13-2


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」13-2


171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/10(火) 06:10:11.26 ID:4RteqQsP
――開門都市近郊、南部連合軍、中枢

伝令「遠征軍内部で慌ただしい動き有りッ。内部で再編成の模様っ」

冬寂王「気が付かれたようだな」
鉄腕王「まぁ、そうだろう」

軍人子弟「予想済みでござるよ。装甲馬車を急がせるでござる」
鉄国少尉「了解っ」

将官「重いのが難点ですね、あれ」

羽妖精侍女「妖精ニハ動カセマセンデス」

冬寂王「なぁに。赤馬の国の駿馬がいる」

鉄腕王「奴らはどう出るか」

軍人子弟「おそらく会戦を望むでござろう」
鉄国少尉「ですね」
将官「ふむ」

軍人子弟「遠征軍の最大の武器は数。
 平原で横一線になり激突するような戦になれば圧倒的有利。
 こちらに小細工をさせる隙を与えないのが基本でござる。
 都市軍と合流されたとしても、籠城されるよりはそちらを
 選ぶでござろうね」

将官「引き受けるのですか?」

軍人子弟「……」

羽妖精侍女「ござるハ難シイ顔デス」

軍人子弟「昨日もはっきりしたでござる。
 マスケットはたしかに強力な武器でござるが、強力すぎる。
 多くの死者を出すでござる。
 こちらが死にたくなければ、相手を多く殺すしかない。
 歯止めの利かない武器でござる……。
 拙者は軍人ゆえに死を厭うことはないでござる。
 我が南部連合軍は全て軍人。
 王命を果たすため、義を貫くため戦う覚悟はあるでござるが
 相手は、銃を持った農奴に過ぎぬと考えると
 気が進まぬ戦ではござるな」
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:11:20.16 ID:4RteqQsP
鉄国少尉「しかし、手加減をして勝てる相手ではありません。
 そもそも全力を尽くしても勝てるか否か」

将官「そうですね……」

冬寂王「今を生きる我らは未来に対しての責務を負っているのだ。
 ここで手をゆるめることは明日に対する裏切りだろう」

鉄腕王「……うむ」

軍人子弟「そうでござるね」

将官「勝算はどれほどあるのです?」

軍人子弟「開門都市からのこの親書を信じれば、まず」

将官「まず?」

軍人子弟「五割でござろうね」

鉄国少尉「策を持ってしても、ですか」

軍人子弟「時にはそういう戦もあるでござるよ。
 そもそも策とは不利だから講じているのでござる。
 昨日の戦で判り申したが、
 遠征軍はどうやら全軍では行動がとれぬ様子。
 と、いうよりも、王弟将軍の指揮権が半減しているでござる」

鉄国少尉「そのようですね。昨日はあそこまで攻めて叩いても
 本陣からは援軍の動きも、そもそも報告の行き来もなかったとの
 密偵から知らせが入っています」

将官「ふむ。……何らかの齟齬でもあるのですかね」

冬寂王「遠征軍もまた我らと同じように多数の国家群からなる
 寄せ集めの軍隊だ。
 馴れぬ異境の地で、意見が割れると云うこともあるだろう」
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:12:29.79 ID:4RteqQsP
軍人子弟「そうでござろうね。
 我らと違って、参加諸侯は恩賞の土地目当てが殆ど。
 そこらあたりが原因かと思うでござる。
 王弟元帥とやらは確かに軍事的才能は秀でているでござろうが、
 致命的な弱点があるでござる」

将官「弱点? そのような物があるのですか?」

冬寂王「はははは。“それ”を弱点というのは
 いささか可哀想な気がせんでもないな」

鉄腕王「なんだそれは?」

軍人子弟「それは“一人しかいない”と云うことでござるよ」

鉄国少尉「確かに」

将官「それは当たり前ですが、それが弱点になるんですか?」

軍人子弟「2つの前線で指揮は執れないでござるよ。
 夜明けを切っ掛けに開門都市とこちらで連携した戦術で
 遠征軍を引きずり回すでござる。
 遠征軍に亀裂が入っているのであれば、
 その機動で必ずや無理が露呈するでござる」

羽妖精侍女「都市ハ助カリマスカ?」

鉄腕王「大船に乗ったつもりでいてくれや」

冬寂王「軍人子弟殿は、その親書を深く信頼しているのだな」

軍人子弟「蔓穂ヶ原の戦いにおいて我らを助けるために
 駆けつけてくれた魔族の二人の将軍の一人が、
 開門都市で指揮を執っているでござる。
 砦将殿とはあの戦役の折、酒を酌み交わしたでござる。
 あの御仁であれば、必ずや役目を全うされるでござろう。
 それに……」

冬寂王「それに?」

軍人子弟「この親書の封蝋の紋章には見覚えがあるでござるよ」

鉄腕王「封蝋」

軍人子弟「懐かしき学舎の、でござる。
 二人の師匠が揃って見ているのでござる。
 拙者が恥ずかしい真似をすることは出来ないでござるよ」
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:18:30.94 ID:4RteqQsP
――開門都市、南大門、大通り付近

義勇軍弓兵「明るくなってきた……」
人間作業員「夜明けだ」

東の砦将「さぁって、今日が運命の一日か」
青年商人「そうなりますね」

東の砦将「すげぇくそ度胸だな」

青年商人「いやいや。そんなことはありません。
 しかし、顔色を変えると足元を見られますからね。
 それに最初はそちらの手番です」

東の砦将「“とりあえず火をつけろ”とはね」
青年商人「やはり相当に無茶ですかね」

東の砦将「普通の将軍なら引き受けねぇだろうな」
青年商人「でしょうね」

東の砦将「でも、こちらも一応族長って事になってるし
 このまま縮こまって守ってれば勝てるかって云う話でもあるしな。
 また、勝って良い相手かと問われれば、そりゃ悩むさ。
 別に俺が人間だからって訳じゃないぞ。
 ただ、曲がりなりにも開門都市を預かっていたからな。
 やはり夢は見ちまうさ」

青年商人「夢、ですか」

東の砦将「喧嘩はしても、一緒にやってくことも
 出来るんじゃねぇかってな」

青年商人「そんな事は最初から自明ですよ」
東の砦将「そうなのかい?」

青年商人「ええ、最初に出会った時から判りきっていました」

東の砦将「あいつらにも判ってくれりゃぁいいけれどな。
 さぁて、そろそろはじめるぜ?」

青年商人「よろしくお願いします」

東の砦将「よーし、火をつけろ! 金物をならせっ!!
 門の付近で火事が起きて騒ぎを起こせば、
 抜け駆けされたと誤解をした遠征軍の先方部隊は
 飛び起きてしゃにむに突撃してくるぞ! 火矢を射込め!
 灯りを目当てに射撃で数を減らせ! 乱戦を演出するんだッ!」

青年商人「略奪貴族部隊の眼を、南門に引きつけるのです!
 斥候を集中させて、北門の包囲を解かせる。
 この一戦で状況を打破しますよっ」
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:22:20.80 ID:4RteqQsP
――開門都市、南通り正門付近、遠征軍の天幕

ダダダッ! ガササッ!

見張り兵「領主様っ!」

貴族領主「見えておるわ、このうつけめが! 皆をたたき起こせ!」

見張り兵「は、はいっ!」

 ごおおおお!

私兵隊長「あの炎はっ!?」高慢な騎士「さては、川蝉の領地か、霧の国の抜け駆けか!」

貴族領主「このままでは一番槍を奪われるっ。
 農奴達を正門に突撃させろっ。いや、我が領土の騎士を投入だ!
 急げ! 農奴などは信用がならぬっ」

私兵隊長「判りました! 整列っ! 整列っ!」

高慢な騎士「腕が鳴りますな、領主殿」

貴族領主「ふっ。強力無双の騎士どもにかかれば魔族どもばらなど」

高慢な騎士「はーっはっはっは! 我に任せれば
 全て平らげてご覧に入れようっ!」

バサッ!

見張り兵「炎上は継続中! 霧の国、塩の国の兵団や、傭兵部隊が
 動き始めました! 正門付近では戦闘が始まっております、
 すごい音です!!」

貴族領主「こうしてはいられぬっ」

高慢な騎士「陽も登りつつある、暗闇は払われたっ!
 今日こそ小癪な魔族どもをこの世界から抹殺してご覧に入れる!」

観測兵「開戦っ! 夜明けを待たずして、激突が起きていますっ」
伝令兵「早速部隊が正門打破を成功させましたっ!!」
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:25:03.93 ID:4RteqQsP
――開門都市近郊、南部連合軍、中枢

将官「開門都市、南門付近に動き有り! 火の手ですっ」

軍人子弟「いよいよでござるな」
鉄国少尉「はっ!」

冬寂王「決戦になるのか?」

軍人子弟「出来れば仕留めたいでござるね」

将官「このような時に、女騎士将軍がいてくだされば……」

冬寂王「それは言うな。彼女には彼女の仕事があるのだろう」
鉄腕王「そうなのか?」

軍人子弟「あるでござろうね」
鉄腕王「この一大事になんの仕事が」

軍人子弟「勇者一行の仕事でござるよ」

鉄国少尉「そうですね。我らのことは我らでやらないと」

将官 こくり

冬寂王「そうだな」

斥候「遠征軍後陣、突出してきますっ!」

鉄腕王「ふっ」

軍人子弟「先にこちらを叩くつもりでござるか。いや……」

鉄国少尉「ええ……。突進してくるのは約6000。
 そのほかの部隊は、一丸になって力を蓄えています」

鉄腕王「決死隊か」
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/10(火) 06:33:16.41 ID:4RteqQsP
軍人子弟「……」
鉄国少尉「お気持ちは判りますが、避けられませんよ」

軍人子弟「無用の情けは武人の恥でもあり
 傲慢でもあるでござろうね」

鉄国少尉「そうです」

冬寂王「血が必要なのだ。この瞬間を乗り越えるためには」
鉄腕王「我らの血で払いたくなければ敵の血であがなうしかない」

軍人子弟「騎馬隊っ!!」

騎馬隊「はっ!!」

軍人子弟「縦列突撃準備っ! 敵の突出部隊は軽装歩兵中心。
 マスケットは含まれていても少数でござる!
 これを機動兵力にて一撃するでござる。
 ただし、敵の狙いは、この兵力を持って
 自らのマスケット射程圏内に我らをおびき出すことっ。
 くれぐれも突出を控えよ。角笛の二点呼にて退却っ!」

騎馬隊隊長「復唱します! 縦列突撃後、角笛の二点呼にて退却」

軍人子弟「よしっ! 指揮は鉄国少尉っ」

鉄国少尉「お任せあれっ!」

軍人子弟「まだ序盤でござる。太刀の一合わせ目に過ぎぬでござる。
 いまは、敵の首よりも混乱が欲しい。
 逃げる敵があれば、深追い無用。ただし、意気はくじくべし!」

鉄国少尉「かしこまりましたっ!」

将官「我ら歩兵部隊は?」
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 06:34:58.77 ID:4RteqQsP
軍人子弟「このまま前進。緩やかに回り込みながら開門都市に接近。
 遠征軍の本陣に圧力を加え続けるでござる」

鉄国少尉 こくり

軍人子弟「遠征軍の貴族達や王族達、それに教会勢力は、
 安心しているのでござる。
 ――たとえ多少の軋轢はあってもいざとなれば王弟の軍が
 守ってくれる、と。
 それゆえ、その安心ゆえに、絶対的な高所から狩るかのように
 人殺し、魔族殺しを行なっていることが出来るのでござる。
 我らは身を切られるような痛みを持って
 この戦場に立っているでござるが、きゃつらはその痛みを
 感じることもないままに、ぬくぬくと略奪をしているだけ。
 これでは交渉など出来ようはずもないのでござる。
 安全? 守ってくれる? 一方的な攻撃?
 そのような保証はこの戦場にはどこにもないということを
 我らが教えてやる必要があるでござるっ」

冬寂王「気が付くかな、遠征軍は」

軍人子弟「気が付いたにしろ手遅れでござるよ。
 数が多いという武器が、今度は奴らの首を絞めるでござる。
 あの全軍を統率することは、たとえ王弟将軍であろうと
 今からは不可能でござる」

将官「了解です。防御陣形のまま迂回侵攻っ」

軍人子弟「直属ライフル部隊は、このまま予定どおりの地点を
 移動しつつ、狙撃により遠征軍の指揮系統を破壊するでござる!
 遠征軍の大半は、戦闘には不慣れな素人。
 士気も決して高くはない。
 指示がなければ判断できない部隊でござる。
 貴族の鎧や戦馬を集中的に狙撃っ! 指揮系統を分断っ!」

ゴオォォーン!!

鉄国少尉「始まりましたな。いってきます! 護民卿っ!」

軍人子弟「我らの明日のためにっ!」
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:17:26.21 ID:4RteqQsP
――地下城塞基底部、地底湖

明星雲雀「ピィピィピィ」
女魔法使い「……ここ」

魔王「こんなところがあったとは……」
勇者「ここは、開門都市の」

女魔法使い「そう。岩盤空洞」

メイド長「まおーさまっ!」ひしっ
魔王「メイド長ではないかっ」

勇者「よっ」

メイド長「心配しましたよ」
魔王「魔法使いの手伝いはどうなった?」

メイド長「もちろん完璧です」
勇者「手伝い?」

女魔法使い「借りた」こくり

魔王「殆ど脅迫のようにメイド長を連れて行ったのだ」

ガシャ

女騎士「わたしもいる」

勇者「女騎士っ!」
女騎士「勇者、ぼろぼろだな」

明星雲雀「みんなぼろぼろですよぅ。ぴぃぴぃ」

女魔法使い「説明をする」
メイド長「そうですね」
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:18:31.70 ID:4RteqQsP
魔王「説明。生け贄の祭壇……か」

女魔法使い「そう。ここが生け贄の祭壇。
 正確には開門都市全域が、そう。
 それは、勇者か魔王の死を感知して起動する力場形成装置」

メイド長「ずいぶん古く、精巧なものです。
 この魔法的な装置の修理と手入れは非常に微細なレベルでの
 掃除が必要でして、通常の方法では不可能でした」

魔王「それでメイド長が必要だったのか」

メイド長「ええ、メイドゴーストであれば透過しつつ
 掃除できますからね」

勇者「いくら修理したからって、
 魔王を生け贄にするつもりなんて俺にはないからなっ」

明星雲雀「ピィピィピィ」
女魔法使い「問題ない」

勇者「だいたい何でかあいつら何かを犠牲にすれば
 何か得られるとか本気で信じ込んでるから始末に負えない。
 それは要するに何かを犠牲にすれば、貰えて当然って云う
 さもしい乞食根性だっていい加減気が付けって……
 えーっと。……問題ないのか?」

女魔法使い「ない」
明星雲雀「……ピィ」

女魔法使い「この装置は、魔王や勇者という存在が消滅する時に
 発生する巨大な関係性のエネルギーと魔力を変換して
 起動するもの。残った片割れを精霊の住む場所へと案内する」

勇者「精霊の住む場所って……異次元とか?」

女魔法使い「精霊にそんな概念はない。そんなに都合は良くない。
 精霊がいるのは、あの……碧の、太陽」

メイド長 こくり

魔王「あの太陽にっ!?」
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:20:24.89 ID:4RteqQsP
勇者「魔界のか!? なんだってそんな所にいるんだよっ」

女魔法使い「大破砕の後の混乱、茫然自失、あるいは昏睡。
 それから覚めた精霊の眼に移ったのは荒廃した世界。
 これから荒廃してゆかざるを得ない世界。
 人間と魔族……つまり、大地の精霊の血を引く力弱き民と
 それ以外の精霊の血を引く猛々しい民の間には
 すでに憎しみの眼が撒かれていた。
 それも、炎の精霊族たる彼女と、
 大地の精霊と人間の間に生まれた彼女の恋した青年。
 ――最初の勇者が惹かれあったせい。
 二人の恋がおごり高ぶった精霊の選民思想に火をつけて
 この世界を引き裂きかねない荒廃をもたらした。
 この世界は広いけれど、それでも憎しみ合う2つの民を
 住まわせるほどの広さはなかった。
 だから、彼女は魔族――精霊の血を引く民を
 この大地の底へと閉じ込めた。
 それは人間の自由さをねたみ、恐れ、縛り付けようとした
 自らの一族への永劫の罰。幽閉の煉獄。
 でも、罪深き自らの民以上に彼女は自分自身を責めた。
 救いきれなかった自分を。
 選べなかった自分を。
 そして、彼女はこの真っ暗な地底世界の、
 せめてもの灯りになることを望んだ。
 彼女は炎の精霊としてその身を焦がし、
 “光の精霊になった”」

メイド長「……」

女魔法使い「魔界には、この空洞には灯りがなかったから。
 炎の娘が魔族と呼ばれる者たちに“世界”を与えるためには
 それしか方法がなかった。
 彼女は今でもその身を焦がしながら、焼ける身体に心を
 縛り付けて、何人もの魔王を、そして勇者を待ち続けている」

魔王「では……」
勇者「まさか……」

女魔法使い「そう。あの碧の太陽が、彼女の骸。
 ――光の聖骸。光の精霊の、罪に満ちた、亡骸」

魔王「いったいどれだけの時を」

女魔法使い「その時間は、この世界において意味をなさない。
 時間を刻むべき世界が切り替わるほどの時がたった」
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:23:07.12 ID:4RteqQsP
勇者「……そか」
女騎士「……」

女魔法使い「……時間を掛けて研究した。私の魔力ならば
 魔王が死んだ時に匹敵する魔力を作り出して、
 維持することが出来る」

魔王「まさかっ!? そうなのかっ?」

勇者「魔法使いが出来るって云うのなら、出来るんだろうな」

明星雲雀「……ぴぃ」
女魔法使い「任せて」

女騎士「……ああ、任せても平気だ」

ブゥゥウン

メイド長「魔力回路の整備も完璧です」

女魔法使い「私が回路を起動させて、『天塔』を作る。
 力場で作られた高さ1500里の塔。その先に精霊はいる。
 起動が成功したら、すぐに魔王と勇者、女騎士は
 塔へと突入する。塔の中は完全に無人のはず。
 作りたてだから。後は最上階で精霊を説得する」

魔王「女騎士も?」

女騎士「ひどいな。魔王は。
 まさか勇者と二人だけで行くつもりだったのか?」

魔王「いや、そういうわけではないが」
勇者「そういえば、いつの間にこっちに来てたんだ。女騎士は。
 よくここまでたどり着けたな」

女騎士「……魔法使いの案内で」

明星雲雀「ご主人様はねっ! ほんとはっ!」

女魔法使い「……“捕縛式”」

明星雲雀「ピギャン!」
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:24:21.92 ID:4RteqQsP
メイド長「まおー様……」
魔王「世話を掛けるな」

メイド長「いえ。これもメイドの役目ですから。
 ですけれど、帰ってきてくださいね」

魔王「それは」
勇者「もちろんだぞ。絶対帰すから」

魔王「勇者、今回ばかりはそうとばかりも」

メイド長「今回はお供できません。申し訳ありません。勇者様」

勇者「おうよ」

メイド長「期待して良いですね?」

勇者「もち」

メイド長「それ、虚勢ですよね?」

勇者「よく判ったなっ」

メイド長「いえ。虚勢も張れないような人間だったら
 始末していたところです」

魔王「メイド長っ!」

勇者「いや、良いって良いって。それにさ。
 大変なのは俺らばっかりじゃないしさ。
 そもそも俺たちなんて精霊に面会して
 説得するだけの楽な任務だぜ?
 考えてみれば、下に居残って都市を守る方が
 絶対にキツイって。戦争なんだぞ?」

メイド長「そんな事はないかと思いますが」

魔王「いや、勇者の云うことももっともだ。
 都市のみんなにも、よろしく伝えてくれ」


勇者「俺からも頼む。……メイド姉にも、会えたらな」

メイド長「へ?」
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/10(火) 07:26:54.71 ID:4RteqQsP
魔王「メイド姉が?」
勇者「来てるよ」

メイド長「来てるって……」

勇者「近くで、軍を率いているよ」

メイド長「何をやっているんですかっ。あの娘はっ!?」

勇者「勇者」

メイド長「え? ええ?」
魔王「勇者?」

勇者「ああ。……勇者を名乗るんだってさ。くくっ」

魔王「――。あははははっ」
勇者「最高だろ?」

魔王「まったくだ!」

メイド長「笑い事ですかっ」

魔王「いやさ。覚悟を決めた人間のなんと眩しいことか」
勇者「あいつは本物だよ。俺より勇者かも知れないな」

メイド長「まったく。あの娘は、メイドの道を諦めて正解です。
 おとなしい内省的な性格なのに、
 表に出る行動だけは断固意地っ張りでとんでもないんですから」

魔王「メイド長によく似てる」
勇者「そうな!」
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/10(火) 07:28:25.46 ID:4RteqQsP
女騎士「……」
女魔法使い「……」

   勇者「まぁ。上の件は、任しておけって」
   魔王「本来の役目だからな」
   メイド長「緊張感を持ってください」

女騎士「すまない……」

女魔法使い「謝る必要なんて無い。
 私は私の思うがままに誠を通しているし。
 ――それで、十分」

女騎士「十分、なのか」

女魔法使い「中に入ったら、打ち合わせ通りに」

女騎士「判った」

明星雲雀「やっぱり無茶ですよぅ。もっと準備をして」

女魔法使い「準備の時間はない。
 今ならば、あの怪物より先に『天塔』へ入れる。
 でも、先行されたならば追いつくことは出来ない」

明星雲雀「だからって……」

女魔法使い「忘れてはいけない。魔王は戦闘では無力。
 勇者の戦闘能力は、無力化の祈願によって十分の一。
 もう、あの怪物を止める手段はない。
 誰も気がついてないけれど、もう詰んでいる。
 魔族軍も南部連合軍も、もはや遠征軍さえも
 ――すでに壊滅しているに等しい」
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:31:10.05 ID:4RteqQsP
女騎士「そうだな」

女魔法使い「……私たちは何?」

女騎士「勇者の仲間、だ」

女魔法使い こくり

女騎士「だけど」

女魔法使い「……あの化物が戦場で暴れ始めたら
 膨大な数の犠牲者が出る。わたしはそれでも良い。
 ううん……その方が良い。
 けれど、それでは勇者が納得しない」

女騎士「そうだな……」

明星雲雀「馬鹿ですよぅ。本当に」

女魔法使い「……それで、いい。それが、いい」

女騎士「……」

女魔法使い「魔王はそろそろ気がついている。
 収斂力が高まるという意味について。
 ――それは魔王というシステムの根幹だから。
 略奪、戦乱、疲弊、飢餓、崩壊。
 それが魔王という機構の存在意義。
 『世界を後退させる収斂力の顕現』」

女騎士「魔法使いの話はいつも難しいよ」
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/10(火) 07:32:24.26 ID:4RteqQsP
女魔法使い「理解しないと負ける」

女騎士「判った」

明星雲雀「判ったのかねぇ。ピィピィ」

女騎士「勇者と魔王は、精霊を目指す決定力。
 であると共に、怪物を戦場から引きはがす、囮」

女魔法使い「……正確には囮じゃない。
 『天塔』が起動する。
 それは、一見、勇者か魔王の死を示す。
 怪物はそれを見逃さない。全てを手に入れるために
 『天塔』へと向かい、結果的にそれは先行する
 女騎士達を追いかけることになる」

女騎士「話は簡単だ。それに望む所でもある。
 護衛だなんて騎士の誉れだ」

女魔法使い「……」

女騎士「ほんとだぞ?」

女魔法使い「足止め、捨て駒。許されない」

女騎士「魔法使いがそれを云うのか」

女魔法使い「わたしは特別。わたしは世界で一番想ってる」

女騎士「わたしだって特別だ。魔王だってな。
 思い上がってちゃだめだ。世界で一番、なんて。
 そんなもの、世界で一番ありふれているんだから」
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:09:16.59 ID:uEzyLrsP
――開門都市、南門周辺、市街戦

獣人軍人「下がれ! 押し寄せてくるぞ!!」

土木師弟「10番から20番まで、扉閉鎖っ! タールを流せ!」
巨人作業員「オオオっ!」

義勇軍弓兵「討て! 討てっ!!」

ひゅんひゅんひゅん!! ひゅんひゅんひゅん!!

人間作業員「土嚢だ。石も持ってきた!」
蒼魔族作業員「そこにおいてくれ。俺たちが積み上げる」

人間作業員「そこは矢が飛んでくるぞっ!」
蒼魔族作業員「だから俺たちがやるんだっ」

東の砦長「おい、おい。落ち着けぇ!
 まだ始まったばっかりだ。それに相手は貴族配下の
 欲の皮の突っ張った騎士どもに腰の引けた従者どもだぞ。
 こんなものはまだまだ手始めだ。気負うな!」

獣人軍人「退却する城壁、防壁、路地を確認っ」

土木師弟「……良く引き寄せてくれ」

巨人作業員「……家を……略奪しながら」

義勇軍弓兵「ふざけるな! 遠征軍どもめっ。
 人間はお前達のような恥知らずばかりじゃないっ」

ゴォォン!!

人間作業員「!! カノーネ!? お構いなしなのかっ」
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:12:55.49 ID:uEzyLrsP
東の砦長「よぉく聞け! 衛門の一族よ! 魔族の強者よ!
 南区全域はこれより市街戦の戦場とするっ。
 すでに住民の避難も終わり、魔王の許可も出ている。
 本陣は無名神殿に奥だが、いずれは無明神殿まで譲り渡す。
 いや、無名神殿の方まで貴族軍を招き寄せて捕獲するぞ!
 いいか、街はここで大きな被害を受けるだろう!
 だが、街は街だ。
 人じゃない。
 戦が終われば再建できる。
 眼前の一戦にこそ、家族、同胞、氏族、そして魔界の
 興亡がかかっていると心得よっ!
 憎しみで戦うなっ。恐怖も怒りも視界を濁らせて自分の
 身を危うくするぞ! 無理はするなっ!
 この区域は俺たちが暮らしてきた街だっ。
 一から復興して、一つ一つ煉瓦を積み上げてきた都市だっ。
 この都市は俺たちの味方で、決して裏切ったりはしない。
 欲に駆られたヤツらは略奪や放火をしながら進んでくる。
 少しずつ、ヤツらを小さな部隊にほぐして、取り囲め!
 無理なら殺して問題はないが、もし可能なら生け捕りにしろ。
 戦闘力を奪うには、両手をへし折れば足りるっ。
 我らの街に勇んで入ってきたヤツらは、地上の王族や貴族だ。
 戦後身代金をたんまり払わせてやるぞっ!」

「「「おおっ!」」」

東の砦長「土木師弟さんよぉ、人足を指揮して、
 防壁の指揮を頼む。相手の上に矢を降らせて
 いらいらさせてくれ。ヤツらの経路誘導は全て任せたっ。
 獣人軍人っ。あんたは後詰めだっ。
 だからといって暇じゃないぞ。けが人の手当やさらに
 後ろへと運ぶ準備、それから捕虜の管理、全てやってもらう。
 後退軍の準備も進めてくれっ。
 俺は大通りに出て、ヤツらの主力を一回叩く。
 さっと下がるからな! 街の中央部へは行かせるな!
 あくまで無名神殿方面へと侵攻させ、被害を制御しろっ!」

ゴォォン!

東の砦長「この街は魔王そのものだっ。
 俺たちは魔王に恩義があるっ。
 そしてその魔王を守るために散っていった友との約定もある。
 この地を守ることは、俺たちがこの地の正統な住人だと
 名乗る上で欠くことの出来ぬ条件だ。
 ――故郷だからこそ守る、と人は言う。
 だがしかし、俺は新興の木っ端族長として言わせてもらうぜ。
 “守るために力を尽くしてこそ故郷と呼べるのだ”となっ。
 さぁ、だれ恥じることのない故郷を得るために、
 この都市を本当の意味で我らの故郷とするために
 俺たち力の最善をつくせっ!! 自分自身の未来の為にっ!」
236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:14:16.34 ID:uEzyLrsP
――開門都市南側、南部連合軍前線

ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!

軍人子弟「600歩後退っ!」
鉄国少尉「600歩後退っ! 急げっ!」

将官「左翼騎馬部隊、準備完了っ」

軍人子弟「接近、騎射終了後即座に反転して離脱っ。
 行くでござるよっ!」

将官「了解っ!」

冬寂王「どうだ」

軍人子弟「小刻みに出入りを繰り返しながら
 敵軍を挑発中でござる。
 最初の斉射の後は、遠征軍の前線の指揮官も
 軍勢の内側に身を隠したようで
 なかなか隙を見せないでござるね」

「おぉぉぉぉ!!」 「光のために!」 「精霊は求めたもう!」
ギィン、キィン!!

鉄国少尉「騎射完了ッ!」

軍人子弟「300歩前進っ! 射撃準備っ」

冬寂王(細かいな。これほど緻密な運用をするのか)

軍人子弟「どうしたでござろう? 冬寂王」

冬寂王「いや、感心していただけさ」

軍人子弟「?」
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:17:07.58 ID:uEzyLrsP
鉄国少尉「確かに驚異的な粘りですね」

冬寂王「む?」

軍人子弟「さすが王弟元帥という話でござる。
 歴史に残る采配でござるよ。
 これだけ指揮系統を炙って、少なからぬ混乱を
 起こしているにもかかわらず、前線が破綻しないでござる。
 それどころか、けが人を抗争して、素早い再構築を繰り返し
 前線密度が低下しないでござるよ。
 こちらの突撃はマスケットで押さえながらも、
 向こうのもくろみも進行させているでござる」

冬寂王「もくろみ、とは?」

軍人子弟「遠征軍は、開門都市南門で戦場を一つ、
 そしてここで我ら南部連合との間に戦場を一つ
 抱えているのでござる。
 二つの戦場の間には貴族や王族、教会の天幕やら
 糧食を集積した大規模な街にも匹敵する陣地を
 築いている……。
 この三つは、互いに距離もあり連携することは困難でござる。
 王弟元帥1人で目が届くのは我らとの前線くらいのもの。
 そしてその前線戦力では我らと互角。
 王弟元帥はこちらの誘いに乗らずに徐々に軍を斜行させ
 本陣、および南門前線方向へと戦場をずらしているでござる。
 おそらく前線と本陣の距離を圧縮して、数的有利を得る
 戦術でござろうね」

鉄国少尉「ま、こちらも織り込み済みですがね」

冬寂王「そうみえるな」

軍人子弟「しかし、それをここまで被害を押さえて
 行なうとは非凡でござる。良くする所ではござらぬ。
 敵でさえなければ教えを請いたいほどでござる」
238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:19:29.00 ID:uEzyLrsP
冬寂王「崩すのはやはり難しいか?」

軍人子弟「膠着はするでござるね。
 王弟元帥はこのまま戦場を圧縮し、
 おそらく本陣へも我らの銃声が響くような距離設定に
 することにより危機感を煽り、一気に本陣の予備兵力を掌握。
 その圧力にて、我ら南部連合を殲滅する計画でござろう」

鉄国少尉「……」

「大地のためにっ!」「我ら南部の旗の下にっ!」

ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!

冬寂王「そのようだな」

軍人子弟「王弟元帥の器量がどれほどか」
冬寂王「そこは賭けにならざるをえんな」

鉄国少尉「は?」

冬寂王「器量が低ければ、軍の掌握を仕切れぬだろう」
 そして器量が充分に高ければ戦わずとも済む。
 ……高いことを期待したいが」

ゴォォン! ズゴォォン!!

冬寂王「カノーネか」

鉄国少尉「我ら主力軍、防壁まで後1里半に接近っ」

冬寂王「そろそろだな」

軍人子弟「本当に良いのでござるね?」

冬寂王「平和のためだ。惜しくはないさ」

軍人子弟「承ったでござる。輜重部隊、護衛部隊。準備を」
鉄国少尉「了解っ!」
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/12(木) 21:20:41.76 ID:uEzyLrsP
冬寂王「前線の構築と傭兵は鉄の国および貴君に一任する。
 我には南部連合のとりまとめとして、別の戦があるのだ。
 出立前から描いていたとおり、やらせてもらおう」

鉄腕王「良かろう。会議でも合意されたことだ」

鉄国少尉「輜重部隊に簡易装甲の準備良しっ。
 火竜大公よりの補給品、全て積み終わりましたっ」

羽妖精侍女「伝ワッテ欲シイデス」

冬寂王「力尽くでも判らせるほか、あるまいよ」

鉄腕王「こっちも準備よしっ!」

軍人子弟「狙撃部隊っ、突出してきた兵の鼻先を叩け。
 なるべく深く突っ込み、荷物を置き去りにするぞ!
 回収させるでござるっ!」

鉄国少尉「一番隊、二番隊、三番隊出発!!
 護衛歩兵部隊、長槍部隊進発っ!
 測距兵、マスケットの間合いを随時警告せよっ!
 距離はない、ゆっくり進んでもかまわん!!
 待避用の塹壕をこえて、慎重に行けっ!!」

冬寂王「では、我も出るか」

軍人子弟「それは――。前線はそれがしたちだけで
 大丈夫でござる。冬寂王が身を危険にさらすことなど」

鉄腕王「はははは。わしもでるぞ。ここは王族の出番だろう」

軍人子弟「っ! では、拙者も出るでござるっ。
 突撃準備っ! 鉄国兵団、構えっ!!」

鉄国少尉「了解っ!」
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/13(金) 03:31:34.06 ID:rH.ZqWkP
――開門都市南側、遠征軍前線

   ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!

王弟元帥「きめの細かい傭兵だな」
参謀軍師「姫将軍とやらでしょうか」

王弟元帥「いいや、この感覚は違うだろう。
 挑んでくるような覇気が感じられる上に、
 しぶとく不屈の、折れぬ剣のような気配だ。
 必殺の策を持っているという気迫ではないが
 負けぬ戦いの意志を感じる。南部も、層が厚い」

参謀軍師「マスケットの射程距離外で細かく兵を出入りさせて
 わが軍の指揮系統を消耗させているようです」

王弟元帥「このような戦、歴史にはないものだ。
 射程距離が長く、命中精度の高いマスケットか。
 ――だが、数は少ないようだな」

バサリッ!

聖王国将官「元帥閣下っ! 陣備えを半里ほど後退させました。
 本陣もあと少しで交戦領域です。本陣の予備兵力や
 光の子供達の間では緊張状態が広がっていますっ」

参謀軍師「で、しょうな。彼ら徴発された農奴兵達は
 王弟元帥に従って蒼魔族の領地まで遠征した経験もない。
 魔界についてから大規模な合戦もなく、
 攻城戦はカノーネが担当をしてきたわけでしょうから、
 実戦の経験が足りないのでしょう」
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/13(金) 03:32:54.25 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「そのプレッシャーが吉と出るか、凶と出るか。
 しかし、ここまで前線と本陣を近づければ、
 教会も貴族達も本気を出さざるをえなかろうさ。
 伝令を出せ! 教会および本陣司令部に、援軍要請だっ。
 一気に南部連合を打ち破るために兵力集中を命ぜよ!
 これは全軍総司令からの指令だっ!」

参謀軍師「はっ。すでに伝令は用意してあります」

聖王国将官「これで兵力がそろいますね」

王弟元帥「一時しのぎに過ぎんがな。
 開門都市の入り口を固めるだけなら、貴族の私兵で充分だ。
 本陣のマスケット銃兵1万を増援として運用。
 このマスケット兵を右翼から南部連合軍にあてる。
 その混乱に乗じて、我らが鍛えた精鋭マスケット部隊を」

 ぐいっ

王弟元帥「一里ほど前進させるぞ。
 それで南部連合の本陣までたたきつぶす」

伝令兵「王弟閣下! 貴族達が援軍を求めていますっ。
 “開門都市南門付近の戦闘にて、魔族の抵抗激しく
  わが軍は窮地に立たされつつある、援護を乞う”と」

聖王国将官「恥知らずが」

王弟元帥「ふっ。戦局が見えていないのかっ。
 いってやるがいい! “わが軍後方より南部連合が侵攻、
 本陣との距離は一里を切り、全軍による総攻撃の段階にあり。
 後方の指揮を変わっていただけるなら、聖王国中核軍全てを
 もって南門周辺地域の制圧に向かおう”となっ」

参謀軍師「ふふっ」

伝令兵「かっ、かしこまりましたっ!」

だっだっだっ
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/13(金) 03:34:13.00 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「参謀っ」
参謀軍師「はっ」

王弟元帥「教会に向けて書状を。口述筆記だ」
参謀軍師「はい」

王弟元帥「“いまや、南部連合軍間近に迫り
 開門都市との位置関係は我らを半包囲する状況に
 なりつつある。しかし一方、遠征軍には未だ豊富な
 兵力があり、反撃は充分以上に可能である。
 我が後陣は敵軍を制御しつつ戦場を設定した。
 これより、全軍総司令として本陣予備兵力の銃兵1万を
 増援として徴用。火力を持って南部連合を撃破する。
 大主教におかれては、我らが聖鍵遠征軍に祝福を”とな」

参謀軍師「釘を刺しますか」

聖王国将官「これならば、大主教も
 頷かねばならないでしょうね。南部連合を利用して
 遠征軍の石を固める、素晴らしい策です」

王弟元帥「……うむ」
参謀軍師「?」

王弟元帥「いや、良い。伝令兵を出せ! 急がせろ」

ゴォオオッン!! ゴォオオン!

聖王国将官「カノーネですな」

王弟元帥「貴族軍が攻め入っているにもかかわらず、
 後方からの射撃か。領主達が功を焦って
 足を引っ張り合っているな……」

参謀軍師「今は一刻も早く南部連合を平らげて、
 反転し指揮権を掌握すべきかと」

聖王国将官「了解っ! 伝令兵準備、前線を再構築しますっ」
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/13(金) 03:35:27.38 ID:rH.ZqWkP
――開門都市、近郊、遠征軍本陣

ゴォオオッン!! ゴォオオン!

光の銃兵「お、音が近づいて来ただな」
光の槍兵「ああ……」
光の護衛兵「とうとう戦になるんだか。俺はまだ訓練でしか
 剣を振ったことがないのに……。ま、魔族か。
 来るのか、あいつらがっ」

    ギィン! キィン! 「……ために!」

光の銃兵「い、いや。そうとは限らないぞ。後方に迫ってる
 南部の裏切りどもの相手をすることになるかも知れねぇ」
光の槍兵「裏切り……かぁ……」

光の護衛兵「裏切り、なのか」

光の銃兵「だってそうだろう?
 あいつらは破門された異端者をかばった、異端の国々だ」

光の槍兵「腹一杯食うのは、異端なのかな……」

 ズギュゥゥン!!

光の護衛兵「っ!」

光の銃兵「今のは、近かったな」
光の槍兵「ああ、近かった」

ダカダッダカダッダカダッ!!

光の中隊長「お前ら、そろっているかっ!」
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/11/13(金) 03:37:52.67 ID:rH.ZqWkP
光の護衛兵「はっ、はい」
光の銃兵「そろってるだよ!」
光の槍兵「そろっております」

光の中隊長「今より進軍を開始する、整列せよっ!」

光の銃兵「どこへっ?」
光の槍兵「……」

光の中隊長「光の子供の軍として、敵に突撃をするのだ」

光の銃兵「な、南部のヤツらですか!」
光の槍兵「南部かっ。くそっ! くそっ!」

光の中隊長「それは我らが考える。早く整列をしろっ!」

光の銃兵「はっ、はいっ!」
光の槍兵「了解しましたっ!」

わぁぁぁああ、わあぁぁぁあ

カノーネ兵「な、なんだ?」
光の護衛兵「あれは」
光の中隊長「――! 大主教さまだっ!」

光の銃兵「大主教さまが壇上に……? ほ、本物だか」
光の槍兵「大主教さま」がばっ

カノーネ兵 がばっ
光の護衛兵 がばっ

  参謀軍師「腰を上げてくれましたか。遅いお出ましですが」



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