永遠が欲しい―――
本当にそれが自分の願いだったのだろうか―――?
まるで氷のようだと言われた。
この忌まわしいチカラと同じく、一片の温もりも感じられないと。
わたしは“むつのはな”――
鋭く尖った6つの花弁を持った悪魔。
美しいと言う者もいるけれど、それには必ずある種の畏怖が伴なう氷の華。
わたしは雪の結晶――
触れる者を凍てつかせる凛冽たる魔女。
温かさに怯えて自ら酷寒に身を委ね、温もりに憧れて絶望する氷の塊。
自ら望んで凍えるような冷たい闇の世界に在りながら、誰よりもそれを怖れていた。
温もりを、明るい光を嘲笑い、忌避しながら……本当は誰よりもそれを欲していた。
永遠を得たいと思ったのは何故だっただろう。
どれほどに焦がれても自分を振り返ってはくれない温もりの代替品だったのだろうか。
どんなに慕っても決して自分を照らすことのない光へのあてつけだったのだろうか。
――今ではもう分からない。
ただ――生きる意味が欲しかっただけなのかもしれない。
それが分からないままに老いて死ぬのが――怖かったのかもしれない。
でも――――もういい。
今は不思議と心穏やかで……あたたかい。
――雪の結晶も……溶けて消えるとき、こんな気持ちなのかな?
無へと還ろうとするその瞬間、わたしの顔に浮かんでいたのは静かな微笑みだった―――
最終更新:2010年06月14日 19:56