■ ブラッドアンドペイン -新垣里沙- ■


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■ ブラッドアンドペイン -新垣里沙- ■

ざくり

声は無い。
精一杯噛み殺した、声にならぬ、悲鳴。
砕かんほどに歯を噛み、苦痛に耐える。

ざくり

彼女は手にしたナイフを突き立てる。
突き立て、えぐり、その腱を切り、骨を削る。

ざくり

つうっ!ぐぎっ!
耐え切れず、声を漏らす。

これほどまでに、これほどまでに自分は、苦痛に弱い人間になっていたのか。

新垣は再び服を破り、素早く己の太腿を縛る。
止血。
だが、その間にも、四肢のいたるところ、次々と浅い切り傷が増えていく。

「うへへぇ…がきさぁん、がんばってぇ、痛いのはあたしもおんなじなんだからぁ~」

おどけた態度、とぼけた声、いつものままの、いつもの彼女…

「なんで…なんで…なんでアンタがこんなところに…」


新垣は止血をあきらめる。
どのみち、この出血では長くはもたない。
何分?おそらく、もう1分も…
助けが来ないのであれば、このまま気を失い、やがて失血死するだろう。
もはや、物理的な戦闘は、不可能だった。

ぼやける視界の中、新垣は顔を上げる…
視線の先、そこに彼女がいた。

彼女の両脚、自分と同じ個所、吹き出す真っ赤な血。
大きくえぐれた傷。

等しく同じ傷口を、等しく同じ苦しみを。

それが、彼女の能力。

防ぐ手段は、無い。

当然のことながら、能力で傷を負わせるならば、己も同等の傷を負う。
かつて彼女がこの力を使うとき、その傍らにはいつも…
だが今、彼女は一人…
こんな状態で能力を使うなど、自殺行為。


己が目を、疑った。

塞がっていく。

彼女の傷が、見る間に塞がり、流れ出た血液までもが、皮膚から吸収されていく。

治癒能力者がどこかに?付近に姿はない。
いや、こんな治り方、見たこともない。
何?いったい?
まさか、これも、アンタが?

「…なんでアンタ…それ…」

いや、それ以前に、それ以前に、だ。
いまの彼女は、彼女の『心臓』は、その傷に耐えきれない、その苦痛に耐えきれない。
だから、彼女は戦列を離れた。
だから、彼女は入院していた。
彼女はもう、能力を使えない。
使えない『はず』だ。

それなのに…
それなのに…

「へへぇ気がづいちゃったぁ?そーだよねぇ…そりゃ気づくよねぇ…ガキさん、ねぇあたしさぁ」


―――あたし、化け物になっちゃった☆


「いやあ違うかぁガキさぁん!、もともと化け物だった!うん!そうだった!」


彼女は敬礼する、片目をつぶり舌を出す。
おどけた態度、とぼけた声、いつものままの、いつもの彼女…
かけがえのない、かけがえのない仲間が、そこに…

新垣は、その名を―――

崩れ落ち、吹き出す血の海の中、新垣は、その名を―――



                               【index】





投稿日:2014/11/01(土) 02:09:49.64 0