■ ジュッキジェネレイション -飯窪春奈・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遙- ■


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



■ ジュッキジェネレイション -飯窪春奈・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遙- ■

だいっきらい

「どぅーなんてもうしらないっ!いっしょーおしゃべりしないっ!」
「あっそーですかーいいですよーっだ、むしろ、せいせいするわ」
「だいっきらい!だいっきらい!だいっきらい!だいっきらーいっ!」
「あ、あのまーちゃん、す、すこしだけ静かに…」
「めしはだまってろ!」
「まーちゃん!年上に向かってそういうのダメでしょ!謝んなさい!」
「なんでっ!どうしてあゆみはまーにばっかりいじわるするの?まーにばっかりおこるの?くどぅーがわるいのにっ!」
「もういい加減にしてっ!」
「ばかばかばか!あゆみのばか!あゆみもきらい!みんなきらい!きらい!きらい!だいっきらいー!」


だいっきらい


最後の言葉が耳の中でリフレインする。

いつのまにかテーブルを拭く手が止まっていた。

石田亜由美は、小さく、だが、とても深い、ため息をついた。

喫茶リゾナント、目の前には飯窪春奈、そして工藤遥。

皆、浮かない顔だ。


きっと、みんなも同じことを考えている。

高く、透き通った、赤子のような、幼い声。

あゆみんあゆみん、こっちにだよー

時々うるさい時もあるけれど、不思議とあの声を聴くと心が安らいだ。

もう、何日も、あの声を聴いていない。

あの日からずっと、佐藤優樹は―――

放課後、駅で待ち合わせ。
4人で買い物に行くはずだった。

「えっとね、まーちゃんね、急いだんだけど、わかってたんだけど、五色の天使さんがひゅーんって、それでねっ」

言い訳。

また始まった、いつもの通りの見え透いた嘘。
そして始まる、お定まりの喧嘩。
いつもと同じだ、そう、よくある事だ。

だが、違った。
その日は、違ったのだ。

佐藤が倒れたのは、その直後だった。

頭の悪い石田には、医者の説明はよくわからなかった。
さけいぶりん?とにかく風邪とかではなく、物凄い熱が出てとても動けるような状態ではなくなるらしい。


もう、ほんとに…
ほんとに、もうっ…

嘘をついたのは、自分のせいで、みんなが買い物に行けなくなるとおもったから?

病気だったなんて、あんなに熱が出てたなんて。

くちびるをきゅっと噛む。

大人げない。なんてバカなんだ。
なんで気づいてあげなかった?ウチは、なんで。

「『3人には、会いたくない』って…」
面会謝絶。
だが、新垣や道重は面会している。
それは佐藤の意志。

どんなに喧嘩をしても5分もすればけろっと忘れるような佐藤から、
これほどの強い拒絶を受けたのは、3人とも初めてのことだった。

もう一度、ため息。
工藤は、なにともなく、ごにょごにょとつぶやきながら、箒と塵取りを奥の部屋へ。
飯窪は空いたテーブル、携帯を。

『いま休憩中。今日は晴れてるね。』
飯窪は、入院の翌日から毎日、何度となく佐藤に向けてメールを送っているらしい。

返信はない。

だが、それでも送り続けている。


工藤が飯窪の隣へ。
はす向かい、石田も腰を下ろす。
ぼーっと追う、小刻みに動く、小麦色の指。

ウチも何かしたい。
メールを送ってみる?
ううん、だめだ。
なんて書いたらいいかわからない。
でもこのままじゃ、いやだ。
何か、何か。

ブーン。
3人の携帯に着信の振動音。

「ああ?なんだこりゃ」
「えっ何、どうしたの?」
「いいからあゆみも見てみろよ」

件名は無し、本文は、たった一行。


『めしくぼに会いたいくどぅーに会いたいあ10気組』


え?ウチは?

そこに石田の名前は無かった。

飯窪と工藤二人の名前だけ。


あとは『あ10気組』という、意味不明な文字の羅列。

「えと、こっ、この『あ10気組』ってのがあゆみんのこと?かな?」
顔色の変わった石田の様子を即座に察し、飯窪がフォローを入れてくる。
それがわかるだけに、余計にみじめになる。
「ふんっどうだか」

どうしてよ。
まだウチにだけ怒ってる?
そ、そりゃちょっと強く言い過ぎたかもしれない、でもケンカしてたのはくどぅーとだったのに、どうしてウチだけ?
どうして?なんで?

続けて着信。

『10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい』

そして改行。

『10期に会いたい』

「なんじゃこりゃ?全っ然意味わからん」
不機嫌そうに工藤が携帯を放り出す。

「『あ』が取れちゃったね。最後『10期』になってるし」

大人げない。
また同じこと繰り返すの?
いまは、まーちゃんがメールを返してくれたことを素直に喜ぶべき。
ウチの名前がなかったのだって、大した理由はないかもしれない。
ただ単に打ちもらしてただけ、そう、きっとそう。


「『10期』ってなんだろうね?」
「一学期二学期みたいな?」
「10期…ジュッキねぇ」

再び着信。

『10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい』

「ちっ!なんだよこれぇ」
「んー会いたいって言ってる以上、私たちのこと?だよねきっと」
「もうめんどくせー『何言ってるかわからん』って返信しちゃおうぜ」
「まっ待って折角…」

ここでまたへそを曲げられてしまっては―――

ああでもないこうでもない。
『10期』
その意味不明な「暗号」の解読に四人の友情がかかっている…
…わけでもないだろうに、いつの間にやら、そんな風な流れになりつつある。

「10期…ジュッキ…10が付くもの?」
「最初『気』だったのが『期』になってるってことは漢字そのものに意味はないのかも」
「もしくはそれ以外の「き」と読む漢字の打ち間違いとか?」
「数字のほうだって意味があるのかどうか」
「んージュッキ…」
「もしかして英語かなぁ?まーちゃんそういうのよくやってるし」
「でも『ジュッキ』なんて発音の英語ある?」
「んー…わかん、ない…」
三人、頭を抱える、まるでわからない。


「ねぇ、はるなんが送ってたメールにさ、なんかそれっぽい事無いの?」
「うーん、そういってもぉ、ほんとごく普通の事しかないと思うけど」
「とにかく見てみようぜ」

三人、つぶれた団子のようにほほを寄せ、小さなディスプレイの文字を追う。

『いま休み時間。次は数学なんだ。』
『駅前に新しい雑貨屋さんOPEN。退院したらみんなで行こう?』
『今日は雨かぁ、でも張り切って行ってくるよ!』

どうということのない、たわいもない日常の報告。
どれも同じ、なんということもない、メールが並ぶ。

「んー…てゆうか、普通、だね」
「だな、はずれかぁ」

たわいもない日常、何の変哲もない一文。
そう、なんでもない、何の関係もない、ただの―――

「ん?これって…」

だが、その一文を見たとき、
石田は、すべてを思い出した。

『お早う。これから学校行ってくるね。今日はいい天気だね。』

ガタン!
矢庭に立ち上がる。
携帯をひっつかみ、短く一文、そのまま送信。

「気」でよかったんだよ、まーちゃん!



そうだ!そうだった!そうゆう子だ、そうゆう子なんだよ
思い出した、思い出した!もうっまーちゃんっ
あんなの、おぼえてるわけないじゃない

携帯を放り出し、おもむろに掴む、二人の、腕を。
「え?え?なに?」
「行こう!」
「行くってどこに行くんっ」
「病院!まーちゃんのところ!」
「ちょっ!ちょ」

「あ」がウチだ、あゆみの「あ」だ
そこまで打って、「屋上の事」思い出して…それでこんな

今なら、【跳べ】る!
そうだ、あの日、青天のもと、あの時は出来なかった!ウチは!
でも今は!今なら!

感覚を!空へ!

パァン


病室、壁、花瓶、
呼吸補助器、イルリスタンド、点滴、チューブ、
つながったその手の先、
振動する携帯、
その、振動の、まだ止まぬ、その前に!


「まぁああああああああちゃぁあああああああああん!」


喫茶リゾナント、無人のテーブル、
床に落ちた携帯、メモリーのどこかには、こんな一文があるはずだ。


『今すぐ行くよ!天気組で!』




――――――




屋上、青天、青い空、
太陽、陽射し、白くはためく、洗濯物。


「はー…まったく、いい天気だなぁ」
「まったくー?まったくってなにー?」
「え?まったくってなにって、えとまったくっていうのはえと」
「なにーねーまったくってなにー?まったくって」
「やっだからそのぉ、たくさんってゆうか、なんだっ…けかなぁ」
「ぎゃはは!あゆみんまったくのいみしらないでまったくっていってたのー?」
「んぐっそっそうだ!知ってる?まーちゃんとウチ…四人が初めて会った日も、今日みたいにいい天気だったんだよっ!」
「ねーまったくはぁ?」
「ぬっ、まだそこひっぱります?えーっとぉ…」
「ひゃーーーーー!」
「ぬぉ!急に何?」
「じゃあさ!まーたち四人で天気組だ!いい天気に会ったから!」
「はぁ?なに?ちょっとよくわからないんですけど」
「んーもうっ!あゆみんはほんとに頭が悪いんだからっ!よく考えてっ!」
「なっ、まーちゃんにそんなこといわれたくないよ、だいたいさ」
「ひゃーーーーー!」
「今度は何?」
「どうしよう!じゃぁ鞘師さんたちはきゅーき組だ!大変!」
「えー?キューキ?…数字の9ってこと?
ああ、ウチらが英語でテンだから?てか「気」が余っちゃてるけど、ん?だったらさぁキューキじゃなくてナインキとかになるんじゃないの?」
「そうゆうことじゃないよ」
「どうゆうことよ」
「どうしよう早く鞘師さんたちに教えてあげないと!」
「ちょちょっ!どこ行くの?だーめっ」
「えなんで?まー、いそいでるのにっ」
「いけません、洗濯物干すの全部終わってからです」
「えー!」
「えーじゃない、はいこれ持つ!はいはい手を動かす!」
「いじわるー!あゆみんのいじわるー!もーっあゆみんなんか、あゆみんなんか、」

だいっきらい



                               【index】





投稿日:2014/07/26(土) 02:01:12.92 0