7-5


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」7-5


720 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13:51:01.37 ID:W1zfwn6P
――葦の国、沼船

~♪ ~~♪

奏楽子弟「~♪ ……♪」

農夫「ほーい! 云い音色じゃね、楽士のお嬢さん!」
農夫の娘「お姉ちゃん、ほーうい、ほーうい!」

奏楽子弟「船ですかー? 渡してくれませんか~?」

農夫「どこまでいきなさるんねー?
 おいら達は、これから都まで大麦と酪を売りに行くんだがよぉ」

農夫の娘「お姉ちゃんも一緒に行く?」

奏楽子弟「ええ、お願いできるなら!」

農夫「ええですよ、乗りなせぇ」

奏楽子弟「ありがとうございますっ」

農夫「さぁ、その藁に腰を下ろしていいですけの」
農夫の娘「ねぇねぇ! お姉ちゃんは、どこの人?」

奏楽子弟「随分遠くから来たのよ」
農夫「おんや、まぁ。それは葦笛じゃねですか」

奏楽子弟「ええ。昨日教わったのです。
 この国で人気のある楽器だと」
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13:51:58.85 ID:W1zfwn6P
農夫「人気があるかどうかはわからねけど、
 葦ばっかりの国だで、どこの村でも、
 葦笛名人の一人くらいはいるすなぁ」
農夫の娘「わたしも吹けるよ!」

奏楽子弟「一緒に吹こうか?」
農夫の娘「うんっ!!」

~♪ ~~♪

奏楽子弟「~♪ ……♪」

~♪ ~~♪

農夫の娘「~♪ ……♪」

農夫「おーや、上手だねぇ」

農夫の娘「楽しいね、お姉ちゃん」
奏楽子弟「そうだねー。上手いね、びっくり!」にこっ

~♪ ~~♪

農夫「ほーぅい、ほうい!」

牛馬車の農民「よーお! 都に行くのかぁ?」

農夫「そうだでよぉ」
農夫の娘「いってくるよー!」

牛馬車の農民「麦の値段を調べてきてくれよぉ!」

農夫「わかったよぉ!」
722 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13:52:54.61 ID:W1zfwn6P
~~♪

~♪ ~~♪

農夫の娘「……すぅ」

ぱしゃん。ぱちゃん

農夫「おーや、寝ちまったみたいだな」

奏楽子弟「そうみたいですね」

農夫「最近はどこも大変だでな」
農夫の娘「……くぅ」

奏楽子弟「大変、ですか」

農夫「ああ。食うや食わずだから」
奏楽子弟「……」

農夫「楽師さんは、大丈夫だでか? ちゃぁんと稼げているかい?」

奏楽子弟「ええ、まぁ……」

農夫「楽師さんも楽ではねぇな。
 まぁ、飢えちゃ音楽に金を払う人なんかいないだろうけどな。
 それはしかたあるめぇよ」

奏楽子弟「そうですね。でも、まだまだ歩けますから」

農夫「楽師さんの音楽は、なんだか元気が出るものな。
 元気を出す音楽のために
 腹が減っててもにこにこしてるんだろうな。
 私らにも、それは判るさ。ははっ!」
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13:55:23.61 ID:W1zfwn6P
奏楽子弟 きゅるるー

農夫「ほら、黒パン食うべ」
奏楽子弟「いえ、そんな訳には」

農夫「大丈夫、半分こするだよ。
 それにおいら達は貧乏で
 その綺麗な曲のお礼にお金も払えないだしな」

奏楽子弟「とんでもない!
 こうして船に乗せてくれたじゃないですか」

農夫「はははっ! まぁ、明日には都に着く。
 それまでは、もう何曲か聞かせてくれると嬉しいだでよ」

奏楽子弟「ええ、もちろん。どんな曲が宜しいですか?」

農夫「宜しいですか、なんて云われっちまうと
 なんだかこそばゆいなぁ! でも、おいらたちは
 そんなに沢山の曲を知っている訳じゃないんだよ。
 祭りの曲と、生まれ祝いの曲、年越祭の曲。
 そんなもんだ」

奏楽子弟「じゃぁ、わたしの故郷の曲を弾きましょうか?」

ゴソゴソ

農夫「おんや、それは?」

奏楽子弟「竜頭琴ですよ。ちょっと珍しいでしょう?」
農夫「ああ、旅が楽しくなるような曲がいいだよ」

奏楽子弟「ええ、楽しい曲を弾きましょう。
 これはわたしの大事な友達が、随分笑い転げた
 歌がついているんですよ」
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 14:38:11.51 ID:W1zfwn6P
――ごきげん殺人事件6 カップル斬りつけて開き直り殺人事件

「ごきげん剣士ななこっ!」
「ごきげん賢者すいかっ!」
 二人の声が唱和する。甘く勇ましい少女の声と、声変わりを
迎えてはいないボーイソプラノの少年のハーモニーは夜の大気
を切り裂いて、闇の使徒を迎撃するのだ。

「わたしたちっ!」「ぼくたちっ!」
 くるりと回って武器を構える二人。

「開示相手には情け無用の残虐ファイター!
 ノリと勢いで征伐執行!  わがままいっぱい甘えんぼうっ!
 その名もっ“ごきげん殺人事件”っ!! 執行完了170秒前っ!」

「ふざけるなっ! 子供の遊びじゃないんだぞっ!」
 固い装甲鎧を身につけた怪人は、恐れることもひるむこともなく
二人組の魔法戦士に叫びかえす。

「おじさんこそ、いい年して全身タイツに密着鎧なんて変態じゃ
ないんですかー? いやん。ななこ変質者に虐められるー」
 全くの棒読みの台詞は、11歳なりの洗練を秘めた罵倒として
傷つきやすいアリ怪人の精神をさいなんだ。
 おろおろと動転する内股の少年が「ななこちゃん、大人の人に
そう言うこと言ったらダメだよ?」と諭すのさえも無性に腹立た
しくてならない。

 そもそもこの装甲は鎧は金属ではなくアリをもした生体装甲な
のだ。密着していない方が不都合ではないか。
 彼は激しい苛立ちと共に蟻酸を拭きかける。異様な飛距離を
見せた強酸性の溶液は、素早く飛んで避けた二人が立っていた足
下を溶かす。

「なっ、なにをするんですかぁ」
「く、口から変な汁だしたぁっ!? ひゃぁ」
 生意気なことを云ってばかりいるななこだが、その突然の攻撃
に足下が妖しくなり、いつもは気にならないはずのチェックのミ
ニスカートが絡みついて、倒れ込んでしまう。
 ちゅん。
「な、なっ。ななこちゃんっ」
 子いぬのような瞳を持つ相棒の少年がアップで迫ったかと思う
と、胸を締め付けるような甘いうずきと共に激しい恥ずかしさが
わき上がってくるのだ。
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 14:44:14.26 ID:W1zfwn6P
――冬越しの村、魔王の屋敷、居間

ぺらっ

魔王「……」
勇者「……」

 めらめら、ぱちぱち

魔王「くっ。……ここで急激にドキドキ展開なのかっ」
勇者「まじで!?」

魔王「うむ、これは危険だ。シリーズ6作になって
 このようなご褒美シーンがあるとは」
勇者「……ほほう」

魔王「しかしこれは理不尽ではないかっ!」

ばたむっ!

勇者「どうしたんだよ、魔王」

魔王「わたしは作者に断固抗議したい!!
 この主人公は、11歳なのだぞっ!?
 11際と云えばメイド妹よりも一つ下ではないかっ!!」

勇者「うん、そうだっけ? そのくらいかな」

魔王「それなのに、こんな嬉し恥ずかしい
 ドキドキシーンがあるとは!
 偶然とは言え、その、唇と、くちび……。
 ええーい! 断固抗議だ」

勇者「?」
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 14:45:10.06 ID:W1zfwn6P
魔王「世界には遙かに年齢的に成熟した
 二人が他にも溢れるほど存在するというのに
 なぜこのような子供達が
 うっかり偶然そんな幸運を得るのかと」

勇者「落ち着けよ」

魔王「……わたしは冷静だ」
勇者「そうかなぁ」

 めらめら、ぱちぱち

魔王「勇者」
勇者「ん?」

魔王「本を置け」
勇者「わかった」 ぽすん

魔王「……おっほん」
勇者「?」

魔王「機嫌はどうだ?」
勇者「普通だぞ」

魔王「そ、そうか」じりっじりっ
勇者「どうしたんだ?」

魔王「なんでもない。半分開けてくれ」
勇者「ずれるけどさ」ずり

魔王 とさっ
勇者「?」
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 14:46:12.24 ID:W1zfwn6P
魔王 ぺとっ
勇者「どした?」

魔王「なんでもない」
勇者「そうか?」

魔王「勇者。わたしの耳に触ってくれ」
勇者「ん?」むきゅ

魔王「んっ」ひくんっ
勇者「……うう」どきどき

(魔王殿は口を濁されておられましたが、
 やはり不安でありましょう)

魔王「……ふぅ」

勇者「えっと、魔王。さ」

魔王「ん?」
勇者「女騎士のことだけどさ。誓い受けちゃってさ」

魔王「くどい。それはもう良い」
勇者「う、うん。でも、魔王の耳は……かっ。かわいいからな?」

魔王「何を言っているんだっ。話が繋がっていないではないかっ」

勇者(……失敗した。何で俺はこうダメダメなんだ。
 爺さん、やっぱり『ぱふぱふ道』じゃ
 女の心はゲットできないのかもしれないんだぜ)

魔王「む」
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 14:47:55.48 ID:W1zfwn6P
勇者「機嫌を直してくれ、魔王」
魔王「機嫌など最初から曲げてはいない」
勇者「そうかなぁ……」

魔王「もう一度耳に触れるのだ」
勇者「うん……」

魔王「んぅ」ひくんっ
勇者「うー」

魔王「もう一回」
勇者 なでなで

魔王 くたぁ

勇者「えっと、魔王?」
魔王「……んぅ?」

勇者「眠そう」
魔王「眠いわけではない」

勇者「そっか……。あのだな」

コンコンッ

メイド長「まおー様~。カスタードシューが出来たそうですよ」

バッ魔王「そうか! あれは美味いな。頂こうっ」
勇者「ううー」

メイド長「勇者様、どうかなさったので?」
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 16:27:34.36 ID:W1zfwn6P
――葦の国、その都、市場の外れ

~♪ ~~♪

奏楽子弟「~~♪
 春の喜ばしい気配が近づいてくる。
 春が勝利し、厳しい冬は逃げ去った♪
 春の精霊が麗しくやってきて、
 森の小鳥たちは祝いさえずる♪」

街の市民「素晴らしい!」

奏楽子弟「~~♪
 恵みの太陽は笑いを与え、花々は咲き誇る。
 麦の香り運ぶ西風は甘美な吐息もて芳香を放ち、
 人間は愛のため、この恋歌のもと駆け回る♪
 森の兎が歌い、小夜啼鳥が甘く囀る。
 花々は咲き乱れ、森には生命溢れ、
 喜び満ちた乙女らの輪舞の輪が広がる♪」

女性市民「なんて演奏家なのかしら!」

農夫「はいなぁ! 大麦を半袋でございますね!」
農夫の娘「ありがとうございましたぁ!」

街の市民「俺も貰おう、にんじんを一袋だ」
農夫の娘「はいっ!」

奏楽子弟「ありがとうございます!」

女性市民「いえいえ、久しぶりよ、
 こんな楽しくて綺麗な曲を聴いたのは!」
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 16:30:15.50 ID:W1zfwn6P
裕福そうな市民「まったくだ、どこぞの宮廷にでも登れば
 高い身分も与えられるかも知れないのに」

奏楽子弟「いえいえ、わたしはこうやって
 街角で演奏しているのが一番好きなんですよ」

街の市民「また来てね、待っているわ」

農夫の娘「ありがとうございました~♪」

――。

奏楽子弟「ふぅ、忙しかったですね」
農夫「いやはや、とんでもない。なんてお礼を言えばいいのか!」
農夫の娘「一杯売れたよ、いつもよりも高く売れたの!」

奏楽子弟「よかったね」にこっ
農夫「ありがとうございます。これは少ねぇけど」

奏楽子弟「いいのいいのっ! あ、いやいいんですっ。
 美味しいパンをわけて貰ったから!」

農夫「しかし……」
農夫の娘「お姉ちゃん。じゃぁ、パンあげるね」

奏楽子弟「ありがとうねっ! またねっ!」

農夫の娘「また葦笛吹こうね!」 ぶんぶんっ

奏楽子弟「またあえたら一緒に吹こうね~♪」
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 16:57:52.10 ID:W1zfwn6P
――開門都市、『同盟』の新商館、大執務室

青年商人「お役目、ご苦労様でした」

辣腕会計「お疲れ様でした。……冷えた紅壬茶ですよ」

火竜公女「ありがたい」

青年商人「どうでした? 会議のほうは」

火竜公女「流石に一回で決定というわけにはまりませぬが
 かなり良い手応えかと感じました」

青年商人「通りそうですか?」
火竜公女「おそらくは」

青年商人「この計画が通らないと、通商や他の諸々も
 なかなか通りませんからね。まずは道路、そして潅漑、水利」

辣腕会計「今回は随分と迂遠ですけどね」

火竜公女「この地下世界には、商売のための機構がなさ過ぎるゆえ」

青年商人「何より、余剰貨幣がなさ過ぎるのが問題です」
辣腕会計「ですね」

火竜公女「余剰貨幣?」
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 16:58:59.46 ID:W1zfwn6P
青年商人「理屈は簡単です。
 例えば、塩を二つ持っている人がいる。
 さらに肉を二つ持っている人がいる。
 塩と肉を一つずつ交換し合えば、二人は同じように
 塩と肉を一つずつ持っていることになる。
 これを食べて暮らせばいいわけですね。

  この物々交換を行っている限り、貨幣は必要ありません。
 地下世界では貨幣も用いられていますが、砂金での取引や
 物々交換も盛んです。特に大規模な商取引は氏族の長や
 指導者が中に立っての物々交換が多い。

  余剰貨幣が生まれにくい構造なのです」

火竜公女「そうでありますな」

青年商人「しかし、我ら商人からすると、
 もっと貨幣が出回り、様々な物資を貨幣で
 売り買いできた方が商売の幅が広がる。
 新しい仕事も作りやすくなる」

火竜公女「それは地上でも見てきましたゆえ。
 金銭や貨幣は確かに弊害も多くみえまする。
 しかし貨幣を用いた仕事は、行動が早い。
 政治や氏族間の付き合いに流されやすい民の流れに比べて、
 金銭は情が絡まず“流れやすい”性質があるように思えまする。
 行き来が自在で、分割できる方が、時として安全で強力な
 味方となりうると」

青年商人「言葉はわからずとも中身は判っているようですね」

辣腕会計「……ふむ」

青年商人「そこで、債を興す」
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:00:56.71 ID:W1zfwn6P
火竜公女「今回の企画かや?」

青年商人「今回のは特別に色々と工夫を凝らしましたが
 債とは、ある種の借金のための仕組みです。
 “後で一定の金銭を返すので、これだけの金銭を欲しい”
 そういう取り決めの、書面化ですね」

火竜公女「それが余剰貨幣を生み出すのかや」

青年商人「単純な例で考えてみましょう。
 “金貨100枚をかえすので、金貨100枚を貸してくれ”
 この債券を作ったとします。この債券が無事に買われると
 わたしの手元には金貨100枚がやってきますね?
 そして相手の手元には“将来金貨100枚になる紙”が
 あることになる。
 ほら、合計で金貨が200枚分の価値に増えたでしょう?
 擬似的に貨幣が増えたことになる」

火竜公女「それはそれで、詐欺のような理屈に思えまする。
 そもそも一定の期間のあとに、その金貨100枚は
 かえさなければならない、つまり消えるが理屈。
 それを“増えた”とはおかしくありませぬか?」

青年商人「それはそれでもっともですが、
 公女だって前回の小麦買い占めを見たでしょう?
 大きな資金が手元にあれば、それだけ商売のチャンスは広がる。
 我らはこの金貨100枚を、返すまでに150枚に増やせばよい。
 そうすれば、元での費用は無しで金貨50枚の儲けです。
 資金無しではそうはいかないでしょう?」

火竜公女「それはそうでありますが」
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:02:28.15 ID:W1zfwn6P
青年商人「これが本来の金貸しの機能です。
 金貸しは、相手の信用を運用できる資金に変換しているんですよ。
 この魔界ではまだ銀行という形ので組織は
 成立しないようです。
 魔王殿にも一旦の再考を求められましたしね。

  そこで今回は、ちょっと迂回した方法で
 開門都市にも参加して貰って、資金集めをしたわけです」

火竜公女「……」

青年商人「そう睨まないでください。
 この件はこの都市にも魔族にも魔界にも一切の損害は
 もたらすつもりはありませんよ。
 そもそも、これは勝ち負けではないですからね。
 『同盟』が儲ければ、誰かが損をするというような
 種類の活動ではないのですから」

火竜公女「ここは信用しておきまする」

青年商人「有り難き幸せ」くすっ

火竜公女「商人殿は、開門都市と衛門一族、さらには
 竜一族が長である火竜大公、その娘の妾の立場を利用して
 その信用を資金に変えた。
 そのように理解しましたが、いかがか?」

青年商人「……さて」

火竜公女「商人殿は云いましたね。
 “財貨としての金と、道具としての金はまったく違う。
 後者を美しく思う人間こそ商人を名乗れる”と」
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:04:40.03 ID:W1zfwn6P
青年商人「ええ、云いました」

火竜公女「では、妾の信用をもって得た財貨で
 どれほどのことを成し遂げてくれるか、
 とくと見させていきましょう。
 それくらいは許されるのでしょう?
 妾は信用の貸し主ですゆえ」にこっ

青年商人「仰せ、誠にごもっとも」

火竜公女「楽しみにしていまする」
青年商人「やれやれ」

辣腕会計「はははっ。委員もたじたじですな」

火竜公女「妾だって負けっ放しでは、火竜一族の名折れですゆえ」

青年商人「さて、では事業の計画でも仕上げますか。……だれか」

辣腕会計「ああ、わたしが用意してきましょう。
 紙にペンにインクに、壺いっぱいの濃いお茶。
 資料は公女の集めていらしたもので良いのでしたね?
 この時間では職員も帰り支度でしょうし、
 わたしの方が早く集められる」

青年商人「そうですか? たのみます」
辣腕会計「お任せあれ」

とっとっとっ、バタン

火竜公女「……」
青年商人「ふぅ」

火竜公女「商人殿」
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:06:56.93 ID:W1zfwn6P
青年商人「はい?」

火竜公女「……」
青年商人「どうしました?」

火竜公女「――もし妾が恐ろしい敵に捉えられ、
 このままでは明日の朝日も浴びれぬ、となったらいかがいたす?」

青年商人「見捨てます」
火竜公女「……」

青年商人「というのは冗談ですが。……助ける見返りは何です?」
火竜公女「見返り抜きで」

青年商人「……それは新手の難問ですか?」
火竜公女「やもしれぬ」

青年商人「……」
火竜公女「……」

青年商人「“見返り抜き”という見返りでお助けしましょう」

火竜公女「え?」きょとん

青年商人「商人は報酬無しでは動きません」
火竜公女「……」

青年商人「しかし、あなたは機転が利くし、理解も早い。
 何より冷静だし公平だ。取引相手としては不足がない」

火竜公女「それは……、一生?」

青年商人「云ったでしょう? 商人の戦いに終わりはないんです」
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:36:42.39 ID:W1zfwn6P
――湖の国、湖の畔の国境の森、小さな街の宿屋

ザァァァァアア!

奏楽子弟「すごい雨ね……。
 下じゃぁこんな天気見たことがない。
 にわか雨に、季節の雨くらいなのに。
 それに、こちらは春なのに随分寒かったりするのね……」

カキカキ……

奏楽子弟「ん。こんなもん、かな。
 随分メモもたまっちゃったな。
 ――『聖骸』についての噂も随分聞いたけれど、
 やっぱり詳しいことは判らないか……。
 うーん、知り合いが一人もいないって云うのは結構大変だなぁ。
 どうしたものかしらねぇ」

ザァァァァアア!

奏楽子弟(……路銀はまだあるけど、節約しないと。
 うーん。湖の国って云うことだし、
 首都の方を回ってみるべきなのかな。
 人が多いと、多少お金も稼げるみたいだし。
 場合によってはどこかの大きな酒場で一ヶ月くらい
 雇って貰うのも悪くないかも。
 その方がうわさ話も集めやすいかな……)

こんこんっ

奏楽子弟「はい?」

宿屋の店主「申し訳ねぇこってす、お客さん」
奏楽子弟「どうしたんですか?」
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:38:31.77 ID:W1zfwn6P
宿屋の店主「この大雨で、どうも渡しの船が
 流されちまったみたいで。
 昼過ぎに出たお客さん達が戻ってきたんですよ。
 それで部屋が足りなくなっちまって。
 良かったら相部屋をお願いしても良いですかね?」

奏楽子弟「相部屋?」

宿屋の店主「ええ、相手は女の人ですから。
 男連中は男連中で別の相部屋にしますからね。
 どうかお願いしますよ。
 みんな足止めを喰らってしまってるんで。
 宿代の方は勉強させて貰いますから」

奏楽子弟「もちろんいいですよ」にこっ
メイド姉「すみません」

奏楽子弟「いえいえ、お互い様ですものね。
 ずぶ濡れじゃない。早く着替えないと」

メイド姉「ええ、じゃぁ、失礼して」

宿屋の店主「んじゃ、小僧に言いつけて
 湯と毛布を届けさせますからね。
 お客さん、相部屋ありがとうございました」

奏楽子弟「はーい」
メイド姉「よくして下さって、ありがとうございます」

奏楽子弟「拭くものはあるの? えーっと」
メイド姉「メイド姉です。はじめまして。
 ええ、ちゃんとあります。着替えてしまいますね」

奏楽子弟「わたしは奏楽子弟。
 見ての通りの旅の吟遊詩人。というか、旅人ね。よろしくね」
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:39:43.26 ID:W1zfwn6P
ザァァァァアア!

奏楽子弟「すごい雨ね」
メイド姉「ですね……。えっと、お茶を飲みます?」

奏楽子弟「え? うん。あれば有り難いけれど」
メイド姉「では入れますね」

奏楽子弟「でも、ここなにもないよ?」
メイド姉「お茶とカップくらいはあります。真鍮ですけれどね」

奏楽子弟「わ。本当だ。……すごいね。
 お嬢様風なのに、旅慣れているって云うか」

メイド姉「お嬢様だなんてとんでもない。
 南の果ての農家の娘ですよ」

とぽとぽ……

奏楽子弟「ふぅん。……温かい」
メイド姉「お湯がもらえて良かったです」にこっ

奏楽子弟「ああ、あたし。堅焼きクッキーあるよ」
メイド姉「いいんですか?」
奏楽子弟「うん、半分こしようよ」
メイド姉「ありがとうございます」

ザァァァァアア!

奏楽子弟「あなたはどこへ行くの?」
メイド姉「とりあえず、湖の国の都へ」

奏楽子弟「どうして? 聞いて良ければだけれど」
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:41:11.47 ID:W1zfwn6P
メイド姉「そこに湖畔修道院のかつて使っていた
 文書館があるんですよ。いくつか気になることもありますし。
 ……それはそれとしても、諸国を旅している最中なんです」

奏楽子弟「へぇ!」

メイド姉「色々見なきゃいけないものがあるんじゃないかって。
 それで国を飛び出してきたんですけれど。どこも大変ですね」

奏楽子弟「うん、そうだね。……物価も高いし人も倒れているし。
 北に行けば行くほどひどくなるような気がする」
メイド姉「はい……」

奏楽子弟「わたしの故郷じゃ戦争はあっても、
 飢え死にって云うのはあんまり見なかったから……。
 ああいうのは、見てるだけで辛いね」

メイド姉「そうですね……。詩人さんはどこから?」

奏楽子弟「ああ。えへへっ。もうね、すんごい遠いところから」
メイド姉「そうですか」

ザァァァァアア!

奏楽子弟「あのさ」
メイド姉「はい?」

奏楽子弟「その、文書館っていうのは、光の精霊の?」
メイド姉「ええ、そうですよ。修道院付属の記録が
 収められていると聞いています」

奏楽子弟「わたしも、その。ついて行って良いかな?」
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 17:42:37.00 ID:W1zfwn6P
メイド姉「?」

奏楽子弟「実はわたしは、詩も戯作も書くんだ。
 もちろん楽器も一通りこなす。舞台の脚本も書く。
 それらは一緒のものだからね。
 ……それで、どうしても興味が引かれて
 『聖骸』についての噂を追って旅をしているんだ」

メイド姉「そうだったんですか」

奏楽子弟「詩想がね、迫ってくるような気がするんだ。
 もうそこまで来ているような気もするんだけど……。
 いやはや。
 訳判らないよね」

メイド姉「良いですよ」
奏楽子弟「えっ?」

メイド姉「一緒に行きましょう」にこり

奏楽子弟「いいの? その……。わたしは旅人だし、
 わたしが言うのも何だけど、あんまり簡単に人を信じると、
 若い身空で事件に巻き込まれたりするよ?」

メイド姉「人間は生まれた時から世界に巻き込まれてるんです」

奏楽子弟「そりゃそうだけど。
 ――ん。その言い回し良いな。メモしておこう」

メイド姉「ふふふっ」

奏楽子弟「え? ああ。ごめんごめん。職業病で」
メイド姉「いいんです。1人より2人のほうが
 心細くないでしょう?」
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 18:14:12.05 ID:W1zfwn6P
――大陸中央、霧の国、領主の館

ガシャーン!!

家令「ひっ! ひぇっ!?」

肥満領主「こっ、こっ、このたわけがっ!!!」
 少女メイド「ヒッ」

肥満領主「聖光教会め! こ、こ、このようなことがっ!」

家令「どうされましたのでっ」

肥満領主「っ!!」 グシャグシャグシャ、ポイッ!

家令「これは……」

肥満領主「“小麦引き渡し証書”がいつの間にか聖光教会に
 渡っておったのだ! これでは言い逃れも踏み倒しも
 出来ないではないかっ! あの若造めぇっ!!」

ダダダダ、ガシャっ!!

役人頭「大変でございます! 領主さまっ!!」

肥満領主「ええい、どうしたというのだっ!」

役人頭「そ、それが! 実は城下や領内の村に、
 教会の徴収使どもがあらわれましてっ!」

肥満領主「徴収使……?」

役人頭「そやつらめが、収穫したばかりの麦をどんどんと
 取り上げて運び出しているのですっ!!」
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 18:15:37.72 ID:W1zfwn6P
ドンッ!
少女メイド「ヒッ!」

肥満領主「教会めぇ、そうであったか……。
 よもやとは思ったがあの商人と結託し、
 我ら地方領主の力をそぐのが狙いかっ」

役人頭「いかがいたしましょう?」

肥満領主「金はあるのだっ! 教会との交渉を開始する。
 “小麦引き渡し証書”を買い戻すのだ。
 すぐさまインク壺と羊皮紙を持て!」

家令「ははぁっ!」

肥満領主「くっ。何という屈辱だっ。
 8代にわたりこの領土を完全に治めてきたこの男爵家が
 何故このような奸計により、
 誇り高き我が額を教会などに下げねばならぬのだっ
 およそ商売など貴族のすることではないわっ!」

役人頭「えー。そのぅ」

肥満領主「とっととその徴収使とやらを見張らんかっ!
 麦の一粒でも多く持ち出すようであるならば、
 たとえ教会の使いとは言え、打ち払えっ。

  ええい、そうもいかんっ!
 引き取って頂くのだ。ただし丁重になっ!」

役人頭「そっ、そんなっ」

肥満領主「とっとと行かんか! その頭を首の上に
 くっつけておきたいのならば、命じたことをするが良いっ!」

役人頭「は、はいぃいい!!」

肥満領主「このままでは……済まさんぞっ!」
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 18:16:29.57 ID:W1zfwn6P
――鬼呼族の族長の館、青畳の書斎

鬼呼の忍者「――以上相違ありません」

鬼呼族の姫巫女「ふむ」
鬼呼執政「考えていたより、事態は深刻ですな」

鬼呼族の姫巫女「戦乱が長かったゆえ、か。
 民の間にもここまで不満や欲求がくすぶっているとは」

鬼呼執政「ええ」

鬼呼族の姫巫女「魔族の血やもしれぬな」
鬼呼執政「悪いことばかりとも申せませぬ」

鬼呼族の姫巫女「うむ、目標があれば燃え、
 それを見失えば失意と不満をくすぶらせる。
 我らにしてからがこれなのだ。
 獣牙の一族などいかばかりに血をたぎらせておるか」

鬼呼執政「で、あるからこそ、戦以外の目標を立てるべきです」

鬼呼族の姫巫女「――」

鬼呼執政「このたびの衛門族長からの提案、
 わたくしから見ると悪くないように思えます」

鬼呼族の姫巫女「それはそうであろうが、
 その工事が無駄に蒼魔族を刺激せぬとも限らぬゆえな」

鬼呼執政「場所を選んで着工すれば宜しいでしょう」

鬼呼族の姫巫女「場所、か」

鬼呼執政「こたびの債符なるもの、なかなかに面白い試み」
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 18:17:42.97 ID:W1zfwn6P
鬼呼族の姫巫女「とは?」
鬼呼執政「送られたる計画をつぶさに調べたところ、
 九本の道路それぞれに別種の債符が割り当てられております」

鬼呼族の姫巫女「ほう」

鬼呼執政「たとえば巨人族の都へと繋がる道の債符は
 そこを使用する商人しか買わないでしょうが、
 鬼呼族のそれは多くの商人が必要とするでしょう。
 より多くの人が必要とするのならば、
 債符は多く売れ、工事は早く完成いたしまする」

鬼呼族の姫巫女「ふむ」

鬼呼執政「また言えば、鬼呼の地でおのれをもてあましたる
 若者や兵士として職にあぶれていた者は、
 他国へと出稼ぎに行っても道路を造る仕事がありましょう。
 蒼魔族との戦闘が気になるのならば、
 先にそれより離れたる、例えば機怪の地への街道を整えれば
 良いわけです。

  われら鬼呼は治水や潅漑などの技に生来優れております。
 おそらくどのような国でも歓迎されるでしょう」

鬼呼族の姫巫女「……うむ」
鬼呼執政「いかがでしょう」

鬼呼族の姫巫女「普請の教え長を呼べ。彼ならば、家造りの
 匠を良く心得ておろう。
 100人班を編制して、普請組として立ち上げよう。
 会議に諮って、我が鬼呼の技、高く買ってくれるところへ
 売りつけようぞ」

鬼呼執政「ふぅむ。工事の傭兵でございますな?」

鬼呼族の姫巫女「血の香のせぬ、な。
 これならば民も納得して、
 わが鬼呼の力を魔界に見せつけてくれるだろう」
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:09:03.20 ID:W1zfwn6P
――湖の国、首都近郊、さびれた文書館

ガチャガチャ……。ギィイイィィィイイ。

修道院司書「こちらでございます」

メイド姉「ありがとうございます」
奏楽子弟「すみません」

修道院司書「ここにあるのは古い時代のものばかり。
 退光しますゆえ直接光に当てませんよう」

メイド姉「判りました」
奏楽子弟「すごい量と埃ね」

修道院司書「ご用がお済みの際には守衛室にお寄りください。
 温かい茶など入れましょう。修道院長の話など
 お聞かせ願えれば、幸いです」

メイド姉「はい、是非に」

修道院司書「それではこれにて……」

ギィイイィィィイイ。コッコッコッコッ。

奏楽子弟「えっと、メイドさんってすごいんだね」

メイド姉「どうしてです?」
奏楽子弟「いや、修道院長って随分偉い人なんでしょう?
 そんな人の紹介状を持ってるなんて」

メイド姉「以前お世話になったんですよ。それに、それは
 女騎士さんがすごいのであってわたしなんて全然」
奏楽子弟「そうかなー」
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:10:21.96 ID:W1zfwn6P
メイド姉「結構な量がありますね」
奏楽子弟「2、300冊? 巻物が多いね」
メイド姉「旧いと云ってましたしね」

奏楽子弟「わたしの目的は『聖骸』だけど、
 そっちは何なのかな? お互い見かけ合ったら
 相手に教えた方が効率が良いよね」

メイド姉「そうですね」
奏楽子弟「何を探しているの?」

シュルシュル、パラっ

メイド姉「それが、判らないんです」
奏楽子弟「へ?」

メイド姉「上手く言葉に出来ないんですが『源流』を。
 古い古い話を見たいんです。
 知っている中で、もっとも古い話はここにありそうだったので
 ここを目指してやってきたんですよ。
 別に古い話が目的ではないんですが、
 新しくスタートをするのなら、
 そもそもの最初の地点を探し出さないといけないと思って」

シュルン、パラリ

奏楽子弟「ふぅん、几帳面なんだね」
メイド姉「要領が悪いんですよ」くすっ

パラッ

奏楽子弟「何だろう。古い羊皮紙ほど上質だね」
メイド姉「どうしてでしょうね」
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:11:15.10 ID:W1zfwn6P
パラッ

奏楽子弟「どう?」
メイド姉「いえ。『聖骸』も、それ以外も……」

奏楽子弟「こっちも、子供向けのお説教や、麦の収穫量の話だね」

パラッ

メイド姉「貴重なものなのでしょうが」

奏楽子弟「うん。――ああ、これは賛美歌集だ。
 こんなのは始めてみる……。メロディが判らないなぁ」

メイド姉「古いものですか?」
奏楽子弟「どうだろう」

メイド姉「こっちも古いですね」
奏楽子弟「なに?」

メイド姉「古い古い物語のようです。大地……精霊?」
奏楽子弟「ん? ちょっと見ても良い?」

メイド姉「ええ、どうぞ」

パラッ

奏楽子弟「……うーん」
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:12:53.81 ID:W1zfwn6P
――崩れ去り書けた羊皮紙の詩

 かつてありし光あふるる理想郷
 其は精霊住みし失われた大地。
 大地にありて輝くは五つの星。
 森、水、大地、黄金、そして炎。
 あい和合し時には乱れ、7の7乗の7乗倍、歳月を重ねる。

 見よ炎に生まれし娘有り。
 かつて無きその聡き額に見えない王冠はかがやき
 幼き頃からその慈愛遍く万物を照らす。

 見よ大地に生まれし少年有り。
 異境より訪れし女と精霊の間に生まれた忌み子。
 大地の魔峰を黒く汚し災いをもたらさん。

 ふれあいし指先はやがて絡められ
 幼き約束は胸焦がす誓いとなる
 希望が解き放ち罪の名と大いなる翼の庇護の下
 二つの魂は結ばれん。

 もって神世は崩れ去り、理想郷は終焉す。
 しかし少女は眠らずにその慈愛、遍く世を照らす
 罪の名を知る人々の足下を。
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:14:14.94 ID:W1zfwn6P
――湖の国、首都近郊、さびれた文書館

メイド姉「精霊の話……? 初めて目にしますが」
奏楽子弟「これ……。五大家?」

メイド姉「え?」

奏楽子弟「精霊の五大家の話だ。
 こんなに古いのはわたしも見たことはないけれど」

メイド姉「どういう事ですか?」

奏楽子弟「まか……いや。あたしの故郷では。
 えーっと。
 大地に住む人々は全て。
 何と言えばいいのかな……。
 そう、伝説だね。
 伝説の、その五大精霊家の血を引いているという
 言い伝えがあるんだ。
 例えばわたしの家だと、森の精霊家の血を引いている。
 真実かどうかは判らないよ?
 本気で信じている人だってもうあんまりいやしない。
 でも、そう言うことになっているんだよ」

メイド姉「……」

奏楽子弟「でも、だからって、何でこんな所に……」

メイド姉「聖なる光教会……」

奏楽子弟「え?」
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 19:15:35.69 ID:W1zfwn6P
メイド姉「聖光教会。その本拠地、教皇のお膝元、
 大礼拝堂の地下図書館には、ここよりももっと多くの
 書籍や古文書が眠っていると聞いたことがあります」

奏楽子弟「え? え?」

メイド姉「行ってみましょう」
奏楽子弟「そうはいっても、そこの紹介状も持っているの?」

メイド姉「いいえ」きっぱり

奏楽子弟「入れるの?」
メイド姉「普通は入れません」

奏楽子弟「どうするのよ~」

メイド姉「どちらにしろ、大礼拝堂があるのは
 聖王国の中心部聖王都です。
 噂を集めるにも、何かを見つけるにしろ
 避けて通れる場所ではないと思いますし」

奏楽子弟「それも、そうか……」

メイド姉「わたしは脚を伸ばしますが、詩人さんはどうしますか?」
奏楽子弟「んぅー」

メイド姉「1人でも向かいますが」

奏楽子弟「乗りかかった船だ。行く。行きます。
 『聖骸』についても、そっちのほうが詳しい情報が
 わかりそうだし。わたしも興味が出てきた」

メイド姉「はい、よろしくお願いします」にこっ



ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。