■ アイエフブイ -鈴木香音・鞘師里保- ■


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■ アイエフブイ -鈴木香音・鞘師里保- ■

「もしかしたら、かのんちゃんの力って【物質透過】じゃないかもしれない」
あのとき、りほちゃんが言ってたことがなんなのか、
アタシには、まだよくわかんないんだけど、
それでも、りほちゃんが「やれる」といったことは「やれる」ことなんだ。
だから…

カカカカカカッ
シュシュシュシュシュ…
ズズズズズズゥンン!!ズシィン!!!

「うーぉっ!強烈っ!」
アタシは頭を抱える。
鼓膜がおかしくなりそうな轟音。土ぼこりがもうもうと巻き上がる。
アタシたちがなんでこんな目にあってるか、説明したいとこなんだけど、
いまちょっと取り込んでるんだよね。
だっからもーのすごく簡単に言うと、アタシとりほちゃん、
めっちゃくちゃ撃ちまくられてる最中なわけ…

…戦車に。

うわまた来た!

ズガン!ズズズズン!

戦車って言っても、なんだっけか?
ほへーせんとーしゃーりょ?なんかわからんけど、まあ戦車だよ戦車。

「やー、この位置、もうばれちゃってるねー」
もーりほちゃん冷静すぎてアタシのほうが焦るよ。


「りほちゃん、どーする?後ろに見えるあそこの瓦礫まで走る?」
「んー、突っ込もうか」
「うんわかった…え?」
「かのんちゃん、あれに突っ込もう」
「お、おういいね…詳しく聞こうじゃないか」

りほちゃんが「やれる」といったことは「やれる」ことなんだ。
りほちゃんが「やる」といったことにアタシが反対する理由なんかない。
でも、さすがにそれはさぁ。

「こないだ練習してた時の事、覚えてる?」
「うん、もちろん」

格闘訓練、りほちゃんの攻撃、アタシが【物質透過】、りほちゃんの突きが身体をすり抜ける。
ふと、りほちゃんが動きを止める。
じっと自分の手を見る、曲げたり伸ばしたり。
「どったの?りほちゃん」
「かのんちゃん、もっかい」
言うが早いか突き、アタシ【透過】
ズボ!すんごい音がして突き抜ける。
で、今度はそのまま、んーとか唸ってる。
なんか、手をにぎにぎしたりとか、やってたみたい、アタシの後頭部だから見えんかったけど。
そのうち、両手を突っ込んだり、その手をパタパタ交差させたり、
スリッパもってきて片腕突っ込んだままアタシの上から落として透過させたり、
しばらく不思議な動きを繰り返して、
で、こう言ったんだ。

「やっぱり…ちょっとだけ…『ズレ』る」


ズズズン!ガラガラガラ!
うわぁ崩れてきたぁ!ここもとうとうオシマイだよ。

「そういうわけだから、かのんちゃん、今決めたリズムで突っ込んで。
あとはウチが合わせるから。」
「アタシはいいけど、りほちゃん戦車まで『そうする』つもりなの?」
「うん、だいじょうぶ、かのんちゃんとならウチやれるよ。」
そっかアタシとならやれるか…うん…じゃあやろう。

りほちゃんが「やれる」といったことは「やれる」ことなんだ。
りほちゃんが「やる」といったことにアタシが反対する理由なんかない。

たしかに、忘れ物が多かったり、朝起きれなかったり、すぐ転んだり、
ちょっと足りないところもあるけど、大丈夫…
あれ?なんか不安になってきたよ?
まあいいや、とにかくやろう、うん、やっちゃおう。

「じゃあいくよ!かのんちゃん!」
「よし来い!りほちゃん!」

うおおおおおおおおおおおおおおお!

アタシは瓦礫から飛び出す!
【物質透過】全開!
足の裏を除く、全身を同時に【透過】、そのまま突っ込む!
ほんとだ、ギリギリ間に合う。
りほちゃんの言った通りの距離だ。


戦車の上の小さいほうの鉄砲がこっちを向く、いっせいに撃ってきた!
信じられないだろうね、無数の弾丸がアタシを通過していくけど、
アタシには一切当たらない。
毛ほどの傷も、アタシには付けられないんだ。
でも、さ、白状しちゃうと、この状況、アタシもギリギリなわけ。
長い時間全身を【透過】させ続けるのって、めっちゃしんどいんだ体力的に。
水の中で息止めてるみたいな、そんな感じの100倍きつい。

だからきっと、戦車に届くギリギリの距離だから、アタシは、もうそこで限界。
戦車まで、戦車まで行くのが…限界…、きっとそこで、アタシはガス欠。
そしたらもうアタシはオシマイ。
でも、大丈夫、なんも問題なし、だってアタシには、アタシには…。

戦車まであと少し、目がかすむ、もう少し、もうちょっとだ。
あたしは最後の力を振り絞る、戦車の正面、思いっ切り、突っ込む。

装甲を、突き抜ける!

戦車の中は、思ってたよりずっと狭かった。
そこらじゅうにゴテゴテと機械がくっついてて、しかもなによりびっくりしたのは
中にすっごいたくさん敵が座ってて、ぎゅうぎゅうなの。
でみんなこっちみて口あんぐりしてんのよ。
でもそれも一瞬、即座に武器を構えて、銃口がぜんぶこっちに…
アタシはさ、もう無理なわけ、もう限界、もう【物質透過】させ続ける力は、残ってないわけ。
だから、アタシは、ここで、オシマイ、だから、あとは…

あとは!


「いっけえええええ!りほちゃん!」

きらめく水の刀、りほちゃんが飛び出す。

もうすごいんだ、りほちゃんは、あんな狭くて、立ってることもできないほど天井も低くて、
あんだけの数の敵がさ、いてもさ、もうすんごいはやさで動き回れるわけよ、
みんな同士討ちが怖くて、全然撃てなくてさ、あっという間にどんどん倒していっちゃうわけ。

そう、アタシの中にずっと入ってたんだ、りほちゃんは。
りほちゃんが言うには、アタシの中は、真っ暗で、何も聞こえなくて、息も吸えない、
でもりほちゃんはどこまでがアタシで、どこから外なのかわかるって言った。
だから、アタシの動きを全部読み切って、アタシと寸分たがわず動いて、アタシに重なったまま、
一呼吸もせず、ここまで走って来ちゃったんだ。
それで、あの動きだもん、まいっちゃうよ。

りほちゃんはこうも言った。
「大丈夫、かのんちゃんに重なってる物同士が接触することは、無いから」
つまり重なってる間にアタシに撃ちこまれる弾丸は、りほちゃんにも当たらない。
なんでそんなこと確信できるのか、アタシには全然わかんないけど、ほら、

りほちゃんが「やれる」といったことは「やれる」こと、だから、さ。

あーこらもう勝ったよ、うん。
たぶん、だけど、たぶん、いやだってアタシはサ、もう…気が遠く…なって…

…りほちゃん…あとは…よろしく…。



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投稿日:2014/09/29(月) 18:51:04.99 0