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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」8-5


723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:49:11.65 ID:1eGbtUQP
女魔法使い「……」
メイド姉「なんで、こうなるんですか?」

女魔法使い「……成り行き」

メイド姉「成り行きっ!? 成り行きでこんなにっ、
 こんなに人が死ぬんですかっ。そんな事許されるんですかっ!」

女魔法使い「では、成り行き以外の何なら赦せるの?」
メイド姉「……っ」

女魔法使い「……」
メイド姉「……それは。そんなのは」

女魔法使い「異なる二つの存在があり、
 複層化されたレイヤにおけるベクトル量が違う場合
 概念的なレベルにおいて速度差が生じる。
 もしその二つが接近しており、影響を与える場合、
 その相対的な速度差によって、
 より高速な側が外側となって巻き込むことになる。
 これを散文的に表現すると、時代の回転という」

メイド姉「……」きっ

女魔法使い「時代が回転する時、その軋轢は血を要求する。
 血塗られた曲がり角を経て、時代は回転する」

メイド姉「そうでなきゃならないんですかっ!?
 嘘ですっ! 平和に曲がることだってあるはずですっ」

女魔法使い「例外はない。
 仮に血が流れていないように見えても
 それは知覚できないだけ。
 肉体の血ではなく、精神の、魂の血が流れただけ」

メイド姉「……嘘、です。そんなのっ」
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:52:31.32 ID:1eGbtUQP
女魔法使い「嘘ではない」
メイド姉「……っ」

女魔法使い「ときに、人より多くの血を流せる個人が現われる。
 何によってかそうなった彼らは、
 数千人分。時によっては数万、数十万人分の血を流して
 回転の要求する血量を一人で肩代わりする。

  彼ら個人によっても、時代の要求した血量は隠蔽される。
 まるで犠牲など、無かったかのように」

メイド姉「……」

女魔法使い「嘘ではない。なぜならその証拠に
 ――貴方は、それを知っている。ううん、感じている」

メイド姉「……」

女魔法使い「今ならば判る。学んだ今ならば、
 ……魔界を征服するのは。それはそれで、回転だった。
 しかし、その回転の必要とした血量は
 (魔王+勇者)と多少の+αでまかなえたはずだった」

メイド姉「何を言っているか判りません」

女魔法使い「……判る必要はない。貴方は知っているのだから」
メイド姉「っ」

女魔法使い「だから道を探していた。ちがう?」
メイド姉「だからって。だからって」

女魔法使い「“勇者は報われない仕事だ。
 特にこの世界ではそうなのだろう。
 救うまでは神のごとく崇められるかもしれないが、
 去れば記憶に残らない。
 魔物を倒せば目的に近づくが、
 魔物をすべて倒せば存在意義が無くなる。
 勇者とはまるで自分を消滅させるために
 輝いている星のようだ”」
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:54:40.87 ID:1eGbtUQP
メイド姉「あなたは……まさか……」

女魔法使い「それも真実だ」
メイド姉「だとすれば、貴方は悪魔ですっ」

女魔法使い「自覚のある罪と自覚のない罪では罪科が代わると?」
メイド姉「そうですっ!」

女魔法使い「……だとすれば、無知は得だ。
 知らなければ知らないほど、罪が減るのだろう?」

メイド姉「だって、あなたはっ」

女魔法使い「……」

メイド姉「血を、血の量をっ。誰かを生かすために、
 こんなにも沢山の血をっ、見殺しにしているんですかっ」

女魔法使い「……それも一面の事実といえる」
メイド姉「……っ」

女魔法使い「気に入らないのか?」
メイド姉「当たり前ですっ」

女魔法使い「ならば、貴方は貴方の道で救えばいい」
メイド姉「……っ!」

女魔法使い「忘れるべきではない。貴方も同じ船に乗っている。
 貴方もあの血の流れに救われている。血のながれる河の船の上で」

メイド姉「それでもっ! それでもっ!」

女魔法使い「……送ろう」
メイド姉「……っ」

女魔法使い「……貴方には、やはりこの図書館は、似合わない」
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 16:40:41.77 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!
 「う、うわぁぁぁ!!」「う、うしろにもっ!!」

女騎士(これは……なんだっ!?)
冬国仕官「堪えろっ! 南の勇士よっ!
 騎兵隊、左翼の敵突出部隊を叩けっ」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

冬国槍兵士「姫騎士将軍のためにっ!」
冬国弓兵士「我らが故郷のためにっ!」

蒼魔歩兵「助けてっ、何かがっ!」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!
     うわぁぁあ!! 見えない槍だっ、見えない槍なんだ!

女騎士「――っ! 仕官っ!!」
冬国仕官「はっ!」

女騎士「色狼煙をあげろっ! 合図だ! 前線を80歩後退っ!」
冬国仕官「何が起きているんですかっ!?」

女騎士「蒼魔族後方より無数の新たなる敵が現われた。
 ――おそらく、教会の遠征軍、その本隊だ。
 ここまで早いとは。
 それに、あの音は何だ……。嫌な予感がする。
 狼煙を三本あげろっ!!」
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 16:41:45.49 ID:1eGbtUQP
斥候「騎士将軍っ! 敵はどうやら聖教会兵、その数数万っ!」
冬国仕官「数万!?」

斥候「未知の武具で武装し、魔族、我々関係なく、
 行き会う全てに攻撃を加えておりますっ!!

冬国仕官「そんなっ。蒼魔族だけでも2万からの軍勢がいるのに
 さらに数万だとっ!? こっ、ここまでなのかっ」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

女騎士「いいやっ。まだ生きている。
 まだ負けてはいないっ。
 防衛ラインを崩すな、湿地帯へは近寄らせずに、堅持しろ!
 午後も深くなった、気温が下がるっ。霧が出るぞっ」

冬国仕官「……くっ。了解っ!」

女騎士「傷病者搬送を急げ!!
 戦場図記載の深紅のルート以外
 今後一切の使用を禁止する!! 全軍に通達っ!」

  冬国槍兵士「押せっ! 押しかえせぇ!」
  冬国弓兵士「ここは俺たちの国だっ!」

女騎士(使う相手が変わる、か。
 ……どこまで行けるか判らないが師弟合作だ。
 蒼魔も教会も、付き合ってもらうぞっ)
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 16:43:43.43 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所

鉄国少尉「あれはっ」
鉄国歩兵「色狼煙ですっ! 少尉っ! 数は三本!
 “全テノ関ヲ空ケテ放流セヨ”ですっ!」

鉄国少尉「判った。森の中の開拓兵に啄木で合図を送れっ!」
鉄国歩兵「はっ!!」

 コーッン!! コーッン!! コーッン!!

鉄国少尉「すぐにでも来るぞ」
鉄国歩兵「はい。いや、……来ました」

鉄国開拓兵「水位が上がっていく……」

鉄国少尉「いいや、例年どおりに戻っていくだけだ」
鉄国歩兵「水路の様子はどうだ?」

鉄国開拓兵「はい……。大丈夫です!
 湿地帯に流れ込んでいきます。
 ものの20分もあれば、湿地帯はもとどおり
 ぐちょぐちょになりますよ!」

鉄国少尉「混合具合は?」
鉄国歩兵「良好。水面に浮いています」

鉄国少尉「こっちは任務を果たしましたよ。
 護民卿、騎士将軍……どうかご無事で」
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:05:51.23 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、混乱の蒼魔軍

蒼魔上級将軍「一時的撤退だっ!」
蒼魔近衛兵「ですがどちらへっ」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

蒼魔上級将軍「北だっ! 歩兵部隊を円陣とし、
 しんがりを持たせる。騎馬部隊から先に北方へと移動をしろ!」

蒼魔近衛兵「これはっ……」

蒼魔上級将軍「どうした! こんどはなんだっ!」

蒼魔近衛兵「湿地帯がいつの間にか水量を増しています。
 これではこの平地が、水路で造られた迷路のように……」

蒼魔上級将軍「迷路? 水量が増したとは言え、
 膝までではないか。恐れるな! 場合によっては
 馬から下りて手綱を取るのだっ!」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

蒼魔近衛兵「はっ! 行くぞ! 騎馬部隊!
 先行して、敵の遊撃部隊を切り開くのだっ!」
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:08:03.86 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

女騎士「火矢を放てっ!!」

 ビュンビュンビュン!!
   ビュンビュンビュン!!

冬国仕官「どうだっ」

 ゴゴオオオオオオォォォォォォォォ!!!!

冬国槍兵士「っ!?」
冬国弓兵士「なっ!」

女騎士「全軍撤退!!」

冬国仕官「なんて光景だっ」

女騎士「設計された水路による半径五里四方の炎の迷宮だ。
 蒼魔族の布陣が確定できなくて、
 広めに範囲を取っていたけれど
 それが退却を助けてくれることになるとは……」

冬国仕官「これで我が軍の勝利……ですか……?」

女騎士「いいや。おそらく、峠道に教会軍の本隊は存在する。
 これで倒せるのは先遣隊でしかないと思うけれど……。
 とにかく退却するまでの時間稼ぎは可能だ。
 急げっ!! 傷病者には付き添え!」

冬国槍兵士「はっ!!」
冬国弓兵士「おい、行くぞ。帰るんだっ!」

女騎士「炎が回る。……指定の地域からは離れるなっ!」
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:21:16.65 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、乱戦地帯

聖鍵兵士「はぁっ! はぁっ!!」
聖鍵槍兵「こっちにはいない、進もう」
聖鍵銃兵「いや、まってくれ。装填しないと撃てない」ごそごそ
聖鍵中隊長「何をやっている、急げっ!」

聖鍵兵士「慎重に計量しないと……」
聖鍵槍兵「槍兵はそんな格好悪いことはねぇですよ」
聖鍵銃兵「うるさいっ。
 ……マスケットを支給されない落ちこぼれが」

聖鍵中隊長「静かにしろっ」

   ガウゥゥン!!

聖鍵銃兵「あれは……」
聖鍵中隊長「我々の右翼だ。129部隊だな」

聖鍵兵士「て、てっ、敵が近くにいるのか」きょろきょろっ
聖鍵槍兵「く、くるなら来いっ」ばっ
聖鍵銃兵「あと少し、もう少しで装填が。あっ」

 がちゃがちゃ。ずるっ

聖鍵兵士「腰抜けっ」
聖鍵中隊長「早く起きろ、マスケットを濡らすんじゃない」

聖鍵銃兵「お、俺は選ばれたんだ。選ばれたんだぞっ!
 マスケットを持つ兵士として……。あれ?」

聖鍵中隊長「どうした?」

聖鍵銃兵「水に、ぬるぬるしたものが浮いてる……ひっ!!」

聖鍵兵士「炎がっ! 焔が駆けてっ!! ぎゃぁぁぁぁぁああ!!」
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:24:19.84 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、峠道の高台、本陣

     ゴゴオオオォォォォォ!!!!

王弟元帥「ほう……」
聖王国将官「元帥閣下、これは」

王弟元帥「おそらく、三ヶ国側の罠だろう」
聖王国将官「それにしても……」

監視兵「報告いたしますっ! 眼前の炎はどうやら
 この平地東部の殆どを覆っている様子!
 一辺が五里に及んでいます」

聖王国将官「いったいどのような仕掛けなのだっ」

監視兵「そ、それがさっぱり……」

王弟元帥「水路だろう」

聖王国将官「は?」

王弟元帥「午後になって霧が出てきたようだ。水路に特殊な
 油を流したのだろう。その『特殊』の中身までは判らぬがな」

聖王国将官「くっ」

王弟元帥「良い。残存兵力を退却させろ」
聖王国将官「宜しいのですか?」

王弟元帥「ここへは三ヶ国通商を殲滅しに来たわけではない」
聖王国将官「はっ」
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:27:02.08 ID:1eGbtUQP
王弟元帥「白夜王国を制圧し、極大陸ゲート跡への
 侵攻路を確保した。それが目的の第一だ。
 第二に我らが光の信徒が魔族をこの地上から殲滅したと云う事実。
 これにより、今後より一層、我ら聖鍵遠征軍への
 支援と参加者が増えるであろう。
 第三に、新武器であるマスケット部隊での
 実践運用試験を行う事が出来た。
 どのように高性能な武器であろうと自ずと長所と短所がある。
 それらの特徴は実戦を経なければ判らぬ」

聖王国将官「圧倒的でしたな。元帥閣下の仰るとおりで
 ございました。目を開かれたような心持ちです」

王弟元帥「その結論は早い。今後部隊の損耗度の調査や
 武器についての聞き取り、戦果の考察をしなければならぬ」

聖王国将官「はっ」

王弟元帥「勝利に酔っておのれの足下も見えなくなった時
 敗北は足下に這い寄るのだ。
 ……ふっ。あやつめの云いそうな台詞だが、な」

聖王国将官「すぐさま撤退を指示しますっ! おいっ! 伝令!!」

王弟元帥(……それにしても、
 三ヶ国通商の司令官は女騎士と云ったか。
 流石に勇者を支えただけのことはあるな。
 見事な用兵だ……。
 この火炎の罠の壮大な威力に目を奪われがちだが
 その時期を待って弓兵と槍兵を連携させ、
 寡兵をもってあの中央丘陵を守り抜いた。
 その粘り強さと前線に隙を作らぬ細心さは
 並の指揮官の及ぶところではない。
 これほどの才幹、我が麾下ではないとは、惜しい事よ)
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:44:14.10 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、周辺部、森林地帯、真っ赤に染まった夕日

軍人子弟「あ゛あ゛あ゛ぅぅぐぅ……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「うううぐ、うぐっぅっ……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「死んでしまったでござるよ……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「死んでしまったでござる……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「たくさんっ、たくさんっ」

 どんっ!!

鉄国将官「……」

軍人子弟「拙者が駆けつけた時に、もう沢山の開拓民が。
 それに拙者の部下達も。みんな、あの銃弾の嵐に飛び込んで。
 拙者をかばって、仲間をかばってっ。
 あんなに、あんなにっ一緒に過ごしたのに゛っ。
 拙者の仲間だったの゛に゛っ!!」

鉄国将官「……」

軍人子弟「っ……。みんな、もう笑わないでござる」
鉄国将官「……」
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 17:45:15.08 ID:1eGbtUQP
軍人子弟「喋らないでござる……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「酒を飲んで、下品な話をして、
 拙者に向かって大きな口を開けて、
 馬鹿みたいな笑顔で、敬礼してくれないでござる……」

鉄国将官「……護民卿」

軍人子弟「ちっとも護ってござらん」
鉄国将官「……」

軍人子弟「護ってござらんではないかっ」
鉄国将官「……」

軍人子弟「……っ」
鉄国将官「帰りましょう」

軍人子弟「……」鉄国将官「鉄の国には、まだ護民卿が護らなければならない
 人々が、沢山います。――護民卿。
 ……ここにいる俺たちの兄弟や友達が護った、
 鉄の国のみんなが待っていますよ」

軍人子弟「……」
鉄国将官「……」

軍人子弟「……そうでござった、な」
鉄国将官「ええ」

軍人子弟「軍人として、恥ずかしいところを見せたでござる」
鉄国将官「ちっとも。ねぇ、護民卿」

軍人子弟「?」
鉄国将官「次は、勝ちましょう。勝って笑いましょう」
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 18:01:44.08 ID:1eGbtUQP
――大陸街道、強い風が吹く交差点

ひゅるぅうるるるる~

メイド姉「……」
奏楽子弟「……」

メイド姉「詩人さんは、見たんですか?」
奏楽子弟「……うん」

メイド姉「……」
奏楽子弟「見たよ。たぶん。……わたしはわたしだったけれど、
 どこかでメイド姉さんも感じていた。
 あそこにいたのは、わたしでもあった……と、思う」

メイド姉「……」

奏楽子弟「悲鳴だったね」
メイド姉「ええ」

奏楽子弟「怒声だった」
メイド姉「はい」

奏楽子弟「あの苦鳴も、この世界の音楽の一つなのかな」
メイド姉「……わかりません。わかりませんけれど、あれは」

奏楽子弟「……」
メイド姉「死でした」

奏楽子弟「うん」

メイド姉「数え切れないほどの。砂浜の砂粒ほどの、死」

奏楽子弟「ねぇ、メイド姉さん。気が付いていたんでしょう?」
メイド姉「はい?」

ふぁさっ
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 18:03:32.30 ID:1eGbtUQP
奏楽子弟「そのターバンは、あげる」にこっ
メイド姉「詩人さん……」

奏楽子弟「ほら、この耳ね。ぴこぴこでしょう?
 わたしは、森歌族なの。
 歌を伝え、語りを伝え、見聞きしては記録する。
 今は遠きアールヴの末裔。
 千年を千回繰り返してもけして忘れない一族。
 うん。えへへ……。
 魔族なんだ」

メイド姉「詩人さんは、詩人さんです」

奏楽子弟「そう言ってくれると思った」

ひゅるぅうるるるる~

メイド姉「はい」くしゃ
奏楽子弟「ほら、泣かないでよ」

メイド姉「だって」
奏楽子弟「わたしは行くよ。判ったから。見いだしたから。
 わたしにもどうやらやらなきゃいけないことがあるみたい。
 だから、ここでお別れ」

メイド姉「はいっ……」

奏楽子弟「耳を澄ませていて。
 どこかの街角で、あなたがはっと顔を上げたのなら
 きっとそれはわたしの声。わたしの歌。わたしの想い」

メイド姉 こくり

奏楽子弟「あなたが、あなたの道を見つけることを
 わたしは祈っている。森歌族はずっとあなたの友達だよっ」
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 18:32:58.01 ID:1eGbtUQP
――白夜王国、宮城前広場、バルコニーから

王弟元帥「光の精霊の尊き御名に幸いあれ!
 汝ら光の子らよ、選ばれし戦士達よっ!!
 我らはついに白夜王国の奪還を果たしたっ。

  身よ、この荒れ果てた都市を。
 白夜王国はかつてこの大陸の盾として地上を護った
 聖なる光教会文化圏の力強くも雄々しい盾であった!

  だがその栄華も卑劣なる魔族の奇襲をもって
 落日を迎えてしまった。
 諸君らの目に写る廃墟は魔族の暴虐と
 それを見過ごしたばかりか救いの手さえ貸さなかった
 友邦と名乗るばかりの背教者達、南部三ヶ国の仕業である。

  しかしっ!
 我らはこの都市にやってきた。歓喜の声を上げよ!
 沈む太陽があれば、必ず登り来る朝日があるのだ。
 我ら光の精霊はその不死不滅の循環をもって
 我らに勝利を運んでくださる。

  汝ら光の子らよ、選ばれし戦士達よ。
 諸君らが長駆、この大陸辺境まではせ参じ
 その力強き腕(かいな)をもって魔族を打ち倒すことにより
 ここに白夜王国は回復されたのであるっ!!」

うわああぁぁぁぁ!!
   うわああぁぁぁぁ!!

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 18:34:18.80 ID:1eGbtUQP
王弟元帥「見よ。ここは大陸の南端である!
 もはや眼前は海であり、その短き波頭を越えれば
 局地は諸君らの眼前に現われる。
 極大陸へと赴き、そこにある大空洞を越え、
 いまこそ魔族を叩くべき時がやってきた!

  諸君らの中には今までの度を思い返すものも
 あるだろうがここに断言しようっ!
 魔族の一派こそ撃破したがその侵略経路たる大空洞は
 放置されたままなのだ。
 これを放置してはこのような悲劇が何度でも繰り返されるだろう。

  諸君らが携えるマスケットは、我らが魂の導き手たる
 聖光教会が精霊より賜りし炎の杖である。
 その力は諸君らが誰よりも知るところとなった。

  今こそが、光が我らに与えたもうた、最大の好機なのだ!

  もし諸君ら光の子が己の責務を果たして倦むところがなければ、
 そしてもし今までの如くに最良の準備がなされるのであれば、
 我らは必ずや次の事を証明するであろうっ!

  すなわち、我らは故郷たるこの大地を離れ、
 戦乱の激動を乗り越え、たとえ何年たったとしても、
 たとえ我らが最後の一兵になったとしても、
 邪悪なる魔族の本拠地たる魔界の暴虐に打ち勝ち
 地上は愚か、この世界全てに光の恩寵を広めることが出来る。

  このことをわたしは深く信じるところである。
 たとえ何があろうと、これこそ我らが行わんとするところであり
 すなわち、我らにマスケットを与えた光の精霊の意志なのだ!」
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 18:36:33.59 ID:1eGbtUQP
王弟元帥「諸君らの背後に耳を澄ますが良いっ。
 遠く地平線の彼方まで続く勇壮なる靴音が聞こえるであろう。
 今このときも、諸君らの同胞が、この白夜王国解放を祝い
 続々と終結しているのである。

  彼らは新しいマスケット、毛布、馬車に満載の小麦を積んで
 来るであろう。彼らのためにも諸君らは船を造らねばならぬ。
 この都を整えねばならぬのだ。

  今宵より新生・白夜王国は大主教直轄地として
 魔界攻略の前線基地となるのだ。

  さぁ、葡萄酒を開けろっ! 勝利を祝おうではないかっ!!
 そして夜が明けたならばすでに半ばを終えた夏を追いかけ、
 船を造るのだ! その道具はすでに用意がされている。

  今宵我らは勝利した!
 諸君らが万全の備えを行ない、精霊の導きに耳を澄まし
 我ら聖鍵軍の主力として良く指揮に従う限り
 今宵の勝利は永遠に枯れぬ花となろう!!

  魔界へと向かうのだっ! そこにはかつてあり、
 今失われし、我らが奪われた聖なる宝があるっ!」

うわああぁぁぁぁ!!
   うわああぁぁぁぁ!!

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

王弟元帥「精霊の旗のもとっ!! 我が同胞のためにっ!!」
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:08:14.18 ID:1eGbtUQP
――鉄の国、中央広場、鈴なりの民衆の中で

鉄腕王「蔓穂ヶ原から帰った
 我が臣民よ、勇敢なる将兵よ。ご苦労だった。
 諸君らの帰還を、この鉄腕王はなによりも喜ぶ。

  蔓穂ヶ原の戦いによって諸君らは、
 良き友、良き夫、良き息子、そして良き恋人として戦った。
 この場にはいないものもいるだろう。
 しかし彼らもまた、この三ヶ国を中心とした南の大地の
 忠勇なる戦士であった。

  蔓穂ヶ原の戦いとはなんであったか?
 隣国を占領した蒼魔族なる魔族は、
 魔界で反乱を企て逃亡してきた一派である。

  彼らは魔界で罪を犯した、いわば犯罪者であった。
 だがそういった事情とは無縁に、我らはひたすらにこの大地を愛し
 父祖の、そしておのれの開拓してきた大地を護らんと戦った。
 そう、蔓穂ヶ原の戦いとは侵略者との戦いだったのだ!

  我、鉄腕王はここに宣言をする。
 失ったものはある。この戦いで倒れた二千余人の同胞は帰らない。
 しかしなお、宣言しよう。

  われらは穂ヶ原の戦いに勝利したのである!
 なぜならば、侵略者は撃退され、
 この父祖の大地に我らはまだ立っているからであるっ。

  この戦いをもって、対蒼魔族戦役は終了したっ。
 彼らの魂に光りあれ。我らが故郷は護られたのだっ」

 おおおおー!!! うわぁぁぁぁぁあ!!
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/29(火) 19:09:18.46 ID:1eGbtUQP
冬寂王「鉄の国の諸兄よっ! 聞いた頂きたいっ。
 しかしその蔓穂ヶ原の戦いにおいて、重大な事件が起こった!

  それは中央国家による連合軍、
 光の聖教会による聖鍵遠征軍の我らに対する無差別虐殺である。

  確かに我ら三ヶ国は中央の諸国により異端と告発された。
 それでも我らが信じる湖畔修道会もまた、
 光の精霊の学舎であり、使徒なのだ。
 いわば師とも兄とも慕う中央の諸国家によるこの仕打ちに
 わが三ヶ国の首脳部は流れる涙を抑えることは出来ぬ。

  我らは確かに中央の諸国家に養われていた過去を持つ。
 我らはこの大陸の養われっ子であった。
 しかしそれもこれも、大地を脅かす魔族の脅威から
 大陸を守るためであった。
 我らの父祖は傭兵よ、戦しか知らぬ蛮人よと
 蔑まれながらも防人としてこの南の地を護ってきた。
 我らの魂は、常に大地と共にある!

  諸兄らの隣を見よ。
 そこにはかつて農奴だった我らが同胞の姿があるだろうっ!
 諸兄らの胸に手を当てよっ。
 その鼓動が自由の律をきざんでいるのが判るであろうっ!

  われらは自由の民として、今こそ大地をその足で踏みしめる
 必要がある。その自由とは独立だ。
 いや、もはや我らが魂は、独立していたのだ。
 大地を耕し、荒れ果てた地を開墾したその日から
 我らの魂は困難に挑む一個の独立した人格を有している」

 おおおおー!!! うわぁぁぁぁぁあ!!
  そのとおりだーっ!! 我らの大地は、南の大地だーっ!
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:10:21.01 ID:1eGbtUQP
冬寂王「想いおこして欲しい。
 我らが何のために血を流してきたかを。
 全ては大地のため。我らが護るべき同胞のためだっ。

  我らは我らを脅かす侵略者と戦ってきたのだ。
 我らはただひたすらにより善い、少しでも豊かな暮らしを求めて、
 少しでも幸せになるために戦ってきたに過ぎぬ。
 我らは他人をうらやみ、その財貨を奪うことによって
 豊かになろうとしたことなど無いのだから。

  我らの大地を大地を侵略するのであれば、たとえ相手が
 魔族であると人間世界のどのような国家、どのような軍であろうと
 我らは故郷を護るために、必死にこれと戦うだろう!

  しかし我らはまた戦しか知らぬ血に飢えた民ではない。
 我らが願うのは平和と繁栄なのだ。もし我らはその必要があれば
 いまからでも中央の国家と手を取り合い、
 あるいは魔族と停戦をすることでさえ躊躇わぬ。
 我ら首脳部は、我らが大地と民の利益を護るために
 どのような艱難辛苦も、耐え難い決断さえするということを
 諸君に知って貰いたい」

  鉄腕王!! 鉄腕王!! 冬寂王!! 冬寂王!!

氷雪の女王「しかし、喜ばしき報せもまたありますっ。
 皆さんもご存じでしょう。あるいはもうすでに接種を
 受けたかも知れませぬが、あの恐ろしき業病、
 痘瘡とも疱瘡ともいわれている天然痘。

  おびただしい数の死者を出し、この地上を何回も何回も
 それこそ戦争などとは比べものにならない規模で脅かしてきた
 あの病への予防法を我々はとうとう発見したのですっ!!」

 ざわざわざわ……。ほ、ほんとうなのか?
 ほんとうだ! おらぁ、もう接種を受けただ!
 おらの村で今年、ぶつぶつができた子供は一人もいないだよっ!
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:12:28.26 ID:1eGbtUQP
氷雪の女王「わたしには、精霊の意志は判りません。
 精霊の御心は深く、我ら人間には
 その全てを推し量ることなど出来ないとも思います。

  しかし、皆さん覚えてください。
 そして今晩、一人一人の胸の中で考えてください。
 聖なる光教会は、火を吐き人を殺す杖を精霊から
 与えられたと云います。

  我らが湖畔修道会は、天然痘から人々を護る盾となる
 薬を精霊様とその使者たるものから与えられました。

  実際この薬は知恵深き学士の一族が、
 魔界を旅して見つけてきた技術なのです。
 二つの教会に、違った技が伝えられた理由を考えて
 欲しいのです」

 ざわざわざわ……。ざわざわざわ……。

冬寂王「この一事を持って理解して頂けるであろう。
 われら、三ヶ国の首脳は平和と繁栄を求め、
 出来うる限りの施策を今後とも行なっていくつもりだ。
 もちろん我らが母なる領土を侵すものは、
 これを許すつもりはない。

  そして諸兄らには最も重大な報せを告げなければならぬ」

 な、なんだ? なにがあるんだ?

冬寂王「われら三ヶ国通商同盟は本日をもって解散する。
 我が同盟の理想を受け入れてくれる新たな友邦が現われたのだ!」

 ほんとうか? どういうことなんだ!?
  なかまがふえるってことだぁよ。そうなんか!
 仲間ってどこだべぇか。湖の国じゃないか?
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:13:33.77 ID:1eGbtUQP
冬寂王「湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国および
 自由通商の独立都市七つが、我ら同盟の理念に共鳴し
 ゆくゆくは農奴解放を含めた目標を持つ共同体として
 一歩を踏み出すこととなった。
 我らはもはや三ヶ国ではない。

  たった三ヶ国のみで、この南の果ての地で、
 孤独に喘ぎながらも耐え続けてきた時は終わりを告げたっ。

  我らは、大地を護って戦う。
 我らは平和と繁栄を求め、
 手を携えることの出来る相手とであれば誰とでも、
 互いの繁栄を認め合う。
 この世界の中に根を張り、共に明日を目指すために
 新しい船出を行なう時が来たのだっ!

  わたし達は、我らが南部の魂っ
 大地への深い愛と、同胞への共感、寛容と克己、努力。
 そして何よりも自由と独立を愛する民の一人として
 ここに『南部連合』の樹立を宣言するっ」

 ……南部連合? そうだ、南部連合だっ!!
 もう異端なんかじゃない、おいら達にも、仲間が出来るんだ!
 これで中央の奴らに見下されずともすむようになる。
 鉄製品の売り先もずんと増えるに違いないっ!
 いや、それどころかいろんな商品が輸入されてくるぞっ!!

 鉄腕王!! 鉄腕王!! 鉄腕王ばんざーい!!
  冬寂王!! 冬寂王!! 冬寂王ばんざーい!!
   氷雪の女王!! 女王陛下、ばんざーい!!

 南部連合っ!! 我らが南部連合万歳っ!!!
860 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:20:10.41 ID:1eGbtUQP
――月明かりさす大きなイチイの木の下で

  さくっ

勇者「……」

さくっ

魔王「勇者」

勇者「魔王」

魔王「……」
勇者「……」

魔王「隣に座っても良いか?」

勇者「うん」もそもそ

魔王「……」
勇者「……」

魔王「へこんでるな」
勇者「うん」
魔王「わたしもだ」

勇者「……」
魔王「……」

勇者「負けちゃったよ」
魔王「わたしも負けてしまった」
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:22:01.98 ID:1eGbtUQP
勇者「良く、判らないな」
魔王「うん」

勇者「何で負けたのか、何で勝てていたのか」
魔王「うん」

勇者「魔王」
魔王「ん?」

勇者「後悔、してるのか?」
魔王「……」

勇者「話は聞いたよ。ブラックパウダーさ」
魔王「……うん」

勇者「……」
魔王「わたしのせいなんだ」

勇者「……」
魔王「……」

ガサリ

勇者「あ」

女騎士「苦労させられたぞ」
魔王「すまない……」

女騎士「でも、わたしも、ダメだった。負けてしまったよ」とさっ
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:26:07.61 ID:1eGbtUQP
女騎士「戦っていると、疑問に想う。
 今流れている血は何のためなのかと。
 その血に相応しい代価を我々は得られるのだろうかと。
 時に無為な犠牲なのではないかと疑う」

魔王「無くても良い犠牲だったんだ。
 少なくとも今日の数千は。
 わたしがもっと注意をもって扱っていたら、
 無くても済んだはずの……」

女騎士「……」
魔王「……」

勇者「おい」

女騎士「?」

勇者「魔王、女騎士。……大事な話があるんだよ」

女騎士「なんだ?」 魔王「こんな時に」

勇者「朝露に濡れた葉を踏んで、草原を歩く。
 空にはバラ色の朝焼け。世界はあらゆる方向に
 繋がっているけれど、自分に判るのは、今まで歩いてきた道だけ。
 担いでいるのは小さな荷物。どこにでも行けるけれど
 どこに行けとも命令はされていない」

女騎士「……?」
魔王「――」
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:27:12.91 ID:1eGbtUQP
勇者「あの丘の向こうに何があるんだろう?
 そう思ったことはないか」

女騎士「何を言っているんだ?」
魔王「――」ぎゅっ

勇者「ただ単純にさ。あの向こうはどうなってるんだろう?
 そんな気分で旅に出る気はないかって話だよ。
 もしかしたらすごく困難で、丘にたどり着かないかも
 知れないけれど……。
 でもそんなもんだろう? どっちを目指すにしたって。

  街道は曲がりくねりながら谷に続いているように見える。
 丘に登るには朝露に濡れたこの斜面を登らなければならない
 でも、登ったら何か見たことがないものが見えるかも知れない」

女騎士「……それって」
魔王「朝露じゃなくて、それは血かも知れない」

勇者「それでもさ」

女騎士「――」

勇者「だって、俺たち歩かないわけにはいかないじゃん。
 歩かないように頑張ったって、勝手に背景のほうで
 流れていくじゃん。……仕方ないじゃん。
 だったら、やっぱり見たことがないものがみたいよ。
 俺はずっと壊し屋だったから、
 そうじゃないものが見てみたいよ」

女騎士「勇者……」
魔王「……勇者」
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:29:12.22 ID:1eGbtUQP
勇者「なー。あのさ」

ひゅるるる~

勇者「一緒に、行かないか?」
女騎士「――」 魔王「――」

勇者「恥ずかしい話だけど、
 一人だと挫けちゃいそうなんだよ。
 それに、丘の上に立った時、
 一緒にそこから眺める相手が欲しいんだ」

女騎士 ちらっ
魔王 こくり

勇者「どうだい」

女騎士「よかろう。いや、むしろ今度おいていったら承知しないぞ」
魔王「勇者のほうがわたしの物なのだ。
 置いていくならわたしが放置する。留守番が勇者だ」

勇者「うん。……うんっ」

女騎士「剣の主は心配性だ。自分だってへこんでいるくせに」
魔王「それが勇者の良いところだ。意地っ張りで愛おしい」

女騎士「愛おしい!? 抜け駆けは無しにしてもらおう、魔王!」
魔王「自分の持ち物を何と言っても構わないではないか!」がうがう

勇者「ううう」

女騎士「勇者。早速だがわたしと色んな契りを交わそう。
 その方がいい。長期のお出かけには支度が肝心だ」
魔王「それが抜け駆けでなくてなんだというのだっ」

女騎士「湖畔修道会の宗教的な儀式だ」
魔王「自分の欲望のままに教義を改ざんするなど、恥を知れっ!」

勇者「いや、その……。仲良くね?」
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 19:39:02.00 ID:1eGbtUQP
――白夜王国、宮殿の最も豪華な一室

大主教「……黒騎士は……取り逃がしたか」

百合騎士団隊長「申し訳ありませぬ。あの飛び込んできた
 薄汚い傭兵さえいなければ、必ずや捕縛した物をっ」

大主教「……良い……であろうかと。……思っていた。
 その……ハエは……どうした?」

百合騎士団隊長「その場で斬首いたしました」

大主教「くふっ。身の程を知らぬ……。ことよ」

 カチャン

従軍司祭長「大主教様」

大主教「……どうだ?」
従軍司祭長「こちらは、しかと」

大主教「……ふふ、ふふふ、ふふふふふ」
百合騎士団隊長「それは?」

従軍司祭長「この二つは聖別した……いわば宝石」

百合騎士団隊長 ゴクリ

大主教「はやく……早く、我が手に……」

従軍司祭長「ははぁ」 すっ

大主教「我が手に来たか……ふふっ……待ちかねたぞ
 この輝き……そこに満ちる雄々しき魔力……
 瑞々しき不滅の輝き……」

百合騎士団隊長 ガタガタガタガタ

大主教「……刻印の二つの眼球よ」



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