『瑞珠剣士・鞘師』第二期






第一話「墓守」


まるで人から見捨てられたような、寒村。
そんな過疎化の進んだ村の村長からの依頼を受け、遠路はるばるやってきた里保たち。

「夜な夜な墓場の死体が、墓穴から這い出て…人を襲うのじゃ…」

青ざめた顔をして、初老の村長は言う。
思い出したくないことを語るようにして。

かくして村に到着して3日目の夜。事件は起こる。


村はずれの墓地。
体をのた打たせ、彷徨う亡者たちの中心に彼女はいた。

「お姉さんも、まーちゃんのことを邪魔しにきたんですか?」

整った顔とは裏腹の、幼い口調で話す少女。

「うちには、君を止める責任がある」

里保が刀を構えると同時に。
死人たちが次々と立ち上がる。死者を自由に操ることのできる“死霊魔術(ネクロマンシー)”。
だが、里保の傍らにいた聖がはっきりと口にする。

「里保ちゃん、この子の能力は、死霊魔術じゃない」

次回 瑞珠剣士・鞘師 「墓守」
その手を最後まで離すな。





投稿日:2014/05/27(火) 11:14:09.24 0


第二話「青狼」


休日の喫茶リゾナント。
いつものように店主の愛を囲むように談笑しているリゾナンターたちの前に一人の少女が店に飛び込む。

「見つけたっ……!あなたたち何者よ!まーちゃんをどこに連れて行ったの!?答えなさい!」

全員の視線が集中する中、少女はどうだとばかりに得意顔をしてみせた。
呆気に取られている面々を余所に、

「何を企んでるのか知らないけど、この石田亜佑美に見つかったからにはおしまいだからね!」

と大見得まで切る始末。
何なの、この子。店内に、どうリアクションすればいいか戸惑っている空気が満ち始めていた。


亜佑美が探していた優樹が現れた後も、誤解は解けることもなく。
なぜか里保と亜佑美が直接対決をすることに。

高速移動を駆使し、攪乱作戦に打って出る亜佑美。

「絶っっ対負かしてやる!一瞬で終わらせるから!!」

そして―――
亜佑美の言った通り、勝負は一瞬でついた。

次回 瑞珠剣士・鞘師「青狼」
赤と青が交わりし時、何がが動き出す。





投稿日:2014/05/27(火) 13:14:12.81 0


第三話「転機」


喫茶リゾナント。
普段はどちらかと言えば閑古鳥が鳴いているような店舗であるからして、様々な風変わりな客がやって来る。
そしてその日やって来たのは、その最たるもの。

「お前ら、元気にしとったか?」
「つんくさん!!」

白のタキシードを着た、胡散臭い男。
つんくと呼ばれたその中年男性は、愛に向かってこう告げる。

「会って欲しいやつがいる。悪い話やないと思うで?」


警視庁。
中でも対能力者特殊部隊を擁する部署は、特殊性ゆえか厳重に警備された区画に設置されていた。その区画内にある、会議室に愛は足を踏み入れていた。

「単刀直入に言う。我々は、ダークネスの脅威からこの世界を守るために、新しい部署を作る。君には、その部署の最先鋒に立ってもらいたい」

管理官の言葉は、暗に愛にリゾナンターとの別離を示唆していた。
果たして、愛の決断は。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「転機」
出逢いがあれば、別れもある。






投稿日:2014/05/28(水) 00:51:49.08 0


第四話「追憶」


愛からリゾナンターのリーダーの座を託された里沙。
自分達以外は皆、リゾナンターになったばかり。必然的に里沙の補佐的役目を担うことになったさゆみとれいなだが、れいなは心に抱えたわだかまりを拭い去る事ができないでいた。

一方、久々に故郷へと帰った里保。
水軍流の師匠である里保の祖父は、孫の成長振りに目を細める。

「向こうでは、随分いい経験をしたんじゃろうなぁ」
「じいさま、うちは…まだまだじゃ」

祖父の労いの言葉に、ゆっくりと里保は首を振る。
彼女の記憶は水軍流を、そして鞘師の名を継ぐはるか昔に飛んでいた。


水を友とし、水と共に生きる。
それが水軍流の極意。闇を斬る刀の鞘を守りし者「鞘師」の宿命。
だが水を自在に操るには、里保はあまりにも幼すぎた。

「すず香ちゃん!!」

今でも、昨日の事のように思い出す。
自らの未熟な力のせいで、傷つけてしまった友のことを。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「追憶」
それは心の湖に沈めた、悲しき思い出。






投稿日:2014/05/28(水) 00:52:21.50 0


第五話「電怪」


喫茶リゾナントのドアベルが、乱暴に鳴らされる。
敵襲と思い前に躍り出る亜佑美と衣梨奈だが、現れた女の様子は明らかにそれではなかった。

「里沙…助けて…あたし、追われてるんだ…」
「杏奈!?」

里沙の知り合いと思しき女はそれだけ言うと、崩れるようにして倒れてしまった。
倒れた女を抱きかかえながら、一抹の不安が過る。

組織の人間を追うもの。すなわち、粛清人。


喫茶店から少し離れた、空き地にて。
杏奈を里保たちに任せ、里沙は追手である粛清人「R」を戦いの地へとおびき出した。
戦いのさなかに里沙が放ったピアノ線、それは「R」の体に届く前に弾かれ破壊されてしまう。

「あんた、相変わらずこんな弱い飛び道具なんか使ってんの?進歩がないわねえ」

圧倒的な余裕を見せながら、里沙を弄ぶ「R」。
しかし、そんな彼女から意外な言葉が飛び出した。

「そろそろ、ね」
「どういうことですか?」
「『本命』は、あたしじゃないってことよ」

次回 瑞珠剣士・鞘師 「電怪」
忍び寄る、裏切りの電撃。






投稿日:2014/05/28(水) 14:15:30.15 0


第六話「孤独」


都内で次々と発生する、自殺未遂事件。
共通点は、いずれも中高生、不眠症を患った末の精神錯乱。

「うちの娘は、自殺なんかするような子じゃなかったのに」

涙ながらに訴える被害者の母親。
救いの手を差し伸べるリゾナンターは、事件の陰に能力者がいることを確信する。


「ただ、仲間が欲しかっただけなんだ」

里保たちは、全ての元凶である一人の人物のもとに辿り着く。
ごく普通の、どこにでもいそうな、少年。

「だから、ぼくの邪魔をするやつは全員…殺す」

訓練されていないにも関わらず、ありえないほど強力な精神干渉。
里沙のサイコダイブにより少年の意識の内側に入った里保が見たものは。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「孤独」
緩やかな毒は、やがて人の命すら奪う。






投稿日:2014/05/30(金) 00:44:51.70 0


第七話「群集」


里保は、迷う。
この迷路のような街の構造に。
そして、彼女自身の決断に。

「あなたは確かリョウマくんだったよね」

大人数で二人の少女を取り囲んでいた、グループのリーダーらしき少年に声をかけた。
少年の素性は、依頼人によってもたらされていた。
だがそれが、全ての始まり。

「…あんた、何で俺の素性を知ってるのかしんないけどさ。もう、逃げられないよ?」

少年が携帯に耳を押し当てた瞬間。
街のすべての人間が、敵になった。


路地裏を走り、壁を駆け昇り、屋上伝いに空を翔ぶ。
それでも、少年の息のかかった「追手たち」は里保を追うのをやめない。

彼らを倒すのは簡単だ。里保の腕なら、傷を負わせることなく無力化できるだろう。
けれど、里保を追う青ざめた、必死の形相が決断を鈍らせる。

止むことのない追手の追撃を交わし続け、ついに里保は少年の待つ場所を突き止める。
天を衝く刃の先は、どのような答えを導き出すのか。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「群集」
その剣は、人の心を糺すためにある。





投稿日:2014/05/30(金) 10:05:14.23 0


第八話「彫刻」


休日。彫刻展示会に足を運んだ春菜。
しかし彼女はそれきり消息を絶ってしまった。

手がかりを探そうと、展示会の会場を訪れた里保が見たものは。
春菜そっくりの彫刻。

「ちょうどいいモデルの方がいたので、協力していただいたんですよ」

ベレー帽を被った細身の女性が、にこやかにそう話す。
いかにも怪しい。里保は直感でそう感じるが、確証はなかった。
そこで、とある一計を案じることに。


「私の作品を…どうするつもり?」
「返してもらいますよ、もちろん」

女の能力で彫刻になってしまった、遥と優樹を前にして里保が言う。
だが、女が有する石化能力は少々厄介だった。

石化の視線の対策となったはずの鏡を全て破壊され、里保が取った最後の手段。
それは・・・

次回 瑞珠剣士・鞘師 「彫刻」
闇に、魅入られるな。





投稿日:2014/05/31(土) 00:48:20.56 0


第九話「宿題」


じゆうけんきゅう 1-A さとう まさき


こんちくわ~、まーちゃんは~あえあさんをそだてることになりました
きっかけはしりあいのおねえさんがあえあさんをそだてたら?といってくれたことです
むかし、ほっかいどうにいたころみたいで、なんだかぽくぽくして楽しかったです


優樹が育てていたのは、恐ろしい生物だった。
「Animal with Epidemic Abomination」略して「AEA」。
伝染性の憎悪を撒き散らす「AEA」は優樹の籠から逃げ出し、街に逃げ込む。
多くの人間が行き交う場所において憎悪が伝播したらどうなるか。
里保たちは最悪の事態を防ぐべく、総員で「AEA」の捕獲に向かった。

衣梨奈と里沙の尽力により、被害は最小限に食い止められる。
そして亜佑美の高速移動によって、ついに「AEA」は路地裏に追い詰められた。
だが、その前に立ちはだかる人影。

「やめて!あえあさんを殺さないで!!」

涙ながらに訴える優樹に対して、里保は言う。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「宿題」
結末の果てに、何が綴られるのか。





投稿日:2014/06/01(日) 01:26:25.14 0


第十話「神託」


テレビ局が、謎の武装集団にジャックされた。
局員、スタッフ、果てはタレントまで。局内にいた全ての人間が拘束されてしまう。
その中には、かつてリゾナンターであり、今は力を失った久住小春の姿もあった。

武装集団のリーダーはテレビの画面から高らかに宣言する。
東京スカイツリーに取り付けられた装置により、24時間以内に電波の範囲内の人間は全て「ステーシー」という名の存在に
変えられてしまうことを。

交換条件などはない。
ただの、死刑宣告だった。


テレビを見ていた里沙と愛佳の表情が変わる。
彼女たちは見つけたのだ。
意気揚々と演説する男の後ろに立っている、小さな女の姿を。

「『詐術師』…こいつは、ダークネスの幹部や」

吐き捨てるように言う愛佳。
そんな時だった。愛佳の「最後の」予言が降りたのは。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「神託」
その言葉は、運命の悪戯か。





投稿日:2014/06/02(月) 00:49:19.03 0


第十一話「凶弾」


武装集団の野望を阻止するために、スカイツリーとテレビ局、二つの目的地に分かれたリゾナンターたち。テレビ局へと向か
った里保たちは先輩である小春や、小春の知人である田島明夫の尽力もあり、全ての人質を解放する事に成功する。

だが、全てが終わったと思った瞬間。
背後から、数発の銃声。

里保以外の、若きリゾナンター全員が血を流し、倒れていた。


牛柄パーカーの、背の小さい金髪の女が言う。
甲高い、耳障りな声で。

「なあ。銃は剣より強しって知ってるか?」

女の能力で能力を封じられている中、里保はただ、自らの刀の鞘に手をやり待つ。

「ばーか。そんな原始的な武器でおいらに勝てるわけないじゃん」

待っていた。
相手を切り伏せるだけの十分な間合いが、取られる事を。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「凶弾」
狂った魔弾が、闇を翔ぶ。





投稿日:2014/06/02(月) 00:51:34.69 0


最終話「銀界」


リゾナンターたちの活躍で、東京都民の総ステーシー化は免れた。
だが、ダークネスと対峙することの危険性についに聖が反発する。

「フクちゃん、ガキさんは先輩やろ!!」

見かねたれいなが一喝し、聖が悲しみに啜り泣く中。
里沙は、リゾナンターとダークネスの因縁について語り始める。
それは里保たちが知らなかった、出来事。
愛が語ろうとしなかった、真実。


その夜は、聖夜だった。
愛は願っていた。全ての人の悲しみが消えることを。
さゆみは。れいなは。絵里は。愛佳は。ジュンジュン、リンリンは。
この世が平和で満たされることを願っていた。

里沙は。
「あの人」が救われることを、願っていた。

けれど。
願いは、叶う事はなかった。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「銀界」
虚ろな天使が、全てを無に還す。





投稿日:2014/06/02(月) 00:55:35.82 0
























最終更新:2014年06月09日 12:16