『能力者たちの隠れ里』


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保全代わりに


山間の小さな集落。
集落の中央に位置する広場には、まだ顔立ちに幼さを残した少女たちが集まっていた。
無邪気にかけっこを楽しむもの、何やら話し込んでいる集団、そして大人さながらの組手をしている二人組。
彼女たちにはある一つの共通点が存在していた。

それは、彼女たちのいずれも「異能」の力を有しているということ。

幼くして能力を発現した少女たちは周りの目からはもちろんのこと、それ以上の大きな脅威から身を守るために。
このような人も寄り付かないような秘境にて集団生活をせざるを得なかった。

しかしこれだけ秘匿していても、諜報に長けた人間にとっては無防備も同然。
ゆえに、外敵から身を守るための手段は必須だった。
例えば、集落のあちこちに設置してあるスピーカー。元は防災無線に使うものだったが、能力者の卵である彼女たちに外
敵の襲来を告げる警報を流すものに改造されていた。

警報の内容は主に三種類。
「D」。これは裏の世界では知らない人間はいないと言われる、秘密組織の手の者がやって来たことを知らせる。
「A」。こちらは最近台頭してきた新興組織を指すイニシャル。
そして…


―― 緊急警報。緊急警報。「M」の襲来。「M」の襲来。速やかに屋内に避難してください。――

けたたましいサイレンが、そこかしこのスピーカーから流れ始める。
それまで無邪気にはしゃいでた少女たちの顔色が、一斉に青ざめた。

「そんな!この前来たばかりなのに!!」
「どうしようどうしようどうしよう……」
「とにかく逃げなきゃ!みんな、建物の中に避難するよ!!」

彼女たちのリーダー格と思しき少女が、怯える子供たちに呼びかける。
幸い相手は、身体能力自体は大したことはない。こちらにやってくる前に逃げてしまえば…
ただ、一度捕まってしまえば大被害は免れない。

一斉に近くの建物に逃げ込む少女たち。
そう、捕まりさえしなければいいのだ。それでも運命は、窮地に立たされた少女たちを嘲笑うかのように翻弄してゆく。

「え、M!?」
「そんな、早すぎる!!!!!」

感知に長けた少女が、Mの存在をキャッチする。
敵は少女たちが想定するよりも早く、集落に辿り着き彼女たちの存在を嗅ぎつけていた。

「茂みの中からここここっちを見てるよ!!」
「急いで!捕まったら終わりだよ!!」

蜘蛛の子を散らしたように建物の中に逃げ込む少女たち。
だが、グループの中でも年少に属する少女が躓き、転んでしまった。


「まりあ!!」

地に蹲る少女の背後から、怪しい気配。
「M」の毒牙がすぐそこまで迫っていた。

「ふっふふふ、まりあちゃん久しぶりなの」
「きゃ、きゃあああああああ!!!!!!!!!!」

まるでうどん粉を捏ねるかのごとく、少女を撫で繰り回す「M」。
恐怖に震えていた少女の顔から、表情が消えていくのを仲間たちはただ黙って見ているしかない。

「うう、まりあ…」
「どちらにせよ『M』が満足するまで助けにいくことはできない。ここは我慢するしかないよ」

やっぱ子供の匂いは最高なのスー、とか無料で申し訳ない、などという意味不明な言葉を呟きながら少女を弄ぶ「M」。
これが弱肉強食、これが現実。とにかく、ここは嵐が通り過ぎるのを待つしかできない。

しかし、ここで少女たちのリーダーは疑問を覚える。
鈍足で運動能力の低い「M」がなぜ、誰にも気づかれることなく集落に入ることができたのか。
「ピンク色の悪魔」「感撫(かんなで)」などの恐ろしい二つ名で知られる彼女だが、ここまであっさり目的を果たすこ
とができる理由は。
嫌な予感が、じわじわと広がってゆく。

「まさか、協力者が――」
「その通りですわ」


少女たち以外は誰もいないはずの、建物の中から響く声。
予感は、悪い方向に的中した。

「さあななみん、終わらない宴の始まりよ」
「え、『F』!!」

かつて隠れ里で共に暮らしていながら、自らも幼女を愛でる衝動に目覚めてしまった裏切り者。
「双乳の天使」と呼ばれたもう一人の魔獣が、今まさに袋の鼠である少女たちに手をかけようとしていた。

まさに前門の虎、後門の狼。
能力者の卵たちの隠れ里は、かつてない危機に瀕していた。





投稿日:2014/07/30(水) 12:03:27.94 0