9-2


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」9-2


269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 18:37:08.36 ID:chcZF3wP
――鉄の国南部、辺境の森の中

ガササッ。ガササッ。

鉄国少尉「もう少し先ですね」
衛門案内兵「そうです」

鉄腕王「……」

軍人子弟「王よ、そんなに気むずかしい顔はしないでござるよ」
鉄国少尉「そうですよ」
鉄腕王「うむ。しかし……」

ガササッ。ガササッ。

衛門案内兵「この谷をお借りしています」
鉄腕王「ふむ」

ザッザッザッ

衛門案内兵「鉄の国の王をご案内しました」

ガサッ

東の砦将「ご苦労さん」

軍人子弟「ふむ」
鉄国少尉(随分出来る気配の人だな……)

東の砦将「色々お礼を述べなければなりませんが、
 あちらに天幕が張ってあります。ご案内しましょう」
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 18:40:16.01 ID:chcZF3wP
――鉄の国南部、辺境の森、獣人族の大天幕

バサッ

鉄国少尉(ふむ……)

東の砦将「こちらにどうぞ。……あー。
 すいませんね、根ががさつなやつらばかりなもので。
 おい、飲み物をお持ちしろ」

獣牙戦士「はっ」

軍人子弟「いや、お気になさらず、楽に。
 拙者達も軍人でござるから。
 礼儀作法にこだわりはないでござるよ」

東の砦将「そう言っていただけると助るな。
 いや、生まれが悪いもんで言葉遣いは勘弁してくれ。

 俺は、東の砦将。もとは第二回聖鍵遠征軍参加の
 傭兵で、そのあとは長い間開門都市の駐留部隊の
 分隊長をやっていた。
 運命の変転だか数奇な偶然だかに巻き込まれて、
 いまでは開門都市自治委員会のとりまとめ、
 九氏族の一つ、衛門族の長をやっている。

  今回の蒼魔討伐作戦では、左府将軍を仰せつかった」

銀虎公「我の名は銀虎公。
 魔界の九氏族の一つ、獣牙一族の長。
 今回の戦いでは、右府将軍を務めるものだ」

鉄国少尉(……こっちの将軍は、すごい闘気だな)
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 18:41:49.99 ID:chcZF3wP
軍人子弟「拙者は鉄の国の護民
卿を拝命している
 軍人子弟と申す者でござる。 先だっての蔓穂ヶ原の戦いでは副司令官を
 つとめてござった。
 こちらにいらっしゃるのが、鉄腕王。

  この鉄の国の王にして、南部連合首脳でござる。
 本日は、南部連合の代表としてこの会見に
 参加しているでござるよ」

鉄腕王 こくり

銀虎公「まずは、この場を借りてお礼を申し上げる。
 蒼魔族は我ら魔族にとっても魔王殿に弓引く逆賊。
 その討伐のために軍の通行を許可いただいた。
 我らは恩義を感じている」

東の砦将「魔族の勢力争い、いわば内輪もめの
 とばっちりを人間界にかけたことに関しても
 氏族は謝意をもっている」

鉄腕王「……」

軍人子弟「王。鉄腕王。……意地張っている場合
 じゃないでござるってば」

鉄国少尉「そ、そうですよっ」

鉄腕王「……」じぃっ
銀虎公「……」じっ
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 18:44:25.10 ID:chcZF3wP
鉄腕王「……今回の戦いでは、獣牙一族も
 大きな犠牲を出したと聞くが」

銀虎公「たしかに。人間の乱入軍のもつ
 得体の知れない武器に傷つき倒れた者もいる。
 しかしいずれの獣牙の勇者達。雄々しく散ったのだ」

鉄腕王「心中お察しする」
銀虎公「……」

東の砦将(ふぅ……)
軍人子弟(何とかなったでござるか)

鉄腕王「この森は深い。未開の原生林だ。不便はないかね」

銀虎公「ない。我らは山野の民だ。ここは空気が美しく
 過ごすのによい場所だ。提供してくれたことを感謝しよう」

軍人子弟「食料はどうですか?」

東の砦将「あっちから持ってきたものがある。
 あと箱森で、猪だの鹿だのを多少とらせてもらえば
 それで間に合うはずだ。なんにせよ、長居するつもりもない」

鉄腕王「では、後ほど、いくつかの物資と酒を届けさせよう」

銀虎公「かたじけない」

鉄腕王「では、行くぞ」がたり
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 18:45:38.97 ID:chcZF3wP
東の砦将「いやいやっ。せっかく来ていただいたんだ」
軍人子弟「そうでござるよ。この機会に詰めておくべき事も」

鉄腕王「互いにともがらを失ったのだ。
 それを送るには、今少しの時間と酒がいるだろう。
 われら鉄の国は武の国だ。武には武の礼節がある」

銀虎公「……」
東の砦将「……」

軍人子弟「そう……で、ござるね」
東の砦将「お気遣い、感謝いたす」

鉄腕王「それに細々しい外向的な用向きは
 冬の女王と、そちらの外交使節団が片付けるだろうよ。
 まだ魔族と急に握手をする気にはなれん。
 多くの国民もそうだろ。

  しかし今度逢う時は、もうちょっと
 わだかまり無く酒が飲める。そんな時代になるといいな」

銀虎公 こくり
東の砦将「……」

鉄腕王「では、行く」

ざっ

銀虎公「獣牙の戦士を、槍を掲げてお送りしろ」

獣牙戦士「はっ」
獣牙戦士「戦士の一族の魂に慰めあれっ」
282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:17:36.57 ID:chcZF3wP
――冬越しの村、湖畔修道院、院長の私室

女騎士「ふむ……」
魔王「覚悟は決めた」

メイド長「まおー様も立派になられて」うるっ

女騎士「で、どうするつもりなの?」
魔王「それが全く判らない」

女騎士「……おいおい」

魔王「いや、私たちの一族は誰でもそうだが
 基本的には自分の研究ジャンル以外には疎いのだ。
 わたしは経済と言うことで、技術史や社会学にも
 多少の知識はあるが、それでも専門からはほど遠い。
 ましてや軍事学など専門外なのだ」

女騎士「そうか……。
 魔王だからてっきりそっちの専門家かと」

魔王「とんでもない」

女騎士「だがしかし、マスケットとかは
 魔王がアイデアをスケッチして、
 鉄の国の技術者に施策を依頼したのだろう?」

魔王「そうだ。その情報が漏れて、
 中央に伝わったとしか考えられない。
 わたしは異端騒ぎで掴まっていたりしたからな。
 そんなときに怖くなった職人の誰かから
 聖教会へと漏れたのだろう」

メイド長「……そうですね」
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:19:59.35 ID:chcZF3wP
女騎士「これか」 かちゃり
メイド長「あら、手に入れたのですか?」

女騎士「戦場を捜索して何個かはな。
 だが、やはり良く判らない。
 説明をしてみてくれないか?」

ガチャガチャ

魔王「ふむ、思ったよりも軽いな。
 工作精度の問題か……。
 乱暴に説明をするとこのマスケットは、鉄の筒だ。
 筒の中に、丸い金属の玉と、火薬を詰める」

女騎士「火薬というのは昔話していたあれ?」

魔王「そうだ。ガンパウダーだ。
 この火薬という物質は、火を付けると激しい勢いで爆発する。
 密閉された容器での爆発力は開放部分に集中するので、
 高速で玉が飛び出す。言ってしまえばそれだけの仕掛けだ」

女騎士「聞いてみると随分単純な武器なんだね」

魔王「単純だが、要するに刃のついた棒を
 振り回しているだけの剣や槍よりは複雑だな」

女騎士「それもそうか……。
 で、このマスケットは武器としての性能は
 どのようなものなの?」

魔王「正確なものは実験しなくては判らない。
 と、いうものの、基本構造は今言ったように単純だが、
 精度や工夫には様々な課題があるからだ」
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:21:25.50 ID:chcZF3wP
女騎士「……そうか」

魔王「だが、見た感じで言うと、
 射程距離はおおよそ100歩くらいで、
 威力は板金鎧を打ち抜くほどではないだろうか」

女騎士「たいしたものだ。石弓を上回るんだね」

魔王「そうだ。発射間隔は5分に一度から、
 1分に一度程度まで、これは射手の練習度に大きく依存する。
 命中精度もまた同じく射手次第だな」

女騎士「ふむふむ」

魔王「ただし、この長い筒を玉が駆け抜けていって
 殆ど直線上に飛ぶし、矢よりも風の影響は受けづらい。
 だから、素人が使うのならば、矢よりも命中率はいいはずだ」

女騎士「……」

魔王「それに、説明でうすうす想像もついているかと思うが
 弓の反発力で矢を飛ばす長弓は、弓の大きさ素材が威力を
 決める。つまり、引く力が威力に直結する。
 石弓も同じ機構だが、クランクやギアなどで引く力を
 肩代わりできる点が違うわけだな。

  そこへゆくと、このマスケットは火薬の爆発力が
 威力を決める。

  力が強いものが使っても威力は増えないが、
 逆に力が弱いものが使っても威力は減らない。
 どんな痩せた小男であろうと、板金鎧を貫く力が手に入る」
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:22:45.86 ID:chcZF3wP
女騎士「だいたい、判った」
魔王「ふむ」

女騎士「この武器自体は問題じゃない」
魔王「そうなのか?」

女騎士「やっかいな武器ではあるけれど、所詮武器。
 戦術を適切に立てれば、勝つことは難しくない。
 だいたい射程の百歩だって、そこまではないと思う。
 50歩もはなれたら、鎧で止まるのじゃないかな。
 それに、命中精度は相当に低い。
 司令官を狙うのなら熟練の長弓兵の方が期待できる」

魔王「そうなのか?」

女騎士「しかし、それは人数が等しい場合だ。
 この武器がやっかいなのは、いや、そうじゃないな。
 こんどの聖鍵遠征軍がやっかいなのは、
 このマスケットの持つ考え方に正しく気がついて
 運用してきた所にある。

  つまり、“この発明は人間同士の力の差を小さくする”
 って言う部分なんだろうな。
 おそらくこのマスケットを配った10人の農夫と
 10人の騎士が闘えば、10人の騎士が勝つだろう。

  でも、30人の農夫ならば、農夫が勝つ。
 騎馬の持つ力や重装甲の絶対的有利が
 崩れてしまう武器なんだな」

魔王「……」
メイド長「……」
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:24:41.55 ID:chcZF3wP
女騎士「おそらくこの武器を最も有効に活用する方法は
 平原における会戦で、歩兵の密集隊形からの射撃だろうな」

魔王「ふむ」

女騎士「……さて」
魔王「どうだ?」

女騎士「魔王が思いつく、この武器の弱点は?」

魔王「簡単な所では、着火機構だな。
 火のついた縄を用いるせいで信頼度が低い。
 つまり、発射しない時があるのだ。
 それに射撃姿勢の自由度も失われる。
 水平射撃が最も安定するな。
 また、当然火を使うために水気に弱い。雨は大敵だ。
 火縄を用いる構造上、完全な密集隊形はとりづらいと
 言うこと点ある。
 補給にも問題があるな。
 火薬がないと無用の長物になるし、火薬は、たとえば
 予備の矢の用に戦場で作るわけには行かないから」

女騎士「……そう言った機構上の弱点を改良する
 方法はあるのだろう?」

魔王「うむ。それはフリントロックと言われている、
 このマスケットの一段階進歩したタイプでな。
 着火機構に火打ち石を使うことによりいくつかの
 弱点を克服できることになる。密集率をより上げるとか」

女騎士「うーん。その情報も漏れている可能性は?」
魔王「否定は出来ない。けれど、量産はまだなんだろうな。
 もし量産が成功していたら、
 こんな旧式が沢山配備されているのはおかしい」
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:27:29.73 ID:chcZF3wP
女騎士「……まず、このマスケットを我が
 南部連合でも大量に生産するというアイデアは却下だ」

魔王「そうか」ぱっ

女騎士「別に魔王の良心におもんばかっている訳じゃない。
 けれど、このマスケットの一番の特徴は
 “人数を戦闘力に置き換える”と言う部分だと思う。

  だとすれば、同じマスケットと同じ戦法でぶつかり合えば
 人数が多い方が勝ってしまう。
 もちろん現場での用兵で寡兵が多数に勝つこともあるが
 その場合でも、少数の側の被害を押さえることは難しい。

  その“人数を戦闘力に置き換える”というのは
 おそらく専門の軍人ではない、短期間の訓練を施した
 即席兵を戦場にかり出すことで実現されるはずだ。

  聖鍵遠征軍なんて、まさにそのためのお題目なんだから。
 相手の得意な戦場で戦ってはだめだ。
 三ヶ国は人工ではまだまだ中央国家に及ばないんだからな。
 わたしは馬鹿だけど、それくらいは戦場の常識だ」えへん

魔王「そうだな。それでは意味がない」

女騎士「一番良いのは、兵糧攻めだ。
 闘わずして勝つことが出来る。相手は数も多いしな」

魔王「それならば専門分野にも近い。多少は協力できるはずだ」

女騎士「だが、そうなると、今度は暴走が怖いんだ。
 飢えて凶暴になった20万の軍が、自暴自棄になって
 襲いかかってきたら、どんな国の軍だって
 引き裂かれてしまう」

魔王「うん」
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 19:29:04.87 ID:chcZF3wP
女騎士「それに戦場では常に想定していないことが起きる。
 それをわたしは今回高い代価を払って学んだ。
 兵糧攻めだけでどうにかなるなんて
 甘い考えはよした方がいいな」

魔王「うん……」

メイド長「でも、マスケットの集団と闘うのは
 どうやっても犠牲が大きくなりすぎますよね……」

女騎士「……」
魔王「……」
メイド長「……」

女騎士「魔王、威力は力には依存しないと言ったけれど
 では火薬の量には依存するのか?」

魔王「おおむねそうだな。
 火薬を増やし、火薬に耐えうるだけの筒の強度を保証し
 玉の大きさを大きくすれば、当然威力は上がる」

女騎士「威力が上がれば射程も伸びるか?」
魔王「当然な。だが、まぁ、玉も重くなるから
 火薬を二倍にすれば二倍、と言うわけにはならない」

女騎士「射程だけを増やす方法はないのか?」

魔王「射程……」

女騎士「相手と同じ戦場で戦うのは、
 無意味であるばかりか有害だ。
 で、あるならば、同じ戦場にいるべきではない。
 そうだろう? 射程があれば、それが可能だ」

魔王「射程……か」
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 20:38:23.39 ID:chcZF3wP
――開門都市、『同盟』の商館


がやがや

辣腕会計「ふぅ」
同盟職員「一通りの手紙の処理は終わりましたかね?」

火竜公女「あとは、私的なものだけですゆえ」

辣腕会計「転移魔法ももうちょっと気楽に
 使えればいいんですけれどね。
 週一回で、小包程度じゃ貿易には使えない」

同盟職員「それでも、無ければ連絡だけで
 大変な手間になってしまっていましたよ」

火竜公女「その辺は追々工夫してゆかぬといけませぬね」

辣腕会計「委員からの手紙は無かったんですか?」
同盟職員「へぇー」にやにや

火竜公女「私的に手紙をもらうような関係では
 ありませぬゆえ、当たり前です」ぷいっ

辣腕会計「そう言うことにしておきましょうか」

同盟職員「あれ、じゃぁこれは?」

火竜公女「ああ。これは妾の文通相手です」
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 20:40:05.48 ID:chcZF3wP
辣腕会計「へ? 文通?」

火竜公女「ええ。妾の大事な薔薇水晶の角を触らせた
 おのこですゆえ。慕ってきて可愛いのです」

辣腕会計「えーっと」
同盟職員「内緒にしておきます?」

辣腕会計「記憶にあるような無いような」
同盟職員「進んでいるなぁ」

火竜公女「ふぅむ」

「こんにちは!
 火竜の公女さま。お仕事いかがですか?
 冬の国では、いま、一年で一番良い季節を迎えています。
 夏なので馬鈴薯が沢山取れて、毎日王宮にも運ばれてきますし
 食卓も彩り豊かです。ことしは、カブがとても豊作でした。
 だから、豚さんもいっぱい食べて元気です。

  この間。鉄の国で痛ましい戦争がありました。
 商人先生は毎日難しい顔をしています。
 ぼくは毎日帳簿の整理と清書をしています。
 最近では、6桁の暗算も出来るようになりました。
 毎日やるとすごく早くできるようになりますね。
 でも、まだ先生には内緒です。

  公女さまは、また冬の国に来ませんか?
 はちみつのお菓子の新しいのがとても美味しいのです」
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 20:41:19.03 ID:chcZF3wP
火竜公女 くすくすっ

「えっと。それで。
 この間、考えてもらったチーズの作戦は
 やっぱり公女さまの言うとおりでした。
 一生懸命調べたら、担保になる期間がありました。
 担保と蒲公英って似てますよね?
 熟成っていうんですよ。
 公女さまは知ってらっしゃいましたか?
 一緒に入れたのは立ててみた計画です。
 先生にはお褒めいただきました。
 でも、先生は意地悪なので、ご褒美ではなくて
 また新しい課題を出してきたんです」

火竜公女「おやおや」

「今度は長靴です。僕たちは、柔らかい皮で作った
 長靴を履きます。たいていの人は、靴を二足もっています。
 長靴と、夏用の短い靴ですよ?
 貴族の人はもっともっていますけれどね。

  冬には、フェルトや毛皮で作った外靴を履いて
 雪や寒さを防いだりします。
 靴は大事なので、寝る時はベッドの下にしまいます。
 村には裁縫の得意な人や専門の人がいて皮をなめしたり
 靴の修理をしてくれます。新しく頼むのもこの人達です。
 先生は、この靴をどうにかしたい、と言います。
 本当は予算とか国の仕事じゃないんだけれど
 今は人手が足りないのだそうです。
 軍の人が履く、長い距離を歩いても疲れない靴って
 ご存じないですか? 知ってたら教えてください。

  またお手紙します。公女さまとお菓子が食べたいです」

辣腕会計「……楽しそうですね」

火竜公女「なかなかにな。
 苦労しているさまが目に浮かぶゆえ」くすくす
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 20:43:55.08 ID:chcZF3wP
同盟職員「良く判りませんね」

火竜公女「商売の種は何処に転がっているか
 判らぬとは、本当にその通りよな」

辣腕会計「儲け話ですか?」

火竜公女「“儲かる話に化けさせる”ではないかの?」
辣腕会計「ははは。呑み込んできましたね」

火竜公女「この都市には腕の良い靴職人はいるかや?」
辣腕会計「それは探せばいるでしょう」

火竜公女「今年は獣の皮が随分取れていると聞きますゆえ」

辣腕会計「ええ、鹿に猪、それから氷蛇。季候も良かったし
 大きなは戦もありませんでしたから」

同盟職員「そう言う意味では、仕入れ時かも知れないですね」

火竜公女「それにしても行軍用の靴、か」

辣腕会計「面白い話かもしれません」
同盟職員「そう言えば、魔界の靴は出来がいいですね」

火竜公女「靴底すらない人間界の靴が
 おかしいように妾には思える。
 あれでは厚手の革製靴下ではないか」

辣腕会計「でも、あっちではそれが普通ですしね」
同盟職員「これは確かに商売になるかも知れないな」
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:08:27.40 ID:chcZF3wP
――冬越しの村、村はずれの館、厨房

ぐらぐら、ぐらぐら

魔王「沸騰したぞ、勇者」
勇者「ここで塩をひとつまみ」

魔王「こうか」 どさっ
勇者「それはひとつかみじゃないか?」

魔王「む。違うのか?」
勇者「同じだろう。塩は塩だ」

ぐらぐら、ぐらぐら

魔王「うむ。大差はあるまい、で?」
勇者「そこのソーセージを入れる」

ちゃぷん、ちゃぷん、ぐらぐら

魔王「で?」
勇者「次は、切ったキャベツも入れる」

魔王「ほほう。切るとは?」
勇者「俺がやるよ」シャキーン! ひゅばんっ!

ぼちゃ

魔王「完璧ではないか」
勇者「ああ、自分が恐ろしいぜ」
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:11:03.29 ID:chcZF3wP
魔王「これでいいのか? もう食べられるのか?」
勇者「いや、まて。じっくり茹でて加熱する。
 おおよそ5分茹でるべし、とある」

魔王「5分か」そわそわ
勇者「うん、5分だ」

魔王「もういいかな?」
勇者「そんなに早いわけがあるかっ」

魔王「時間が判らないではないか」
勇者「しかたないなぁ。……いーち、にーい、さーん、しー」

魔王「……」わくわく
勇者「にじゅうごーにじゅうろくーにじゅうしちー」

ぐらぐら、ぐらぐら

魔王「かき回してみるか」ぐるぐる
勇者「さんじゅうしーさんじゅうごーさんじゅうろくー」

魔王「ああ、いい匂いだ」
勇者「ごじゅうにーごじゅうさんーごじゅうしー」

ガチャン

女騎士「なんだ。いるじゃない。……何をやってるの?」

魔王「いや、夕食の用意を」
勇者「ななじゅうはーちななじゅうきゅーはちじゅー」
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:12:31.17 ID:chcZF3wP
女騎士「なんで?」
魔王「この間から非情に貧しい食事を続けていてな。
 それをメイド長にぼやいた所、レシピを押しつけられて
 最低限出来ないとどうにもならないので学べ、と……」

勇者「ひゃくいちーひゃくにーひゃくさんー」

女騎士「それはもっとも。――メニューは?」
魔王「茹でソーセージとキャベツ。あと、パン」

女騎士「そうか。失敗のしようもないね。
 で、勇者は何をやっているんだ?」

勇者「ひゃくにじゅうにーひゃくにじゅうさーん」

魔王「ああ、数字を数えているのだ。
 茹で時間を計らねばならぬからな」

ぐらぐら、ぐらぐら

女騎士「適当ではまずいのか?」

魔王「適当っ!? 我らに適当なものを
 食べさせようというのか」

女騎士「いや、料理って適当なものだろう」
魔王「そんなことはない。完璧なハルモニアとは
 完璧な準備と計算、そして連携に基づくものだ」

女騎士「そうなのかなぁ」

ぐらぐら、ぐらぐら
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:14:27.99 ID:chcZF3wP
勇者「にひゃくにじゅうにーにひゃくにじゅうごー」

女騎士「随分湯が少なくなってきていないか?」

魔王「蒸発したのだろう。水分が気体となって
 空中へと拡散するのだ。理論的に正しい現象だ」

女騎士「煮詰まってるんじゃないの?」

魔王「いいや、蒸発だ。科学的な帰結だ」

女騎士「ふむ」

勇者「にひゃくさんじゅごーにひゃくさんじゅろーく」

ぐらぐら、ぐらぐら

魔王「そろそろかな」
勇者「にじゃくよんじゅーにひゃくよんじゅういちー」

女騎士「皿を出さなきゃまずいのではないかな」

魔王「はっ。そう言えばそうだ」

勇者「にひゃくななじゅうろくーにひゃくななじゅうしちー」

魔王「勇者、300で火力停止だっ!」
勇者「心得たっ! “氷結呪”っ!」

パリーン!!
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:23:11.22 ID:chcZF3wP
魔王「完成だ」 きゅるるー
勇者「ああ、長い戦いだったぜ」 ぎきゅるるー

女騎士「……」

魔王「さぁ、食べようではないか。勇者!
 この勝利を分かち合うのだ」
勇者「おう! 魔王! 女騎士もどうだ?」

女騎士「い、いや。わたしは結構だ。
 見過ごしてしまった良心の疼きは感じるが
 メイド長の教育の過程を邪魔したくはない」

魔王「そうなのか? いただきまーっす。あむっ」
勇者「いっただっきー! ばくっ」

魔王「……」
勇者「……」

魔王「うぐっ。なんでこんなに辛いのだ」
勇者「塩が、塩がっ!?」

女騎士「塩を入れすぎだろう」

魔王「まさかっ? 指示通りだったはずだ」
勇者「常識を越えた味だぞ」

魔王「ううー。水をくれ」
女騎士「やれやれ」 とぽととぽ

勇者「俺にもだ」
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:24:28.44 ID:chcZF3wP
女騎士「ああ。見てられない。貸してっ」

魔王「へ? 食べれないぞ、こんなもの」
勇者「塩辛すぎだ。生まれるのが早すぎたんだ」

女騎士「だからって捨てたらもったいないだろう。
 湖畔修道会は、質素、倹約、勤勉を説いてるんだし」

魔王「それはそうだが」
勇者「でも、さすがに食える味じゃないぞ」

女騎士「まぁ、多少は味が落ちるが仕方ない」

トタタタタタン

魔王「へ?」

女騎士「きざんで、水をかけて軽く塩を抜くだろう?
 で、ベーコンの脂身を炙ったフライパンで炒めて
 ……このきざんだ塩ソーセージとキャベツの細切れを 入れてしまう」

じゃっじゃっじゃっ!

魔王「おおっ」

女騎士「火は調節するのが難しいから、
 距離で加減するんだよ。火から離れれば弱火だ。
 で、いい匂いがしてきたら、溶いた卵を六個入れる」

じゅわぁぁ~♪

勇者「なんだか料理みたいだ!」
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:26:00.14 ID:chcZF3wP
女騎士「卵を入れたら蓋をして、
 火から離してしばらく待つんだ。蒸らされるまでね」

勇者「いくつ数えればいい?」

女騎士「適当だよ。皿を出して待ってれば良い」
魔王「心得た!」

女騎士「ほら」 ぱかっ。ほわぁぁ~。

魔王「美味しそうだ」
勇者「美味そうだ!!」

女騎士「……なんだか2人は意気投合しているね」

魔王「うむ。もう同居も長い。絆だ」

勇者「空腹者は特有の連帯感を覚えるんだな」

女騎士「一つ屋根の下か。……ハンデだなぁ」

魔王「まだ食べてはだめなのか?」
勇者「もういいだろう? 女騎士っ」

女騎士「まだだめだ。両手にフォークを装備してもだぁめ。
 さらに、この固くなりかけのチーズを上から削ってかける。
 これで完成。皿を持ってね。半分ずつとるから」

魔王「ううう」
勇者「いい匂いだなぁ」
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 21:27:04.61 ID:chcZF3wP
女騎士「最近は、仲がよいのかな?」

魔王「仲は最初から良い」
勇者「まぁ、そうだな。がっふがっふ」

女騎士「そうか……」魔王「美味しいな。女騎士は料理も出来るのか」

勇者「そう言えば、昔も作っていたな」

女騎士「修道士は自分の面倒を自分でみるのが基本だし。
 まぁ、パーティーで一番料理が旨いのは変態だった
 わけだけど」

魔王「変態?」
勇者「冬の国の執事のことだよ」

女騎士「昔のことだ」

魔王「そうか?」
勇者「もっきゅもっきゅ♪」

魔王「ところで今日は、どんな用事があったんだ?」
勇者「オムレット作ってくれに来たんだろう?」

女騎士「あ、いや。うん、たいした用事じゃないから」

勇者「そなのか?」

女騎士「うむ。戦略的に見て出直そうと思う」
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:04:45.62 ID:chcZF3wP
――新生白夜王国、兵舎付きの執務室

王弟元帥「どうだ? あの軍を率いてみて」

灰青王「悪くはありませんね」
王弟元帥「ほう」

灰青王「確かに農民ゆえ、無統制になる局面がありますが
 貴族の私軍とは違い、良くも悪くも素直ですな」

王弟元帥「マスケットはどうだ?」

灰青王「現状では、強力な石弓、しかし欠点も多い。
 そういった感じです。提出した書面の方は?」

王弟元帥「読んである」
灰青王「あそこにも書きましたが、沼沢地での戦闘ですと
 水気がある分、火薬が湿気ってどうしても不発が多くなる。
 不発が多いと暴発などの事故にも繋がる。
 負傷者のうち少なくない数が、
 自分のマスケットで怪我をした事例になりますね」

王弟元帥「ふむ」

灰青王「面白み、はあります」

王弟元帥「面白みか」

灰青王「現在までの貴族軍での戦争は、
 あまりにも貴族軍の連合体であると言う事実に縛られてきた。
 今回の戦で、その盲目については気がつかされましたよ。
 正直に言えば、戦争の覚悟のない農奴は、
 やはり所詮農奴ですよ。臆病で身勝手だ。
 しかし、そこに面白みのようなものがある」
369 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:06:44.40 ID:chcZF3wP
王弟元帥「現在の問題点は?」

灰青王「資料を」
秘書官「はっ」

灰青王「現場の指揮官としてでよろしいですね?」
王弟元帥「そうだ」

灰青王「まずは最初に、攻撃力の集中です。
 これは戦場の広がりに対して
 攻撃力を一点の集中させると言うことでもあるし
 時間の広がりに対して、ある一瞬に攻撃力を
 集中させると言うことでもあるわけですが、
 これがなっていない」

王弟元帥「ふむ」

灰青王「古来この戦力集中については、兵士の質的向上。
 つまるところ個人的な武勇の研鑽と、指揮官の采配に
 素早くしたがうことが出来るか否かという点によって
 改善されてきた歴史がある。
 しかし今回のこの、元帥閣下の軍。聖鍵遠征軍においては
 個人の武勇、と言う点にそこまで重きを置きたくはない。
 そうでしょう?」

王弟元帥「ふふふっ」

灰青王「で、あれば練兵は指揮に従うためのものを
 中心にそれだけをみっちりと仕込み、
 攻撃集中力そのものの強化は、武器の進歩……。
 いわば改良に期待をしたい」
371 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:09:13.78 ID:chcZF3wP
王弟元帥「ふぅむ」
灰青王「いかがです?」

王弟元帥「すでに新型マスケット、
 フリントロックの作成は発注済みだ。
 しかし、工作精度の問題で数が出そろうの先になる」

灰青王「かまいません。どうせ運用しながらでないと、
 実戦訓練にはなりませんからな。
 次の問題点は防御能力です」

王弟元帥「それは、書面でも触れられていたな」

灰青王「ええ、マスケットは一回撃ったらお終い。
 もちろん再装填をすれば良い訳ですが、
 混乱する戦場でそれだけの余裕を持つのが至難。
 そして、撃った直後から著しい防御力の低下がある」

王弟元帥「うむ」

灰青王「これについては、王弟元帥がかねてから
 提案なさっていたとおり、槍兵との連携運用で
 解決がつきます」

王弟元帥「よかろう。ほかには?」

灰青王「マスケット単体の問題ではありませんが
 参加している貴族達とのあいだの意識の乖離。
 特に貴族側の、マスケット兵に対する嫌悪感と軽蔑。
 これは問題です」

王弟元帥「貴族だからな」

灰青王「ええ。そうです。
 しかしマスケット兵は、その攻撃力と数において
 瞠目すべき点がありますが、あくまで農奴中心の部隊。
 専門的な軍事訓練を受けたわけではない。
 やはり高速で多様な軍事機動などは、
 貴族の持つ騎馬兵力に頼らなければならないような
 場面が今後も数多くあるでしょう。
 それゆえ、現状貴族とも上手く付き合わなければなりません。
 マスケットは無敵の兵ではないのですから」
372 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:10:48.20 ID:chcZF3wP
王弟元帥「その点について、何かの具申はあるか?」

灰青王「それは、今後、王弟元帥がどのような
 国家を作っていくかの想定次第でしょうねぇ」にやり

王弟元帥「……ほぅ」

灰青王「今のままの体制を維持し、貴族と王族が
 互いに助け合い、と言えば聞こえはいいですが、
 牽制し合いながら民の上に君臨してゆくか、
 王族が民を直接統治してゆく絶対王政を敷いてゆくか」

王弟元帥「……」

灰青王「現在の中央国家群は、国家乱立とは云え、
 その実、教会による横のつながりの輪の中に囚われた
 複数の馬のようなもの。その中で長兄たる聖王国の
 影響力は消して小さくはないでしょうな」

王弟元帥「ふっ。戯れ言だ。我ら聖王国も
 光の精霊の1人の信徒に過ぎない。
 こたびの遠征軍も、諸王国、諸貴族、そして民の自由な 信仰心の発露によるもの……」

灰青王「ははははは。だが、その自由を許していては
 反感も連携の不備もどうにもなりません」

王弟元帥「――ふっ。大主教がどのようにお考えかは
 自ずと別として、わたし自身は今後も貴族は
 必要不可欠と考えている。ただ、時代によって
 その求められる資質が変わるだけなのだ」
373 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:12:43.43 ID:chcZF3wP
灰青王「そう言うことであれば、信賞必罰。
 武門のよって立つ所にしたがいて、軍規をつくり
 これに王族、貴族から率先して従うことにより、
 民に範を示す。また貴族にはその働きに応じて
 褒美を取らせる。
 お定まりの手ですが、これを実行してゆけば
 いずれは軋轢も少なくなりましょう。
 本来的には同じ魔族と戦う軍なのですから。

  傭兵が混じるとこの種の法はやっかいだが
 元々我ら国家にとって傭兵は、兵力が足りない時の
 予備兵力だった。今回の戦いでも、貴族の私兵としての
 傭兵はあっても、聖鍵遠征軍として雇った傭兵はいない。
 で、あれば問題ないでしょう。
 問題ある貴族がいるのならば、その貴族は……
 そう、おそらく――背教者なのだから」にやっ

王弟元帥「司令官が言うのであればそうなのだろうな」

灰青王「では、そのように軍規を改めましょう」

王弟元帥「期待しているぞ」

灰青王「今回の指揮で、マスケットの射程や、
 その攻撃タイミング、クセなどはつかみました。
 次回からの前線指揮は
 より確実なものにしてご覧に入れましょう」

王弟元帥「それでこそ、霧の国の若き英雄王だ」
灰青王「ははっ」
377 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:26:35.46 ID:chcZF3wP
――冬の国、城下町の一軒家の前

「にゅーっほっほっほ、にょーほっほっほ」

女騎士「……」

「わ! これは素敵ですぞぉ!
 ふくらみ、まろみ。淑女のレディですなっ!」
「もう、お怪我にさわっても知れませんよ?」

「いやいやいや。これがあるから治るのです。
 そーっれ、ぱっふぱっふ」
「きゃ。うふふふ。ぱっふぱっふ♪」

女騎士「……」

「そーれもういっちょー♪」
「いやん、元気すぎ~っ」
「ぱっふぱっふ。にょほほほ~」
「うふふふっ。ぱっふぱっふ♪」

ガチャリ。

女騎士「失礼する」

執事「……」
看護の娘さん「……」ぴきっ

女騎士「あー。いい加減にした方がいいと思うぞ」

執事「なっ。なにもしておりませんぞっ!?」
383 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:29:45.44 ID:chcZF3wP
――冬の国、城下町の一軒家のなか

女騎士「もういいのか、爺さん」

執事「ごほっ、ごほっ。お気遣い無く。
 わたくしはもう年老いた老兵に過ぎません。
 老兵は死なず、ただ去りゆくのみ。
 ……あの葉が落ちる時には、この爺めも」

女騎士「なんで死にそうな爽やかさなんだ。
 さっきまであんなに楽しそうだったのに」

執事「あれはですねっ。
 全然全くやましい事など無いのですぞ!」

女騎士「“そーれもういっちょー”」

執事「なっ! ど、どこから聞いていたのですか!?」

女騎士「何も聞いてない……ことにしたい」

執事「とにかく何らやましい事はないのですぞ。
 それどころかあの状況で奮い立たなかったら
 男としてのやましさを感じること請け合いですぞ」

女騎士「全く、いつまでたっても年をとらないなぁ」
執事「にょっほっほっほ!」

女騎士「褒めてないからなっ」
執事「しょぼん」
384 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:30:43.62 ID:chcZF3wP
女騎士「でも、元気そうで安心した」
執事「まぁ、これでも鍛えていますからな」

女騎士「治癒術はしたのか?」
執事「ええ、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」

女騎士「これは見舞いだ。梨なんだが」
執事「嬉しいですね」

女騎士「剥いてもらうといいぞ。胸のでかい娘さんに」
執事「にょっほっほっほ」

女騎士「……胸のでかい娘さんになっ」
執事「こほん。いえ、ありがとうございます」

女騎士「……ふぅ」とさっ
執事「どうしました?」

女騎士「……じつは」
執事「……」

女騎士「……うん」

執事「なにかあったのですか?
 勇者との仲を決定的にすべく、
 この老爺の知恵でも借りに来たのですかな?」

女騎士「何で判ったのだ!?」

執事「年の功と申しますか、はははっ」
386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:33:32.25 ID:chcZF3wP
女騎士「そうなのか?」

執事「女騎士が勇者にほの字なのは、
 それもう、最初からばればれでしたからね。
 にょっほっほっほっほ」

女騎士「そうか……」

執事「ええ、そうですよ。
 一緒に旅をしていたあの当時から、あなたたち2人の
 視線の先にはいつでも勇者が居ましたから。
 とんだ迂闊の童貞ボーイですよ。にょほほ」

女騎士「2人?」
執事「いえ、それは何でもありませんよ。
 ところで、何処まで進んだのですか?」

女騎士「どこまで?」きょとん
執事「勇者との男女の仲ですよ」

女騎士「ああ、剣を受け入れてもらった。
 わたしはもう勇者のものなのだ」えへんっ

執事「……はぁ」

女騎士「何でため息をつくっ!?」

執事「こともあろうに“騎士の宣誓”を男女の仲の
 進展具合にカウントするとは。この執事も情けなくて
 笑い声が出てしまいます。にょっはっはっはっは!!」

女騎士「笑ってくれるな。わたしだってきわきわなんだし」
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 22:35:03.52 ID:chcZF3wP
執事「まぁ、お二人とも奥手ですからね。
 おまけに相手はあの勇者ですし。
 まぁ、相当の難物ですよ」

女騎士「そうなのか?」

執事「ええ、魔王も困っているでしょう」

女騎士「そういえば魔王のことは、
 冬寂王には報告しないで良いのか?」

執事「それは、この爺には手に余る案件です。
 いずれ時が至れば、若が己で知るでしょう」

女騎士「そうか……。困るって、勇者はもしかしてその……」

執事「ん?」

女騎士「もしかして私たちのことを嫌いなんだろうか?」

執事「いえいえ、そんなことはないと思いますよ。
 ただ、勇者は難しい相手だ。
 とこのように申し上げただけで」

女騎士「それはなんでだ?」

執事「ふぅむ」

女騎士「昔のよしみだ。何かヒントをくれないか?
 わたしだって変態の知恵を借りるのは忸怩たる思いだが
 いい加減魔王に差を付けられていて、
 このままでは色々取り返しがつかなくなりそうなんだ」



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