■ インパクトナックル -竹内朱莉- ■



 ■ インパクトナックル -竹内朱莉- ■

衝撃

それこそが竹内朱莉の本質だった。

耳をつんざく破壊音、分厚い壁を砕き、その拳が突き出される。
拳と、腕と、そして太腿が、現れる。

「はわー、たけちゃぁん…」
壁を破壊した先、情けない声を上げ、床にうずくまっていたのは、全身黒ずくめの中西香奈だ。

「かななん!怪我ないっ?」
「うん、つきゆびしたぁ…」
「つきっ?撃たれてないのってゆってるのにっ!」
「ひゃーうたれてません」

「まったくもうっ!だっから言ったのっ朱莉わっ!いっそいでって!」
仁王立ち、フル装備の中西とは対照的、あまりにもラフな格好。

「せっかくっ!おんみつ行動してたんでしょっ!これでぜーんぶおじゃんだよっ!」
どこにでもあるようなプリントTシャツ、デニムのショートパンツ、
黒のニーソックスに、黒のスポーツシューズ。
顔には、黒いニットの覆面帽。
赤い縁取りの丸い穴、それぞれから、愛嬌たっぷりの目と口と鼻がのぞく。

――最新のセキュリティシステムの前に、覆面など、何の意味も無いのだが――

「こわかったぁひーん」
なさけない声をあげる中西。
たくましくもふくよかな、その太腿にすがりつく。


「もうっ!じゃーま!いま朱莉にくっつくと危ないよっ!さーがってて!」
中指と薬指、ほんの少しだけ、軽く中西の額を叩く。
バチン
「ひゃー」

小さな破裂音。

ごろごろと転がってゆく中西。
「たけちゃんいけずぅ」

「ふんっだっ」
あらためて正面に正対する。

「でもっ間にあってよかったよっ。『お宝』は、もうとってきたんでしょっ?」
「うんーばっちりー」
中西は寝転がったまま、親指を立てる。

「じゃっ、脱出だっ、でもっ」

追手が包囲を狭める。
残存兵力は一人二人ではない。

「そーのーまーえーにーっ!」

全員が銃器で武装した、プロフェッショナルの集団。
躊躇なく発砲、たとえそれが女子供であろうとも、容赦はない。


――のぞむところだ。

衝撃、破裂、衝撃

竹内は走りだす、銃弾の雨に。

「こいつらっ!全員っ!ぶうっっっとぉばぁああああああすっ!!!」



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投稿日:2014/05/01(木) 23:18:02.59 0
























最終更新:2014年05月04日 10:14