりして」

うん、アホだ。
平常運転のアホ舞美だ。
舞美の両腕には直径20cm、長さ80cmぐらいの金属製の円筒が抱えられている。

「置時計の振り子の後ろに隠してあったんで分解しようと思ったんだけど」
「ごめん、話が見えてこないんだけど」

舞美の抱えているのはどうやら爆発物。
それを分解しようとしたことまでは分かるが、それがどうして唇から血を流すことに繋がる。

「よくハリウッドとかだとさ、爆弾解体の時には工具的な何か咥えてたりするじゃん」

洋画で描かれる爆弾の解体作業を真似しようとしたものの、適当な工具を持っていなかった舞美は…。

「愛用の銃剣を咥えてたら唇の端が切れたって馬鹿丸出しっていうか意味無いじゃん。 あんないかつい銃剣なんか細かい作業に仕えるわけないし、どうせ素手で分解したんでしょ」
「あぁ傷つくな、なっきー」

私たちのやり取りを聞いていた舞の顔が蒼ざめている。


「ごめん、舞美。それ私たちが担当したルートだよね。見落とした」
「う~ん、いいよ。私だって何か食べるものが隠してないか探してたらたまたま見つかっただけだから」

嘘だね。
舞美は嘘を言っている。
譜久村家の所有する山荘を急襲、内部にいる人間を生死を問わず確保。
その指令に応えるべく、三つの経路からの侵入。
指令が文字通りの指令であるか、あるいは罠であるか。
いずれにせよ脱出経路を確保しておくために、セキュリティの解除と爆発物の有無を確認しながらの侵入を敢行。
簡単で単調な作業をゲームにするために、侵入時の最終目的地である大広間までのタイムトライアルに仕立てたのは私だ。

他のチームが二人一組。
自分は一人だというハンディを背負ってるのに、おそらくは他の2チームのルートもクロスチェックしたんだ。
三つのルートを回りながら、5分30秒程度の遅れ。
ほんとうに、このバカときたら。

「でもよかったよ」
「何が」

即時に反応したのは舞美同様、私たちの中では白兵戦担当のちっさーで。

「だって私たちに拘束されるかわいそうな譜久村家の一族なんて最初からいなかったんだから」
「もう舞美ったら~」

状況から考えて今回の任務は最初から私たちを誘き寄せる為の罠だった。
かわいそうな家族はこの山荘にはいなかったっかもしれないけど、敵さんはわたしたちをかわいそうな目に遭わせる気気満々みたいなんだけど。

「ちっさー、この爆弾の匂い嗅いでみて」


片手でひょいっと投げた円筒を全身で受け止める千聖。
その意外な重さに驚いたのか、抱え込むようにしてその場に座り込む。
千聖だって力は相当あるのにね。

「火薬の量はそんなに多くないみたいだし、燃料系でもない。金属片が入ってるっぽいけど」

私には到底できない臭覚で爆弾の中身を解析していく千聖。
小型のクラスターで私たちに手傷を負わせるのが目的なのか。
たとえ捕まえることが叶わなくとも、千聖や舞美のDNAを採取できたら敵さんには御の字だろうし。

「いやっ、さっき振り回してみた感じだとチャフっぽいね」
「ちょなんで爆弾を振り回したりするかな~」
「うふふ、ごめん」

チャフは通常、電波障害を引き起こすためのものだけど、それを実内で私たちに対して使う目的は…。

「ジャマー系の能力阻害」
「ピンポンピンポンだろうね。 おそらくは位置認識の阻害が目的かな。屋外には十中八九、大型の電磁波発生装置もスタンばってると見た」
「じゃあ早く逃げなきゃ」

能力の阻害というキーワードを聞いた舞が焦ったような顔をする。
通常兵器相手ならほぼ無敵というか完全に無敵なんだからもうちょっと落ち着いてもいいと思うんだけど。

「え~お腹が空いてるのにすぐに動けないよ」
「あんたね、携行糧食はどうしたのよ」
「久しぶりに5人揃っての出撃じゃん。 あまりにも楽しみだったから昨日の晩寝れなくてさ~、食べちゃった」

このアホリーダーは。
敵さんも決して馬鹿じゃない。
私たちの能力の全容までは把握してなくとも、その一端は掴みかけてるし、それなりに対策してるっぽい。
過大に評価する必要はないけど、甘く見すぎるのも禁物だと思うんだけど。


「ごうぢゃがばいリまじだよ~」

ちょ愛理。
見かけなかったと思ったら、何暢気に紅茶なんか入れてんのよ。
ガスとか簡単に爆発させられるし、さすがにここはリーダーとして一言言っとかなきゃ。

「さすが愛理ママ、気が利いてる~。あと何か食べる物は?」
「グッギーばぁっだばぁら開げざぜでぼぉらっばぁけど」

ダメだ。
他人のこと言えた義理じゃないけどアホばっかしだ。
舞なんか硬直し始めてるし。
そうだよね、薬物を仕込まれてる可能性だってあるし。
千聖!!

「ちょっと待って。 最初に私が毒見するから」

え~っと嘆く舞美から取り上げたクッキーを咀嚼して、紅茶を半分くらい飲み下す。

「大丈夫。 多分だけど…」

わ~いとクッキーに噛り付く舞美。
紅茶を口にする愛理。

「痛っ」
「熱っ」

だ大丈夫…なのか私たち。
口にするでもなくクッキーを割っている舞。
何事もなかったかのように紅茶を味わう千聖。
私は…私に何かあったら巻き戻せないから、うん。


「うわっビスケット。いいな~」
「あんた昨日の晩に食べたんでしょ」

数枚のクッキーでは物足りないらしい大食漢が物欲しそうに私の手元を見つめてる。

「欲しいのならワンとお言い」
「ワワン!!」

馬鹿犬に糧食用のビスケットを放り投げる。
こんな時は同じバカでも舞の方がまだ話相手にはなる…筈だ。

「以前はともかくここ最近は防衛さんともトラブルはなかったよね?」
「…うん。多分あの喫茶店の案件で不満があったんじゃないのかな」

舞の口から発せられた喫茶店という言葉に私を含めた他のメンバーが反応する。
物憂げな表情を見せる愛理。
懐かしげな貌になる千聖。
私の心は高まるというほどではないが、少しざわつく。
舞美はというと不敵な笑いを浮かべ。

「はる坊に釘は刺しといたよ。あっ釘を刺したら怪我しちゃうね。まあ軽く警告ね」
「でも防衛さんの希望は…」
「シャーラップ」

いつになく強い口調で舞を黙らせる。

「あいつらの胸の内とか腹の中とか興味ないから。腹芸がしたいなら自分らの宴会で好きなだけやってりゃいい」

それはリーダーとしての最後通告だろう。
この状況を作り出した防衛省周辺との関係を丸く収めるつもりは無いという。


「舞、イエスかノーで答えて。 電磁波系のジャマーを喰らった状態で自分以外の誰かを銃弾から守れる」
「多分、無理。 私一人だけならデフォルト状態で問題ないと思うけど位置感覚をずらされると他の誰かはきつい」
「オッケー。 じゃあ一番ジャマーの影響が少ないであろうちっさーが先行して、阻害装置。多分トレーラーかなんかに偽装してるやつをぶっ壊して、ついでにその辺をしっちゃかめっちゃかにかき回して」
「了解」

矢島舞美はバカだ。
それもかなり残念な部類のバカだが、こういう状況。
仲間に危機が迫ってる状況下で彼女が下す判断は限りなく正しい。

「ちっさーが突撃してから時間差で愛理、早貴、舞が発進。舞は能力で二人を守って」
「あのさ…」
「何?」
「私だったら阻害装置が壊されることを想定して、他に何台か配置しておくけど。逃げ道を想定してさ」

舞のネガティブ思考がまた始まった。
舞美はというとその掌で舞の頭を撫でている。

「えらいね~。舞のそういうところに私はいつも助けられてるよ」

ネガ舞を慰撫しながら、その恐怖心を取り除いていく。
能力阻害用の電磁波は指向性の強いものでなければ意味を成さない。
したがってその有効範囲は普通の電波のように広範囲というわけにはいかない。
かなり狭範囲になってしまう。

「ちっさーが一台ぶっ壊せば、一定時間の安全は確保できると思う。それでいい」
「でも…」
「私たちの生命線は愛理の歌で、私たちの切り札はなっきーの能力。でも今二人を守れるのは舞の能力しかないから」

両肩を抱かれ見つめられていた舞の瞳に炎が点ったのがわかる。
それは弱々しいけど決して消えることの無い魂の焔。
でも肩、痛そう。


「四人はそのまま全速離脱。後は…私一人で殲滅するから」

千聖が私の顔を窺ってきた。
血みどろの白兵戦を展開する決意をした舞美を一人で戦わせていいのか。
自分たち、少なくとも自分ひとりだけでも反転して援護すべきではないかという思い。
矢島舞美は無敵のバカだ。
しかし自分の強さに驕り単独先行するような愚か者ではない。
今、舞美は自分に怒りを覚えている。

防衛省周辺との融和路線を選択することで、私たちを欲しがっているどの機関とも等距離の関係が築けるという甘い考えを抱いた自分に激怒している。
能力者に人格があるとは思わず、只の数値として捉え国益とやらに貢献させようという人間が国の中枢にいまだ存在する事実に憤怒している。
今宵これからの戦いで実際に血を流す兵士の殆どは自ら意思決定する権限を持たず、実際の責任者は安全な高みから見下ろすという不公平な構造に義憤を抱いている。
でもそんな状況でも矢島舞美は絶望しない。
絶望して、全てを投げ出して、壊れてしまった方が楽だとしてもそんな道を決して選択しない。
それが矢島舞美だ。

私たちを導くリーダーとして、全ての責めを負うことで辛うじて、舞美はかつて犯した過ちの贖罪を果たし続ける。
だったらそんな舞美の決断に口を挟むことなど誰が出来ようか。
ゆっくりと首を振った私に頷く千聖。
これから創り出す状況は決まった。
後は…。

「ちょ舞美、時計外してどうするの」
「いや~、いろいろご馳走になったからせめて、ね」
「ねって、私たち罠にかけられたんだよ」
「でも譜久村の人たちもぐるだったかはわからないし」
「もしそうだとしても譜久村家ってちょっとした財閥並みの大金持ちだよ」


腕時計を紅茶やクッキーの対価として置いていこうとする舞美を諌める千聖と舞。

「でぼ、じがんばばぜしじどがばいぼ、ぼればらのぼうぼうにじじょうぼぎだすんじゃ」
 (でも、時間合わせしとかないと、これからの行動に支障をきたすんじゃ)

ナイス、愛理。
滑舌は相変わらずだけど、ナイス。
でも舞美がここまで正しさを貫いてみせるってことは、逆に今夜これからとっても酷いことをするってことだからさ。

「そうだ、これ持っとく」

私はデジタルオーディオプレイヤーを舞美に投げた。
ディスカウントストアで買った安物なんだけど、ちゃんと動画も映るやつ。

「前に言ったでしょ。 私たちと同じ五人組の女の子のグループの新曲。そのパート割を時間の目安・・・」

えっえっえっえっ。
私掴まれてる。
舞美の掌で頭を鷲づかみにされて、宙吊りにされて、痛っ。

「どうして、そんなことするのかなあ」

はぃ?

「そんな違法ダウンロードなんかしてアーティストの人に一円も還元されないのに」

ちょ待ってって。
タップタップタップ。
離せないから少し手を緩めて地面に下ろして。


「ここれ公式のPVだから。違法じゃないから許してお願い」
「じゃあちゃんとシングル買う?」
「買うから。帰ったらちゃん買うから」
「じゃあ許す」

鉄枷から解放された私の真似を千聖がしてる。

「私、帰ったらCD買うんだ。 はいなっきーの死亡フラグ立ちました」

お前なあ。
わたしはあんたと違って身体は普通の人間並みなんだから。
拳を振り上げる私に笑って見せるとジャケットのフードを上げる。
もう千聖は戦闘態勢に入りつつある。

「へえ、I miss you か。良さげだね」
「でしょ、でしょ。そのPVも大きなお屋敷で撮影してるし」
「でもここの譜久村邸よりはちょっと貧相かな」

肩耳にイヤフォンを挿し、小声で口ずさみながら冷静な比較。
愛理も自分向きのパートを歌ってる。
前から言おうと思ってたけど歌う時は滑舌良いよね。

「でも…この子たちいい気なもんだね。こんな衣装を着て歌って踊って」

舞の気持ちもわからなくはないけどさ。

「それは違うよ」

おっバカリーダーが何か良いこと言いそうな雰囲気。


「多分、この子たちだっていろんな悲しみを経験して、それを引きずりながら何とか前に向かって歩いてるんだ、同じ」

みんなおんなじという舞美の言葉は現実とは多分かけ離れている。
でも舞美がそんなにまっすぐだから他のみんなもなんとかこの地獄の中絶望に飲み込まれず生きていける。

「わたしたちは大切なものを失った。それはもう取り戻せない。だからこれ以上失うわけにはいかない。あいつらにこれっぽっちもくれてやるわけにはいかない。だから…」

それは舞美の悲しみ、そして私たち全員の怒り。
二振りの銃剣を手にした舞美が号令を下す。

「これより状況を開始します」

私たちは独立特殊攻撃部隊“ Celsius ”
何度も打ちのめされてきた。
何度も大切なものを失った。
もう二度と負けるわけにはいかない。





投稿日:2014/11/07(金) 23:06:36.30 0



293 :名無し募集中。。。@\(^o^)/:2014/11/08(土) 00:59:35.33 0.net

「作戦は失敗です“ Celsius ”殲滅は失敗しました」
「データーは取れたのかね?」
「現場の観測装置はことごとく破壊されました残っていたのは奴らの移動の記録のみです」
「なんでもいいまずはそれを見せたまえ」
「はっこれです」