『カウントダウン』


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あなたは何者なんですか?

私はごく平凡な家庭でうまれ、平均以上の愛情に包まれ、ごくごく幸せな日常を送りました
いろんなところに連れていってもらえました。動物園、水族館、博物館、そして教会
幼い私にとってはなにもかもが新鮮で、「あれはなに?」「これは?」「こっちは?」、いつも質問しては父を困らせてましたね
ただ、いつも笑顔で両親は私に教えてくれて、いい父でした

なんてことない普通の一日、父と母に連れられ、公園へ
帰り道、ふとめまいを感じ、座り込んだ。ほんの一瞬のめまい、目の前がゆがむような感覚
立ち上がり、ふと顔を上げると心配そうな父と母の顔がありました
しかし、私の目線は二人の上に向かわざるを得ませんでした。頭の上に数字が並んでいたのだから
『830』『826』、私は父に尋ねたんです。頭の上にあるその数字は何か、と

父は笑って答えました、何を言っているんだ?数字なんてないさ、と。
母も笑ってました。面白いことを言うのね、なんて言って
自分だけにしか見えない数字、その存在をその時は気にも留めませんでした

でもそれは冗談ではありません。周りを見れば、すべての生き物、人間だけでなく犬や鳥にも、数字が浮かんでいたから
『2000』『189』『3900』・・・いろいろな数字
そしてそれらはゆっくりと減っていて、そのスピードは個人差、いや種族差があるようでした

帰り際、近所の野良猫と出会ったのを覚えています―数字は『10』
頭を撫でようとするといつもなら逃げようとする、それなのにその日に限って静かににゃあ、と鳴くだけでした

家に帰ると飼っていた金魚の水槽にも数字が浮かんでいました、その数字は『8』
えさをあげると水辺にやってくるはずなのに、その日、沈んできた餌を食べていました

夜、夕食を囲んだとき、父と母の頭の上の数字は『750』『740』に減っていたんです

翌日、水槽を覗き込むと金魚が浮いていて、庭に行くと昨日頭を撫でた猫が倒れていました
あたまのうえに浮かんでいた数字はそれぞれ『0』になっていた


その時に直感的にわかってしまったんです
「この数字が0になったとき命が終わる」ことを
視えてしまっているのだ、他人の寿命を、なんて難しいことを今なら表現できます

そこに私の名前を呼ぶ父の声がして、金魚の墓を作ろうと提案してきました
父の頭の上の数字は『520』に減っていました

昨日から急激に数字が減っていたので、私は怖くなって父に抱き付いたんです
父は私が金魚がいなくなって寂しがっていると思い、大丈夫だよ、とやさしく抱きしめてくれました
父のたくましい腕が私の冷えた心を温めると当時に、すぐに恐怖のために冷えを感じていました

一日で300程度も減った父の数字
同じペースでへるなら明後日にも0になる
0になったとき父と私は永遠に別れなくてはならない
「ねえ、お父さん、お父さんはいなくならないでね」
「なにを言っているんだ?お父さんはずっとそばにいるからね」
 ・・・嘘だ。嘘だ。あと二日しかいられないくせに

いつも以上に両親にべったりだった私に両親はペットを失ったことの喪失感以上の原因がわからなかったと思います
だって誰が思います?明後日にも自分が死ぬ、なんて!!
朗らかに談笑する父も母も数字は明らかに減っていたんですよ

翌日も父と母と一日中、そばにいようとしたので、さすがに不思議がっていました。
適当に言い繕ってごまかしたのは覚えていますし、その一日のことは深く覚えています
夕食時には数字は100程度にまで減っており、眠れないの、といって両親の部屋で寝ることにしました
最後の夜になる、そう思っていましたから。

そして、その日の夜、暗がりの中でガラスの割れる音が響いたんです
その音に気づいた父が、母を起こし、動かないでいるようにと指示を出したのが耳に入ってきました
部屋を出ていく父の数字は一ケタになり、母の数字はもう3になっていました


突然、争うような音が起こり、ついでなにか固いものが倒れる音
母が私を起こし、押し入れの中に隠れるようにやさしくいってきました
私が戻ってくるまでここでいい子にしているのよ、なんて。
母は懐中電灯を手に、父を捜しに出かけた。暗闇でも光ってみえるカウントは2になっていた

幼い私は死ぬことよりもいなくなることが怖かったんです
はっきりいって死の恐怖というものを理解できなかった。ましてや自分が死ぬことは考えていなかった
だからこそ、私はこっそりと母の後を追って部屋を出ました

暗闇の中を壁伝いに歩いていくと、暗闇にあのカウントが浮かんでいたので、駆け寄りました
うつぶせに倒れているが、間違いなくそれは母でした
背中から殴られたのだろう、抱き起した私の手は血で濡れていて、その近くで壁に背をあずけている形で父もみつけました

私は父と母の名前を呼んで、起きて、と何度も大声で叫んだ
がたっと物音がし、振り返るとそこには黒い影と頭の上に光る数百万のカウント
「あ~あ、ガキもいたのか。まいったな。ま、いいや、一緒にやっちゃえば」
私に向かってその影は蹴りを放ち、私の体は父と母の間に飛ばされる形となった
痛みで私は胃の中のものを吐き出しそうになりましたが、視線は男の陰に向いたままでした

私に止めをさそうと近づいてきた男の足をつかみました
必死の抵抗なのだが、所詮は子供、と思ったのでしょう、男は気にもせず、片膝をついて、私に話しかけてきました
「ムダで~す、お兄さんには効きません」
その声はゲームをしているように弾んでいました

その時初めて、顔が見えないが、こんなやつに父と母を奪われるなんて、怒りを感じた
大好きな父と母の笑顔と目を見開いている今の父と母の表情
(許せない)
その怒りが天に伝わった・・・そう信じるしかない・・・でしょう
私の目に映る男の頭上のカウンターが数十万から急激に減少していったんです


 ・・・20万・・・10万・・・5000・・・・1000・・・500・・・100・・・50
そして、カウント5、4、3、2,1・・・0!

男は突然胸を押さえて倒れこみました

カウント0は終わりの印
この手で男の命を奪うことになった、それは恐ろしいほどあっけないものでした
自分が奪ったという実感はないのだが、それは事実、現実

それよりもこの男が両親を奪った事実、それがその時は何より大事でした
もうあの優しい声も笑顔も楽しい思い出もできない、それがつらかった
そこで私は気づいたんです。ガラスにうつった自分の頭の上に先程までなかった数字が浮かんでいることを
数十万の数字、それは先程、急激に減っていった男のカウント、そのままでした

もしかして、と思い、急いで父のもとにかけよりその腕を掴みました
(お願い、生き返って!!)
そう、願うと私の上のカウントは急激に減っていき、父のカウントが0から増えていくのです
0、1,2、3・・・・1000・・・50万!!
母の元にも駆け寄り、手をつかむとカウントを増えていきます
私の頭の上のカウントは0になっていたが、母のカウントは数十万まで上昇していた

そして、父がゆっくりと体を起こし、私の姿を見つけた父は私が無事なことを確認し、強く抱きしめてくれた
続いて、母もゆっくりと体を起こす。不思議なことに後頭部の傷は塞いでいるようだ
そして、倒れている男に気づき、警察に通報した

結局、警察は『犯人』の男が『突然死』したものと断定し、私達家族は「被害者」で事件は終了しました
後になってわかったことなんですが、この男は強盗殺人の常習犯でした
殺されずに済み、突然死を起こしたことが幸いでしたね、と警官は両親に話していました


でも、違うんです。私だけが知っている、父と母は『一度』死んだ、ということを。
それ以降も私の目には寿命のカウントは見える。ただ、あの日のようにほかの人のカウントを奪うことはありません

他の人の寿命が見える、それがどんな意味を持つのかわからない
ただ・・・見えてしまう。私は普通でないんです!!

だからこそ、カウントが見えない、あなたのことを私は知りたいんです
あなたは何者なんですか?

    -さゆみっていうの。よろしくね真莉愛ちゃん



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投稿日:2014/10/05(日) 22:03:02.97 0