『瑞珠剣士・鞘師』


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第一話 「闇黒」


学校の屋上。
鈴木香音のお気に入りの場所である給水塔には先客が。

「……誰?」
「しゅわしゅわ、ぽん」

タンクの上で寝ていたのは、見慣れない制服に、見慣れない顔。
座敷童みたいな小さな少女。



放課後。気の弱そうな少女が数人に囲まれ、虐げられる。
昏い感情が限界に達した時、心の闇からどす黒い大蛇が現れた。

「消えろ!みんな消えろ!目障りなヤツはみんな、消してやる!!」

周りを囲んでいた級友たちを闇へと呑み込む大蛇。
その荒ぶる蛇の前に、小さな影が。

「闇を斬るのが、うちの宿命だから」

次回 瑞珠剣士・鞘師 「闇黒」
人は誰しも心に闇を抱く。





投稿日:2014/05/14(水) 01:00:45.16 0


第二話 「鎌鼬」


「えー、突然だが転校生を紹介する。君、こちらに来なさい」

ある朝のホームルーム。
担任の突然の一言、続いて現れた少女の姿に香音は驚愕する。

「り、里保ちゃん!?」

おかっぱ頭の転校生。
幼い顔立ちながらも凛とした佇まいを見せるその少女は、確かに昨晩香音の目の前で大蛇を屠った張本人だった。


誰よりも、迅く。
ただそれだけが願いだった。
少女は風を纏い、ショートトラックを駆け抜ける。
だが、いつからだろう。風の声が、聞こえなくなったのは。

「あたしの…あたしの邪魔をするなぁぁ!!!!!!!!」
「あんたの闇は…うちが断ち斬る」

次回 瑞珠剣士・鞘師 「鎌鼬」
荒ぶる風を、水の剣が切り裂く。






投稿日:2014/05/14(水) 10:19:26.39 0


第三話 「冷血」


鈴木香音の知り合いであるという、学校の先輩でもある譜久村聖。
一見どこぞのお嬢様のような雰囲気を漂わせた彼女から、意外な言葉が飛び出した。

「ねえ里保ちゃん。あなた、『吸血鬼』って信じる?」

首を振る里保。
だが、ここ数日の間に起きている校内での学生失踪事件はその吸血鬼とやらが起こしている。
そんな噂が実しやかに語られているのもまた事実だった。

「『吸血鬼』と人間を見分ける、二つの方法を教えてあげる。それは…」


闇に包まれた校舎の廊下。
鏡をバックに、赤い眼をした少女が立っている。
黒づくめの、まるで闇より生まれたかのような姿。
窓から漏れる光、照らしだされたその彼女に、影はなかった。

「あんた…」
「深華(みか)って呼んでもらっていい?それが名前だから」

無防備にも、刀を構える里保へとゆっくり近づいてゆく深華。
それでも里保は刀に込めた気を決して緩めない。
闇を斬る。それが「鞘師」の称号を受け継いだ者の運命だから。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「冷血」
喰らうか。それとも喰われるか。






投稿日:2014/05/15(木) 00:22:35.90 0


第四話 「憎悪」


…地獄…
そこはまさに地獄だった。

見境なく暴れるもの、窓から身を投げ出すもの、自らの顔面をひたすら床に打ち付け続けるもの。
血まみれのカッターを互いの体に突き立ててなお、さらに相手を切り刻むことをやめないものたち。
赤と黒の狂気に塗れた世界の中心で少女はただ、ひきつった笑顔で立ちつくしていた。

「あの子、『心がわからない』」
「笑ろうとる…こんだけのことしといて!よう笑ろうもん!」

少女を救うため、駆けつけた二人の女性。
彼女たちが少女の「終焉」を決意したその時。
刀を携えた里保が音もなく教室に現れた。


刀の背で打ちのめされ、両腕をへし折られても。
少女は、笑っていた。壊れた玩具のように。
壊れた心を周囲にまき散らしながら。

「なぜ、泣いてるの?」

それでも、里保は訊ねる。
同情ではない。ただ、里保には彼女が、― 生田衣梨奈 ― が泣いているようにしか見えなかった。

「泣いているなら、普通に泣けば?」

次回 瑞珠剣士・鞘師 「憎悪」
真一文字が少女を魂の牢獄から解き放つ。





投稿日:2014/05/15(木) 11:41:23.79 0


第五話 「共鳴」


学校を舞台とした集団パニック騒動は。
学校の生徒たちの記憶から跡形もなく消えていた。
だが、それは「消えた」のではなく「消された」のだということを。
里保。香音。聖。そして衣梨奈は知っていた。

「久しぶりね。あの時から、さらに研鑽を重ねたように見えるけれど」
「…水軍流を、『鞘師』を継ぐ者として当然のことですから」

衣梨奈の起こした騒動にいち早く駆けつけ、そして当事者たちの記憶を消した女性たち。
彼女たちと里保は数年前に一度会っており、また偶然にも聖の知り合いでもあった。


喫茶リゾナント。
女性たちのリーダーである高橋愛が店主を務める喫茶店。
愛は、リゾナントに集められた少女たちに語る。
自分たちの存在を。
そして彼女たちが追い、そして里保たちの学園に闇をもたらすものの存在を。

「強制はしない。でも。あーしたちはもう、仲間やよ」

心を響き合わせる者たち。
その名は、リゾナンター。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「共鳴」
心の声に、耳を傾けろ。






投稿日:2014/05/16(金) 00:38:02.27 0


第六話 「双極」


ダークネス。
それが里保たちの通う学園に闇を手引きした組織の名前。
大蛇を纏う少女。風を走らせる少女。自らを吸血鬼と謳った少女。そして衣梨奈。
彼女たちの暴走は、意図的に仕組まれたものだった。

普段通り学校に通いながらも、ダークネスの手掛かりを探し始める里保。
その中で浮上する怪しい人物。
学校の体育館まで追い詰めたものの、急激な力の流れが里保たちの動きを封じる。
その危機を救ったのは、リゾナンターのリーダーである愛だった。


愛が見守る中、体を刀で支えながら男に正対する里保。
その表情には、苦悶の色が浮かぶ。

「磁力じゃ人を殺せない? 馬鹿を言うにも程がある。磁力は、人を殺せるんだよ」

自らをJと名乗った男は、磁力を操る能力者。
里保は体を支えていたのではない。刀が、床に吸い付いて離れないのだ。

「さよならだ」

言いながら、懐から光る銀色のナイフを何本も取り出し、空に投げる。
全ての刃が里保に向いた時。里保は、笑っていた。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「双極」
勝利の力は、強きものへ。





投稿日:2014/05/16(金) 13:04:58.60 0


第七話 「大樹」


校舎裏にある、いつから植えられたのかもわからないような大きな木。
年月を重ね木肌を厚くしていったその佇まいは、樹齢数百年と言われても不思議ではない。
日の当たらない場所にひっそりと根を張る、その木にはとある噂が流れていた。

―――この木は、人に襲いかかる―――、と。

「そう言えば、近くの公園にもそんな木があったよなあ。ま、結局噂はただの噂だったんだけどさ」

喫茶リゾナントで何とはなしに衣梨奈が話した話に、店の常連客がそう答えた。
愛の、そして里沙の表情が変わる。
里保は直感で理解する。彼女たちは、「あの木」に会ったことがあると。


被害に遭った生徒たちの気を吸った大木が、闇に塗れて牙を剥く。
生い茂った葉が、鋭い枝が、荒ぶる根が。
先輩たちから聞いていた話とは違う、邪気の塊。

「…この木は。高橋さんたちの知ってる木であって、そうではない。違いますか?」
「ほやの。この子は、あいつらの狂った技術で、歪められた命。『あの木』の、クローン」

水に滴り輝く刃を携え、里保は駆け出す。
呪われた生を、終わらせるために。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「大樹」
この世には、許されざるものがある。





投稿日:2014/05/17(土) 01:24:06.87 0


第八話 「鏡像」


喫茶リゾナントのカウンターで。
リゾナンターのエース・田中れいなは思わぬ敵の襲来に遭っていた。

切り裂かれるテーブルクロス、破壊される椅子。
切れ味鋭いその軌跡に、れいなは懐かしさすら覚える。
だが、彼女はれいなの思い出の人物ではない。

「もうやめり!フクちゃん!!」

れいなの命を狙うのは、風の力を模倣した、彼女の後輩。


「聖、ダークネスに寝返ったんです。だってそうでしょう?能力者が虐げられる世界なんて、くだらない」

明らかに敵意を持って、リゾナンターたちに対峙する聖。
メンバーたちが困惑する中、里保はこう告げた。

「はっきり言います。そのフクちゃんは偽者です」
「なんで?どうしてそんなことが里保ちゃんにわかるの?」

疑問を呈す香音に、里保は刀を捨てて聖の前に歩み出る。
掲げられた手は、意外にも聖の胸に。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「鏡像」
よい子のみんなは決して真似をするな。







投稿日:2014/05/17(土) 13:14:48.54 0


第九話「信頼」


聖に化けた「擬態(ミミックリィ)」能力者はあくまで囮。
敵の本当の目的は里保だった。

「駄目だ…完全に憑依されてる」

明らかに狂気に蝕まれた里保の心に触れた里沙は、彼女の精神が既に敵の憑依能力者の手に落ちていることを確信する。


「おっと、馬鹿なことは考えるなよ? この体は間違いなく鞘師里保のものなんだからな」

里保の前に一歩踏み込んだ衣梨奈を、憑依能力者の声が牽制する。
しかし衣梨奈は立ち止まらない。

「里保を返せ」
「これ以上近づいたらどうなるか、わかってるよなあ」
「まさか生田…やめなさい!!」
「か  え  せ」

里沙の言葉も耳に入らない。
ただ、目の前の少女を救うためだけに。

次回 瑞珠剣士・鞘師  「信頼」
聞こえるか、友の声が。





投稿日:2014/05/22(木) 18:29:54.91 0


第十話「禍刻」


ついに、学園を覆う闇の正体が明らかになる。
里保たちの通う学園で頻発する能力者による事件。その全てが仕組まれたものだったことを、リゾナンターの予知能力者である光井愛佳が突き止めたのだ。

「…視えたんですわ。白衣を着た、嫌な感じの女が」


その女性は最早、里保たちが知っていた彼女ではなかった。
学園の生徒を実験材料とし、組織の計画に利用していた、人の皮を被った闇の住人。

「よく、来たわね。癪だけど、『あいつが言った通り』になったってわけか」

里保、聖、衣梨奈、香音。
四人の能力者を目の前にしても、女は動揺の色すら見せない。

女は、自分の耳元を指差す。
そこには小さなピアスが光っていた。

「見える? あたしが開発した、『小型異能力阻害装置』。この意味…分かるわよね?」

言いながら懐から取り出した黒い銃。
銃口が、少女たちの心臓を狙い澄ましていた。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「禍刻」
悪意に塗れた箱庭が、今暴かれる。





投稿日:2014/05/23(金) 00:45:46.78 0


第十一話「暴動」


―PM1;28―

突然の銃声と共に、教室の扉が開き、武装した集団が入ってきた。
はじめは何かの冗談だと思っていた生徒たちも、自らの頭に銃口が突きつけられると顔を青くして震え上がる。

「この学園は今、我々の支配下にある。我々は、これより、この学園にいる2,000名を人質とし、日本政府に交渉を開始する。日本政府
が要求に従わない場合、10分ごとに百人ずつ殺してゆく」

武装集団の指揮官が、生徒や教師に向かって流暢な日本語で話しかける。
平和な学園生活は、一瞬にして終わりを告げた。


― 彼らの、ううん。彼らの背後にいる男の真の目的は独裁国家の打倒なんかじゃない ―

里保たち四人の心に話しかける、声。
リゾナンターのリーダーである愛の声だ。

― 目的は。この学園で行われた人体実験の証拠の隠滅。つまり…被験者たちの抹殺 ―

学園を解放するため、学園の中と外にいるリゾナンターたちが動き出す。
愛と里沙、れいなが武装集団と交戦し、彼らに傷つけられた生徒たちをさゆみが癒す。愛佳の手引きで、生徒たちを学園の死角から逃が
してゆく。だが、一部の生徒たちは未だ囚われたまま。

里保は、刀を携え、武装集団を斬り捨て駆け抜ける。
この学園の、闇の中枢に向かって。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「暴動」
ここはお前たちの劇場じゃない。






投稿日:2014/05/23(金) 12:53:14.96 0


最終回「未来」


重厚な扉を袈裟懸けに斬り裂く。
理事長室。薄闇に包まれた部屋の床には、本来の部屋の主が目を見開いたまま床に伏していた。
その瞳にはもう生命の輝きはない。

立派な作りの机には、一人の男が座っている。
里保はこの男の顔に見覚えがあった。

「…有名人も、気苦労が絶えないわね。会う人間すべてに、そんな顔をされるんだから」

男の傍らにいた女が、口を開く。
幾重もの煌びやかな着物に身を包んだ、黒髪が印象的な女性。

「民自党党首・黒崎孝雄。それがあなたが対峙している人物の、名前よ」


「私は」

クリーンなイメージで売る黒崎の、もう一つの貌。
目的の為には手段を選ばない、策略家。

「能力者がこの社会のトップに立つべきだと考えている」

そして、ダークネスと密接に結びつき闇を享受する。
彼もまた、能力者。

「…そんな未来に、明日はない」

学園を舞台とした黒い渦。最後の戦いの火蓋が今、落とされる。

次回 瑞珠剣士・鞘師 「未来」
未来をその手で掴み取れ、鞘師!!






投稿日:2014/05/24(土) 17:38:03.14 0