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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」8-3


318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/27(日) 23:29:21.46 ID:34eUyEEP
貴族子弟「ああ、いたって正気さ。
 どうにも我が学院は、正気になれば正気になるほど
 周囲から見て狂気に見えるという忌まわしい伝統が
 あるようなのだよ。困ったもんだ。
 軍人子弟しかり、メイド姉君しかり。
 そもそも師からして正気とは言い難い。
 陰陽としか言えない胸のサイズだ。
 きわめて正気なのに。悲しいことだなぁ」

傭兵隊長「……」

貴族子弟「隊長は知っていると思うけれど、
 今あそこを支配している魔族は近々、
 隣国である鉄の国に攻め込むはずなんだよ。
 どれくらいの兵力で攻め込むかは判らないけれど
 殆ど全軍を率いて出発すると僕の兄弟弟子は見ている。
 すると、白夜国には殆ど兵力は残らないはずだ。

  君ほどの統率力があれば、周辺に散在している
 幾つかの武装集団もまとめることが出来るだろう?

  ……翡翠の国の辺境戦争と警備軍のことは聞いている」

傭兵隊長「貴様、どこでそれを……っ」
貴族子弟「貴族の社交界というのは思ったより広いんだよ」

傭兵隊長「……っ」

貴族子弟「だが、貴方ほどの指導力があれば
 この周辺の武装集団を組織化することも出来るだろう?
 主力の出はらった白夜の国を開放することも不可能とは云えない」
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/27(日) 23:30:34.68 ID:34eUyEEP
傭兵隊長「報酬は何だ?」
貴族子弟「おい、少年」

器用な少年「なんだってんだよっ!?」
貴族子弟「荷物を降ろして良いぞ」

傭兵槍騎兵「なんだ? 金ごと持ってきてるのか?
 奪って欲しいとしか思えねぇ、馬鹿か、お前」

器用な少年「判ったよ、降ろすっ」

傭兵槍騎兵「開けますぜ隊長? ……なんだこりゃ」
器用な少年「これは……。なんだ」

メイド妹「ベーコンとジャガイモの、ホワイトクリームパイだよ」

傭兵隊長「なんでこんなもん……」

貴族子弟「食べろ」

傭兵隊長「何言ってるんだ、お前!?」

貴族子弟「良いから、黙って食え。それでなくても
 開いたらどんどん冷めて行くんだ。早いところ食え」

傭兵槍騎兵「隊長……。良い匂いですが。毒ってことも」
メイド妹「ちがうもんっ! わたしはそんなモノ作らないもんっ」

傭兵隊長「一個よこせ」
傭兵槍騎兵「でも」

傭兵隊長「良いからよこせ。……ふん。むっしゃ、むっしゃ」

傭兵槍騎兵「じゃ、おれも……」

傭兵弓士「お、おいらも」おずおず
傭兵剣士「俺も腹が減ってるんだ」
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/27(日) 23:32:38.25 ID:34eUyEEP
傭兵隊長「……美味ぇな」ぽつり

メイド妹「うん! 頑張って美味しく作ったよっ!」

傭兵隊長「ああ、美味い。たいしたもんだ。
 嬢ちゃんなのか? すげぇな。美味いよ。
 ちっせぇのに。
 ああ、なんだろう、こいつは。
 なんだか応えるほどに――美味いなぁ」

貴族子弟「どうだ、すごいだろう?」
器用な少年「なんでこの兄ちゃんが威張るんだ」

貴族子弟「白夜国を救うと、こう言うのがずっと食えるようになる」

傭兵隊長「は?」

貴族子弟「ずっと食えるようになる」こくり
傭兵隊長「何言ってるんだ?」

貴族子弟「解放軍として、仕官しないか?
 冬の国でも良いし、再興するなら白夜でも良い。
 自分たちを地獄から救ってくれた英雄だ。
 民は感謝するぞ。

  “ありがとう”って云うぞ。
 そういうふうにならないか? ただの野盗になるつもりなら
 何で馬具の手入れを欠かさない? 何故武具を磨く?

  君たちは、野盗じゃない。傭兵団だ。
 しかも、いずれ故郷にたどり着く、希望を持った傭兵団だ」

傭兵隊長「本気なのか? 俺は戦場であんたらの所の
 女将軍と追っかけ合ったこともあるんだぜ?」
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/27(日) 23:34:43.94 ID:34eUyEEP
貴族子弟「この僕が責任を持とう。
 僕は氷の国の氷雪女王の特使として、
 また三ヶ国通商同盟の全権委任大使として
 あなたに依頼する。

  当面の費用は氷の国が責任を持つ。
 この森の中で自分の納得行く規模の師団を編制して
 白夜の国辺境に潜伏。機を見て、その民を解放してくれ。
 魔族を撃退してくれとは頼まない。
 出来る限りの民を救い出してくれるだけで良い」

メイド妹「お願いしますっ」

傭兵隊長「……」
傭兵槍騎兵「隊長……」
傭兵弓士「お頭……」

貴族子弟「……」

傭兵隊長「もう一個貰っても良いかな」

メイド妹「うんっ。これはね、豚の脂身を入れてから
 焼くんだよっ。熱いと、何倍も美味しいんだよっ」

傭兵隊長「へぇ。むっしゃ、むっしゃ。
 へっ。美味ぇや。たいしたもんだよ。ああっ、たいしたもんだ。
 はん。――いいだろうっ!!」

貴族子弟 にこり

傭兵隊長「こんなに美味ぇ前金受け取ったら働くっきゃねぇだろ!
 おい、お前ら! 付近の頭だった連中に渡りをつけろっ!
 俺たちの戦が始まるぞっ。どうせどっかでのたれ死ぬのが
 傭兵の運命だ。死ぬ前に1回、その“ありがとう”とか
 いうやつを拝んでやろうじゃねぇか!」
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:20:17.56 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

斥候「来ましたっ!」

女騎士「構成は?」

斥候「中央に歩兵。我が軍に照らせば軽装ですが、
 巨大な木製の盾を保持している模様っ」

冬国仕官「弓矢対策か」

斥候「さらに左右に軽騎兵および重装騎兵。
 厚みのある陣容です。
 前方突出部分だけで一万を超えている模様」

冬国軽騎兵「いち……まん……」

女騎士「ひるむなっ! よしんば敵が二万いようと
 こちらも7000はいるのだ! 一人三人の敵を倒せば済むっ」

冬国軽騎兵「はっ!」

女騎士「距離はどの程度だ」

斥候「尾根を下りきった地点。おそらく正午頃には会敵しますっ」

冬国仕官「指揮官は……」

女騎士「おそらく蒼魔の将軍だろう。
 刻印の王が出てきたら全軍撤退だ。武器も放り出して逃げろ」

冬国仕官「……了解」
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:22:15.85 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、尾根道を下った周縁地域

蒼魔上級将軍「陣形を整えよ。ここを後詰めとするぞ」

蒼魔近衛兵「はっ! 方陣形っ!」

ザッザッザッ!!

蒼魔軍歩兵「15番隊まで、整列完了しましたっ!」
蒼魔軍軽騎兵「軽騎兵完了」
蒼魔軍弓兵「弓兵、配置よしっ」

蒼魔上級将軍「さて、敵はどうだ?」

斥候部隊「報告位置より動いてはおりません。
 中央部丘陵地帯に前衛陣地を置き、待ち受ける構え」

蒼魔上級将軍「どうやらあの部分が
 最も足場がしっかりしていて、
 敵の騎兵も使いやすいのであろうな」

蒼魔近衛兵「しかし、それはこちらも同じこと」

蒼魔上級将軍「それゆえ、あそこにたどり着く前に
 弓矢でこちらの戦力を出来る限り減らすのが
 きゃつらの作戦だろう」

蒼魔軍歩兵隊長「だが予想済みでございます。
 矢よけの大盾を装備すれば、接近前の矢など何ほどのこともなく。
 人間などの思うとおりにはさせませぬ」

蒼魔上級将軍「いいや。ここはその心根を砕くとしよう。
 だれぞあるっ!! 督戦隊をよべっ!!」

ばさっ!

蒼魔督戦隊長「ここにっ!」がばっ

蒼魔上級将軍「そのほうに先鋒を申しつける!
 中央の丘陵地帯への突破口を開き、
 我が蒼魔族の騎馬部隊を導き入れよっ!!」
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:24:16.72 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

冬国軽騎兵「霧が出てきたな」
冬国槍兵士「ああ……」

冬国弓兵士「蒼魔族接近っ! 目視できますっ!」

女騎士「まだだっ。まだ撃つなっ。引きつけるぞっ!」
冬国仕官「全軍射撃準備っ」

冬国弓兵士 すっ

女騎士「……」
冬国仕官「まだか」

冬国槍兵士「有効射程の外ですが、こちらでも目視確認っ」

冬国弓兵士「思ったよりも大盾の装備は少ない様子。
 臨時の装備だったようですね。
 これならばこちらの弓矢でも効果は十分だ」

女騎士「……っ。まさか」ぎりぎりっ

冬国弓兵士「距離よしっ。姫将軍、号令をっ!!」

女騎士「……っ」

冬国弓兵士「接近します、どうか号令をっ」

女騎士「……構わんっ。撃てぇぇっ!!!」

びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅん!
   びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅんびゅんっ!
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:26:28.46 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部、接近中の蒼魔軍先鋒

奴隷歩兵「ぎゃぁぁぁ!!」

蒼魔督戦隊「進め! 進めっ!」

奴隷歩兵「ダメだっ! 弓矢が壁みたいにっ!」

蒼魔督戦隊「貴様らは敗北者の兵だろう! 奴隷なのだ!」

奴隷歩兵「俺たちは人間だっ。人間に剣を向けるなんてっ」

蒼魔督戦隊「はんっ! この間まで鉄の国と白夜国は
 戦争をしていたと云うじゃないか! どの口がほざくっ!
 さぁ、立て! 立って戦えっ!」

奴隷歩兵「いやだぁ! 俺は死にたくないんだぁ」

蒼魔督戦隊「では死ね」

ドスッ!

奴隷歩兵「あ、ああっー!?」

蒼魔督戦隊「貴様らの背中はこの督戦隊が
 狙っていることを忘れるなっ!
 怖じけずいて逃亡しようとした奴らは、
 この督戦隊がすぐさま射殺してくれるっ!」

奴隷歩兵「な、なんで。なんでこんなっ!」

蒼魔督戦隊「槍を拾え! 突っ込め! あの丘を奪うのだっ!」
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:33:10.13 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所

ぶるるるっ

軍人子弟「馬に藁を咬ませるでござる。静かに」
鉄国歩兵「はっ」

軍人子弟「……」

              わぁぁ キン、キン

鉄国少尉「開戦したようですね」
鉄国歩兵「……」ぎゅっ

軍人子弟「拙者達の役目はこちらでござるよ。
 心配でござるが、我が師ならきっと持ちこたえるでござる」
鉄国少尉「はい」

軍人子弟「あと3時間も持ちこたえれば、
 きっと勝機が来るでござる。それまでは……」

鉄国少尉「そうですね。わが護民卿の策です」

軍人子弟「はははっ。女騎士殿の考えでござるよ」
鉄国少尉「でも、殆ど同じコトを考えていましたね」

軍人子弟「我が師でござるからね」
鉄国少尉「俺……あー、わたしも。きっと護民卿に
 師事して、その力を学ばせて貰いたいと考えています、ハイ」

軍人子弟「助けて貰っているでござるよ」

鉄国少尉「いえいえ、そんな」

斥候「将軍っ」
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 00:34:39.59 ID:L1AOl7sP
軍人子弟「何でござるか」

斥候「後方から未確認の部隊接近」

軍人子弟「後方っ!? どうやって」

斥候「いや、大陸街道やら森の中からです。
 しかし、魔族じゃありません。人間です」

軍人子弟「援軍でござるか? この時期に現われそうな
 援軍は思いつかないでござるが……」

鉄国少尉「とりあえず伝令を出して所属を確かめませんと」

軍人子弟「そうでござるな。工兵の防御のためにも、
 我が隊はここを離れるわけには行かないでござる。
 斥候、済まないが、その部隊に確認を――」

     ドゥゥゥーーン!!!

鉄国少尉「っ!?」
鉄国歩兵「な、なんだ……」

  ドゥゥゥーーン!!!

軍人子弟「これは……」

鉄国歩兵「将軍っ! 将軍っ!!」
軍人子弟「落ち着くでござるっ!」

鉄国歩兵「我が軍の後方部隊、および開拓兵が
 謎の軍と接触! 攻撃を受けていますっ!
 謎の軍は轟音を発する射撃武器にて我が軍を蹂躙っ!!」

軍人子弟「なっ!?」
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:47:08.54 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、王宮、大広間

勇者「よっしゃ。いくか」

妖精女王「ええ、いつでも」ごくり

羽妖精侍女「チョット怖イ」

勇者「任せとけ。いざとなっても逃げるところまでは保証する。
 それにさ、人間だっていつでも剣を振り回している
 奴らばかりじゃないよ」

妖精女王「しっかりなさい。わたし達は魔王様に任されて
 ここにいるんですよ。期待に応えないと」

羽妖精侍女「ハイ……」

勇者「おっし。行くぜ」

ガチャリ

勇者「冬寂王。それにお二方。お待たせ」

鉄腕王「おお。勇者どの。どうした、こんな早朝に」
冬寂王「何か変事でも?」
氷雪の女王「まだ明け方は冷えるでしょう?
 さぁ、暖炉のそばにいらっしゃいませ」

勇者「えー。コホン。本日は遠来からの客人を同道しててな。
 それで紹介しなきゃならないと思って。――うん、来たんだ」

妖精女王「初めまして」
羽妖精侍女「初メマシテ」ペコリ
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:49:25.10 ID:L1AOl7sP
鉄腕王 ゴシゴシ
冬寂王「……」
氷雪の女王「え?」

勇者「えーっと。あっちは右から、鉄腕王。鉄の国の王様だ。
 いまお邪魔しているこの宮殿と国の主。
 蒼魔族と戦争の真っ最中の当事者だ。

  中央にいるのが冬寂王。冬の国の王だ。
 一応このあたりをとりまとめる
 三ヶ国通商の盟主と云うことになっている。

  左にいる女性は氷の国の女王だ。
 氷の国は吟遊詩人のふるさととも云われている。
 鉄の国と冬の国にはさまれた小国だが外交や文化は進んでいるな」

妖精女王「はい」
鉄腕王「え?」

勇者「で、こちらは。こほん。
 魔界において、魔族大会議、忽鄰塔を構成する
 九つの氏族のうちひとつ、
 森に住む者、
 夜明けと黄昏のはかなき者たち、
 妖精族の長、妖精女王だ。おつきの侍女は羽妖精」

妖精女王「ご紹介預かりました、妖精女王と申します」
羽妖精侍女 ぺこり

冬寂王「……」

勇者「と、まぁ、魔界の中でも有力者なんだが、
 今回はそういう意味で尋ねて来た訳じゃない。
 彼女は忽鄰塔、つまり魔界の最高会議だな。
 そこの代表者、特使としてきている。
 会議だけではなく、この使者は魔王の意志でもある」
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:49:58.38 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「勇者殿、これはいったいどういう冗談」
冬寂王「冗談では、無かろう」

勇者「うん、さっぱり本気」

妖精女王「……」ぎゅっ

鉄腕王「魔族……」
氷雪の女王 がくがく

冬寂王「妖精女王よ。
 よくぞ遠いところはるばるいらっしゃった。
 まずは暖炉の側へどうぞ。
 我らの間には深い溝があるが
 炎を分かち合えないほどではないだろう」

鉄腕王「何を言うのだっ」

冬寂王「彼女は魔界での身分からすれば王族に当たる。
 たとえ、敵対する国家であっても王族には王族の扱いがある。
 そして、彼女は物見遊山に来たわけではない。
 見ろ。あのひ弱そうな侍女以外誰一人として連れていない。
 彼女は我らの信を得るために、わざわざ丸腰で来たのだ」

氷雪の女王「しかし……」

冬寂王「それに勇者が連れてきたのだ。彼を信ぜよ」

鉄腕王「それは確かに、そうだな。
 ふんっ。鉄腕王ともあろう者が
 女に怯えて話も聞けないとあっては末代までの笑いものだ」

勇者「何とか聞いてもらえるみたいでほっとしたよ」

妖精女王「ありがとうございます」
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:52:43.55 ID:L1AOl7sP
メラメラ、パチパチッ

冬寂王「聞こう」

妖精女王「沢山のお話があります。
 まず、わたし達九氏族、いて……。
 いまやまたもや八氏族となってしまいましたが、
 わたし達は、人間世界の通行許可を求めています。
 ……現実にはこのようなギリギリになってしまいましたが、
 人間世界を旅するに当たって承諾を求めています」

鉄腕王「また人間の領土に攻め込もうってのか?」
冬寂王「……」

勇者「いや、まぁ。最初っから話さなきゃ判らないだろう」

冬寂王「それをいうならば、何故勇者が魔族を伴って
 現われたのだ? 勇者は魔族と通じているのか?」

勇者「そのほうが正しいと思えば誰とでも話すさ」

氷雪の女王「それは異端ですよっ」
冬寂王「氷雪の女王。それを言うならば、
 我らは皆すでに全員が異端なのだ」

氷雪の女王「……そうでした。しかし」

勇者「事の始まりは……そうだな。
 どこまでも過去にはさかのぼれるけれど、
 今回のことの始まりは魔王の長きにわたる怪我の療養。
 そして忽鄰塔だった」

鉄腕王「くりるたい?」

妖精女王「ええ。忽鄰塔は魔族の大会議。
 魔王様によって招集された、魔族の大きな氏族八つが出席し、
 そのほかにも無数の氏族が集う最高の意志決定の場です」
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:57:14.10 ID:L1AOl7sP
妖精女王「魔界は基本的には魔王の名と統治の元に動いていますが、
 実際には多くの領民を抱える氏族の発言力が強く、
 各氏族が覇を競って相争うような状態が
 100年以上続いてきました。

  しかし、魔界は未曾有の緊張、
 つまり人間界からの侵攻を受けていたために
 魔族同士の戦乱はこの15年の間は沈静化していたのです」

鉄腕王「侵攻? そちらから戦争を仕掛けてきたのに」

妖精女王「いいえ、ゲートの封印を解除し戦闘を
 仕掛けてきたのはそちらです」

冬寂王「やはり……」
氷雪の女王「ええ」

鉄腕王「なんだ? どういうことだ?」

冬寂王「いや。以前から疑問には思っていたのだ。
 なぜ、教会が派遣したただの調査隊があれほどの
 武装をしていたのか?
 その調査隊が『聖鍵遠征軍』と呼ばれていたのか」

氷雪の女王「……」

妖精女王「今回は、その件について
 話をしに来たわけではありません。
 魔界は人間界との交戦状態に入った。
 魔族は結束して……とは云えませんが、
 各々が力を尽くして戦いました。
 結果はご存じの通りでしょうが、我ら魔界は人間界の版図から
 極光島を奪うことに成功しました。
 しかし、その代わりに、我らが聖地である開門都市を
 失うことになったのです」
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 17:58:49.31 ID:L1AOl7sP
メラメラ、パチパチッ

妖精女王「戦線は膠着したかに見えましたが、
 その実は違いました。人間は戦略を変えたようでした。
 勇者と名乗る少数の戦士集団の名前が魔界のあちこちで
 囁かれるようになりました。
 勇者達は魔界の様々な軍事拠点や古代の神殿を巡り
 強力な魔法の武具を集めては、
 我ら魔族の軍を撃破してゆきました。

  彼らはあまりにも少人数で、それゆえに捕捉が難しく
 魔族はいつも後手後手に回らざるを得ませんでした。

  本来個体の能力では人間に勝っていると自負していた魔族は
 次第に勇者という名前に畏怖と戦慄を覚えるようになって
 ゆきました……。
 そしてある時とうとう、勇者は魔王様と一騎打ちとなり
 両者は負傷、姿を消した。
 ……その噂が魔界へと広まりました」

鉄腕王 ごくり

勇者「――」

妖精女王「魔王様は死んではいない。それはすぐに判りました。
 なぜならば、人間の方々には説明しても
 判ってもらえないかとも思うのですが、
 魔界にとって魔王様は不滅の存在なのです。
 もし魔王様が倒れればすぐにでも次期魔王選出が始まるはずです。
 それが始まらない以上、魔王様は死んで射るはずがない。

  しかし、現在の魔王様には一つの憶測というが
 良くない評判がありました。それは戦闘が不得手で虚弱だ、
 と云うことです。
 もちろん魔王様は溢れる知謀で我らを導いてくれています。
 わたし個人はいまの魔王様を歴代のどなたよりも
 深く尊敬いたしていますが、当時はそのような評判もあり
 氏族の長からは軽んじられていたと云うことは否定できません。

  ですから“魔王は深い傷手を負って治療をしている”
 噂は事実だったわけですがその期間は思いのほか長く続きました」
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:33:59.66 ID:L1AOl7sP
氷雪の女王「そして一時の静寂が訪れたのですね?」

妖精女王「ええ、そうです。それから3年がたちました。
 その間に人間界は、その版図である極光島を取り戻し
 わたしたち魔族は開門都市を回復しましたが、
 それ以外の部分ではおおむね静寂が続きました。
 勇者による各地の魔族被害も途絶えました。

  もちろん人間界との戦争が終結したわけではありませんが
 魔王様の指示を欠いたわたし達は決定的な団結を得られず
 人間界への反抗作戦を立ち上げることが出来ませんでした。

  誤解して欲しくないのは、魔界の全てがこの戦争に
 賛成というわけでもないと云うことです」

冬寂王「と、おっしゃると?」

妖精女王「魔界は、人間界のように一人の神を崇めると
 云うことがありません。
 様々な氏族に、様々な教えもあり、様々な文化があります。

  わたしを見てどう思われますか? この羽を。
 蒼魔族とは似ていないでしょう?

  これだけ姿形が違うと共通の文化や意識は持ちにくいのです。
 魔界は氏族という集団に分かれて暮らす、
 無数の魔族によって構成された世界です。

  当然、氏族ごとに様々な意見があり、
 戦争に対してもそれは同様でした」
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:35:16.96 ID:L1AOl7sP
妖精女王「もっとも、三年前のあの時期は、
 魔族の中でもいくつもの神々の聖地とされた開門都市が
 人間に奪われたことに不満を持たない魔族は少なかったでしょう。
 それはいまも残っています。
 多くの魔族は人間に反感を持っています。

  そんな三年が過ぎ、魔王様は復活を宣言されました。
 そして忽鄰塔を招集なさったのです」

冬寂王(……爺の報告とも符合するか)

鉄腕王「そうだったのか」

妖精女王「会議の話題は当然、人間との戦争をどのように
 展開するか、になるはずでした。
 少なくとも多くの魔族はそう考えていました。

  しかし、中にはわたし達妖精族のように、戦争をしたくない。
 そう考える者たちも少なくはありませんでした。
 なぜならば、わたし達のような弱い氏族にとって
 戦争とは常に巨大な災厄でしかなかったからです。

  我ら八大氏族の長と魔王様は長い話し合いを行いました。
 魔王様の意志は、どうやら停戦のようでした」

鉄腕王「停戦っ!? それは本当なのかっ!?」

冬寂王「……」

妖精女王「しかし、魔族の中でも有力な幾つかの氏族の意志は、
 徹底抗戦でした。人間に対する反感もあったでしょうし、
 人間界に溢れる領土や、魔界では取れぬ財宝を目当てにする
 欲望もあったでしょう。十分に力のある魔族の目にとって
 人間界は熟れた果実のように写っていたのです」
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:38:11.42 ID:L1AOl7sP
妖精女王「会議は長い間続きました。
 長い長い間、おおよそ一月にもわたって続きました。
 魔王様の説得が功を奏し、忽鄰塔全体が停戦で合意を
 しようとした時に事件は起こりました。

  蒼魔族が陰謀を巡らし、魔王様を攻撃したのです。
 その陰謀のせいで、八大氏族は真っ二つに割れ、
 人間との戦争は愚か魔族同士でも戦う戦乱の世が
 再来しようかとも思われました。

 しかし、幾人かの勇気と知恵溢れる長の活躍により
 最悪の事態は回避されました。ですが結果として
 蒼魔族は忽鄰塔、ひいては全魔界氏族の輪を離れ、
 たった1氏族のみで独自の道を行く選択をしたのです。

  蒼魔族は確かに戦闘に長けていて、
 魔界でも有数の有力氏族ですが、獣人、竜族、鬼呼族などの
 他の有力部族の連合軍を打破するほどの力はありません。

  わたし達は蒼魔族に降伏と、忽鄰塔復帰を求めました。
 蒼魔族はもはや自領土内に籠もって、自らの過ちを認めるか
 全滅を覚悟しての戦を行なうかしかないのではないかと
 魔界の氏族達は思っていました。

  ですが」

冬寂王「蒼魔族は活路を人間界に求めた?」

妖精女王「その通りです。
 蒼魔族は突如電撃の早さで人間の世界に侵攻し、
 白夜と呼ばれる国を征服したと聞きます」
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:40:12.51 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「結局は、とばっちりってことか。気に食わんっ」

妖精女王「鉄腕王、銅の腕を持つ戦士殿のいうとおりです。
 眼前の事態は我ら魔族の内輪もめの迷惑を人間界にかけた
 形です、この件において、我ら魔界の者はその責を
 負っていることを認めます」

鉄腕王「まったくだ」

氷雪の女王「いいえ、それはちがうでしょう。
 逆に言えばそのような展開になったのは、
 勇者が魔王を負傷させて長い間魔界の統治を不十分な
 ままにさせたせいとも云えるでしょう」

鉄腕王「だがそれは魔族が人間界を攻めたせいで」

冬寂王「後先の話をするのならば、我らが先の可能性もあるのだ」

氷雪の女王 こくり

妖精女王「我ら忽鄰塔の八大氏族は」

氷雪の女王「おまちください。
 蒼魔族は忽鄰塔を脱退したのでしょう? では七氏族では?」

勇者「あー」

妖精女王「はい。話の本筋には関係ないかと思い省きましたが。
 魔王様を蒼魔族の陰謀から救うに当たり重要な役割を
 果たしたもう一つの新しい氏族が、
 忽鄰塔大会議に加わったのです。

  その名も衛門族。人間が率いる魔界唯一の氏族です」

鉄腕王「人間が率いるっ!?」
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:42:38.68 ID:L1AOl7sP
勇者「それについては、俺が説明すべきなんだろうな。
 冬寂王。開門都市にはさ、ほら2万からの
 遠征軍駐留部隊がいただろう?」

冬寂王「そうだな」

勇者「それが、極光島の時にぴぃぴぃ逃げてきたじゃん?」

冬寂王「ああ。裏切りだとか、魔族の大反抗が開始されたとか。
 それで部下の多くを失い、民間人も全滅し、
 戦略価値が無くなったとかで極光島へと救援に
 駆けつけたのだろう? 何の意味もなかったが」

勇者「やっぱり、どうも情報がずたずたになってるんだよなぁ」

冬寂王「しかし、その後の諜報で、開門都市が人間の住む
 都市となっているのは知っている」

勇者「正確には、自治政府の治める自由都市だ」

氷雪の女王「それは人間世界で云うところの自由都市と
 似たようなものですか?」

勇者「うん、同じだ。領主じゃなく、自治委員会が
 治めているところだけが違うけれどな。
 まぁ、開門都市が開放された事件で、駐留軍団は人間界に
 撤退したわけだけど、その時民間人は全て置き去りにされたんだ。
 そういった殆どの民間人は死んでないよ。
 それは事故なんかで数人は死んだかも知れないけれど、
 1万人以上の人間商人や、個人商店の持ち主が残っている。
 開門都市は、人間と魔族が入り交じって暮らす街となって
 生まれ変わったんだ。

  そして、その都市の自治委員会は、
 自分たちを魔界の氏族であると宣言した」
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:52:30.89 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「氏族? 氏族ってのは生まれが一緒の
 一族じゃなかったのか?」

勇者「多くの場合そうだが、
 そうじゃなきゃならないと云う法律はないらしいんだ。
 だから連中は強引に宣言して、忽鄰塔に殴り込んだ。
 俺たちは戦争には反対だ、ってね。

  ――それが一つの切っ掛けになって、
 会議全体はいまで停戦の意志に傾いている。
 もちろん人間に対する疑いや反感は根強い。
 停戦なんて実現できるのかどうか疑問視しているのも事実だ。

  だが、戦争は失うものが大きく、もし開始したら
 どちらかの世界が、もしくは両方の世界が破壊寸前まで
 疲弊するだろうという認識は、一致した」

鉄腕王「破壊か……」
冬寂王「うむ」

妖精女王「わたしは忽鄰塔、
 新生八氏族および魔王の意志の代弁者としてこちらに伺いました。
 もちろん人間世界が一枚岩で無いことは判っております。
 魔界にしてからが、蒼魔族の暴走を
 食い止められなかったわけですから……。

  まず、第一に我らは蒼魔族を討ち取るべきだと考えます。
 蒼魔族の暴走を許したのはわたし達の責任。
 魔界の軍を蒼魔族の元へと向ける許可を頂きたい。

  さらには、わたし達は、三ヶ国通商との停戦を求めます。
 本当は人間世界全てとの停戦を求めているのですが
 一部であっても、一つづつ解決するのが大事だと考えています」

羽妖精侍女 ぱたぱた
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/28(月) 18:54:05.40 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「……」
冬寂王「どう考える?」
氷雪の女王「そう、ですね……」

妖精女王「……」
羽妖精侍女「……ウー」

鉄腕王「魔族の軍を侵入させるとして数は?」

妖精女王「約一万です」

鉄腕王「いまの話が全て嘘で、蒼魔族に増援を送り、
 人間の世界侵略を進める謀略ではないという証拠は?」

氷雪の女王「その可能性は否定できませんね」

妖精女王「大空洞から進み、この国の国境付近に
 我が妖精族の乙女、千人をまたせております」

羽妖精侍女「ハイ……」

鉄腕王「乙女?」

妖精女王「魔界の軍が撤収するまで、
 それら乙女と共にわたしがこの城で人質になると云うことで
 信じてはいただけないでしょうか?」

鉄腕王「……」

冬寂王「謀略の有無は判らないが、この三年間の経緯や
 魔界での勢力関係などは、冬の国の調査隊が送ってきた報告と
 どれも符合する。その部分までは信じても良かろう」
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 18:56:14.27 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「勇者殿」

勇者「ん?」

鉄腕王「勇者殿はどういうおつもりで、お引き合わせなのか?」

勇者「こっちにはつもりも思惑もあるけれど、
 いまはそれよりも、損得の話をすべきかと思うが?」

鉄腕王「……むぅ」
冬寂王「そうですな。勇者殿は何も南部諸王国の臣下ではない」
氷雪の女王 こくり

勇者「あー。誤解してそうだから言っておく」

冬寂王「は?」

勇者「俺は人間世界の守護者でもない。
 俺は勇者――“救いを求める世界全てを救う者”だ」

羽妖精侍女「……」ぎゅぅっ

鉄腕王「我らの味方ではない、と」
勇者「敵味方なんて話しはしていない」

冬寂王「我らが望めば、我らも救ってくださると?」
勇者「この力の及ぶ限り」

氷雪の女王「では、この報せが……」

勇者「そう。この邂逅がいま現在、南部諸王国の救いだと信じる」
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:31:54.65 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

女騎士「ひるむな! 目をそらすなっ! 撃てぇっ!」
冬国仕官「ぅ、撃てぇ!!」

冬国槍兵士「し、しかしっ!」
冬国弓兵士「相手は白夜国のっ!」

女騎士「躊躇うなっ! 全ての責はわたしが負うっ!
 彼らを見よっ! まっすぐに見よっ!
 彼らは武器を持って立ち向かって来る兵士なのだっ。
 彼らは兵士だっ。奴隷などではないっ。
 彼らを背中からの矢傷で死なせるなっ。

  もし諸君らが傷つき、後悔と痛苦に苛まれるならば
 その夜はわたしが諸君らに責められよう。
 虐殺の汚名があるのならばわたしが受けようっ。
 ――いまは考えるなっ。持ちこたえよっ!」

冬国仕官「我らが後方には20万人の三ヶ国開拓民が
 いるのだっ! 一歩退けば崩れるぞっ!」

冬国槍兵士「おお……。おおっ!!」
冬国弓兵士「う、撃てぇ!!」

びゅんびゅん! びゅんびゅん!
   びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅんびゅんっ!

女騎士「右翼騎兵騎乗っ!」
冬国仕官「はっ!」

騎兵団隊長「準備よしっ!」

女騎士「一撃離脱! 三連攻撃準備っ。行けっ!!」
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:34:08.97 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍

蒼魔上級将軍「ふむ。崩れないな」

蒼魔近衛兵「敵も良く持たせておりますようで」

蒼魔上級将軍「だがこちらの犠牲者はほぼ全て奴隷。
 どこまでその意志が続くか見物だと云えような。
 ……歩兵大隊!!」

蒼魔軍歩兵団長「はっ!」

蒼魔上級将軍「督戦隊に代わって奴隷どものケツを炙れ。
 侵攻ラインを後方から押し上げよ。
 人間族の奴隷を盾として、中央丘陵地帯に橋頭堡を築くのだ!」

蒼魔軍歩兵団長「はっ! 重装歩兵団っ!」

 うぉぉーっ!
ザガチャ!!
  ザガチャ!!

蒼魔軍歩兵団長「進軍開始! 頸鎧をあげよ!
 五列縦隊三条をもって中央部に突撃っ!

 ザジャ、ザジャ、ザジャッ!

蒼魔上級将軍「軽騎兵!」

蒼魔軍軽騎兵隊長「はっ!」

蒼魔上級将軍「歩兵団の突撃を右翼より側面支援せよ!
 被害を増やすな。戦列の押し上げは歩兵に任せて、
 後方攪乱を狙え!」

蒼魔軍軽騎兵隊長「御命、了解っ!!」バッ
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:35:57.72 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

女騎士「くっ! 第三弓隊、100歩後退っ! 槍中隊後退支援!」

冬国仕官「矢の補充を急げっ!」

 わぁぁ! ガキン! ガシャン!
 「蒼魔の力を見せよっ!」 「刻印王のためにっ!」

冬国槍兵士「なんて圧力だっ!」
冬国槍兵士「姫将軍のためにっ!!」

女騎士「この程度でひるむ南の勇士ではないぞっ!」
冬国仕官「奮い立て!!」

冬国槍兵士「おおーっ!!」

兵士達「我らが姫将軍のためにっ!!」
  兵士達「我が故郷たる大地のためにっ!!」

冬国槍兵士「早く下がれっ! 補給をして戦列に戻るんだ」
冬国弓兵士「判った、任せたぞっ」

 わぁぁ! ガキン! ガシャン!
 「押せぇ! 押せぇ!」 「奴隷は下がっていろ! 長剣兵!」

女騎士「いまだっ!! 騎兵突撃っ!!」

冬国騎士「「「「オオオオーッ!!」」」」

 ダカダッ! ダカダッ! ダカダッ!
  ガキィィーンッ!!

女騎士「敵の重装歩兵の脇腹を突け! 混乱させよっ!!」
487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:44:54.80 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所

鉄国少尉「何が起きたっ!?」
鉄国歩兵「相手は、相手は人間ですっ! おそらく……」

軍人子弟「騎馬隊騎乗っ!」

 ザザッ!!

軍人子弟「少尉っ!!」

鉄国少尉「はっ」

軍人子弟「当部隊歩兵全ての指揮権を委譲する。
 この場所を死守せよっ! 砲声からして敵は少数っ。
 拙者が後背を守るでござるよ」

鉄国少尉「はっ。……ほ、砲声?」

軍人子弟「いまは良い。おのれの任務を果たすでござるっ!」

鉄国少尉「しかしっ! この待機場所には騎兵は
 100しかは位置されていませんっ!
 それでは護民卿の守りがっ!」

軍人子弟「数の問題ではござらぬ」にこっ

  ドゥゥゥーーン!!!

軍人子弟「騎馬隊、我に続けっ! 後方の敵を討つっ!!」

鉄国少尉「護民卿っ! 護民卿っ!!」

軍人子弟(マスケットが何故っ!?
 あれは紅の師が鉄の国の工房に試作を依頼し、
 その後の異端騒動でとうとう実用化へとは
 至らなかったはずでござる……。
 まさか、まさかっ、鉄の国の者がっ!?)
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:45:52.49 ID:L1AOl7sP
ダカダッ、ダカダッ、

軍人子弟「騎馬隊隊長っ! こちらの数はっ!? 続いているかっ」
騎馬隊隊長「全騎続いておりますっ。数100っ!」

鉄国騎馬隊「はいやっ!」「せやっ!」

ダカダッ、ダカダッ、

軍人子弟「聞けっ! 敵はおそらくマスケット部隊っ!
 石弓に似た鉄製の武器でござる。当たれば鎧は意味を持たぬ。
 防御を考えていては後れを取るっ! しかし射程は短く
 1回発射を行なえば数分は再発射が出来ぬと思って良い」

騎馬隊隊長「はっ!!」

ダカダッ、ダカダッ、

軍人子弟「我らはその部隊の側面より奇襲、
 中央部で乱戦することにより友軍を救うでござるっ!
 敵方に槍兵の準備があった場合は、
 高速でスレ違いざまに攻撃を加えよっ! 事は一刻を争うっ」

騎馬隊隊長「はっ!」
鉄国騎馬隊「了解っ」「承知っ!!」

軍人子弟「現在森林部では鉄の国の工兵達が作業中でござる。
 彼らは兵とは云っても名ばかりの開拓民のあつまり。
 わずかばかりの土地と自由を求め、
 長い旅に耐え抜いた我らが同胞っ。
 決して見捨てるわけにはいかないでござるっ。

 また、湿地帯中央で戦っている我が軍の総指揮官
 女騎士殿も我らが工作を当てにしておられるっ。

  身命を賭して、強行突撃を行なうでござるっ!!」

鉄国騎馬隊「「「我ら鉄国の衛士っ。この命大地のためにっ」」」
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:56:34.26 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、王宮、大広間

勇者「なぁ」

鉄腕王「……」
氷雪の女王「……」

勇者「おれは、魔界の中心に突っ込んでいった暗殺者だったよ。
 魔王を殺せば、その側近を殺せば、魔界の強いやつを殺せば。
 それで平和になるってな。そんな事を考えていたよ。
 戦うことの意味も考えず
 平和の意味さえ考えずに、ただがむしゃらに
 その実無責任に、ただ暴力を振るっていたよ。

  でもな、もう、そういうのはやめた。
 そういうので新しい世界へいけるだなんて夢はもう見ない」

妖精女王「黒騎士殿……」
羽妖精侍女「黒騎士……来タ……ッ!!」

勇者「ああ。判っている。
 ――どうやら俺の出番みたいだなっ」

ズズズズズ!

妖精女王「どうかご武運を」
鉄腕王「な、なんだ!?」

ゴゴゴゴゴ!

冬寂王「何だ、この振動はっ!?」

勇者「俺は俺の役目を果たしに行く。
 冬寂王、鉄腕王、冬の国の女王っ。あなた方に頼むっ。
 そしてあなた方に続く幾多の王と、その民草に
 間違った道を指し示さないでくれっ。
 ……俺は、俺だって丘の向こうが見たいんだ」

しゅわんっ!!
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/28(月) 19:59:57.69 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、王宮、上空40里

ヒュバァァーッ!

勇者「来たなっ」
蒼魔の刻印王「それはこちらの台詞だ」

勇者「……」ぎりっ
蒼魔の刻印王「この間のわたしだとは思わぬ事だ。
 瞑想により我が魔力は格段の鍛錬を経ている」

勇者「だろうな」
蒼魔の刻印王「ふっ」

勇者「何がおかしい?」

蒼魔の刻印王「哀れなものだ。以前の“勇者”で
 あれば今よりも遙かに強かったであろうに」

勇者「……」
蒼魔の刻印王「――“落葉火炎術”」

ヒュバンッ!!

勇者「なっ! おい、つっけぇっ!! “氷結天蓋呪っ!”」
蒼魔の刻印王「はっ。防御が隙だらけだっ!」

ドゴォーンッ!!

勇者「ぐはぁぁっ!!」

蒼魔の刻印王「これで判っただろう?」



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