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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」8-4


498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:03:30.10 ID:L1AOl7sP
勇者「ぜぇっ……ぜぇっ……」

蒼魔の刻印王「能力が同じであらば攻撃側が有利なのだ。
 攻撃側は自分の好きなタイミングで好きな場所に攻撃が出来る。
 防御とはその本質からして、事後処理にならざるを得ない。
 つまり、手遅れ。
 手遅れであると云うことが救済の真実。
 そう、それはこの世界の真理。
 摂理なのだっ!
 そうだろう? 勇者っ! “天始爆炎術”っ!!」

勇者「お前っ!? わざと街をっ。
 うわぁぁああああ! “氷結天蓋呪っ!”」

蒼魔の刻印王「だから遅いと云って! いるのだっ!!」

ズバシャァッ!!

勇者「ぐはぁっ!!」

蒼魔の刻印王「お前の体も心も弱点だらけだっ。
 お前はこうして街の被害を見過ごすことすら出来ない。
 確かに勇者。流石に勇者だけのことはある。
 我が刻印が教える最大の宿敵よっ。
 ……その戦闘能力は我を超えることもいまや素直に認めよう。
 だが、だからといって勝敗は、それとはっ」

勇者「くそおっ!」
蒼魔の刻印王「別だっ!!」

ガギィィン!!!

勇者「はっ。そうかよっ!」
蒼魔の刻印王「減らず口をっ」

勇者「吹っ切れたぜ。どんなに人間離れしてようとな
 それでみんなに嫌われようと、ひとりぼっちになっちまおうと
 それでも“お前なんか”に負けるより、よっぽどましだっ!」
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:07:01.39 ID:L1AOl7sP
蒼魔の刻印王「っ!?」

勇者「おおおっ!! “招嵐颶風呪”っ!」
蒼魔の刻印王「こ、れはっ!?」

びゅごぉぉぉっ!

勇者「はっ。お前程度の飛行魔法で制御できるかっ。
 こいつはごきげん直伝の気象制御呪文の強化版だっ。
 俺とお前ごとふっとばす嵐の結界っ。
 まずはもっとましな場所へいこうやっ」

蒼魔の刻印王「“飛脚術”っ! “火炎鳴動術”っ!
 “天眼察知術”っ! “剛力使役術”っ!」

勇者「“神速呪”っ! “雷剣呪”っ! “鏡像呪”っ!」

   ゴオオオオッ!!!
ガギィィン!!

勇者「いい加減に諦めろっ!」
蒼魔の刻印王「諦めたともっ! 無傷で勝つことはなっ!」

ギィン! ガギィン!! ビギィン!!

勇者「応えろ!! 黒の鎧っ! そなたは何ぞっ!!」
“我は鎧っ。汝を守り、汝が敵の刃を悉く弾く物なり”

蒼魔の刻印王「何故それを使いこなせるっ」

勇者「知ったことかぁっ!!
 誰かが誰かを助けようとするのが全部手遅れだとっ!?
 それが摂理だとっ!?
 したり顔で語ってんじゃねぇっ!!」

   ギィーーーーンッ!!!
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:22:46.62 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍

蒼魔上級将軍「どうだ?」

蒼魔近衛兵「我が軍が押していますな。
 波状攻撃が功を奏しています。時間の問題です」

蒼魔軍軽騎兵「攪乱に成功しましたっ」

 びゅんびゅんびゅん!! びゅんびゅん!!

蒼魔上級将軍「状況を報告せよっ!」

蒼魔軍歩兵団長「丘陵地帯の高さ15歩まで前進。
 現在約1500の歩兵大隊が激しい戦闘中っ!!」

わぁぁ! ガキン! ガシャン!
「蒼魔の力を見せよっ!」 「刻印王のためにっ!」

蒼魔上級将軍「敵ながらあっぱれなものよ。
 ふっ。女騎士だと? あの研いだ刃のように美麗な娘か。
 若の好みに照らせば未成熟だろうが、清冽な蕾も美というもだ。
 ここで一気に押しつぶし、司令官を生け捕りにするぞっ!  敵司令官を捉えた兵には、二階級特進を約束する。
 温存兵力5000を投入せよっ! 重装騎兵準備っ!!」

ザガシュ! ザシュ!

蒼魔軍重騎兵「御身が前にっ!!」

蒼魔上級将軍「敵の戦線はぎりぎりで持っている
 張り詰めすぎた糸ににすぎぬっ!
 汝らが突進力と突破力で一気に片をつけよ!!
 我らが数的有利は、これで敵の二倍に達する!
 こざかしい抵抗はここまでだ! 一気に片をつけよっ!」
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:23:30.56 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

女騎士「右翼槍兵は50歩前進っ! 陣形を維持せよっ!
 最右翼より弓兵で援護っ!
 連携により間断を与えずに攻撃せよっ!!」

冬国仕官「中央に槍兵中隊を追加っ! 押せっ! 押せっ!!」

女騎士「傷病兵の後方搬送にかかれっ!
 軽傷の弓兵は搬送班へと動けっ!! 頭を下げろっ」

冬国仕官「左翼騎兵隊、戻りましたっ!!」

女騎士「ご苦労! 諸君らのお陰で一五の中隊が退却に成功した。
 感謝と共にゆっくりと休憩を与えたいのだが」

混成騎馬部隊「なにをおっしゃるか! 姫将軍!!
 我ら敵中突破から戻りましたが未だに意気軒昂っ!
 次なる下命をお待ちいたしますっ」びしっ!

女騎士「……すまぬ」

 わぁぁ! ガキン! ガシャン!
 「押せぇ! 押せぇ!」 「蒼魔の刻印王のために!!」
 「押しつぶせ! この丘を奪い取れ! 進めぇ! 進めぇ!!」

混成騎馬部隊「将軍っ!」

女騎士「よぉし!! その意気だ、騎馬の勇士よっ!
 わたしはお前達を誇らしく思うぞっ!
 今槍兵を整理して、戦線を一瞬あける。
 陣形の中央やや左翼から飛び出して、蒼魔軍後方を攪乱せよ!」

混成騎馬部隊「ものどもっ! 姫将軍のご命令だっ!
 蒼魔とか云う奴らに一泡吹かせてやるぞっ!」

「「「おおおおっ!!」」」
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:35:49.34 ID:L1AOl7sP
――鉄の国と白夜の国国境地帯、森林、大破砕

ズガンッ!! ガンガンガンガンッ! ドゴォォン!!

勇者「“雷撃呪”っ!!」
蒼魔の刻印王「“黒焔術”っ!!」

ビリビビビリボウッ!!

勇者「――ッ!!」
蒼魔の刻印王「はぁぁぁっ! せやッ!」

ギンッ! ギギンッ!

勇者「……はぁっ! はぁっ! どうした?」
蒼魔の刻印王「くっ」

勇者「人質取れなきゃ、まぁそんなもんだよな」
蒼魔の刻印王「化け物めっ」

ギン! キンギン、キガッ!!

勇者「お前には言われたくない。“候補止まり”くん」
蒼魔の刻印王「その名でわたしを呼ぶなぁっ!!」

ギガンッ! バシャァァン!

勇者「っ!? あれはっ」
蒼魔の刻印王「人間の部隊!? しめたっ」

勇者「行くなっ!! “雷光捕縛呪っ”!!」
蒼魔の刻印王「ははっ! 遅いっ!! これで逆転だっ!!」
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 20:38:09.57 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、南部

魔王「状況は判った」
メイド長「魔王様。未だに妖精女王からの連絡は……」

魔王「判っている。しかし、これ以上は待てぬ」
メイド長「……」

魔王「東の砦長、もう一度地勢の確認を」

東の砦長「ここから中央部にかけては、殆どが浅い湿地帯だ。
 騎馬による行動は速度が落ち、著しく制限される。
 蒼魔族は西方から中央の丘陵地帯へ激しい突撃を繰り返している。
 中央の丘陵地帯に陣取った女騎士将軍の軍は、
 俺から見てもほれぼれするような用兵だが
 兵の疲労度は限界だ。落ちるのも、遠くはない」

魔王「銀虎公、ゆけるか?」

銀虎公「あたりまえだ。我らは野山をその住まいとする
 獣牙の勇士、その精鋭8000! この程度の湿地帯に足を
 取られるような弱兵は一人たりとも連れてきてはいないっ!」

魔王「全ての兵に、深紅の布をつけさせ、確認させよ」

銀虎公「準備万端整っている」

魔王「では、この蔓穂ヶ原外周部を高速で進軍っ!
 銀虎公麾下の全軍をもって蒼魔族の側面から、
 本陣へと食らいつけっ!! 遠慮は無用、逆賊を討つのだっ!」

銀虎公「心得たっ!」くるりっ

銀虎公「誇り高き獣牙の勇士よっ! 魔王の命が下されたっ!
 これより我ら、一陣の風となり、一振りの剣となり
 蒼魔族本陣を切り裂くっ! 我に続けっ!」
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:04:07.98 ID:L1AOl7sP
――白夜王国首都、荒れ果てた街路

 ビュンビュンビュン!!
   ビュンビュンビュン!!

  蒼魔警備隊「てっ! 敵襲っ!」
  蒼魔防御隊「敵だ、てっくふっ!? ぎゃぁ」

  傭兵弓士「鐘楼制圧っ!!」
  傭兵剣士「続いて兵舎に向かう。この鐘楼から援護頼む」
  傭兵弓士「任せておけっ」

傭兵隊長「野郎どもっ! 行くぜっ!」
傭兵槍騎兵「はいやっ!! せいや!」

ダカダッダカダッダカダッ!

傭兵隊長「防備柵をぶっ壊せ!!」
傭兵槍騎兵「おおおおっ!」

 がっしゃーん!!

飢えた市民「ああっ!!」
飢えた難民「あ、あんたがたはっ!」

傭兵隊長「おい! あんたらこの国の人間かっ!?」

飢えた市民「そうです、奴らが! あの蒼い魔族が」

傭兵隊長「わぁってるって! あんたらの長はどこだィ!?
 他に捕まっている連中はどこだ?」

飢えた難民「わ、わかりません。おそらくあちこちの
 屋敷に閉じ込められて、大きな建物に沢山押し込められて
 無理矢理鞭で働かされて……」

傭兵槍騎兵「大きな屋敷……」
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:05:29.37 ID:L1AOl7sP
蒼魔駐留仕官「貴様らっ!! と、突撃ぃ!!」
蒼魔警備隊「うわぁぁ!!」

傭兵隊長「しゃらくせぇ!!」

ガギィン!!

傭兵槍騎兵「隊長のお話中だっ! 行儀良く死にやがれ!!」

ザッシュ!!

傭兵剣士「隊長っ!! 兵舎を制圧! 兵士は殆ど
 いやがりませんでしたっ。奴らはいったい……」

傭兵隊長「わかったぞ! 魔族の兵は殆ど城だ。
 って事はそこらの貴族の館や豪邸を調べろ!

  難民や市民が閉じ込められていたら即座に解放して、
 食料と衣服だけもって逃げ出せって云え!!
 方角は北西の森だ。
 いいか、財産や荷物を持っていこうとしたらやめさせろ。

  動きが遅くちゃ話しにならねぇ!!
 とにかく逃げさせるんだっ!」

傭兵槍騎兵「判りやした。おい、五、六人ついてこいっ。
 他の隊長にも連絡だっ!」

傭兵隊長「本隊は城へと派遣しろっ!」

傭兵剣士「はっ!」
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:06:55.82 ID:L1AOl7sP
傭兵隊長「弓兵部隊を編制。全ての鐘楼を制圧するんだ。
 その後城壁に取りかかれ。相手の人数は少ない。
 揺動して兵を偏らせて、弱点を突け!」

傭兵弓士「了解っ!」

痩せこけた娘「隊長さん、これ……」

傭兵隊長「は?」

痩せこけた娘「おみず……」

傭兵隊長「おう、あんがとよっ。嬢ちゃん。
 だがよ、おめえさんも顔を拭くこった。真っ黒だぜ?」

痩せこけた娘「おかさんが、襲われないように。
 きたなくしなさいて……」

傭兵隊長「そっか。……賢いな。
 じゃぁ、賢いついでだ。母ちゃんと一緒に西北を目指せ!
 他のみんなにも触れて回るんだ。
 この辺にはもう魔族の連中はいねぇ。
 わかるな?」

痩せこけた娘「できる」こくり

傭兵隊長「よっしゃ、急げ! どうやら俺の鼻が
 まだむずむずしやがる」

痩せこけた娘「ありがと、ね?」

傭兵隊長「うるせぇや。……急ぎなっ!」
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:24:22.04 ID:L1AOl7sP
――白夜王国首都、荒れ果てた市街

ギン! キィンっ!!

蒼魔駐留仕官「退くな! ここで退けば刻印王に罰せられるぞ!」
蒼魔警備隊「人間めぇ! 下等な生物のくせに、死ねぇっ!!」

傭兵剣士「下等も上等もあるか、このボケがぁっ!!」

    傭兵弓士「斉射っ!!」
      ビュンビュンビュン!!
       ビュンビュンビュン!!

蒼魔駐留仕官「なっ!」
蒼魔警備隊「後ろっ!?」

蒼魔防御隊「ぎゃぁぁぁあ!!」

傭兵隊長「どうだっ?」

傭兵槍騎兵「市街地の制圧、ほぼ完了。
 南東を除いて市民への通達も終了。ただいま小隊に編制した
 200人で個別に家々を当たらせています」

傭兵隊長「急がせろっ」
傭兵槍騎兵「城ですか?」

傭兵隊長「この感じは、違うな。もっときな臭ぇ」
傭兵槍騎兵「?」

傭兵弓士「隊長っ!! 隊長っ!!」

傭兵隊長「どうしたっ?」
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:25:18.08 ID:L1AOl7sP
傭兵弓士「北部街道に、軍勢ありっ。
 この白夜国首都に向かっていますっ!!」

傭兵隊長「規模、軍装、速度報告っ!」

傭兵弓士「速度は徒歩更新、距離はおそらく5時間っ!
 夕暮れには到着っ! 軍装は歩兵装備と思われる物が
 中心なれど、遠距離のために未確認っ。規模はっ」

傭兵隊長「規模はっ?」

傭兵弓士「見渡す限りっ。最低で数万っ!!」

傭兵隊長「っ!」
傭兵槍騎兵「ど、どうします、隊長っ!?」

傭兵剣士「城門前広場に、残留部隊の結集終了っ!」

傭兵隊長「市民の避難にどれくらい掛かる?」

傭兵槍騎兵「おそらく半日弱は」

傭兵隊長「急がせろ。片刃団の旦那に話しをつけるんだ。
 支給馬車部隊をでっち上げるて難民の中でも傷病者や
 老人どもは有無を云わさず乗っけちまえ。避難を急がせろ!」

傭兵槍騎兵「人間ですよね、その軍勢は。援軍ですか?」

傭兵隊長「敵だ」

傭兵槍騎兵「そんなっ!?」

傭兵隊長「このタイミングで援軍なんてあるもんかっ。
 そんなぬるい話世の中にありゃしねぇ。
 おい、命しらずの馬鹿野郎どもッ!!」

傭兵たち「おうっ」 「はっ!」 「何だよ大将っ!」

傭兵隊長「騎馬で20騎ほど着いてこいっ! 斥候に行くぞ。
 残った連中は市民の避難を最優先させろ!
 城の中の魔族は威嚇射撃で固めておけば問題はねぇっ!!」
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:44:33.93 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍

蒼魔近衛兵「なっ!」

  ガァァァ! グワッシャ! ザシュゥ!
  「なっ! な……なんでっ!」「敵襲っ!」「敵襲っ!!」

蒼魔軍軽騎兵「後方、後方だっ!」
蒼魔軍歩兵団長「いや、左翼だっ!!

蒼魔上級将軍「何が起きたっ!? 報告せよっ!!」
蒼魔近衛兵「敵襲ですっ」

  ザシュゥ! ドシュ! ザシュ! ヒュバッ!
  「敵襲っ!」 「獣人だ、すごい数の獣人がっ」

獣牙双剣兵「獣牙の一族、森狼族見参ッ!!」
獣牙斧兵「同じく、黒猪族っ、蒼魔族に天誅を加える!」
獣牙短槍兵「雪豹が一族の戦士、参戦いたすっ!」

蒼魔上級将軍「何故獣人どもがっ!?」
蒼魔近衛兵「反転っ! 重装歩兵団を反転させよっ!」

蒼魔上級将軍「無能者がっ!」

 どかっ!

蒼魔上級将軍「前方丘陵地帯に脇腹を見せるつもりかっ!?
 軽騎兵団、重騎兵団っ。歩兵の展開余地を確保するのだ!!
 迂回して獣人の一軍を突けっ!!」

蒼魔軍軽騎兵「ははーっ!」
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:47:15.11 ID:L1AOl7sP
獣牙双剣兵「はははっ! そのような物かっ」

ひゅばっ!

獣牙斧兵「騎馬がなにをするものぞっ!!」

ドガァン!

蒼魔上級将軍「何をしているっ!?」
蒼魔近衛兵「敵の数は予想よりも多く、その数五千以上っ」

蒼魔上級将軍「予備兵力を投入せよっ」

蒼魔近衛兵「展開できるだけのスペースがありませんっ。
 そのうえ、獣人の一族はわざわざ湿地帯を選び戦い、
 こちらの騎馬部隊の機動力がいかせませぬっ」

蒼魔軍歩兵団長「獣臭い、土着の民めがっ!」

  ザシュゥ! ドシュ! ザシュ! ヒュバッ!
 「蒼魔族を討てっ!!」 「我ら獣牙の勇士っ!」
 「魔族の正義を天に知らしめよっ!」 「我らが勇気をっ!」

蒼魔上級将軍「歩兵団長っ!!」

蒼魔軍歩兵団長「はっ!!」

蒼魔上級将軍「歩兵団から精鋭を抽出し、橋頭堡を500歩分
 おしあげよっ!! 決死の覚悟で行なうのだ。
 それだけの余裕があれば、現在遊兵となっている
 歩兵部隊を獣人に向けることが出来るっ」

蒼魔軍歩兵団長「承りましたっ!!」
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:48:16.80 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

 わぁぁ! ガキン! ガシャン!
  うわぁぁ!! 進めぇ! 進めぇ! 人間を皆殺しにせよっ!

冬国槍兵士「圧力が上がったっ!?」
冬国弓兵士「なにを、一歩も、退くなっ!!」

 ビュンビュンビュン!!
   ビュンビュンビュン!!

女騎士「違うっ!! これは好機だっ!! 後衛槍兵部隊っ!!」

混成槍兵士「はっ!」

女騎士「今こそ出番だ。前線へと移動!
 中央槍兵は入れ違いに後退っ! 騎馬部隊の退却を助けると共に
 敵の圧力を押し戻せっ! わたしも出るっ」

冬国仕官「そんなっ」

女騎士「南の凍土の勇士達よっ!! 聞けっ!!
 この一戦の持つ意味をっ。その魂にきざめっ。
 故郷を守るために一歩も退くな!
 敵が魔族だからではないっ。
 ここは諸君と諸君の父祖が開拓した故郷だからだっ!

  思い出せっ!! 背丈を超えるほどの大岩を動かし
 ひび割れた手で苗を植えっ、凍り付いた大地に桑を撃ち込み
 そしてこの大地は実りを約束する諸君らが故郷となったのだ!

  眼前を見据えろっ! 敵は魔族ではないっ!!
 やつらは侵略者なのだっ。敵は、侵略をしてくる存在だっ!
 戦えっ!! 故郷を守るためにっ。後1時間だけ持たせろっ!」
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:55:10.09 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、原生林上空からの落下

ヒュゴォォォー!!

勇者「やめろぉ」
蒼魔の刻印王「未だかつてその言葉で
 手をゆるめるような相手がいたのかね?」

ヒュゴォォォー!!

勇者「そいつらは、関係がないって」

蒼魔の刻印王「関係がないだと!? この世界全ては
 やがて我、魔王の物となるのだ。関係のない物など、
 存在しないわっ!」

勇者「逃げろっ! どこの軍勢だか判らないけどっ。
 逃げろおおおおお!!!」

蒼魔の刻印王「構う物か、灼熱の海に沈めっ!
 集えよ焔っ! 煉獄を焼き付くした七つの剣の名にかけて」

キイイイーン!!

勇者「っ!?」
蒼魔の刻印王「なっ! こ、これはっ!!」

キイイイーン!!

勇者「大規模集団法術……っ」
蒼魔の刻印王「身体がっ、じゅ、ばくされるっ」

キイイイーン!!

勇者「……こんな場所で、何でこんな大人数儀式をっ」
蒼魔の刻印王「なぜだっ。何故これほどっ」
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:56:36.51 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、勇者を見上げる街道

宝石飾りの馬車の影「……光を……強めよ」

百合騎士団隊長「はっ! 司祭長! 呪縛するのだっ」

従軍司祭長「司祭よ! 声を合わせて祈りなさい!
 あれなるは魔族の将軍っ、敵の首魁のうち二人。
 構うことはありません、祈りの心を合わせて、
 光の縛鎖を構成するのですっ!」

従軍司祭「「「「はいっ!」」」」

宝石飾りの馬車の影「……」

百合騎士団隊長「250人の高位司祭の祈り、
 どのような魔族とはいえ逃れられるものではないだろう」

従軍司祭長「祈りなさい! 精霊の光を求めて。
 締め付け、絞り上げ、砕け散るほどにっ!!
 あれは敵! 我らが人間族の敵っ!!
 敵の破滅を祈るのです。あの存在は、精霊の敵だっ!!」

宝石飾りの馬車の影「……ふふふっ……好機とは……」
百合騎士団隊長「いかがなさいます?」

従軍司祭長「聖別された月桂樹をふるのです」

従軍司祭「「はいっ!」」

 しゃらん…… しゃらん…… しゃらん……

宝石飾りの馬車の影「……銃に、祈りを、集めよ」
百合騎士団隊長「はっ! マスケット隊っ!!」
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 21:58:35.07 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、原生林上空

キイイイーン!!

勇者「鎧に、ひびがっ……っ」
蒼魔の刻印王「身が、千切れそうだっ……」

勇者「はんっ。ざまぁ、ないっ」
蒼魔の刻印王「下らぬ事をっ。動けぬとは言え、
 貴様を消し炭にすること位できぬと思うているのかっ」

勇者「……っ!」
蒼魔の刻印王「“広域殲滅”……」

勇者「こんなところで広域殲滅呪文使うなっ! 糞野郎っ!」
蒼魔の刻印王「下らぬ静止を。自分が誰の攻撃を受けているのか
 考えても見るのだな。……人間族からも見捨てられたか」

勇者「違うっ! おれは、違うっ!!」


蒼魔の刻印王「違わぬっ! 所詮この世界はっ」

   ゴォォォーン!!

勇者「ガハッ」
蒼魔の刻印王「グフッ」

勇者「なん……だ、これ……」
蒼魔の刻印王「……傷口が、灼ける。……鉄の、玉?」

   ゴォォォーン!!

   ゴォォォーン!!

   ゴォォォーン!!
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 22:03:04.96 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、南部

魔王「気にくわないな」
メイド長「どうしたんですか?」

魔王「いや……。女騎士は、何をするつもりだったんだ」
メイド長「?」

衛門騎士「あの中央丘陵の徹底死守では?」

魔王「なぜ?」
メイド長「……」

東の砦長「ふぅむ。あの姉ちゃんは、あんだけの用兵家だ。
 じり貧なのは見えていただろう。
 こっちの援軍を当てにしていたのか?」

魔王「で、あればいいのだが」

メイド長「まおー様、そんな風に考え事をしていると、
 泥が跳ねて汚れてしまいますよ」
東の砦長「戦場だ。仕方ねぇよ、目くじら立てるなって」

魔王「泥――」

メイド長「?」

魔王「砦長、銀虎公に至急伝令っ!
 西方に向けて退却っ。全速だっ!!」

衛門騎士「我が軍は優勢ですぞっ」

東の砦長「いいや判った。伝令だなっ!!
 急げっ!! 最重要だっ!! 退却を始めるぞっ!!」
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 22:04:26.07 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍

蒼魔近衛兵「将軍っ!! 上級将軍っ!!」

蒼魔上級将軍「どうしたっ!」

蒼魔近衛兵「獣人が撤退してゆきますっ!」

蒼魔上級将軍「なんだとっ? ……奴らは優勢に戦を
 展開していたはず。我が軍の回頭はっ!?」

蒼魔近衛兵「未だ半ばです。騎馬隊の追撃をさせますか?」

蒼魔上級将軍「馬鹿を云うな。この湿地帯でどのような
 事になるかも判らんのかっ。だが好都合だ。
 今のうちの獣人の一族方面に重奏騎兵部隊を配置せよ。
 日が落ちる前に前方の人間の部隊を一網打尽にするぞ!!」

蒼魔近衛兵「はっ!」

蒼魔軍歩兵団長「全軍前進っ!!」

ダカダッダカダッダカダッ

斥候「報告っ! 報告でございますっ!
 将軍、上級将軍っ!! 後方に敵部隊出現っ!」

蒼魔上級将軍「何を慌てているっ」

斥候「後方に聖王国の軍が出現しましたっ。辺境国境地帯を
 通ってきたらしく監視から漏れて、その……」

蒼魔上級将軍「聖王国だと? それは援軍だ。
 ふっ。どうやら待ちきれなかったと見える。
 あの硝石とやらが喉から手が出るほど欲しかったのだな。
 くっくっくっく」
582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 22:05:29.55 ID:L1AOl7sP
蒼魔近衛兵「距離は? 数と装備は?」

斥候「最後尾はほんの30分ほどで接近します。
 数は、無数。最低でも三万」

              ……ウン

蒼魔上級将軍「三万とはなっ。はんっ!
 参謀殿も気が早い。この際、三ヶ国を一気に平らげるおつもりか。
 まぁいい。今は目前の敵に集中せよ!
 どうした!
 獣人の一族の脅威は去った、まだ押しやれぬのかっ!!

  これ以上の時間をかけるようならば、歩兵隊を処罰するぞっ」

              ……ォゥン

斥候騎兵「将軍っ!! 将軍っ! 報告でありますっ!!」

 ズル、グシャ

蒼魔上級将軍「落ち着けっ」

斥候騎兵「後方に聖王国なる軍数万がっ」

蒼魔上級将軍「愚か者っ。そのような報告、すでに聞いたわっ!」

              ……ドォゥン

斥候騎兵「その軍が、未知の武装により我が軍を攻撃っ!!
 我が軍後衛部隊、および輜重防衛部隊は、すでに全滅っ!!」

蒼魔上級将軍「なっ。なん……だと……ッ!!」
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 23:50:40.46 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、街道

宝石飾りの馬車の影「……かの二人、蒼魔の王と、堕ちし者」

百合騎士団隊長「はっ」

宝石飾りの馬車の影「……なんとしても、仕留めよ。
 ……あれは、あのものは……人間を攻撃……できぬ……
 呪い、悪罵を持て、包囲せよ……あざけり、拒絶するのだ
 それだけで……あれは……ちからを、うしなう……
 祈りを込めた……鉛で……
 かの者の……命は……断てる……」

百合騎士団隊長「承りましたっ」

従軍司祭長「大主教さまっ」
従軍司祭「奴らは落ちました! あの高さ、助かるはずもなくっ」

百合騎士団隊長「油断するな! 必ずや死骸を見つけ出せ
 いいや、必ず生きているぞっ! マスケット隊と
 従軍司祭の部隊をもって方位探索の上、殲滅するのだ!」

従軍司祭長「はっ!」

マスケット兵「探索部隊、用意っ!」

宝石飾りの馬車の影「……機会は多くない。かならずや……」

百合騎士団隊長「必ずや見つけ出し、草の根分けても殺すのだ!」
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 23:54:23.70 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、中央部付近

ゴウゥゥン!!

魔王「はぁっ! はぁっ!」メイド長「まおー様っ! まおー様っ!」

ガウゥゥン!!

衛門騎士「何だ、この音はっ」

魔王 ガクガクっ
メイド長「まおー様。しっかりしてくださいっ」

東の砦将「大丈夫かよ。真っ青だぜ」

魔王「――な、なぜだ。
 何故ここにあれがあるっ。な、なんでっ」

ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

メイド長「まおー様っ」
魔王「誰が、何故っ。――こ、これほどの量をっ」

東の砦将「何か知っているのか、魔王様ようっ!」

魔王「だ、だめだっ! 女騎士が死ぬっ。
 あ、あれは蒼魔族などよりもずっと恐ろしいものだっ。
 女騎士がっ!! このままでは、それはいやだっ!」

メイド長「まおー様っ」

パシンッ!!
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 23:55:11.58 ID:L1AOl7sP
ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!

メイド長「しゃんとしてくださいっ!」

魔王「あ……」

メイド長「こんなところで足をすくませて死ぬおつもりですかっ!」

ゴウゥゥン!! ゴォォン!

衛門騎士「近いっ! 東、尾根っ!」

東の砦将「来やがった、逃げるぞ!!」
魔王「……くっ」
メイド長「こちらへっ」

衛門騎士「切り開きます。続いてくださいっ!!」

東の砦将「どこにこれだけの歩兵がっ。なんだあの杖はっ!?」
魔王「銃……。マスケットだ」

衛門騎士「ぐっ!」

ゴウゥゥン!! ゴォォン!

  「ぎゃぁっ!」 「手がぁっ!」 「見えない、真っ暗だっ」
  「何だ、何が起きたんだっ!!」 「うわぁぁっ!」

東の砦将「ちきしょうっ。なんて数だ!
 こいつらなんだってんだ!!」

メイド長「っ!」
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 23:57:31.04 ID:L1AOl7sP
衛門騎士「こっちにも歩兵がっ」

東の砦将「騎兵はいないのか、こいつらっ」

魔王「東はダメだっ」

東の砦将「そんな事言ったって、その西がっ」

ガサガサッ! ジャブジャブッ

光のマスケット兵「ひっ! い、いたぞっ!!」
光のマスケット兵「死ねっ!! 異端めぇ!」
光のマスケット兵「我ら信徒以外の南部の民は皆異端だっ!!」
光のマスケット兵「ば、化け物と一緒にっ。っ! 死ね魔女!!」

ゴウゥゥン!! ゴォォン!
   ゴウゥゥン!! ゴォォン!

魔王「~っ!」
メイド長 ぎゅぅっ!

 ザシュ! ザパァッ!!

光のマスケット兵「ガハァァッ!!」

銀虎公「遅くなったな、魔王殿っ!」

魔王「銀虎公っ!!」
東の砦将「無事だったか!!」

メイド長「こんなに血を流しているではありませんかっ」

銀虎公「なんのこの銀虎公っ。三度魔王殿の命を
 守るまでは死なぬと約束したっ!
 いま、わが獣牙の者が西への活路を切り開いている。
 蒼魔はまだしも、あの奇妙な筒は得体が知れぬ。
 我が手の者もかなりの数やられた」

魔王「っ!」ぎゅぅっ

東の砦将「一刻も早く退却すべきだ。行こうっ!!」
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:37:51.23 ID:1eGbtUQP
――白夜の国近郊、原生林

ドグワシャーン!!

執事「っ!!」
勇者「な、んで爺さんっ」

蒼魔の刻印王「ゴボワッ!! グブゥッ」

執事「ふふふっ」
勇者「爺さんっ! 爺さんっ!! 何やってんだよっ」

執事「なかなか格好良い登場だったでしょ。にょほ……ほ」
勇者「穴だらけじゃねぇかよっ!!
 何で俺かばってんだよ!
 あんた年寄りじゃねぇか!
 最近風邪の治り遅いとか愚痴言ってたじゃねぇかっ!!」

執事「風通しがよい紳士でございます」
勇者「馬鹿云ってんじゃねぇよっ!! “治癒呪”っ」

執事「向こう側が見えるシースルー。なんちゃって。
 げぶっ、ごぼっ。……かはっ!!」

勇者「な、なんで。なんでこんなとこ……っ」ぼたぼた

執事「蒼魔族を探っていまして。……けふっ。
 昔取った杵柄、無音潜入術でございます……。
 戦の気配で、勇者の元へと……」

勇者「なんでだよぅ、なんで呪文が発動しないんだよっ」」

執事「……勇者こそ、血を流しすぎです。けふっ。
 こんなにぼろぼろではないですか」
 大丈夫、これしきでは死にません。
 それより、早く、トドメを。そやつは、大きな障害」

蒼魔の刻印王「げぶうっ。ごはっ。げふっ……に、んげん、めぇ」

勇者「そんなこたぁどうでも良いんだよっ!!」
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:39:13.15 ID:1eGbtUQP
執事「にょほ……。そやつを暗殺する……機会を
 狙っていましたが……とうとう、得られず……」

蒼魔の刻印王「このようなところで……、
 終わってたま……る……か……っ」

ガサッガサガサ

勇者「っ!」
執事「このような……時にっ……」

ガサッガサガサ

傭兵隊長「睨むなよ。あんたの戦いは地面から見てた。
 おい、とりあえず、酒ぶっかけて、包帯を巻け」

傭兵槍騎兵「はっ」

執事「……すみませぬ」
勇者「ぐっ。誰だ、お前っ」

傭兵隊長「爺さんももちろんだが
 あんたも限界みたいだな。こっちの魔族も虫の息だ。
 仲間割れなのか、魔族も?」

執事「こちらの方は魔族ではありません」
勇者「大差はねぇよ」

傭兵隊長「……」

執事「……」じぃっ

傭兵隊長「おい爺さん、助けて欲しいか?」
執事「ぜひっ。この方だけでもっ」
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:40:28.95 ID:1eGbtUQP
ガサッガサガサ

傭兵弓兵「隊長。さっきの変な筒を持った奴らと重武装兵士が
 散開して森の探索に入っています。
 どうも連中、中央の教会と貴族らしいですね」

傭兵隊長「はん。おい、勇者さんとやら」

勇者「くっ! こんな傷ぐらいでっ。げふっ」
執事「勇者、いけませんっ。私が参ります」

勇者「何だよ、爺さん。俺より重傷のくせにっ!!」

執事「そう言うことを言ってるのではありません。
 勇者。あなたは……あの弾丸を受けてはいけませんっ。
 あの悪意も、祈りも、受けてはいけません」

勇者「何云ってるんだか判らねぇよっ」

執事「人間を敵に回してはいけませんよ。
 わたしが行きますから、勇者は逃げてください。
 ……にょほ、ほほっ」

勇者「ぜんぜんっ判らないぞ、爺っ!」

傭兵隊長「おい、兄ちゃん」
勇者「黙ってろっ!」

傭兵隊長「うるせぇっ! こっちだって命がけなんだ、
 すぐ答えろっ! おめぇよ、誰かを助けて“ありがとう”って
 云って貰ったこと、あんのかよっ!」
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:41:44.96 ID:1eGbtUQP
勇者「あるよ。どうだって良いだろ、そんなのっ」

傭兵隊長「何回だよっ」
勇者「んなの覚えちゃいねぇよ。いっぱいだよ」

傭兵隊長「そっか。ちっ。羨ましく……は、ねぇか。
 1回こっきりだって、俺は負けちゃ、いねぇ」

傭兵槍騎兵「隊長……」

傭兵隊長「爺さん、こっちは良いんだな?」
執事「もちろん」

傭兵隊長「ふんっ。悪いな、こっちも余裕はねぇんだ」

蒼魔の刻印王「に、んげん、めぇ。許さぬ、許さぬぞぉ
 このわたしに手を挙げるとは……身の程をっ」

傭兵隊長「戦場のことだ。許しておけ」

ザシュ

傭兵隊長「おい、若造、ちっけーの。
 この爺さんと兄ちゃんを馬に乗せろっ」

傭兵槍騎兵「急げっ」

執事「ぐっ。げぶっ!」
勇者「何するんだよっ」

傭兵隊長「黙ってろっ! お前らみてぇに
 身体中から噴水みたいに血をビュービューだしてる
 連中見るとしらけるんだよっ!」

傭兵達「あはははは」「ちげぇねぇ」「まったくだ!」
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:43:14.85 ID:1eGbtUQP
傭兵隊長「おい、若造。ちびすけ。お前らはここで帰宅組だ。
 二人を無事に届けろっ。
 この指輪を持っていけ! コイツラは多分必要な人間だ。
 氷の宮殿の貴族子弟の旦那に届けるんだっ。
 こいつは重要な任務だぜ。ただのヒヨッコには任せねぇ」

若造・ちび助「はい、隊長っ!」

執事「……くふっ」くたっ

勇者「馬鹿云うな、俺はまだいけるっ!
 勝手なこと云うなよっ! おれは、まだまだっ。ぎぃっ!!」

傭兵隊長「わかんねぇ兄ちゃんだな。
 おめぇが頑張りすぎると
 そこの爺さんが道連れで死んじまうんだよ。
 そこの爺さんがかばったのは、おめぇの身体じゃなくて
 魂なんだよっ! 分かれよ、この馬鹿ちんがっ!!」

勇者「っ!」

傭兵隊長「よーし、おまえら! 騎乗だ!
 これからあの貴族連中に突っ込んでかき回すぞ!
 陽気な歌を歌え!
 野郎どもっ! おれたちゃ、未来の騎士様だぜっ!」

傭兵達「よっしゃぁ」 「ばっか野郎! 大将は白夜の王だ!」

傭兵隊長「あーっはっはっは!
 ちげぇねぇや! お前らが騎士なら
 俺は王様にしてもらわなきゃな!
 さぁ、いくぞ! 馬鹿野郎ども!!」
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:44:32.64 ID:1eGbtUQP
勇者「ちょっとまてよっ!!」

ダカダッ

勇者「おい、馬を止めろっ。死ぬぞっ、あいつ死んじまうぞっ」
若造「生意気を云ってはダメだ」

勇者「ぐふっ……。っくぅ」

若造「ぼろぼろだ。生きているだけでおかしい」
ちび助「それに」

ダカダッ

ちび助「隊長の命令は絶対だ。じゃなきゃ、みんなが死ぬ」

勇者「俺が助ける役なんだぞっ。なんでだよっ。
 なんでだよっ。なんでなんだよっ!!」

若造「……」

ちび助「隊長は、勇者だ。ヒーローなんだぞ?
 俺を助けてくれた。沢山の孤児もだ。
 あの街で、小さな女の子に“ありがとう”って云われたんだ。
 お前みたいな得体の知れないちんぴらに
 心配されるほどおちぶれちゃいない」

若造「そうだ。一人前の男は。立派な男は。
 自分の死に場所は自分で選べる。
 一人前の男は、自分一人の勇者なんだぞ」

勇者「なんでこんなに……っ。ごふっ、ごふっ……」
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/29(火) 00:47:30.30 ID:1eGbtUQP
――青い光がくるぶしを洗う砂浜

ゴウゥゥン!! ゴォォン!

ぎゃぁっ!
手がぁっ!
異端だ! 異端は死ねっ!
ちきしょうっ! ちきしょうっ!
消してくれぇ! 焼けるぅ、俺の足がぁ!
誰か、手を貸してくれっ! 大木にはさまれてっ

ゴォォン! ザシュゥッ!

見えない、真っ暗だっ。助けて……
お前達はみんな精霊の敵だっ!
人間の分際でっ! ここから消えろっ!!
光の精霊よっ! お慈悲をっ!!
何だ、何が起きたんだっ!!
うわぁぁっ!

ドゴォォン!! ゴォォン!!

女魔法使い「……」

メイド姉「……判りました」

女魔法使い「……」

メイド姉「判りましたっ」ぼたぼたっ



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