■ ゲッコー -中西香奈- ■


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 ■ ゲッコー -中西香奈- ■

三日月。
高層ビル。
連なるガラス窓、聳えるコンクリート。

壁、壁面に伸びる影。
細い手足、細い身体。

すらりとした少女だ。

黒いジャンプスーツ、月光が、長いシルエットを。
黒のタクティカルブーツ、黒のグローブ、やけに分厚い。
肩にかかるボブの黒髪、月光を浴び淡い光を反射する。

顔は、わからない、暗視ゴーグル。
白いうなじ、そして、桜色のくちびる。
全身を覆う黒、唯一、そのうなじとくちびるだけが肌の輝きを。


それはきっと、年端もいかぬ少女なのだろう。
だが、その少女は不思議と妖艶な色気を漂わす。

ガラスとコンクリート、高層ビルの、その壁面。

少女は、立っていた。

垂直に。

すなわち、地面と平行に。

「はわぁ、お月さん、きれいやわぁ」

暗視ゴーグルをずりあげる。
眺める月と同じ、三日月のような細い目がのぞく。

そう、彼女は『くっついて』いた。


ブーツの底面、たったそれだけの接触で、
少女は己の全体重を支え切り、壁面に張り付いているのだ。

『月とかっ!どうでもいいよっ!はっやっくっ!』
インカムから響く高い声、竹内朱莉だ。
『"りなぷーのやつ"時間切れしちゃうよっ!』

「ひゃーただいまー」
少女は身体を丸め、両手を壁面にそわせる。
両足を大きく開き、張りのある臀部を突き出す。
体幹を器用にくねらせ、壁面をするすると登りだす。

それは、まるで、『ヤモリ』

少女の名は、中西香奈。
和田彩花と福田花音、二人によって救われた少女。
前田憂佳と小川紗季、二人の命と引き換えに、救われた命。

田村芽実、憐れな被験体。
彼女と同様、あの地下施設で実験と言う名の虐待を受け続けていた。

少女は、【能力者】である。

黒く、妖艶なヤモリが壁面を進む。
あっというま、すでに屋上まで到達している。


そう、少女の能力、それは――



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投稿日:2014/04/30(水) 11:31:13.64 0