10-1


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」10-1


35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:02:37.22 ID:O8aL4rAP
――冬の国、王宮、予算執務室

商人子弟「どうだ?」

従僕「あったかいですー!」

商人子弟「指は?」

従僕「にぎにぎしてもひっぱられませーん!
 良いなぁ、この手袋もっふもふですよ?
 すごいなぁ。お水も弾くのですか?」

商人子弟「きちんと手入れすればね」

従僕「もっふもふー」ぺたぺた

商人子弟「こらこら、ところ構わず撫でるのはやめなさい」

従僕「えへへ」なでなで

がちゃん

将官「着ましたよ」

商人子弟「そっちはどうです?」

将官「保温性は、まだちょっと判りませんが
 従来の外套よりも暖かいですね。それに、随分軽い。これは?」

商人子弟「毛皮を薄くして、
 二重ばりの内側に羽毛を入れたものです。
 多少値段が張るんですがね、よいでしょう?」

将官「ええ、素晴らしいですよ」
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:04:13.40 ID:O8aL4rAP
商人子弟「この種の防寒装備は、我ら冬の国の得意と
 するところですからね」

従僕「温かいのです」 なでなで

将官「急に防寒具の改良に着手されたのは何故です?」

商人子弟「急にではありませんよ。
 そのうちに、とは思っていたんですけれどね。
 魔族は毎年攻めてくる相手ではありませんけれど、
 冬は毎年やってくるでしょう?
 で、あれば防寒具の改良をするのは
 国民全体の利益になり得ますしね。以前からの計画です」

従僕「そうですよねー」にこにこ

商人子弟「必要になる気もしますしね」

従僕「?」
将官「……?」

商人子弟「それに、我が国はやはりいま少し兵士が欲しいでしょう?
 軍人になれば上等な外套や手袋が支給されるとなれば
 応募も増えるでしょうし、現場の士気もあがるでしょう?
 冬になったからと云って、領内の巡視は続くんですからね」

将官「そうですね、はい」

商人子弟「銀行も出来ましたし、
 この種の仕事は随分やりやすくなりましたよ」
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:06:16.65 ID:O8aL4rAP
将官「銀行? お金を借りることが出来ると、
 何か良いことがあるんですか?」

商人子弟「試作品さえ出来てしまえば、
 あとは銀行からお金を借りて
 “企業”を一つ立ち上げれば良いわけです。
 “企業”には、今回の場合興味のある皮商人や、
 縫製ギルドの職人に参加して貰うわけですね。
 そして品物を生産する。仕事は沢山あります。

  まずはこの手袋と外套を、軍に行き渡るだけ納品して貰う。
 その後は同じアイデアで品物をつくってみんなに売れば
 良いわけですものね。

  良いアイデアや商品があるにもかかわらず、お金がなかったり
 ギルドの中で若手であると云うだけで、チャンスがつぶれていた
 様々な人たちの仕事が新しく始まりやすくなるわけですよ」

従僕「新しいケーキ屋さんとかっ♪」

将官「しかし、でも、そうすると、銀行からお金を借りて
 それでもし仕事が失敗したらどうするんですか?
 銀行だってお金を損してしまうでしょう?」

商人子弟「だから試作品が大事なんですよ。
 計画書でも良いですけれどね。
 そう言った資料と、仕事をしたいという人の人柄をよく見て
 銀行は貸すお金を判断するんですよ。
 金貸しは役人であってはならないし、銀行は役所ではないんです。
 どちらかというと、仕事を一緒にする仲間であるべきです。

  ……師匠の受け売りですけれどね。
 この立場に成ってみると、いちいち身に染みます」

従僕「チーズの保管所も出来ましたもの♪」
将官「難しいのですねぇ」

商人子弟「この国は恵まれています。人々はみんな素朴だし、
 働き者で、笑顔が力強いですから。なにごともなければ
 ずーっと発展が続くはずですよ」
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:35:46.18 ID:O8aL4rAP
――鉄の国、兵舎、執務室

軍人師弟「次の書類が欲しいでござる」

鉄国少尉「はっ」しゅたっ

軍人師弟「ふむふむ……。これはよしっと」 ぺたん
鉄国少尉「確認済みですね」

軍人師弟「うむ。みんな真面目に警備を続けているでござるね」
鉄国少尉「ですね。前回の戦いで国境警備の重要性も判りましたし」

軍人師弟「連絡手段も重要でござるね」

鉄国少尉「通信塔の建築、早く済むと良いですね」

軍人師弟「あれはやはり来年まではかかるでござろう。
 秋の間に大まかな測量が終わって、着工は来年でござるよ」

鉄国少尉「はい」

かりかりかり
 かりかりかり

軍人師弟「ん……」
鉄国少尉「どうされました」

軍人師弟「旧白夜王国に放った密偵からでござる」
鉄国少尉「ふむ」

軍人師弟「……やはり治安に問題が生じているようでござるね。
 それからしきりに練兵を繰り返しているようでござる」

鉄国少尉「練兵ですか……」

軍人師弟「他にやることもないのでござろう」
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:37:05.71 ID:O8aL4rAP
軍人師弟「次を」
鉄国少尉「こちらです」 しゅたっ

軍人師弟「これは、護岸卿に回して欲しいでござる」
鉄国少尉「了解しました」

軍人師弟「閲兵および、行軍訓練の指揮指導は第一大隊長に
 任せるでござるよ。そろそろ出来るでござろう?」

鉄国少尉「はい、通達いたします」

軍人師弟「それから、開拓村の収支の報告書は」がさがさ
鉄国少尉「こちらです」すっ

軍人師弟「司書を呼んで、これの複製を二つ作って
 欲しいでござる、かたほうは冬の国の商人子弟宛に。
 拙者が手紙をそえるでござる。
 一つは王へと報告書と共に出すでござる」

鉄国少尉「すでに複製もありますよ」
軍人師弟「助かるでござるよー」 かきかき

鉄国少尉「……」じー

軍人師弟「それから、少尉には近衛の訓練と」
鉄国少尉「お断りします」

軍人師弟「へ?」
鉄国少尉「そんなに仕事を振りまくって何を考えているんですか?」

軍人師弟「あ、いや。そろそろ皆、自分の仕事を……」
鉄国少尉「違いますよね」

軍人師弟「……」
鉄国少尉「わたしは一緒に行きますからね」

軍人師弟「……そう、でござるか」
鉄国少尉「はいっ」
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:45:52.01 ID:O8aL4rAP
――魔界(地下世界)の荒野、傭兵騎士団の旅

器用な少年「うっわ、すげぇな」
生き残り傭兵「見渡すばかり赤い土、あっちに見えるのは、森か?」

ちび助傭兵「視界が良すぎるな」
若造傭兵 こくり

傭兵弓士「さぁって、あの大空洞を抜けたは良いが」

貴族子弟「しばらくは北西だねー」
器用な少年「なんだよ。あんちゃんはこっちも詳しいのか?」

貴族子弟「あんちゃんって呼ばないでくれないか?
 いい加減温厚な僕でも盗癖のある子供の調理法を
 考え始めてしまうよ?」

器用な少年「な、なんだよっ。やんのかよっ」

生き残り傭兵「暴れるなよ。馬が驚く」

ちび助傭兵「このあたりもまだ寒いな」
若造傭兵「ああ」

貴族子弟「来ました」

器用な少年「え?」

ふっ
冬国諜報部員 ぺこり

貴族子弟「しばらく世話になりますよ」

冬国諜報部員「いえ、上から支持を受けております。
 如何様にでもお使い下さい」
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:48:44.87 ID:O8aL4rAP
生き残り傭兵「隠密かっ?」

貴族子弟「ええ。流石にこのあたりの様子がわからないのも
 心配ですしね。わたしも腕っ節には自身がないですし」

メイド姉「手紙でお願いしたものは、揃いそうですか?」

冬国諜報部員「はい、しかし、宜しいのでしょうか?
 情報だけでよいという話でしたが」

メイド姉「ありがとうございます」ぺこり

冬国諜報部員 すっ

メイド姉「……。ん……。距離よりも、山道のほうが
 やっかいですね。ここからだと、一月はかかるでしょうか?」

冬国諜報部員「20日ほどでしょうか」

生き残り傭兵「ずいぶんな距離だな」

貴族子弟「開門都市の状況は?」

冬国諜報部員「現在は、防壁などが作られたり、
 物資が運び込まれたりしています。
 相変わらず人の出入りはルーズですが、
 聖王国側の人間が入った様子は今のところありません」

貴族子弟「そっちの警戒心はゆるそうですからね。
 そのへんは冬国さんのほうで見てあげて下さいますよね?」

冬国諜報部員「はい、局長の指示ですから。
 暗殺にだけはくれぐれも用心しろと……」

貴族子弟「食えない爺さんだなぁー」
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 00:50:30.12 ID:O8aL4rAP
メイド姉 ぺらっ、ぺらっ
冬国諜報部員「いかがです?」

メイド姉「把握しました、ありがとうございます」
冬国諜報部員「いえいえ。あ、宜しいですよ、それは」

メイド姉「いえ。トラブルの元ですし、全て覚えました」

冬国諜報部員「了解」

生き残り傭兵「で? 代行。これからどっちに行くので?」
ちび助傭兵「こうなれば、ヤケクソだな。どこまでもいくさ」
若造傭兵 こくり

傭兵弓士「どちらにしろ、移動しよう」

貴族子弟「メイド姉くん。僕は、しばらく別れて良いかな?」
メイド姉「はい。お願いします」

生き残り傭兵「おろ、旦那は?」

貴族子弟「僕は根っからの都会ものだしね。
 そろそろ都会の空気が恋しいよ。それに仕事にも好都合だ。
 開門都市へ向かう」

傭兵弓士「じゃぁ、俺たちは代行と? どこへ向かうんだ?」

メイド姉「竜の領域へ。この魔界でももっとも古くから栄える
 大氏族、竜の一族の本拠地のある、火焔山脈です」

生き残り傭兵「火焔山脈……?」

メイド姉「ええ。竜一族、一万年の宝を借り受けないといけません」
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:21:29.44 ID:O8aL4rAP
――新生・白夜直轄領、王宮、執務室

王弟元帥「ここが限界点だな」
参謀軍師「……」

聖王国将官「そのようですね」
灰青王「意見の一致を見たわけだ。結構」

聖王国将官「食料の残量、砲弾の備蓄、装備の普及。
 これ以上時間をかけても、おそらく人数が増えてはゆくが
 補給の関係でよりアンバランスな、
 非戦力の増加を招くだけでしょうね」

灰青王「逆に言えば、この数字が、現在の中央国家群の
 基盤的な限界点ということになる」

従軍司祭長「と、なれば躊躇うことなく一刻も早い出発を」

王弟元帥「軍の規模を報告せよ」

参謀軍師「総勢は約24万と3千。
 農奴による新規編制歩兵部隊は20万強となります。
 うち、マスケット部隊は10万。新型銃フリントロック部隊は250。
 残りの14万は槍兵、および大盾部隊。
 貴族軍3万と5千、騎馬戦力1万となっています。
 またこれ以外にも非軍事参加者8万」

聖王国将官「非軍事参加者と云うのが気に食いませんな」

王弟元帥「そういうな。彼らは職人や飯炊き女、娼婦、
 それに商人なのだ。彼ら無しでは、いくら輜重隊を整備しようが、
 軍そのものが機能しなくなる」
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:24:13.01 ID:O8aL4rAP
参謀軍師「最終的には、マスケットと槍兵の比率は
 ほぼ同数の混成部隊となりました」

灰青王「それは運用でどうとでもなるだろう」

王弟元帥「中核歩兵部隊20万、か」

参謀軍師「これ以上この地に留まりましても、
 食糧備蓄の低下を招くだけ。また、これ以上時をおきますと
 本格的な氷雪の季節の到来となります」

王弟元帥「よかろう。……出陣だっ」

参謀軍師「はっ!」
聖王国将官「はっ!」
灰青王「腕が鳴るな、ふふふっ」

従軍司祭長「精霊様もことのほかお喜びでしょう」

王弟元帥「残存部隊5000を残す。この港および都市は重要な
 補給中継点だ。残存部隊は落葉の国の管理に一任し、
 ただし槍兵4000を与えよ」

参謀軍師「承りました」

王弟元帥「大主教猊下は?」

従軍司祭長「もちろん同道いたします。猊下は王弟閣下に
 全幅の信頼を置いておいでになる。
 道中であっても、その安全はいささかも損じられることはない。
 そう考えて宜しいですね」

王弟元帥「もちろんだ」
参謀軍師「早速部隊への通達に取りかかります」

灰青王「搬入および連絡も急がせるとしよう」
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:26:45.75 ID:O8aL4rAP
――冬の王宮、謁見室

タッタッタッタッ

将官「王! 王! 冬寂王っ!」

冬寂王「何事だ」

将官「白夜の国に駐留していた聖鍵遠征軍が
 とうとう動き始めました!
 船団を活発化させて極大陸の前哨地に、
 次々と兵を送り込んでいます」

執事「始まりましたな」

冬寂王「やはり魔界への侵攻を優先させたか」

執事「まぁ、こちらに攻めて来るとなると、
 相当の消耗を覚悟しなければなりませんし。
 そもそも南部連合となった現在、南部の我ら三ヶ国をつぶす間に
 湖の国が聖王国中枢部を破壊するなどと云うことも
 考えられますからな」

冬寂王「うむ。……誰ぞ伝令はおらぬか!」

伝令「は、ここに!」

冬寂王「至急、氏族会議の領事館にお知らせせよ!」

将官「随分と情勢が変わりますね」
執事「無関係というわけには行きますまい……」

冬寂王「われらも南部連合会議を開催し、対応策を協議するのだ」
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:28:06.27 ID:O8aL4rAP
――氷の国、紫の応接間

氷雪の女王「目の回るような忙しさですね。これだけの書状とは!」

参事官「ええ、しかしなんとか目を通してしまわないと」

氷雪の女王「この手紙は……

 “我が領内には天然痘の患者があふれかえり、
 その有様はまさに煉獄の門が開いたかのようです。
 氷の国におかれましては、同じ人間としての公徳心を持って、
 どうか我が領土に薬を寄付して頂けることを願います”」

参事官「はぁ……。寄付ですか」

氷雪の女王「銅の国なのよ。腹立たしいわねぇ。
 この間まで人の国の人間をマスケットで
 ばんばん撃ち殺しておいたくせに、
 公徳心なんてどんな顔をしていたら、云えるのでしょう?」

参事官「肖像画が確かありましたよ。
 吟遊詩人に命じて各国首脳の肖像画は
 なるべくそろえさせておりますからね」

氷雪の女王「いいわ、見ないでも。
 思い出したわ。
 カエルに似てるけれど、カエルの側も
 縁を切りたいような顔だったわね」

参事官「さようで」

氷雪の女王「はぁ、これ全部そうなのかしらねぇ」

参事官「さようですなぁ」
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:29:14.30 ID:O8aL4rAP
氷雪の女王「出来れば助けてあげたいのだけれど」
参事官「だからこそ、書状も検討しておきませんと」

氷雪の女王「これの山は?」
参事官「そちらの山も似たようなものですが、
 比較的小さな村からの嘆願の手紙ですよ」

氷雪の女王「何故封筒が二重なのかしら」

参事官「湖の国や梢の国に送られたものも、
 全てこちらに回して貰っているからですな」

氷雪の女王「え?」参事官「こういった仕事は、女王の得意とされることですので
 ぜひ情報を一元化するように貴族子弟様が手配されまして」

氷雪の女王「この仕事全部をあの昼行灯に押しつけてやりたいわ」

参事官「さようですか」

氷雪の女王「ええっと……。
 “じょおうさまこんにちは ぼくたちのむらは
 おとなのひとが、てんねんとーで みんなたおれて
 くろくなって、たべるものも ないです
 たすけてください。
 おねがいします”」

参事官「ふぅむ。これは潮の王国の辺境の村からですね」

氷雪の女王「すぐにでも接種の薬と修道士を送らなければ」

参事官「いや、少し待って下さい」
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:32:37.47 ID:O8aL4rAP
氷雪の女王「どうして?」

参事官「これと同様の手紙も数多くきております」

氷雪の女王「でも、小さな村であれば種痘の量も
 それほどには必要ないだろうし、
 第一、この幼い子供達自身はなんの罪も咎もないはず。
 出来るのであれば力を貸してあげたいって、
 修道院の教えにもそうでしょう?」

参事官「いえ、同様の手紙24通は、全て同じ書式で、
 潮の国鱒の港の商館を経由して郵送されてきたわけです」

氷雪の女王「え……?」

参事官「鱒の港の商館といえば、潮の国の王の伯母が、
 王族の免税特権を用いて巨額の利益を稼ぎ出している裕福な
 貴族商人ですからね」

氷雪の女王「……」
参事官「いかがいたしましょう?」

氷雪の女王「至急人をやって真偽を確かめさせて!」
参事官「はぁ。……かなり真っ黒だとは思いますが」

氷雪の女王「もうっ。こっちは?」
参事官「ふむふむ、これは猪首の国からですな」

氷雪の女王「えーっと

 “精霊の恵みたる治療薬を貴公ら南部連合なる
 蛮夷の国にて独占するとは言語道断。
 我が勇猛なる教会僧兵百万の狼牙棒の餌食になりたくなくば
 速やかなる慈悲を請い、全ての医の秘密を
 つまびらかに明かし、我が国に服従を誓え”」

参事官「……空気が読めていませんな。
 100万の兵ってどこのお花畑で遊んでいるんでしょうか」
氷雪の女王「これは捨てちゃいましょう」
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 17:34:54.20 ID:O8aL4rAP
氷雪の女王「はぁ、それにしてもねぇ。殆どゴミね」
参事官「ええ」

氷雪の女王「検討する気になるのは、わずか5通とは」
参事官「どうにも外交する気がないとしか思えませんな」

氷雪の女王「どうした物かしらねぇ」

参事官「鵲の魔術ギルド、これはどういたします?」

氷雪の女王「候補に残しては見たけれど、パスね」
参事官「で、ございますか」

氷雪の女王「ええ。研究目的で売ってくれという話でしょう?
 この種痘でお金儲けをするつもりはないし、
 金儲けの意図が透けて見えすぎるわ」

参事官「と、なりますと……。稲穂の国の支援と、
 自由貿易都市でございますか」

氷雪の女王「自由貿易都市の件は、『同盟』の商館に依頼をして
 高炉に組み込めるかどうか、黒い噂がないかどうかを
 見て貰いましょう」

参事官「さようでございますね」さらさら

氷雪の女王「稲穂の国の支援については、
 わたしの一存では決めがたいわね。
 これは連合の会議ではかってみます。保留にしましょう」

参事官「承知いたしました」

氷雪の女王「天然痘の対処方法の情報は、ずいぶんな衝撃を
 各国に与えたようね……。取り扱いに注意しなくては」
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 18:17:22.88 ID:O8aL4rAP
――聖鍵遠征軍、旗艦『勇壮』の貴賓室

王弟元帥「はっはっはっ! 随分すさまじい経験をしてきたのだな」

勇者「やー。まぁ、でも、美味いんだってば!
 魔界の猪はさー。尻のところなんかぷりっとした感じなんだよ」

王弟元帥「そうなのか?」

勇者「ああ。捕まえるのはちょっと大変だけどね。
 あいつら、特にゲートに近い場所では、気が荒くなるんだよ。
 いまはゲートが無くて大空洞だけどね」

王弟元帥「そうだと聞いたな。勇者は何か知ってるのか?」

勇者「なにかって? もっぎゅ、もっぎゅ」

王弟元帥「ゲートが消失した顛末についてだよ」

勇者「ああ。1回蒼魔族が攻めてきた事件があってね」

王弟元帥「ああ。白夜王国の時か?」

勇者「いや、それよりずっと前にさ。
 その時、ちょっとした必要があって広域殲滅呪文で
 穴を掘ったんだ。穴掘るのは魔法でも大変だな。
 ゲートが壊れちゃったのはもったいなかったけれど
 結果として魔界へと通じる穴が空いたから、
 同じと云えば同じだよね」

王弟元帥「そうだな。すごい景色だと聞いている」

勇者「うん、見物だよ。……むしゃむしゃ。
 あ、これも食べて良い?」

王弟元帥「おお。たっぷりと食べてくれ」
勇者「ありがとうなっ」

   参謀軍師「……何が起きているんだ」
   聖王国将官「……判らない」
119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 18:19:08.18 ID:O8aL4rAP
勇者「んでまぁ。機怪族ってのはさ、全体的に板金鎧を着た騎士に
 似ているんだけど、中身もぎっしりだから相当重いわけだな。
 重さで云うと、同じ大きさの騎士の1.5倍くらいはあると思うぞ。
 でも、防御力は二倍あると思った方がいい」

王弟元帥「ほほう、そうか。さすが勇者だ。
 魔界のありとあらゆる事に精通しているのだな」

勇者「旅暮らしが長いからね」

参謀軍師「あの……閣下?」
聖王国将官「こちらは……?」

王弟元帥「おお、紹介しよう。一時行方不明と噂されていた勇者だ」
勇者「おじゃましています。勇者です」

参謀軍師「いえ、その……。お姿は見たことがありますが」
聖王国将官「生きていらっしゃったのですね!」

王弟元帥「うむ、やはり魔王と戦ったそうだ」

勇者「そうそう。痛み分けだ。
 やぁ、ぶっちゃけ前評判はあてにならないよ。
 弱い弱いなんて云っても魔王だね。
 あの圧倒的な(胸の)オーラ。決着をつけることは出来なかった」

参謀軍師「そうだったのですか……。魔王は?」
聖王国将官「では噂どおり」

王弟元帥「うむ、一命を取り留めたそうだ」

勇者「実は俺も深手を負って、仮死状態だったんだ。
 目覚めたのはつい最近でね」

王弟元帥「聖鍵遠征軍の噂を聞き、やってきてくれたのだ」
120 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 18:20:30.68 ID:O8aL4rAP
勇者「うん、しばらくやっかいになろうかと
 思うんだが、良いかい?」

参謀軍師「それは……」
聖王国将官 ちらっ

王弟元帥「もちろんだとも勇者。
 覚えていてくれるだろうか?
 そなたが魔王征伐を決意し、
 教会の祝福を一身に受けて旅立ったあの日、
 わたしも他の王族に入り交じりバルコニーから
 熱い思いで見つめていたのだ。

  勇者の鎧を光に輝かせ旅立つそなたは、この歳になったとはいえ
 男子の胸の中にある高潔な騎士道と冒険の心を刺激せずには
 置かないまさに一幅の英雄の肖像だったよ」

勇者「そう言われると照れるな。でへへぇ」

参謀軍師(勇者の戦闘能力は一人で重武装の騎士数千に
 匹敵すると云われていた。
 その戦闘能力は、マスケットであっても大隊規模。
 さらに勇者には長い魔界での冒険により地形や文化、
 魔族の知識がある。懐柔するメリットは十分にある、
 と云うことか……)

聖王国将官「ではしばらくご一緒ですね」

王弟元帥「おお、そうなるな。
 どこかに快適な部屋を用意してくれ」

勇者「ああ、気を遣わなくて良いよ。おれはさ。
 水浸しでなけりゃ船底でも相部屋でもなんでも良いから。
 メシさえ美味ければそれでさ」

参謀軍師「至急、整えさせましょう」

王弟元帥「そして食料をたっぷりとな! 勇者は病み上がりだ。
 身体を癒すためには美味い食事と酒がなければ始まらぬだろう」

勇者「いや、ごっつぁんです!」
122 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 18:22:45.71 ID:O8aL4rAP
――聖鍵遠征軍、旗艦『勇壮』の執務室

がちゃり

参謀軍師「勇者の部屋は整え、ご案内してきました」

王弟元帥「ふむ……」

参謀軍師「どのような目論見でしょう、勇者は」

聖王国将官「目論見があるのでしょうか?」

王弟元帥「どういうことだ?」

聖王国将官「いえ、旅に出る以前。
 つまりもう4、5年は前になりますが
 勇者についてわたしが聞いた話ですと、
 豪放磊落と云えば聞こえは良いですが、
 強大な戦闘力にまかせた行動をする
 多少子供じみた正義感を持つ冒険者だったと。
 そう聞いています」

王弟元帥「わたしもそう聞いたな。
 しかし、今日の印象はかなり違う。
 確かに損得抜きで動きそうな熱みたいな物は感じたが、
 それとは別に、世界に損得勘定があること自体は
 理解していると思わされた。
 なんの考えも無しに来たわけでも無かろう」

参謀軍師「とりあえずの口上はどのようなものだったのですか」

王弟元帥「魔界の魔物は強い。人間界の猛獣に比べてもさらに
 凶暴な種類も少なくはないし、独特の生態や毒を持つものも多い。
 これだけ大人数で魔界へと渡ると、その犠牲者も多くなる。
 勇者として、一般人の犠牲はなかなか見過ごしがたい。
 ちょっとしたガイドを務めるためにやってきたが、
 勇者である自分を雇わないか、と」

参謀軍師「ふむ」

聖王国将官「話をそのまま信じるならば、
 雇わない手はありませんね」
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 18:25:21.70 ID:O8aL4rAP
王弟元帥「それはそうだ。勇者の戦闘能力は脅威だしな」

参謀軍師「それに話を信じるのならば、
 魔王もまた健在と云うことでしょう。
 勇者の傷が癒えて魔王の傷だけが癒えぬと考えるのは
 都合の良い考えですから」

聖王国将官「そうですね」

王弟元帥「対魔王のためにも、勇者は飼っておく必要がある」

参謀軍師 こくり

聖王国将官「しかし、あれだけの脅威は危険ではありませんか」

王弟元帥「居所のわからぬ脅威よりは判る脅威のほうが
 まだ対処のしようがあるというものだ。
 そのためにも手元に置いておいた方が良いだろう。
 しばらくはわたしが勇者の相手をしよう。
 ふふっ。わたしと同じく、あれもまだ若い男に過ぎない。
 人はそこまでおのれ自身から自由になることは出来ぬ。
 いずれ何らかの尻尾を出すだろうさ」

参謀軍師「そう仰られるのであれば、私からは何も」
聖王国将官「ええ、王弟閣下の御心のままに」

王弟元帥「あと数日もあれば極大陸に到着する。
 そのあとは雪中行軍になるだろう。
 船の座礁などがないように十分な警戒を呼びかけろ」

参謀軍師「はっ、承知いたしました」

王弟元帥(勇者、か。……確かに得体が知れないが
 強力なカードが手に入ったものだ。
 このカード、使い方によっては民衆の信仰を一手に引き受ける
 教会に匹敵するほどの影響力さえ持つやも知れぬ。
 大主教、それがお解りか? ふふふふっ)
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:41:08.48 ID:O8aL4rAP
――開門都市、九つの丘、防壁建築現場

土木師弟「じゃぁ、説明したとおりだ。
 今日から北側の防壁にかかる。
 チーム制でかかるので頑張ってくれ」

蒼魔族中年作業員「判りました。配置につけ」
蒼魔族作業員「「「「はい」」」」 ざっざっざっ

ざわざわ

中年商人「どうだい調子は?」

土木師弟「商人さん。随分進んでましたよ。作業は加速しています」

中年商人「やっぱり予算かい?」

土木師弟「予算が付いたのは有り難いですね。
 作業員に給料が払えます。日当で払えると進みますね」

ざっざっ

火竜公女「そうかそうか。弁舌を振るった甲斐があった」
副官「そうですね、これはいずれ必要になる物ですから」

土木師弟「お姫さま」
中年商人「姫さんも来てたのか」

火竜公女「姫はよして欲しいと云っておりましょう」
副官「ははははっ」

土木師弟「それにしても、こんなに予算を
 つけて貰っても良いんですか?」

副官「ええ、かまいませんよ。
 この防壁作成で人が集まっていますからね。
 彼らが食料を買ったり、生活すれば物資もどんどんと
 運び込まれて、それだけ税収も上がる計算です」
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:42:29.76 ID:O8aL4rAP
土木師弟「そういうものなのか?」

中年商人「まぁ、自治委員会と俺たちでは立場が違う」
副官「自治委員は商人ではないですからね。
 儲けなくても良いんですよ。逆に大もうけするとまずいです」

土木師弟「ふむ……」
火竜公女「それよりも、あれに見えるは蒼魔族かや?」

土木師弟「ええ。今週から参加しているんですよ。
 300人ほどです。氏族会議の紹介状でやってきましてね」

副官「どうですか?」

土木師弟「働き者ですね。規律正しいかなぁ。
 集団で何かをすると云うことに非常に馴れているし、
 簡単な指示でも勝手に手順を決めてこなしますよね」

中年商人「ふーむ」
副官「ああ、やっぱりねぇ」

土木師弟「でも、その反面、やはりプライドは高いですよ。
 昔から云いますからね。蒼魔族の誇りの高さは雪豹山脈を
 越えるほど、って。他の種族の人には負けたくないって
 思ってるみたいですね。ま、来週からはその辺も加味して
 ばらして混ぜて作業かな、なんて思うんですが」

中年商人「現場監督ってのも難しいんだな」
土木師弟「まったくですよ。
 一介の設計士には荷が重いって云うのに」

火竜公女「それも修行ゆえ、頑張ってください」ころころっ
副官「早いところ大将が帰ってきてくれれば良いんですけどねぇ」
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:44:06.02 ID:O8aL4rAP
――湖の国、首都、『同盟』作戦本部

がやがや

同盟職員「速報が入りました。遠征軍、白夜王国を進発!
 目標極大陸、魔界侵攻。採集へ委員数、24万。総数33万。
 大型船1000隻以上の大船団です」

本部部長「動きましたな」

青年商人「こちらは?」

同盟職員娘「大陸中央部に流通する木炭の価格は前年比320%
 流通量の70%に何らかの影響を行使できています。
 鉄鉱石が多少ふえています」

本部部長「情報が入っています。
 どうやら秘密工房の会計は、木炭を購入する資金を目当てに
 手元に置いていた鉄鉱石の一部を売りに出したようですな」

青年商人「買いたたいてしまって下さい」

本部部長「同じくこれは娼館経由の情報ですが、
 秘密工房および、銅の国の鉄工ギルドは王弟閣下の名前を使って
 夫君の国から木炭を供出させるように、嘆願書を送ったようです」

青年商人「嘆願書、ですか」

本部部長「体裁は嘆願書ですが、内容はかなり威圧的で
 実際問題としては要求書に近いものと思われます」

青年商人「手紙を書きましょう。……そうですね、これは。
 湖の国へ直接で構わないでしょう。
 同じく冬の国の商人子弟殿にも出します。
 片棒を担いで貰いますよ」
138 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:45:36.28 ID:O8aL4rAP
同盟職員「どうするんですか?」

青年商人「梢の国も湖の国も、もはや南部連合の一員でしょう。
 銅の国ごときの命令を受ける立場にはないはず。
 銅の国の工房に物資を送り込むためには、
 湖の国の湖上輸送を利用せざるを得ません。

  湖を渡る木炭輸送船に関税をかけてもらいます。
 冬の国では防御に用いられた策ですが、
 それが攻撃に用いられるとどうなるか、
 まだ中央の国々は知らなすぎる。

  関税をとりあえず、木炭馬車一台あたり金貨60枚あたりから
 始めましょうか」

同盟職員「60枚!? 木炭そのものよりも高額ですよ!」

青年商人「まだ買わないという選択があります。
 欲しくないのなら買わなければなんの問題もありません。
 輸送連絡路を押さえていないという意味がそれなんですからね」

同盟職員「了解っ」

本部部長「この後の動きですが、どうしますか」

青年商人「……」
本部部長「……」

青年商人「『同盟』で銀行が現在設置されている都市の数は?」

同盟職員娘「64です」

青年商人「南部連合を中心に増やしたとして、100前後ですか」

本部部長「何をお考えですか?」

青年商人「聖光教会の力の根源は数です」
139 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:47:50.33 ID:O8aL4rAP
同盟職員「信者のですか?」

青年商人「それもありますが、支部の数も大きい。
 支部というのはただの出先機関ではありますが、
 一定の数を越えることで、単体として以上の機能を持ち始める。
 あれは、網状機構です」

同盟職員「よく判りません」

青年商人「つまり、4つの教会寺院は、
 4つの建築物という以上の存在になるわけですね。
 実際のところ、1つの教会寺院よりも
 5倍か6倍の意味合いを持っている」

同盟職員「……ふむ」

青年商人「そのもっとも顕著な例が『為替』です」
本部部長「まさか、為替に手を出すおつもりですか!?」

青年商人「はい」

本部部長「それはリスクが大きすぎるのでは……」
青年商人「承知の上です」

同盟職員「リスクって?」

本部部長「……知っての通り、為替というのは、遠隔地に
 金を送るための機構の一種だ。
 現金を直接送る場合、気候の変動や、盗賊、事故などの
 リスクが存在する。金貨を積んだ馬車ほど野盗のよだれが垂れる
 得物は有りはしない。わが『同盟』でもどれだけの金が
 輸送商談の護衛費に払われているか考えてみれば良い。
 多量の金貨は馬車数台分になることすらある」

同盟職員娘「はい」

本部部長「為替の応用は様々にあるが、たとえばある都市で
 金貨100枚を証書に変える。別の街でその証書を金貨100枚に
 戻すことが出来る。……実際には税がひかれるが、
 これが為替だ。これを実行するためには、別の都市の間に
 同じ組織の支部があり、それなりの資金力を持っていて 信用がないと成立しない。
 ――そして現在それが可能なのは、小さな領土内以外では
 聖光教団だけだと云える」
140 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 19:49:49.79 ID:O8aL4rAP
青年商人「聖光教会はこの為替機構を用いて
 莫大な利益を上げています。
 それが教会の力の源泉の一つとなっている」

同盟職員「1/10税ですね?」

青年商人「そうです。為替を売買する場合、
 税として1/10が教会の懐に入る。
 確かに遠距離を護送するに当たって多量の
 傭兵を雇うよりは安くつきますが、
 それでも決して小さな金額ではない」

同盟職員娘「わたし達『同盟』はそれを嫌って
 独自の銀行組織を立ち上げるに至ったのだと理解していました」

本部部長「確かにその側面はある」

青年商人「為替業務は本来銀行の職分だとわたしは考えています。
 教会が主張するように税収の代行業務のオマケではないと
 思っていますからね」

本部部長「しかし、聖光教会の支部の数は莫大で
 これと正面からぶつかれば、いままで様々な商人や
 社会動静を隠れ蓑に使ってきたわたし達の存在が
 注目を集めることにもなりかねません」

青年商人「最大限配慮しましょう。
 しかし、考えても見て下さい。
 いま、この大陸は政治的にも軍事的にも文化的にも
 動乱のまっただ中にあり、
 様々な勢力が虎視眈々とおのれの領域を
 拡張するチャンスをうかがっている。
 そのなかで、聖光教会は指導者たる大主教がゲーム盤を
 離れているのですよ?
 礼節の問題としてすら、この勝負には激突の価値があります」

本部部長「勝機は?」

青年商人「もちろん」にやり「ありますよ」
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 22:44:50.20 ID:O8aL4rAP
――魔界(地下世界)辺境部、赤の荒野

勇者「でやっ!」

ボンッ!!

光の兵士「す、すげぇ!!」
光の銃兵「鉄みたいな皮膚の犀の魔物を、一撃で!」

荷運びの作業員「ありがとうございました!」

勇者「なんのなんの。ここいらでは、あの種の魔物が多いのだ。
 歌いながら歩いた方がいいぞ。変に静かに進むより、むこうが
 さけてくれるし」

光の兵士「そうなのか?」
光の銃兵「勇者様、ありがとうございます」

勇者「はっはっは。しばらく一緒に行くぜ」

娼婦のお姉さん「勇者様ぁん♪ かわいい」

勇者「そっ、そういうことは、夜になってからですっ。
 えっちなのはいけないことだと思いますっ」

娼婦のお姉さん「ふふふっ。助けてもらったもの、
 サービスするわよん♪」

    従軍司祭「……」じぃっ

光の兵士「流石勇者様! おもてになる!」

勇者「はっはっは。ボクはそんな欲望のために戦っている
 わけじゃナいのだヨ。世界の平和のためサ」

荷運びの作業員「はっはっはっは!
 勇者様、無駄にハンサム顔になってるぞ、まったく!」
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 22:46:30.01 ID:O8aL4rAP
王弟元帥「どうやら随分馴染んでいるようだな」
聖王国将官「ええ」

  光の銃兵「勇者様は銃は撃てないのか?」
  勇者「いーんだよ。おれは雷だせっから」
  光の銃兵「そうなんかぁ? 銃は強いぞ」

参謀軍師「聖百合騎士団から、勇者の身柄引き渡し
 要請があったというのは?」
王弟元帥「事実だ」

聖王国将官「え?」

王弟元帥「勇者は、光の精霊の使徒。
 そうである以上、その存在は精霊の恵みであり、
 教会が世話をするに相応しい、とな」

聖王国将官「何を考えているんでしょう」

参謀軍師「勇者の象徴としての力ですか?」
王弟元帥「教会も気が付いてはいると見える」

  荷運びの作業員「それにしても、重いな」
  勇者「馬どうしたのよ?」
  荷運びの作業員「あの雪の中連れてくるのは大変なんだ。
   可愛い馬っ子は沢山倒れちまった」
  蹄鉄職人「無事な馬は、みんな貴族様の騎馬に持ってかれたしな」
  勇者「そうなのかぁ」

聖王国将官「どうご返答されたんですか?」
王弟元帥「勇者本人の意志による、と答えておいたよ」

聖王国将官「では……」
王弟元帥「どこかで下らぬ夕食会、だろうな。戦場なのに」

参謀軍師「そこで、勇者自身の言葉を聞くと?」

王弟元帥「大主教殿も見極めたいのであろうよ、勇者を」
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 23:29:20.29 ID:O8aL4rAP
――開門都市、庁舎、自治委員会

副官「出来ればそうでなければ良いとは思っていましたが
 人間の軍が近づいてきています」

人間職人長「そうなのか……」

人魔商人「人間? 軍?」

獣人軍人「状況は俺から報告しよう。人間の軍は総勢約三十万」

人間長老「さんじゅうまんっ!?」
魔族娘「ご、ごめんなさいっ」

火竜公女「これこれ。何でも謝ればいいと云うものではありませぬ」
魔族娘「大きい声で、びくっとしちゃって……ご、ごめんなさい」

人間長老「いや、すまぬ」

火竜公女「つづきを」

獣人軍人「約三十万の軍勢だ。これはこの都市の人口の
 おおよそ5倍から6倍に達する」

人間長老「なんと」

副官「彼らは聖鍵遠征軍です。
 つまり、1回はこの街を征服したあの人間の軍ですね」

人魔商人「また人間か! 何回この街を滅ぼせば気が済むっ!」

魔族娘「うううっ」
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/05(月) 23:30:34.75 ID:O8aL4rAP
火竜公女「我らはここで意見を一つにせねばならぬかと思う」
副官「はい」

人間職人長「意見、とは」
人魔商人「市中の人間族の動向だろう」

獣人軍人「そうだな」
魔族娘「……?」

人間長老「この自治委員会にも何人かの人間が参加している。
 街の人口も、約1/3が人間だ。
 この情報が広まれば、戦火を避けて聖鍵遠征軍に
 投降を考える人間も出てこよう」

火竜公女「そうですね」

人魔商人「つまりは、裏切り者と云うことだな」
獣人軍人「……」

火竜公女「この街は魔王殿の直轄領。
 そもそもこの都市の人間たちは魔族の奴隷として
 この街にいるのではなく自由意志で
 この都市にいるのではありませぬかや?」

副官「……」
人魔商人「……」

火竜公女「で、あれば投降が裏切りとは云えぬのでは?」

獣人軍人「しかし結果としてこちらの情報が
 筒抜けになるやも知れぬ」

副官「話が先走りすぎです、一度戻りましょう。
 そもそも聖鍵遠征軍の現在位置は?」



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