リゾナンタークライシス~発端・中国編~


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第一話

田中れいなはMの任務の為にひとりデコトラ軍団に同行していた。
「れいなちゃん、わざわざすまんね。きてもらって。」
「いいちゃよ。Mの重要物資を守るのがれいなの仕事やし。」すると他のデコトラの無線から
「この任務が終わったら喫茶リゾナントにいきてぇ」
実は見た目はデコトラだが、その正体は重要物資を運搬するMの輸送隊なのである。
「みんな、来てくれたられいなが大サービスするとよ。」
「「「おー!!!」」」
れいなが無線で呼び掛けているとれいなの隣のドライバーが何かに気付いた。
「何だありゃ?」

道路の真ん中に数十人の人影が
デコトラの一団は急停止した。
「おい、危ねぇじゃねぇか。」
デコトラの運転手のひとりが叫んだ途端、そのデコトラが爆発した。れいなは直感ですぐにわかった。あの人影が攻撃したことを。
「まさか、ダークネス?」
「みんな、後ろに下がって、あいつらはれいなが片付ける。」
「おい、待て。一人じゃ危険だ。」
「大丈夫とよ。れいなは並の奴には負けんとよ。」
そういいながら、れいなはデコトラを降りていった。
しかし、デコトラの運転手は心配でならなかった。何かとてつもないことが起きている予感がしたからである。

田中れいなは人影の方に
「何ね、あんたらダークネスか?」
すると人影から1人前に出てきた。
「嫌、我々はM本部長直属の部隊だ。田中れいな、本部長の命令だ。大人しく我々と同行せよ。」
「なっ、M?何で仲間を攻撃したと!」
すると部隊の隊長が
「任務の邪魔をするものは誰であろうと排除する。」その言葉を聞いてれいなに怒りが込み上げてきた。
「てめぇらぶっつぶす!」そう言うと同時に隊長格の懐に素早く入り、パンチを一発、そして顔面にアッパーを食らわせた。これで1人ノックアウトした・・・はずだった。

「くくく・・・」
ノックアウトされたはずの隊長格が何事もなかったかのように立ち上がった。
「何であんた平気な顔してると?」
「この兵装は衝撃吸収能力がある。他にも対リゾナンター用の装備がある。では動きを封じさせてもらおう。」隊長が合図すると二人の兵士が何かを発射した。
ベチャ、ベチャ
れいなを足に何かが付着し、足が動かなくなった。
「何ねこれは!」
「瞬間接着剤ですよ。あなたのご自慢のスピードを封じるための。さぁ仕上げだ。ショックガン発射。」
兵士たちが一斉に銃を発射した。

「きゃあー!」
れいなは意識を失った。兵士たちが近寄り、れいなの足の接着剤を処分して、手足にリミッター付きのM特製手錠をはめて、輸送車に連れていこうとしている。それを見ていたデコトラ隊は見るに見かねて・・・
「デコトラ隊出撃!」
デコトラの一団が兵隊たちに向かって走りだした。
しかし、兵士たちはそんなことには動揺せず、デコトラのタイヤを正確に撃ち、全て転倒させた。
兵士たちはれいなを輸送車に乗せて去っていった。
「田中れいな捕獲完了」

(続く)






第二話

「どういうことですか!」
M日本支部長の部屋でリゾナンターのリーダー・高橋愛は珍しく怒鳴っていた。怒鳴られているのは一匹の猫であった。

「どうもこうもない。今回の一件、お前たちは手を出すな。」
この猫、いやこのお人はM日本支部長でみんなからはボスと呼ばれている。

「仲間が、れいなが危険な目にあってるかもしれないのに何もするなっていうんか?」
田中れいなが何者かに攫われた。その知らせを受けてから、リゾナンターのメンバーたちはすぐにれいなを探そうとした。しかし・・・

「いいか、この一件はかなり高度なレベルの事件や。今下手にお前らが動いたら、田中の二の前になる。」
ボスは何かこの事件にきな臭いものを感じて、あえてリゾナンターを危険から遠ざけようとする意図があるようだ。

「安心しろ、すでにうちらガッタスが動いてる。」
「吉澤さん・・・」
リゾナンターの前リーダー・吉澤ひとみは魔女による裏切りからリハビリを余儀なくされ、リゾナンターを離れていたが、回復した後はMの特殊隠密部隊・ガッタスを組織して、その隊長をしている。

「今は落ち着くんだ。こんな時にリーダーのお前が動揺してどうするんだ。」
吉澤の言葉もあって、愛はなんとか落ち着きを取り戻したようだ。

「わかりました、お騒がせしました。」
愛は肩を落としながら部屋を後にした。

「かなり、まいってるみたいです。」
「あいつらのためにも、早く見つけてやらんとな。吉澤、頼むで。」



その頃、中国では・・・
「それにしても、何にも見えないのはおかしいなぁ。」
リゾナンターのメンバー・久住小春の周りには何枚もの紙が散らばっている。

「そうですね、クスミさんの念写ならとっくに見つかってもいいのですが・・・」

この時、小春、ジュンジュン、リンリンは新設されたMの中国支部の部隊が行方不明になっている事件を調べるために中国にやってきていたのだ。

「本当なら、刃千吏の協力が得られればよかったのですガ・・・」
実はリンリンは中国に到着してすぐに刃千史に協力を要請したのだが・・・
“今は極秘任務の最中で手が出せない”と断られてしまったのだ。

言われてみれば、そうだ。彼らはあくまで中国のため、そして神獣を保護するのが役目である。国際機関であるMの要請であったとしても彼らにとっては本来の任務を無視するわけにはいかないのだ。

「仕方がないよ。リンリンのお父さんも忙しいんだろうから。それにしてもジュンジュンは遅いな、まさかバナナ食べて寝てるんじゃないよね。」



一方、ジュンジュンは小春とリンリンがいる地点よりも少し奥の森に入っている。
獣化能力者特有の超感覚が彼女をここまで引き寄せた。何者かの異様な気配を感じたのだ。

ジュンジュンが森の中を進んでいると木と木の間から何かが飛び出してきた。ジュンジュンはそれをとっさによけた。
「ナンダ?」
ジュンジュンが飛んできたものを確認すると、それは念動力で作られた火の矢だ。
ジュンジュンはこれに見覚えがある。ジュンジュンは急いで矢の飛んできた方へと走った。
森を抜け、ひらけた土地にでた瞬間、ジュンジュンは敵が誰なのか改めて認識した。

「いったい、どういうことなのよ!リンリンパパ!」

そこにいたのはリンリンの父で刃千吏総統の銭氏であった。

(続く)






第三話


ジュンジュンと刃千吏の総統・銭氏。神獣に獣化する少女と神獣を守る組織の頂点。対峙することがないふたりが殺気を出しながら互いを見つめている。

「リンリンパパ、これはどういうこと?さっきの技、ジュンジュンだって知らずに使ったの?」
ジュンジュンは銭氏が自分だとは知らずに技を使ったと言ってくれることを望んでいた。でも、本当はわかっている。

「いや、あれは李純。お前であることをわかって使った。お前は行方不明のM中国支部の部隊を探すために来たのだろう。だったら、私はお前の敵だ。」
「何?それってもしかして。」
「その部隊は我々、刃千吏が始末した。」

「!!」
信じられなかった。刃千吏はMに協力しないことはあっても敵対することはなかった。

「どうして、そんなことを!」
「残念だが、お前にそれを言うわけにはいかない。ここで出会ったのが運のつきだ。行くぞ!李純!」

銭氏は勢いよく右手をジュンジュンに向けてかざした。
「ウワー!」
ジュンジュンは吹き飛ばされ、後方の木に体をぶつけた。
(なんて、強力な念動力だ。こうなれば・・・)

ジュンジュンは懐から青いバナナを取り出した。念をこめて、バナナを李家に伝わる国宝の青龍円月刀に変化させた。ジュンジュンは円月刀の念をこめて、威力を上げた。こうでもしないと、銭氏の強力な念動力には勝てないからだ。

「行くゾ!」
ジュンジュンは円月刀を銭氏に向かって振り下ろした。銭氏はそれを無駄のない動きでよけた。さきほどまで銭氏のいた地面は円月刀によって土がえぐり取られている。

「遅いぞ。」
ジュンジュンは再び銭氏に斬りかかった。だが、銭氏は今度は避けずに拳を円月刀の刃に向けた。このままいけば、腕もろとも切り落とされる。しかし・・・

「そんな・・・」
円月刀の刃が砕け散った。銭氏は拳に念力を集中して、拳だけで円月刀を破壊したのだ。

「拳は時に刃物にも勝る。」
ジュンジュンは柄の部分だけになった円月刀を捨てた。
「リンリンパパ、もう遠慮はシナイヨ。 ウワー!」

ジュンジュンの服は破れ、白と黒の体毛が全身を覆い、パンダへと獣化した。しかし、相手は神獣を守る組織のトップだ。おそらく、こちらの扱いにも慣れているだろう。それでも、最後まであきらめるわけにはいかない。

「グワー!」
ジュンジュンは左手を銭氏に振り下ろした。銭氏は左によけて、がら空きの脇腹に念力を撃ち込んだ。

「グッ!」
ジュンジュンは苦痛に顔をゆがませたが、それにも屈せず今度は右手でアッパーしようとしたが人間とは思えないほどの大跳躍でよけた銭氏には意味がなかった。
銭氏は空中から念動を撃ち込んだ。地面に押しつぶされそうになるが、ジュンジュンは気合でそれを破った。

「その姿で念動は効果がないか。ならば・・・」
左手を前にだして、態勢を低くした銭氏は気合を入れていた。ジュンジュンは銭氏が何をしようとしているのかがわかり、急いでその場を離れた。

「破!」
銭氏が右手を突きだすと同時に手から矢が撃ちだされた。念動と発火能力の組み合わせることで生み出された技・火の矢だ。しかし、さっきの火の矢とは威力が違う。
軽く大木を砕けるほどの威力だ。たとえ、直線にしか撃てないにしてもこのまま、撃たれ続けたら負ける。ジュンジュンは銭氏の隙を作る策を思いついた。

ジュンジュンは近くの大木を引き抜き、銭氏に投げつけた。銭氏は火の矢で大木を砕いた。
この時の粉砕された木の破片を弾幕にして、銭氏を一撃で倒すつもりだ。

だが、逆にそれを利用したのは銭氏だった。銭氏はジュンジュンの懐に飛び込んだ。
「終わりだ!」
銭氏はジュンジュンの腹に腕を突きさした。そして・・・

「発火!」
ジュンジュンの体内が火に包まれた。
「ギャアー!」

ジュンジュンは獣化が解け、生まれたままの姿に戻った。

戦いが終わった。すると銭氏の後ろから見るからに中国人と思われる格好をしている女性がやってきた。

「ほほほほ、始末したようね。」
「鳳 羅鵜(ホウ・ラウ)。何の用だ。」
「貴重な共鳴能力を持つ獣化能力者を回収にきたのよ。」

鳳という名の女性は連れてきた兵士たちにジュンジュンを回収しようとしたが、ジュンジュンの周りを火が囲んだ。

「銭、何をする!」
「ここは中国だ。お前たちの言うことは聞くとは言ったが勝手にしてよいといったつもりはない。もしも約束と違うことをするなら、私がお前たちを殺すぞ。」
銭氏は再び殺気を発した。
「チッ、引き揚げるわよ。」
鳳たちが引き上げるのを見て、銭氏はジュンジュンの周りの炎を消した。


その後、異変に気づいた小春とリンリンが駆け付けたが・・・

「ジュンジュン!」
リンリンがジュンジュンの体を見るとお腹には黒こげの傷があった。
「早く、ジュンジュンを治療できるところまで運ぼうよ!」
小春がジュンジュンを運ぶことを急がせるが・・・
「心臓が止まってる・・・ジュンジュンの心臓が・・・」

この日、リゾナンター・ジュンジュンの命の火が消えた。

「光井、どうした?珍しいな、お前がぼぉーとしているなんて。」
「あっ、すいません。」

その頃、リゾナンター・光井愛佳は高校で数学の授業を受けていた。正直に言うと今は授業どころではないのだ。リゾナンター・田中れいなが何者かに攫われた。
本当は学校を休んででもれいなを探すのに。リゾナンターの監督機関ともいえるM日本支部から動くなと言われてしまった。仲間を探したいのに探せない。こんなことがあってええんか?

(田中さん、今どこにいるんや。でも、なんで愛佳は予知できへんかったんやろ。ここ最近、予知を見なくなった。一度新垣さんに相談してみよう。)


一方、喫茶リゾナントの近くにあるビルの屋上に結界が張られていた。
そこには高橋愛が座禅を組みながら能力を展開していた。
「まだ、やってたのね。」

そこにリゾナンターのサブリーダー・新垣里沙がやってきた。

「里沙ちゃん。」
「田中っちが心配なのはわかるけど、もう半日も能力を展開している。そんなことをしていたら、ぶっ倒れるわよ。」
愛は精神感応を展開することでれいなの声を拾おうとしたのだ。

「かつて私が愛佳をさらった宗教団体を見つけた時みたいにね。」
「あん時は本当に里沙ちゃんのおかげやったな。あと一歩遅ければ、愛佳は洗脳されてしもうとったやよ。」
「何言ってるの、あの時時間を稼いでくれたのは愛ちゃんでしょ。愛ちゃんが敵を引きつけてくれなければあの洗脳屋と余裕持って戦えなかったわ。
愛ちゃん、リゾナントに戻って。店をずっとカメとさゆみんばかりに任せるつもり?」
「でも、あーしはリゾナンターのリーダーやよ。それに・・・」
「私はリゾナンターのサブリーダー。リーダーを支えるのが私の役目。自分ひとりで責任を抱え込むんじゃないわよ。後は私が・・・!」

その時、リゾナンター全員の心に二つの叫びが
「いやー!ジュンジュン!」
これは小春の叫び声が・・・もしかしてジュンジュンの身に何かが
そして・・・もうひとつは

数分前・・・
愛佳は学校が終わり、そのまま喫茶リゾナントに向かっていた。もしかしたら田中さんのことが何かわかったかもしれへん。そう思いながら、愛佳は歩いていた。すると・・・

長髪の老人が杖をつきながら横断歩道を歩いていた。様子からして盲目のようだ。すると老人が転んでしまった。
(あっ!)

愛佳はすぐに老人に駆け寄り、杖を拾い横断歩道を一緒に渡った。
「大丈夫ですか?」
「ええ、すまないね。お穣ちゃん。」
「いえいえ、当然のことをしたまでですから。」
「助けてもらった上に済まないが、この辺は初めてでね。ちょっと一緒に道を探してくれないかね。」
「ええですよ。」

愛佳は老人の言われるがままに道を歩いたが、進むにつれて人通りのない道にでてしまった。
「おじいさん、ほんまにこの道でええんですか。」

すると老人は怪しい笑みを浮かべた。
「お礼にいいところに連れて行ってあげますよ。光井愛佳さん。」
「なんで、愛佳の名前を?」

愛佳の背後に車が止まり、男たちが降りてきた。
「なんや、あんたら…うっ!」
男に気をとられた隙に老人に口をハンカチでふさがれた。
「うーん!」
愛佳は必死にもがくが老人とは思えない力で抑えつけている。
(誰か、助けて!みんな!    あかん、眠とうなってきた・・・)

愛佳は意識を失った。
「ふふふ、能力阻害で予知能力を使えないようにしていたが、阻害効果がもう少しでなくなるから私たちと来てもらうよ。安心したまえ、一人ではない。仲間も一緒だ。」

愛佳は男たちに手錠をはめられ、車に運ばれた。そして老人も車に乗り込み。車は走り去っていった。

「本部、光井愛佳を捕獲した。ただちに連行する。」

愛佳の心の悲鳴が聞こえた愛はすぐに瞬間移動を使った。そこには愛佳の学生カバンが・・・
「愛佳・・・」
愛は地面のこぶしをたたきつけ、唇をかみしめた。

その頃、喫茶リゾナントでは・・・
お客さんはピークを過ぎたために少なかったために店番をしていた絵里とさゆみには余裕があった。しかし、さっき聞こえた心の悲鳴がふたりに動揺をもたらした。そして・・・

ブルルルル・・・。さゆみの携帯が鳴っている。相手は小春からだ。
(嫌だ、出たくない。)
さきほどの心の悲鳴がさゆみに電話に出ることを拒否していた。でも、出るしかない。

「もしもし・・・」
「道重さん!ジュンジュンが!ジュンジュンが!」
電話先の小春は泣きながら話していた。そして小春が言った内容は・・・

“ジュンジュンが死んだ“
さゆみは携帯を落とすほどのショックを受けた。
その後、愛佳のバックを持って、愛と里沙が店に戻ってきて、さゆみは小春からの電話の内容を伝えた。みんなは声がでなかった。

最初に声を出したのは絵里だった。
「嘘よ。そんなの嘘よ!」

(続く)




第四話

悲報が喫茶リゾナントに伝えられた時、ダークネス基地では・・・

「キャハハハハハ、圭織相変わらず交信してるかい?」
ダークネス幹部・矢口真里が同じく幹部の飯田圭織に馴れ馴れしく話しかけてきた。
そんな矢口に飯田はむっとしたらしく・・・

「うるさい、私は忙しいのよ。」
「なんだよ、つれないな。(最近、この基地は静かなんだぞ。AとRにそしてGは海外出張中だし、マルシェは研究のために長期休暇中で基地はいつもより人が少ないから。構ってくれたっていいじゃん。)」

悪の組織に休暇があるのは意外だが、その話は置いといて・・・

飯田は瞑想室に入っていった。


その頃、ダークネス基地のある部屋では・・・
「おーい、冷房が効いておらんぞ。誰かいないのかの?」
このだらけている男は闇の組織・ダークネスの総統である。しかしあまりのだらけぶりに組織内ではダクネチュ様と秘かに呼ばれている。

総統の部屋にやってきたのは・・・
(まただよ。「俺」はあんたの召使いじゃないんだよ。)
なぜかダークネスの幹部からは顔をよく覚えられている下級戦闘員。今はダクネチュ様の身の回りの世話をすることが多い。

「いかがなさいましたか。」
「おお、冷房の調子が悪いんじゃ。修理してくれないか。」
「わかりました。」
「俺」は脚立を立て、部屋の上にある冷房の修理に取り掛かった。すると・・・

「失礼します。」
ダークネスの実質的なトップで最高幹部の中澤裕子が総統の部屋に入ってきた。

「おお、裕子か。いい酒でも持ってきたのか?」
「いいえ、重要な話がありますのでお人ばらいを。」

裕子は「俺」の方に顔を向けた。「俺」は脚立から降りて、脚立を抱え込んで部屋をでた。「俺」は部屋を出ようとしてダクネチュ様の顔を見た時、ダクネチュ様の顔つきが変わっているようにみえたのだ。しかしよく見るといつものだらけたおじさん顔になっていた。

(気のせいか。)

「俺」は部屋を後にした。

ダクネチュ様は寝そべり、鼻をほじくりながら中澤の話を聞いた。
「裕子さんよ、どうしたんじゃ。」
「実は・・・」

ジュンジュンの遺体は現場のする近くにあった獣化能力者たちの集落に運ばれた。
「ジュンジュン、ジュンジュン。」
小春はジュンジュンの遺体から離れようとはしない。いつもは喧嘩ばかりしているが、ほんとうは仲の良いふたりだったのだ。

リンリンはここの長老とは親しい関係であり、ふたりの事を託してある場所に向かおうとしていた。
「刃千吏のとこに向かうつもりじゃろう。あの傷口はお前の父の技・体内発火のものに間違いない。」
「はい、発火能力者の技の中でも危険性が高く、使えるものはめったにいません。私の知ってる限り使えるのは父だけです。会って、話を聞いてきます。」
「もし、やつがお前に向かってきたらどうする。」

リンリンは長老に背を向けたまま話した。

「たとえ、父でも仲間を傷つけたのなら容赦しません。長老、ふたりのことよろしくお願いします。」
リンリンはそのまま出ていった。

長老はジュンジュンの遺体を眺めながらある考えを巡らせていた。そして泣き続けている小春に話しかけた。

「お穣さん、あんた電気をだせると聞いたのだが。」
「ええ、そうですけど。」
「李純を救うために力を貸してくれないか。」
「えっ、ジュンジュン生き返れるんですか!」
「100%ではないが、可能性はある。」

リンリンは刃千吏の総本山である寺院に到着した。門を前にすると門が開き、中から30代ぐらいの男がやってきた。
「やはり来たな、銭琳。」
「李 振藩。」
養成所時代にリンリンと苦難を共にした仲間たちのひとりで養成所のリーダー格でもある。

「総統、いやお父上はお待ちだ。」
「お父様が・・・」
「ああ・・・」

総本山の奥の部屋では銭氏がお経を唱え続けている。
「総統、銭琳が参りました。」
「そうか、御苦労。通してくれ。」

リンリンが部屋に入ってきた。
「李、私がいいと言うまで何人たりとも中に入れるな。」
「はっ!」

李が部屋を出ると部屋の前には3人の男女がいた。
陳 港生 洪 金賓 林 鳳嬌。李と同じくリンリンの養成所時代の仲間である。
4人は刃千吏の戦士である。これからこの部屋の中で起こることは見なくともわかるのだ。以前、銭氏が娘の力を試すためにひそかに来日して戦った時以上の激戦が行われることを・・・

一方、小春はと言うと村の長老に言われて、村人とともに薬草を集めていた。長老の話によると、この周辺の薬草は奇蹟の薬草と呼ばれるほどの治癒力の高いものらしい。
それをジュンジュンに施して、生き返らそうというのだ。しかし、傷が癒えても心臓が動かなければ意味がない。そこで最後に小春が電撃で心臓マッサージをすることになったのだ。

「よし、傷口に薬草を塗ってくれ。」
村人が薬草をすりつぶした粉を傷口に塗っていくと傷は癒えていった。しかし、やはり心臓は動かない。

「お穣ちゃん、あまり時間がない。李純の心臓が停止してからかなり時間がたっている常人ならもう蘇生は不可能だ。だが、李純の獣化能力者として備わった強度な体と自然の力にかけてみたい。」
「はい、私絶対にジュンジュンを蘇らせます。」

小春は精神を集中し始めた。

刃千吏総本山・・・
約一年ぶりの親子の再会であった。しかしリンリンにしてみたらこんな形での再会はしたくはなかっただろう。それは銭氏も一緒のはずだ。

「お父様、どうしてジュンジュンをあんな目に合わせたんです。」
「組織のためだ。仕方がなかった。」
「組織の為って、私たち刃千吏の目的を忘れたのですか!私たちは神獣を守るのが役目のはずです。」
「あの時、李純を倒さなかったらこの国の他の神獣たちだけでなくこの国の人々全員が命を落としていた。」
「いったい、何があったんです。話してください!」
「真実を知りたかったら、私を倒してからにしろ。」

リンリンと銭氏は互いにカンフーの構えをとった。
「全力を持って、あなたを倒します!」

リンリンと銭氏、互いの拳はほぼ同時につきだされた。互いの拳に念力を集中させて、拳をぶつけたまま押し合いを続けている。

先に動いたのは銭氏だ。あえて、拳をずらしてリンリンの態勢を崩させた。
バランスを失い、前のめりになりそうなリンリンの懐に左のこぶしを打ち込む銭氏。
しかしリンリンもそう簡単にはやられない。華麗な足さばきで態勢を整え、体を回転させ勢いのついた肘打ちを頭に喰らわせようとした。

だが、銭氏も肘をつきだして、それを防いだ。さらに袖の長い服を生かして、リンリンの腕をからみとった。

「琳よ、その程度の腕なら父を倒せないぞ。」
銭氏が左手の念を集中させた。リンリンはその構えを見て、すぐにわかった。
(体内発火を使う気ダ。)
「さらばだ!」


その頃、小春は・・・
「いいか、李純の心臓は人よりも強靭にできている。しかしその分、蘇生させるとなれば
膨大なエネルギーが必要になる。お穣ちゃんの最大級の電撃を李純の心臓に・・・」
「はい、じゃあ始めます。」

小春はジュンジュンの心臓の上に手を組み、電撃の準備に入った。すでに小春の手には赤い電気が走り始めている。そして・・・

「いっけぇー!」

銭氏の左手はリンリンには届かなかった。左手はリンリンの右手で握られている。
「お父様、ジュンジュンの分です。発火!」
リンリンは手を組んだまま、発火能力を使った。
銭氏は急いで手を振りほどいた。

「さすがはわが娘。そう易々とはまいらぬか。ならば・・・」
銭氏が火の矢を撃つ態勢に入った。
(火の矢は直線でしか攻撃できない。なら、動きまわればいい。)

リンリンは部屋の中を駆け回った。
銭氏は狙いを定めて、火の矢を放ったがリンリンはそれを華麗によけた。
第二射が撃たれる前に近距離での発火を・・・

グサッ!避けたはずの火の矢がリンリンの背中に刺さった。
リンリンはその場に倒れこんだ。
「くっ。」
「琳よ、以前にも言ったが切り札は隠しておくものだ。火の矢の弱点を克服する技はとうに身につけておる。」

銭氏は念力を使うことで火の矢の向きを自由に変えられるのだ。

「さっ、今度こそ終わりだ!」

「何でよ、なんで動かないのよ!」
小春は最大級の電撃をジュンジュンに流した。しかし心臓は動かない。
小春はもう一度電撃を放とうとする。

「よせ、さっきの電撃でかなり体力を消耗している。無茶して使ったら、倒れてしまうぞ。」
「ジュンジュンが生き返るのと引き換えに小春が倒れたっていい!

村人たちの静止を振り切り、小春は電撃を放った。
しかしまだジュンジュンの心臓は動かない。小春はヘトヘトになっているがまだ電撃を行おうとしている。

「もう一回。」
まだ動かない。さすがに見るに見かねて、村の女たちが止めに入るが小春は電撃をやめなかった。

「ジュンジュン、起きてよ。起きたら、ジュンジュンの食べたかったバナナのクレープをおごってあげるからさぁ。あの時、小春のせいでバナナクレープ食べれなかったんでしょ。小春がおごるんでしょ。ねぇ、ジュンジュン。目を覚ましてよ!」

小春がまた電撃を流そうと両手をかざそうとしたら・・・
バシッ!
小春の手が掴まれた。
「えっ!」小春は思わず、下を見ると・・・
「聞いたゾ。バナナのクレープ、おごってくれるんダナ。」
「ジュンジュン・・・ジュンジュン!よかった!生き返った。」

小春は泣きながらジュンジュンに飛びついた。
「おい、クスミ。約束だぞ、帰ったらバナナクレープ奢るんだゾ。」
「うん、好きなだけ食べてよー!」

ジュンジュンの命の火は再び灯だした。

銭氏はリンリンに近づき、念を込め始めた。
「安心しろ、一瞬で終わる。」
リンリンは銭氏が近づいたのを見て、笑みを浮かべた。

「お父様、さっきの言葉そっくりそのままお返しします。発火!」
「何!」
リンリンは部屋の床に拳をぶつけ、念を込めた。
すると銭氏の下の床から火が噴き出し、銭氏を包みこんだ。

リンリンは急いで炎の中から銭氏を救いだした。
銭氏は力尽きた様子で寝そべっている。
「琳よ、さっきの技は?」
「実は私もお父様と同じように念力で炎を自由に操れないかと考えていました。まだ、未完成でしたが、お父様との戦いで無事習得しました。」
「地面に念をこめて、地面の中で炎を形成して、念力で相手の地下で炎を噴きださせる。見事な技だ。」

銭氏は起き上がり、リンリンに問い詰めた。
「しかし、なぜ私を助けた?神獣をいや、お前の仲間を手にかけた私をお前は許せなかったはずだ。」
リンリンは首を横に振った。

「いえ、お父様はジュンジュンを殺していません。傷を見て、すぐに気がつきました。お父様はジュンジュンを仮死状態にするツボをついていました。最初からジュンジュンを殺すつもりはなかったのでしょ。」
「参ったな、娘に見破られるようでは私も年かな。確かに李純の仮死状態にするツボをついた。だが、李純を蘇生するには私のつけた傷はもとより心臓を動かす必要がある。」
「私たちがあの村にジュンジュンを運ぶことも計算の上でしょ。それにクスミさんの電撃で心臓を動かすことも・・・」
「琳よ、こたびのことは全くもって父の完敗だ。どうやら、お前に刃千吏の後を引き継がせるのはもはや決まりのようだな。」
「でも、まだ戻るわけにはまいりません。リゾナンターとしての役目もありますから。でも、お父様どうしてこんな手の込んだことを。」




笑顔を見せていた銭氏は深刻な顔になった。
「実はM中国支部長は私の顔なじみだ。しかしあの者はMによる世界征服をたくらんでいる。」
「世界征服・・・」

Mによる世界征服という言葉はリンリンにとって思いもよらぬことだった。

「やつらはその足掛かりにこの国で巨大な要塞を建造していたのだ。建設には中国の国民たちが担ぎ出された。もちろん、我々はすぐさま反旗を翻したが、やつらは政府を恫喝し、われらに圧力をかけ、さらには神獣を人質にとるように仕向けさせたのだ。
われらは政府と神獣を盾にとられて、身動きがとれなくなった。さらにやつらは中国支部内の反乱分子をわれらに始末させた。」
「なんて、やつらだ。自分たちの手を汚させずに、お父様たちに人殺しの手伝いを・・・」
「だが、われらも黙ってやつらの言うことを聞いていたわけではない。反乱分子を殺したように見せかけて、身を隠させた。だが、その時李純に見つかりやむ終えず・・・」

銭氏はジュンジュンを傷つけたことを後悔しているようだ。

「大丈夫です、ジュンジュンもきっとわかってくれます。」
「ありがとう、琳。」

ドンドンドン!
「総統!総統!」
林の声だ。

「いかがした。」
「鳳 羅鵜が総統にお目どうり願いたいと・」
「鳳 羅鵜?」
「さっき話したM中国支部長だ。今、顔を合わせるとまずい。そこの隠し扉に隠れろ。」

リンリンは急いで絵画の裏にあるドアに身を隠した。

「失礼しますわよ。」
鳳 羅鵜が入ってきた。

「何の用だ。」
「ここにお穣さんが見えたと聞いたので、うかがったのですが。」
「娘はいない。何かの間違いだろう。」
「そうですか、今日本では大変みたいですよ。あなたの娘さんの仲間がひどい目に合ってるみたい。あっ、この国でも大変な目にあったわね。」

それを外で聞いた陳が怒って飛びかかろうとしたが、李に止められた。

「それと私たち例の要塞が完成したので日本に行きますのでしばしの別れでございます。」
「約束だぞ、政府いや中国の国民や神獣には手を出すな。」
「ええ、今はその約束を守りましょう。でも、近いうちにその約束が守れなくなるかもしれませんけどね。オホホホホ。」

鳳が部屋を後にする。陳と洪が後を追おうとするが
「よせ、お前たちが叶う相手ではない。琳、聞いていたな。」
リンリンが隠し扉から出てきた。

「はい。あんな奴がMの中国支部を指揮しているなんて。」
「どうやら、Mの上層部はかなり腐っているようだ。日本は今から大変なことにまるかもしれない。お前たちは急いで日本に戻るんだ。」
「はい!」

その頃、刃千吏総本山を離れる馬車の中の鳳 羅鵜は・・・

「本部長、銭琳はいませんでしたわ。李純のサンプルは銭に邪魔されて。はい、では要塞で至急日本に向かいます。彼女たちの確保は日本でも可能ですからね。えっ?そう、もう二人確保したのですか。さすがM本部長のマーク・ガーランド。では、日本で会いましょう。」



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