13-4


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」13-4


335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 04:50:31.29 ID:6OFcHF6P
――光の塔、その道程

……コオォォン

女騎士「だーかーらー! “ひとつまみ”ってのは
 指先でつまめる量。なんで“ひとつかみ”と いっしょにするっ」

勇者「そんなこと云ったって」

魔王「ま、魔界には様々な氏族がいるからな。
 そう言う曖昧な表現は争乱を招く元になるのだ」

女騎士「へー」

勇者「冷たい視線だっ」
魔王「理不尽だぞ、女騎士っ」

女騎士「食料を無駄にするのは、修道会の教えに反する」

勇者「それはそうだけど」
魔王「食事なんてメイド長に頼めばいいのだ。
 あちこちに酒場だってある。自分で作れなくとも
 なんの問題も発生しないっ。些末な問題だ」

女騎士「そう? ……勇者」

勇者「ん、なんだ?」

女騎士「はい。ビスケット」ひょい

勇者「ん。さんきゅ」ぱくっ

魔王「っ!?」
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 04:55:06.61 ID:6OFcHF6P
女騎士「そして勇者。美味しい?」

勇者「うん、美味いな。もっきゅもっきゅ」
魔王「な、な、なにを……っ」

女騎士「そうか。もっとあるぞ」なでなで

魔王「何をしているのだっ!?」

女騎士「何って。……馴致だ」
魔王「馴致だとっ!?」

女騎士「いや、言葉が悪かった。……餌付けだ」

魔王「同じ意味だっ! 勇者も、何を馴染んでいるっ」

勇者「さくさく歩こうぜ、先は長いんだから」

魔王「~っ!!」

女騎士「魔王。悪いことは云わない。料理を習おう。
 別にすごく上手である必要はないんだ。
 普通の男なら知らないが、勇者は空腹になれば
 普通の料理でさえあれば大抵ご馳走だと思って食べてくれる。
 食事はいいぞ。食事をしている勇者は無防備だからな」

魔王「無防備……なのか?」
女騎士 こくり

 勇者「おーい、置いていくぞー」

女騎士「勇者は、お腹一杯の時と寝てる時はすごく可愛いぞ」

魔王「う、うむ」
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 04:57:52.36 ID:6OFcHF6P
女騎士「もふもふもさせてくれるようになったしな」

魔王「しかし、慣れるのはいいが、それはそれで
 ときめきがなくなるという意味合いでは負けというか
 ある種の本末転倒を感じないでもないではないか」

女騎士「こちらは一杯一杯だ。ときめきどころか
 心臓が暴走しているのだから、問題ない」

魔王「勇者の側の問題だ。勇者にだって動揺してもらいたい。
 そうでなくては公平ではないぞ。
 こちら側ばかりが動揺するのは魔王としての沽券に関わるっ」

女騎士「沽券で勝てるなら世話がない。
 まずは勝つ。具体的に云うと、同衾だ。
 ときめきはその後に考える」

魔王「な、なんという実利的な……」

女騎士「これが老師から教わった策だ。まずは勝て!
 相手を負かすのはそれからでも遅くはない」

魔王「わたしが女騎士に軍略を語られるとは……」

  勇者「なにやってんだよ。急ぐって云っただろう?」

魔王「あ、ああ。済まない」
女騎士「道中の雑談だ。無言だと却って早く疲れる」

勇者「なんの話だ?」

魔王「いや、なんの話というか。そのぅ……。し、塩だ」

勇者「塩?」

魔王「あ、いや。帰ったら多少料理を習おうかと」
女騎士「うん、そう言う話だ」
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 05:01:05.77 ID:6OFcHF6P
勇者「いいんじゃないか。よっと」

とったったっ

魔王「うん。何か食べさせてやるぞ、勇者!」

勇者「腕は同じくらいなんだ。いっしょに作ろうぜ」

魔王「それもいいな。二人で料理をすると楽しいぞ。
 出来上がりは今まで不幸だったけど……」

女騎士「うん。そのときはわたしも一緒に……」

…………ィン……

勇者「どした? 女騎士」

女騎士「あ、いや」

魔王「なにかあったのか?」

女騎士「ん。ちょっと」

勇者「ちょっとって?」

女騎士「勇者、魔王。ほら、荷物降ろして」

勇者「なんでだよ」
魔王「……」

女騎士「わたしが後から持っていってあげるよ。
 “瞬動祈祷”――ほら、持続時間も強度もあげておいたぞ。
 これでさくさく登れ?」

勇者(胸がざわざわする……)

魔王「危険が迫っているのか?」

勇者「そうなんだな、女騎士っ!?」
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 05:02:42.35 ID:6OFcHF6P
女騎士「ここはわたしが引き受けた」

勇者「何いってんだっ。三人で戦うべきだろうがっ」
魔王「勇者……それは……」

女騎士「これはわたしの客だ。それに、勇者。
 わたしだって気がついてる」

勇者「なにを?」

女騎士「勇者の力は、殆ど回復してない。
 封印されてるも同然だ。そんな状況では、戦場に立って
 広域魔法や広域剣技の余波を受けるだけで、
 回復の手間がかかる。それは魔王も一緒だ」

勇者「~っ!」
魔王「……うむ」

女騎士「上は説得なのだろう?
 だとすればわたしはあまり役には立たない。
 わたしは馬鹿だからなっ!」 にこっ

勇者「おまっ」
魔王「胸にも頭にも栄養が行ってないとは」

女騎士「胸は関係ないっ!!」

勇者「……っ」

女騎士「そんな顔をするな。勇者。ほら、荷物は置け。
 鎧も脱げ。今更関係ないから。
 これは……。ほら、ビスケットだ。
 二人で食べて良いぞ。
 わたしも追いつくからな、少しは残して置いて」

勇者「ああ」
魔王 こくり
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/14(土) 05:05:38.75 ID:6OFcHF6P
女騎士「じゃぁ、行って。
 そんな顔しちゃだめだ。わたしは女騎士だぞ?
 蒼魔王みたいなのが相手じゃ大変だけど
 そこらの人間や魔物に負けるわけがない。
 蒼魔王のいない今、ピンチになるわけ無いじゃないか」

魔王「……女騎士」

女騎士「口げんかは、少しだけ、お休み」

勇者「判った。上で待ってるからなっ!」

女騎士「ああ。勇者!」

勇者「?」

女騎士「――。ん。なんでもないぞ。
 うん、そうじゃなくて。
 がんばれ! それに、我が剣の主。
 剣の主の……剣の主の願いに加護をっ」

勇者「……。判った! 行ってくる!」

魔王「任せる」
女騎士「任される」

 ダッダッダッダッ

……コオォォン
…………コオォォン

女騎士「さて」 くるっ

女騎士(大主教と云えば、教会の最高位。
 建前では大陸一の法術の権威。
 だけど修道会の法術とは比べたこともない。
 どちらが光の法術を使いこなせるのか。
 それに……。魔法使いの云う“歴代魔王の思念”。
 合わせれば、並の魔王よりずっと強い。か……)

ジャキッ

女騎士「面白い。たとえどれほどの力をもってきても
 ここより先へは一歩も行かせない。
 勇者の隣を歩くために。剣の主人を守るために。
 騎士の力の全て、この身を全てを、盾としよう」
385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:30:28.04 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混戦の中で

ゴッゴォォーン!!

カノーネ兵「弾着確認っ!」

百合騎士団隊長「ふふふっ」

偵察兵「防壁東側に、土煙が上がっています。
 おそらく廃屋か、庁舎に命中したと思われますっ」

カノーネ兵「……」がくがく

百合騎士団隊長「続けなさい? 停止命令は出していないわ」

カノーネ部隊長「お、恐れながらっ。あの地域には我が軍の
 突撃部隊も侵入しているはずですが……」

百合騎士団隊長「やりなさい」 にこっ

教会騎士団「精霊の思し召しだ、やれっ」

光の銃兵「精霊は求めたもう!」
光の槍兵「精霊は求めたもう!」

カノーネ部隊長「は、はいっ。ほ、砲弾を込めよっ!」
カノーネ兵「はひぃ」 がたがた

ゴッゴォォーン!!
    ゴッゴォォーン!!

百合騎士団隊長「ふふふっ。聞こえるわ……。
 その甘さと苦さに酔いしれそう……。
 血の染みた黒々とした大地に抱かれて眠る同胞よ、
 魔族と剣を交えて狂気に陥る信徒の群よ。
 戦場はまさに深紅に染まる大舞踏会のよう……」

教会騎士団「筆頭騎士団長っ!」
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:34:01.60 ID:VaDFVbYP
百合騎士団隊長「なぁに?」

教会騎士団「追加のブラックパウダーが届きましたっ」

百合騎士団隊長「かまわないわ。カノーネ部隊に優先配備。
 マスケット部隊には三斉射の分量さえあれば良いでしょう。
 それから“お土産”用に、二、三人に抱えさせなさい。
 南部連合に手こずる王弟閣下にも目を覚まして頂きましょう。
 血の香りを嗅いで奮い立たない殿方なんていないのに。
 ふふふふっ。なにを小手先の戦術で戦を長引かせているのやら」

教会騎士団「はっ!」

ゴォォン! ガァォーン!

光の銃兵「っ!」
光の槍兵「近いです、これは銃声……」

百合騎士団隊長「南部連合の突出部隊か、都市からの迎撃部隊ね。
 丁度良いわ。霧の国の騎士団残存兵と、マスケット中隊2つを
 そちらへ差し向けて。叩きつぶさせなさいっ」

光の銃兵「はひぃ! いってきますっ!」
光の槍兵「精霊は求めたもうっ」

百合騎士団隊長「よい子ね」 にこり
教会騎士団「……散る花ですが」

百合騎士団隊長「灰青王の死んだ今、霧の国の騎士団も兵団も
 戦闘能力を期待は出来ない。こんな使い道がせいぜいなの。
 期待していたのに
 私の側から消えるなんて。
 ……やはりね。
 ずっと側にいてくれるのは、精霊だけ。
 暖めてくれるのは、精霊の慈悲だけ。
 流れ去るものに期待をするなんて意味もない。
 私の汚れを拭ってくれるのは、精霊様だけ。
 この腐った両手を清めてくれるのは、くれるのは……」

教会騎士団「精霊の恩寵は永遠です」

百合騎士団隊長「……ええ。くっ。くくくくっ。
 突撃させなさい。
 それからカノーネの着弾はさらに都市中央部へ。
 陣を少し前進させます。
 ……精霊は求めたもう。
 血の香りを、混沌を、そして死の苦鳴を……。
 ふふふっ。ふふっ。うふふふふっ。
 精霊の恵みを! 精霊の平安を! 精霊の粛正を!
 地に遍く混沌と薔薇の赤を塗り広げるのっ!」
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:35:42.14 ID:VaDFVbYP
――開門都市、中央庁舎、執務室

  ……ゴォォン。 ……ォォン

庁舎職員「せめて二階の執務室に移りませんと」

青年商人「ここで十分」
火竜公女「執務の邪魔をしてはならぬっ」

庁舎職員「し、しかしっ」

青年商人「庁舎まで攻め込まれる事があるのなら、
 一階だろうと二階だろうと敗戦には代わりありません。
 それに執務室では広さも処理能力も足りない」

庁舎職員「しかし、ここでは内密の軍議も」

火竜公女「事ここにいたって、
 “内密”などというものはありませぬ」

……ゴォォン!

魔族娘「す、すいませんっ!」 びくっ

鬼呼の姫巫女「娘はすぐに謝るな」

傷病兵「中央街道、大六区まで閉鎖とのこと。
 集積場所を無名神殿広場前まで移動っ!」

青年商人「もう一段階下がらせますよ」

火竜公女「わかりました。
 ……無名神殿前広場を第一集積地としますっ。
 無名神殿前に集められた捕虜および傷病者を後方輸送っ。
 鴉神神殿、渡り神神殿前広場の2つに分割して移動をっ。
 ――魔族娘、頼みまする」

魔族娘「はいっ! 行ってまいりますっ」

鬼呼の姫巫女「よろしく頼む」
宿屋の市民「わ、私もお供しますっ」
388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:39:18.54 ID:VaDFVbYP
庁舎職員「そのほか、十番街で火災。
 規模は中程度、南八番街で倒壊多数。
 市保有倉庫とは連絡取れずっ。
 また、医薬品倉庫壊滅を受けて、包帯の残存量が……」

青年商人「ギルド長っ!」
紋様族職人長「は、はいっ!?」

青年商人「仕立て職人および倉庫から布を供出っ。
 支払いは全て当局回しで、清潔な布を出させてください。
 医薬品については、東十二番街の有角商会地下倉庫に
 予備の蓄えが千と五百人分はあります。
 衛士!」

衛士「はっ!」

火竜公女「徒行で突破、前述の物資を確保してくださるかや?
 これを全て第三次集積地に移動。
 班分けは15人。――義勇軍から募って馬車四台を編成」

衛士「判りましたっ」

鬼呼の姫巫女「なぜそのようなことを知っているのだ」

青年商人「商売相手の在庫把握は商談の基本です」

鬼呼の姫巫女(この二人、修羅場慣れしているのか?
 どこから来るのだ、この胆力はっ)

  ……ゴォォン。 ……ォォン

青年商人「火災は放置っ。あの地域の避難は完了済みですし、
 建物は漆喰と煉瓦が殆どです。昨晩の雨も残っている。
 燃え広がりはしないっ。市保有倉庫へは連絡を……。
 姫巫女、頼めますか?」

鬼呼の姫巫女「良かろう。若草鳩よ、いくが良いっ!」

若草鳩「ピロロロッ。判りました姉御っ!」

バタバタバタッ!

伝令「ま、魔王さまっ!!」

青年商人「落ち着いて報告を」
389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:40:37.27 ID:VaDFVbYP
伝令「で、伝令です。敵の砲撃、激化!!
 それにマスケットを持った新手の人間数千人が南門から侵入。
 無秩序な動きで、破壊を繰り返しながらあふれ出していますっ」

青年商人(……来た)

火竜公女「到来でございまする。商人殿」

鬼呼の姫巫女「~っ!! ここまで来て、敵の増援っ。
 いや、最初から判っていた予備兵力か……。
 しかし、恐るべき数。それにマスケット兵とは……」

庁舎職員「このままでは砦将どのも危機に!」
市民職員「いや、族長に限ってそのような手には乗らぬはずですが」

青年商人「待っていた好機です」

鬼呼の姫巫女「は?」

庁舎職員「なっ、なにをっ」

  ……ゴォォン。 ……ォォン

青年商人「遠征軍はその統制を失っている。
 ……説明をしたでしょう。遠征軍の4つの勢力を。
 その勢力の統制が乱れ、混乱している。
 今流れ込んできたのは、遠征軍の中核とは言え、
 その実体は促成で教練を施した民兵に過ぎない。
 しかしその民兵こそが遠征軍の最大戦力です。
 そして彼らは“教会の剣”だった。
 ……教会に何らかの問題が起きたと考えられます」

鬼呼の姫巫女「その剣がこちらを向いているのだっ」
390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:42:49.29 ID:VaDFVbYP
青年商人「何を言っているんです?
 戦とは剣と剣による傷つけあい、そのものではないですか。
 相手の剣が向けられただけで降伏では話になりませんよ。
 それに、剣が向けられたからこそ勝機がある」

鬼呼の姫巫女「……っ」

火竜公女「敵の首魁の守りが薄くなっていますゆえ」にこり
青年商人「そう言うことです」

鬼呼の姫巫女「これを待っていたというのか?」

  ……ゴゴゴーン! ズドォーン!

伝令「砦将どの、撤退を開始! 防衛線を押し下げて、
 無名神殿の方向へとさがってゆきます!
 人間の軍は勢いに乗り軍を前に。ただし略奪や混乱に
 手をさかれて、戦場は混沌としていますっ!!」

青年商人「貴族軍はこれで開門都市の南部を使った
 市街戦の迷宮に引き込んだはずです。
 民兵の過半数もそれに続くでしょう。
 大事なのは交戦地域、交戦地点をこちらが指定すること。
 そして指定してもそうは思わせぬ事。
 わたし達が望む戦闘を行ない、
 望まないタイミング、望まない地点での戦闘は
 “相手に思いつきさえさせない”。
 ……それが私と砦将の出した結論です。
 それさえ守り、非戦闘地域で補給と兵站を途切れさせなければ
 まだまだ粘ることは出来ます。
 タイミングと、範囲を制御する。
 商戦と何ら代わりがありません」

火竜公女 くすくすくすっ

鬼呼の姫巫女「……っ」

青年商人「そして、守りの薄くなった本陣へ攻撃を仕掛ける。
 ――それは、私の役目でしょうね。
 こればかりは勝てるとお約束は出来ないのですけれど」

火竜公女「私もお供を」

青年商人「それはだめです」
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:44:43.88 ID:VaDFVbYP
火竜公女「なにゆえにっ」

青年商人「この執務室で補給と後方支援部隊の
 指揮を執る人材が我が方には必要です。
 少なくとも、お財布の重さが判る人間がね」

火竜公女「そんな……。ただの言い訳でありましょう?」

青年商人「共同事業者でしょう?」

火竜公女「それは……」

青年商人「相方でしょう?」

火竜公女「……っ」

青年商人「どうしました?」

火竜公女「商人殿が意地悪を言いまする」

青年商人「“良くできたおなご”は、殿方をどうするのです?」

火竜公女「~っ。……っ」

鬼呼の姫巫女「――やれやれ。公女のこのような表情を見れるとは」

火竜公女「判りました。私は……。
 私はこの執務室でお待ちしておりまする。
 なにとぞ首尾良く吉報を持ち帰ってくださいますように。
 私は信用しておりまする。
 商人殿は、魔王の名を冠するに相応しき方。
 わたしの……。……いえ、それはよそ事でございまする。
 どうかご武運とご商運を。良い取引を祈りまする」

青年商人「お任せあれ。“同盟”十人委員会の筆頭として
 この都市を預けられたものとして、
 恥ずかしくない商談を約束しましょう」
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:47:37.19 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、南部連合陣地

ゴガァンッ!!! ズダァァァン!!

 光の銃兵「た、助けてくれぇ!!」
 光の槍兵「な、なんでっ! なんで俺たちがっ!」
 光の突撃兵「ど、どけぇえ! どいてくれぇっ!」
 包帯の光の兵「ひぃぃぃぃっ。撃つなっ! 撃つなぁっ!」

ズキュゥン! ドガァン! ギシィ、キンッ!

鉄腕王「前線で何が起きているっ!?」

偵察兵「砲撃ですっ! 遠征軍本陣よりの砲撃っ。
 自軍のマスケット部隊に着弾。被害が広がっていますっ」

鉄腕王「誤射か!?」

軍人子弟「違う……」

ズダァァァン!! ゴガァンッ!!!

偵察兵「違いますっ! 怠戦にたいする警告というか、
 ある種の督戦行動のような……。
 我が軍に向かって駆り立てて民兵を追い立てていますっ」

鉄国少尉「まさかっ!? そこまでっ」

 光の銃兵「うわぁぁ! 返事をしろっ。槍兵! 槍兵っ」
 光の槍兵「ごふっ。ごぶごぶごぶ……。げはっ……」
 光の突撃兵「止めろぉ! 俺たちは敵じゃない! やめてくれぇ!」
鉄腕王「なんてことをっ」

軍人子弟「指揮系統を乱したのが徒になったでござる。
 このままでは遠征軍の損害は……」

鉄国少尉「遠征軍の損害など気に掛けている場合ではっ」
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:48:51.99 ID:VaDFVbYP
軍人子弟「かけている場合でござるよっ!
 ここで必要以上の被害を出せば、
 双方にとって傷跡が深くなりすぎるっ!!
 世界は混沌の淵に沈むでござるよっ。それではなんのためにっ」

鉄国少尉「ではっ」 きっ

鉄腕王「……」

鉄国少尉「受け入れを進言します」

軍人子弟「少尉……?」

鉄国少尉「見捨てることが出来ないなら、助けるしかないでしょう。
 我が南部連合は、民を……。
 開拓民も農奴も等しく助けることによって
 大儀を得た国々の集まりです。
 その大儀が、助けろと命じるならば、
 我ら軍人はその声に耳を傾けるべきです」

ゴォォン! ズゴォォン!

鉄腕王「たしかに、離間工作じみたやりかたもした。
 奴らの兵を寝返らせてこちらに引き込むのは戦略のうちだった。
 しかしこの状況で助けるとなれば、こちらから軍を突出させ
 敵の本陣に切り込むことになるだろうよ。
 あの光る塔が現われてから、奴らの本陣は混乱の一途だ。
 組織的な抵抗はないかも知れないが、
 それでも狂気じみた反撃はあるかも知れんぞ」

冬寂王「……」

鉄国少尉「必要であれば躊躇うべきではありません」

軍人子弟「その通りでござる。許可を願うでござる」

冬寂王「行ってくれ。頼む。……将官っ!」

将官「はっ!」

冬寂王「こちらは塹壕を整備している。カノーネの砲撃は
 平地よりもよほどその威力も精度も押さえることが出来るだろう。
 1部隊……いや、4部隊を率いて、こちらへ向かってくる
 遠征軍民兵の受け入れを始めろ。武装解除の上、後方へ護送。
 姓名を控えて一カ所にまとまってもらえ!」
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:50:23.60 ID:VaDFVbYP
軍人子弟「準備をするでござるよ」
鉄国少尉「了解っ!」

軍人子弟「今度こそ死線をくぐることになるでござるが」
鉄国少尉「そのようなこと。あははははっ」

軍人子弟「……」

鉄国少尉「我が国の安全、我が国の繁栄、我が国の利益。
 それらのために戦うのは尊く素晴らしいことです。
 それらは軍人としての任務であり、本懐」

軍人子弟「……」

鉄国少尉「しかし“どこかの誰かのため”に戦うのは、
 軍人ではなく、男子の本懐であると、護民卿はおっしゃられた」

軍人子弟「若気の強がりでござるよ」

鉄国少尉「それでも良いではないですか。
 この攻撃を凌ぎきり、
 あの三千余名を収容、敵のカノーネ部隊さえつぶせば
 遠征軍は、少なくとも圧倒的な数的優位を失う。
 待ち望んできた均衡状況が訪れる可能性が高い」

軍人子弟「その通りでござる。
 この一手は人道的な見地からのみならず、
 戦略的見地から見ても、われらが放つ最高の一撃」

鉄国少尉「我らが鉄の国の槍は、岩をも貫く」

軍人子弟「……そろそろもてるとか、
 そういう場面も欲しいでござるが」

鉄国少尉「は?」

軍人子弟「いいや、なんでもないでござるよっ!
 この凛々しくも雄々しく汗臭いのが我が国でござるっ。
 さぁ、馬に乗るでござるっ! 切り込み準備っ!!
 カノーネ部隊を沈黙させるため、いざ! 推して参いるっ!」
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:51:45.00 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混乱の戦場

ドゴォォーン! ズギャ!
 うわぁぁぁ!! 押せぇ! 押せぇ!
 撃つな、俺たちを撃たないでくれぇ

遠征軍士官「なんだって!?」
聖王国騎士「真実です、早く取り次ぎをっ」

遠征軍士官「判った、このことは他言無用だ」
聖王国騎士「はっ! はいっ」

  光の銃兵「光は求めたもう! 光は求めたもうっ!」
  光の槍兵「精霊は魔族の血を求めたもうっ!」

遠征軍士官(何を言っているんだ! このような時にっ。
 数万!? 数万を超える魔族の援軍が、
 ゆっくりとだがこの地に終結しつつあるだとっ!?
 馬鹿な! 馬鹿なっ!?
 なぜそのような数の軍勢がっ。
 そのような軍勢は我が遠征軍が世界で初めてのはず。
 愚劣で未開の魔族にそのような軍勢を組織できるはずがないっ。
 何かの間違いだ!
 間違いに決まっているっ!!)

ばさっ!

遠征軍士官「閣下っ!!」

参謀軍師「王弟閣下は前線である。何事かっ」

聖王国騎士「そ、それがっ。ご、ご報告しますっ!
 目下、この場所に向かって北方および東方の森林地帯を抜け、
 最低数万の魔族の軍が迫っているとのことっ」

参謀軍師「なっ!? 数万、ですとっ!?」

遠征軍士官「最低、です。先遣部隊は森の橋からこちらを
 観察しているとの情報がもたらされましたっ」
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:54:24.50 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混戦状態の南市街廃墟

清明の時節、辺城を過ぐ
  遠客風に臨んで幾許の情……

……ゴォォン!!

光の少年兵「……」

野鳥は閑関として語を解し難く
  山花は爛漫として名を知らず……

光の少年兵(……なんだろう、この歌。
 死んじゃったのかな、ぼく)

葡萄の酒は熟して愁ひに腸は乱れ
  瑪瑙の杯は寒くして酔眼明らかなり……

光の少年兵(優しい、綺麗な声……。
 梢がさわさわ鳴っているみたいな……)

遥かに想ふ故園 今好く在りや
  梨の花さく深き院に鷓鴣の鳴く声すらん

光の少年兵(綺麗で、泣きたくなるような……歌……)

ゴォォン!!

光の少年兵「砲声っ!!」 がばっ

奏楽子弟「ん。目が覚めたかな」

光の少年兵「え? えっ!?」

奏楽子弟「いいよ。横になってて」
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:55:18.29 ID:VaDFVbYP
光の少年兵「え、あ……あ。ああっ……」
奏楽子弟「うん? 耳?」 ぴこぴこ

光の少年兵 こくこく
奏楽子弟「私は森歌族……。君たちの云う、魔族なの」

光の少年兵「なっ!? ぐっ」

奏楽子弟「ほらほら、無理しなくて良いよ。
 多分、腕折れちゃってるよ。じっとしていた方がいい」

ゴォォン!!

光の農奴兵「ああ、じっとしていた方がいい」
光の少年兵「え? あ……。たくさん」

光の農奴兵「ああ」 こくり
光の傷病兵「逃げ出して、もう戦え無くて集まっているんだ」
光の少年兵「そんな……」

奏楽子弟「ごめんね、こんな水しかあげられないのだけど」

光の農奴兵「いや、その……。感謝する。ほら、坊主、飲め」
光の少年兵「でも魔族の……」

奏楽子弟「魔族でも水ぐらい飲むよ」

光の少年兵 じぃっ

奏楽子弟 かちゃかちゃ

光の少年兵「なんなんだ、それは。ぶ、武器かっ」

光の農奴兵「楽器だよ。この人は、歌人なんだそうだ」
光の傷病兵「吟遊詩人だよ」
光の少年兵「え?」

奏楽子弟「水と同じ。魔族も歌うの。
 ……歌うしかできない時には特にね」
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:56:29.88 ID:VaDFVbYP
ゴォォン!!
  パラパラパラ……

光の農奴兵「近いな」
光の傷病兵「……もう、帰りてぇよ」

光の農奴兵「なぁ、なんでこんなところに来ちゃったんだろう」

光の傷病兵「そりゃ精霊様が求めたから……」

光の少年兵「僕たちは栄光ある光の子って云われてやってきたのに。
 いやなのにっ。戦争なんて……偉い人だけでやればいいのにっ!」

奏楽子弟「……」かちゃかちゃ

ズドォォン!

光の農奴兵「仕方ない」

光の傷病兵「俺たちは何も出来ないんだ。
 農奴なんだ。拒否権なんて無いんだ。
 云うことを聞かなきゃならなかった。そうでなきゃ飢えていた。
 仕方なかったんだ。仕方ないじゃないかっ」

光の少年兵「……っ」

奏楽子弟「いずこに……♪」

光の少年兵「え?」

奏楽子弟
 ――何処に行きたまいしか、小さき手のひら振りし我が友よ
 何処に行きたまいしか、頬染める幼なじみの我が君よ。
 今は遠き我が村よ。
 遠く、遠く、砂塵の果てにて思う。
401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 07:58:27.19 ID:VaDFVbYP
光の農奴兵「……綺麗な、声だぁ」
光の傷病兵「……」

奏楽子弟「どこに行っちゃったの? 昔の故郷は。
 ……っていう歌」

光の農奴兵「それは」
光の傷病兵「……」

光の少年兵「そんな事なんで云えるんですかっ」

奏楽子弟「その、小さいの」

光の少年兵「え、あ? ……こ、これ」

奏楽子弟「それはね。小さな子供の手袋だよ。
 多分この家に住んでいたんだろうね。
 魔族にも、赤ちゃんだって小さな子供だって沢山いるんだよ。
 この手袋のサイズは、紋様族かな。
 紋様族の子供は、賢くて可愛いんだよ。
 あの路地を走って遊んでいたんだと思うな。
 日が暮れて、夕ご飯が出来るまで」

光の少年兵「……っ」

奏楽子弟「誰も悪くないよ。戦争だから。
 すごく怒りたくても、私は怒らないよ。
 同じくらい痛かったし怖かったのを、知ってるから」

光の農奴兵「……すまねぇ」

奏楽子弟「ううん。――でも、ね。
 やめるためには、誰かが頑張らないと。
 私は魂の血を流すよ。
 だって血は流せない。必要だとしても。
 この手に剣は握れないから。
 ううん、握らない。そう決めたの。
 殺すのも殺されるのも、絶対にしないの」

光の少年兵「――っ!」
402 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 08:02:22.85 ID:VaDFVbYP
奏楽子弟「それに……。
 あなたたちに、殺させたりもさせたくない」

光の農奴兵「なんで、魔族なのに、なんで……そんなに」

奏楽子弟「関係ないよ」 にこっ

奏楽子弟「わたし達は、同じでしょ?
 大砲の音が怖くて、ぶるぶる震えて隠れている。
 それでも、どんなに怖くても、もう戦争はやめようって。
 そう考えてる。……だから一緒だよ」

光の傷病兵「……ひっく。……ずずっ」
光の少年兵「ごめん……なさい……」

~♪

奏楽子弟
 ――何処に行きたまいしか、小さき手のひら振りし我が友よ
 何処に行きたまいしか、頬染める幼なじみの我が君よ。
 今は遠き我が村よ。
 遠く、遠く、砂塵の果てにて思う。

 ――茜射す陽に照らされし、黄金の麦畑。
 風走る度に、波をうつすかぐわしき麦の穂よ。
 今は遠き我がふるさとよ。
 遠く、遠く、凍える白夜にて思う。

 ――故郷を守ることもなく、
 今はその声は風に埋もれ、草に隠れ、雪の舞に見失い
 伝える言葉無く、指先も枯れ果ててなお鮮やかに

 ――何処に行きたまいしか、小さき手のひら振りし我が友よ
 何処に行きたまいしか、頬染める幼なじみの我が君よ。
 何処に行きたまいしか、黄金の髪揺らす甘き約束よ。
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:25:26.54 ID:VaDFVbYP
――光の塔、その道程

ギィン!! キィンッ!!

女騎士「ぐっ!」
大主教「もう終わりか、修道会女騎士よっ。ふはははっ」

ギィン!!

女騎士「させるかっ! “聖歌六連”っ!」
大主教「“光壁三連”っ!」

 ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!!

女騎士「っ!」
大主教「どうした、速度が落ちたぞ?」

女騎士(これほどとはっ。魔王の力とは。
 本来の魔王の力とはこれほどのものだったのか。
 これじゃ全開の時の勇者の速度と力そのもの。
 いや、それ以上じゃないかっ)

大主教「この両手は動かぬが、
 もとより我は剣士でもなければ
 武芸者でもない。一介の聖職者に過ぎぬ。
 両手が動かずとも、我が祈りは万物を斬り刻む」

女騎士「黙れ! だれが聖職者なのだっ。
 聖職者を愚弄するなっ!
 貴様には精霊に使える敬意の一辺も感じない。
 その気持ち悪い玉と魔王の力で
 貴様は光の精霊を愚弄しているだけだっ!」

大主教「ここまで来たならば知っていよう?」

ギィン! ギリギリギリ!!

大主教「その魔王すらも精霊の願いが生み出したと云うことを」

女騎士「……っ」
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:27:41.98 ID:VaDFVbYP
大主教「その通り!! その通りなのだよっ。
 すべては炎の娘の願いから始まったもの。
 あの無垢な娘の救世の祈りから。――であればこそっ!」

ギィン! キィン!!

女騎士(くっ。押されるっ!?
 ただの斬撃祈祷がこれほどに重いっ)

大主教「なればこそ、この汚濁に満ちた世も! 戦乱も!
 嘆きの苦しみも裏切りも欲望もこざかしい浅知恵もっ!
 全てはあの娘の願ったものなのだっ!
 全ては“精霊の許したもの”。全ては“聖なるもの”っ」

ごごごごっ

大主教「“電光呪”っ!」

女騎士「っ!? “光壁”っ!
 か、重なれっ! “光壁双盾”っ」

ズガァァーン!!

大主教「ふふふふっ」

女騎士「これは、24音呪っ!? まさか貴様っ」

大主教「そのとおり。勇者の力だ……。
 神聖術式で捕縛した勇者の力を借り受けたまで。
 使いこなすには至らないがな」

女騎士「下衆がっ!」かぁっ!
大主教「呼気が乱れているぞ。はははっ!」

女騎士「黙れ! 黙れぇ!! “嵐速瞬動祈祷”っ!」
大主教「“加速呪”――っ!?」

ギキィン!!

女騎士(届いっ……て、ない!?)

大主教「見えるかな」

女騎士「なっ。それは……。なんだ、その霧はっ」
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:30:16.35 ID:VaDFVbYP
大主教「知らないのか? 判るまいな。
 歴代の魔王でさえその身に纏うことは叶わなかった
 超越者の証し……“やみのころも”。
 全ての攻撃を遮断し、我を守る物質化現象を果たした
 “魔王達の霊の結晶そのもの”だ」

女騎士「五月蠅いっ!」

ガッ! ガッ! ザシュ!!

大主教「……くく」

ズガッ!!

女騎士「っ!」
大主教「……どうした?」

女騎士「ならば……。“錬聖祈祷”っ!」
大主教「攻撃力の強化と、光の属性付与か」

女騎士「闇の力であれば、弱点は自ずと明白だっ!」
大主教「良かろう」

ゴッ! ジャギィィィン!

女騎士「そんな……」

大主教「狙いは悪くはないが、
 そもそもの攻撃力が足りなすぎるようだな。
 弱点を突いてさえ、かすり傷もつけられぬ。
 あの老人と同じとは、修道会の麒麟児も所詮この程度か」

女騎士「――老人っ? 弓兵かっ。
 あいつをどうしたんだっ!?」

大主教「殺したぞ?」
女騎士「っ!?」

大主教「ああ。そう言えば、一緒に旅をした仲間だったのだな。
 足を貫いても手向かってきたので、腕を引きちぎってやった。
 奇怪な技で我が腕を麻痺させてきたので、
 臓物を踏みつぶしてやったよ。
 最後の最後まで悲鳴を上げぬ頑迷な老人だったがな」
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:40:34.16 ID:VaDFVbYP
女騎士「きさまっ。貴様ぁ!! 何を、お前はっ!!」

大主教「“後は任せましたよ、お転婆姫”とかなんとか、
 最後まで強がりをぬかしてなっ。
 凡夫には所詮判らぬようだ。この力の圧倒的な差がっ。
 “風剣呪”っ! “雷撃呪”っ!」

ビシィッ!! ドギャン!!

女騎士「“光壁”っ! “光壁”っ」
大主教「どうした、退がるだけかっ! はぁっ!」

ドゴォンッ!

女騎士(爺さんが、死んだ!? 死んだなんて……っ)

大主教「器用に跳ね回る」

ドゴォンッ!

女騎士「“光壁”っ! “光壁”っ! 弾け光の壁っ!」

大主教「確かに防御術は精霊の御技の中核。
 修道会の術式は我が教会のものとは多少違うようだが、
 干渉力も発動速度も申し分はない。
 流石修道会の首座をしめる光の術士にして騎士。
 その防御術があれば、我が攻撃をしのぐことも、
 あるいは可能かも知れぬなぁ……。
 だが何回しのぐ? 何回しのげる?」

女騎士「限りなど無いっ!」

大主教「その言葉を試してみようではないかっ」

ゴォン! ヒュバッ!! ザシャァン!!
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:42:19.49 ID:VaDFVbYP
女騎士(あの爺さんがっ。爺さんがっ!
 勝算も無しに“任せる”なんて云うはずがない。
 あるんだっ。
 糸よりも細くても、何か、隙があるっ。
 あるはずだっ、探すんだっ。
 私は勇者の剣。
 私は勇者の騎士っ。
 こいつを、この怪物を勇者の元に行かせは、しないっ。
 あの変態の、馬鹿で、あほで、すけべでっ。
 それでも、それでもわたしを導いてくれた
 爺さんをっ。任せる、と言ったならっ)

大主教「それっ! “斬撃祈祷六連”っ!」

ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!

女騎士「“光壁四華”っ! がはっ! ぐぅっ」

ドゴォン! ばさっ

女騎士(見つけるんだ。……魔法使いを。
 あの思いを……。裏切る、訳には……。
 いかない。……騎士、なんだ……ぞ……)

大主教「ふっ。四つ防ぐのが精一杯のようだな」

女騎士(そ……れ……)

大主教「もはや座興も終わらせよう。“斬撃祈祷六連”!!」

女騎士「それ、だ……」

ふわっ

大主教「!?」
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/16(月) 18:44:05.14 ID:VaDFVbYP
女騎士「はぁ……はぁ……」

大主教「なにを……!?」

女騎士「さぁ……」
大主教「“斬撃祈祷六連”っ!!」

ふわりっ ひゅかっ

女騎士(この怪物の、大主教の弱点は……
 戦闘経験の少なさ。……っく。
 圧倒的な力を持ってはいても、戦闘の回数自体は、少ない。
 そして、その経験の元になってるのは、おそらく……
 爺さんとの戦い。
 ……爺さんは、勝て無いと判っていた。
 判っていたから、勝とうとはしなかった……。

  “自らの敗北を持って、こいつに仕込んだ”
 “間違った戦闘経験という毒の入った餌を”)

大主教「何をしたっ!? その動きはなんだっ」

女騎士「偶然だ……。はぁっ……はぁっ」

大主教「瀕死の女がっ」

女騎士(この方法でも、時間稼ぎに過ぎない。
 動きには隙がある。
 爺さんが仕込んだ罠の戦闘経験のせいで
 この化け物の攻撃にはリズムが“ありすぎる”。
 それに攻撃はどれも強力だが、真っ正直で、直線。
 だけど……。
 私の攻撃じゃ、通じない。
 あの黒い霧も、おそらく精霊祈祷の光の壁も越えれない。
 わたしの使える“光壁”はこいつだって使える。
 その上再生能力まで……。
 あれがもし勇者の力のコピーなら致命傷以外は
 全て回復しかねない……)



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