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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」6-6


771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:10:26.07 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、蒼魔族の天幕

蒼魔王「黒旗がたなびいたか」

蒼魔武官「どうやら魔王の命脈は尽きたようですな」

蒼魔王「ふっ。あのような惰弱な魔王、
 どうあってもその命の炎は揺らめいていたのだ。
 我らが提案に乗り引退しておれば命ながらえたものを。
 しょせん、女に戦は出来ぬ」

蒼魔武官「真にその通りで」

ざっざっざっ

蒼魔上級将軍「王よ」ざっ

蒼魔王「おお。上級将軍、よくぞまいったな。
 魔王は死んだぞ。……どこの誰だかは判らんが
 まったく見事なタイミングの事件よな」
蒼魔武官「将軍、お早いおつきで」

蒼魔王「して、王子は?」

刻印の蒼魔王子「父上。僕も一緒ですよ」

蒼魔王「おお! 健勝であったか?
 我が息子にして世継ぎの皇子よ!」

刻印の蒼魔王子「はははっ。おかげさまでね」

蒼魔上級将軍「刻印の確認、済ませてございます」

蒼魔王「していかに?」
刻印の蒼魔王子「ふっ。この両目こそがその証」キィンッ
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:11:56.60 ID:0Bi87sEP
蒼魔上級将軍「二つの瞳に表れた刻印、これこそ魔王の証。
 しかもその強さたるや、歴代屈指かと」

紋章官「……蒼魔王子に称えあれ。ひゅっ」

蒼魔王「慶事である。わが治世もここに完結を見たか。
 刻印の王子を得た年に、魔王が死ぬ。
 これも魔界の神が蒼魔の一族を嘉したもうあかし!」

刻印の蒼魔王子「何時までも王子じゃ格好もつかないさ」

蒼魔王「……どういうことだ?」

刻印の蒼魔王子「将軍、頼むよ」
蒼魔上級将軍「はっ。御身がために」

紋章官「……」ニタニタ

蒼魔王「なっ! なにをっ!?」

蒼魔上級将軍「相馬族の繁栄のため、心安んじられよ、陛下」

蒼魔王「なっ! な、なっ! 貴様ぁっ!?」

ザッシュ!!
 ――ゴトン。

刻印の蒼魔王子「ふん」
蒼魔上級将軍「終わりましたな。刻印王よ」

刻印の蒼魔王子「刻印王か……。
 悪くはないが、別の称号が待っている」

蒼魔上級将軍「さようでございます、我が主よ」

刻印の蒼魔王子「魔王はこの僕が継ごう。
 ふっふっふっふ。はぁーっはっはっはっはっは!!」
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:30:45.41 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕

蒼魔上級将軍「さて、お集まり頂いたのは他でもない。
 不幸な事件により魔王殿が身罷られたのは
 我らにとって大きな傷手。
 この窮地を脱するために、
 氏族の長の知恵を借りねばならぬかと思い、お招きした次第」

碧鋼大将「……」ぎろっ

火竜大公「お前は誰だ。それに蒼魔王はどこにいるのだ」

蒼魔上級将軍「これは失礼をした、
 わたしは蒼魔一族の兵を束ねる上級将軍。
 蒼魔一族はこのほど新しい族長を迎えた。
 今回のお招きは、新しい族長の紹介もかねていると
 思っていただければ、これ幸い」

鬼呼族の姫巫女「新しい、族長じゃと?」

蒼魔の刻印王「この僕だ。蒼魔王の世継ぎの長子に当たる。
 蒼魔王は昨晩、急な発作で世を去った。
 僕は父からの後継指名を受けて王として学ぶべきを
 学んできた身だ。この継承は蒼魔一族の支持も受けている。
 ――以後、お見知りおき願おう」

銀虎公「……そうかい。血の匂いがしねぇでもないが」
巨人伯「一族の……きめごと……」

火竜大公「ふっ、そうだな」

鬼呼族の姫巫女「氏族の内側には干渉しないのが我らが習い。
 それが蒼魔族の下した決断ならばしかたなかろう」
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:32:01.62 ID:0Bi87sEP
紋様の長「だが“魔王亡き後の”とは?」

蒼魔の刻印王「魔王殿が身罷られたことは
 諸卿らもご存じのことと思うが、その後の対応策についてだ」

銀虎公「対応策も何も……」

鬼呼族の姫巫女「次期魔王決定については
 星回りが決めることであろう」

蒼魔の刻印王「しかし、その時期が問題だ。
 わが蒼魔族がかねてから再三主張してきたように、
 今われらが魔界は人間界との戦時下にある。
 停戦とも交戦とも結論が出ぬままに
 魔王だけがこの世を去った。
 次期魔王を得ぬままに時を浪費しては、
 これは魔界の存亡に関わる」

勇者「……」

紋様の長「そう言われれば、そうではありますね」
碧鋼大将「では、どうせよと若長はいうのだ?」

火竜大公「魔王不在で忽鄰塔を続行すると?」

蒼魔の刻印王「それが必要であれば」

銀虎公「この九名で物事を決しようというのかい」

蒼魔の刻印王「ひとつ諸卿に報告すべき事がある。
 それは僕のこの両目に、刻印があると云うことだ」
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:33:41.64 ID:0Bi87sEP
碧鋼大将「両目……に!?」
鬼呼族の姫巫女「まさか……」

妖精女王「かつて“魔眼”と恐れられた魔王でさえ、
 刻印は右目のみだったと云うのに」

東の砦長「どういうこったい?」

蒼魔の刻印王「そうだ。僕はほぼ確実に、次の魔王だ。
 いや、現魔王が死んでいる今、
 ほぼ魔王であると云ってもおかしくはない。
 蒼魔族が確認している限り、現時点で他の候補者は、
 存在しない」

銀虎公「そうなのか!?」
碧鋼大将「そのようなことが……」

勇者「……っ」

紋様の長「考えてみれば、先代の六人は多い候補者でした」

蒼魔の刻印王「ふふふふっ。
 そのような影響が、今代で出たのかも知れないな」

巨人伯「魔王……決まった……か……」

火竜大公(蒼魔族め……。何が魔族のためだ。
 魔王廃位とはこのような心算あっての。
 ……いわば保証付きの要求だったか)

鬼呼族の姫巫女「だが、しかし現在は候補者だ」
妖精女王「ええ、そうです。けして魔王ではない」
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:35:30.99 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「それは判っている。僕とて若輩の身。
 諸卿らに支持して頂くまでは、
 努々、魔王であるなどとは思い上がるまい」

碧鋼大将「ふむ」

巨人伯「では……どうしたい……」

蒼魔の刻印王「蒼魔族の長として、魔王の候補者として、
 諸卿らに云いたいのは以下のようなことだ。
 まず第一に今は非常事態であり、
 魔王の空位は望ましくはないと云うこと」

銀虎公「それはそうだろうな」

蒼魔の刻印王「第二に前魔王の葬儀を行うべきだと云うこと。
 と、同時に魔王殺害の犯人も探させなくてはならぬ。
 この責任者を決める必要があるであろう」

火竜大公「ふむ、もっともな話ではあるな」

蒼魔の刻印王「蒼魔族としては、この暗殺事件の犯人は
 人間だと考える」

東の砦長「憶測だっ!」だんっ!

蒼魔の刻印王「もちろん現時点では何の証拠もない。
 魔族が犯人である可能性も十分に考慮に入れつつ
 犯人を捜さねばならないだろう。
 だが少なくとも、これは魔族の内部分裂を誘う卑劣な
 やり口であることには違いない。
 この犯人は厳しく追跡し、捕らえなければならぬ」

碧鋼大将「人間か……」
銀虎公「奴らのやりそうな事だ。はんっ!」
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:37:35.10 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「第三に、僕はいつまで待てばよいのか?
 と云うことだ。第一にも云ったように今は時間が惜しい。
 確かに星によって刻印が押される者が今後出るかも
 知れないが、継承候補者戦の時期を決めるのは
 八大氏族、いまや九大氏族となったか。
 その族長の持ち回りであったはず。
 その決定をお願いしたい」

鬼呼族の姫巫女「次は、どの氏族が主催を行う予定だったか?」

妖精女王「先代はわたし達でした」

紋様の長「で、あるなら、我ら人魔か」

蒼魔の刻印王「どうか決定を下して頂きたい」

碧鋼大将「……」
火竜大公「……ぐぐっ」

鬼呼族の姫巫女「如何にする?」

紋様の長「……」

蒼魔上級将軍「紋様の長。ご裁可を」

紋様の長「……今は危急の時であると。
 その言葉はわかります。
 またいたずらに長引かせれば魔族全体の和が乱れるでしょうね。
 わたし達には今すぐにでも新しい魔王が必要です。

  どれだけの時が必要か。
 これは難しい問題ですが……。
 時をおく危険の方が大きいでしょう。

  明朝。――明朝をもって継承候補者戦を行います。
 その時までに刻印を持つ継承候補者が他に名乗り出ない場合、
 魔王として、蒼魔の新王を頂くことになります」
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:39:05.22 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「……黒騎士殿」

勇者「……何用か?」

蒼魔の刻印王「御身は魔王の片腕。
 その身体をつつむ漆黒の鎧兜は、
 かつて剣の魔王と呼ばれた覇王を包んでいたもの」

勇者「……」
東の砦長「黒騎士……」

蒼魔の刻印王「魔王殿が身罷られたことには
 深い哀悼の念を覚えるが、御身はわれらが魔界最強の騎士。
 悪逆なる人間の侵攻に立ちはだかる最後の砦。
 なにとぞご自愛くださり、
 我と共にこの魔界の柱石となることを願う」

蒼魔上級将軍「我が君と当代無双の誉れ高い黒騎士殿!
 これで魔族の軍は世に並び立つことのない
 最強のものとなりましょうなっ!
 ふはーっはっはっはっは」

巨人伯「……」
火竜大公「はしゃぐな、若造が」

蒼魔の刻印王「これは我が族のものが失礼をいたしました。
 申し訳ございませぬ、ご老公どの……」

火竜大公「ふんっ」ばふっ

鬼呼族の姫巫女「このままでは……。また戦火が」
妖精女王「戦になってしまうのですか……」
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 14:56:48.06 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、天幕で作られた街
――明朝。

銀虎公「日が昇るな」
巨人伯「朝……だ……」

火竜大公「ふんっ」

妖精女王「誰も、来ませんね」
鬼呼族の姫巫女「この期間では難しいだろう」
蒼魔の刻印王「……」

  東の砦将「黒騎士、そんなもの。脱いじまえ」
  副官「そうですよ」

  勇者「こんなもんでも、魔王に貰ったもんでな」

蒼魔上級将軍「今朝の太陽も、碧の美しい輝きだな」
銀虎公「誕生の朝か」

碧鋼大将「……刻限だ」

紋様の長「良いでしょう。仕方ありませぬ。
 蒼魔の新王よ、前に。」

蒼魔の刻印王 ざっ
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 14:58:00.13 ID:0Bi87sEP
東の砦将「……」ぎりっ

紋様の長「我、紋様の長は忽鄰塔九大氏族の族長として
 そなたを最終候補者としてみとめる。

 正式に魔王と名乗るは、魔王城、最下層、冥府殿にて
 潔斎の四日を過ごしてからとなろうが、
 そなたはこれより魔王として生きる覚悟有りや?」

蒼魔の刻印王「無論」

紋様の長「魔王の継承者として、その力を引き継ぐや?」
蒼魔の刻印王「謹んで」

紋様の長「では、魔王の略王冠を……」

蒼魔の刻印王「しばらく。紋様の長よ」
紋様の長「なにか?」

蒼魔の刻印王「これより我が右腕として、
 この魔界全てを統べることのなる黒騎士に、
 是非その栄誉をおわけ願いたい」

紋様の長「よかろう。では黒騎士よ」

勇者「……」

紋様の長「黒騎士よ、一歩前に進み、
 この略王冠を新生魔王の額に乗せるよう」
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:04:43.13 ID:0Bi87sEP
東の砦将「黒騎士……」
副官「黒騎士様……」

妖精女王「黒騎士様……」じぃっ

勇者「……」ざっ

蒼魔の刻印王「我が片腕よ。長征の将軍よ。
 魔界最高の騎士にして常勝無敗の黒き死の使いよ。
 我が代の片腕としてそなたを迎えることを嬉しく思う。
 そのことだけでも先代には感謝の気持ちを抑えられぬな。

  この魔界に繁栄をもたらすために、その剣を
 魔王に捧げ、魔王の命により為すべきを為せ」

勇者「御命了承つかまつった。
 我が神聖なる所有の契約により
 我が身命は永世に魔王のもの。
 我が剣は魔王の敵を貫くものなり」

蒼魔の刻印王「……所有?」

東の砦将「黒騎士っ!!」

蒼魔上級将軍「新生魔王に祝福あれ!!」

 うわぁぁぁ!! ばんざい! 魔王ばんざーい!!

蒼魔の将校「魔王ばんざい!!」
蒼魔の侍従「新魔王、蒼魔の魔王万歳っ!!」
紋章官「ヘヒヒッ。ふしゅ。ばんざい! ばんざい!」

――黒点は伊達ではないのですぞ。

ヒュ………………ッ!!!!

シュカッ!
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:06:12.33 ID:0Bi87sEP
紋章官/暗殺者「ふしゅーへっひっは……。ごぶっ。
 く、くるじ……脚が、脚がぁ……。ふしゅっ、ふしゅぅ」

執事「静かにわめきなさい。みっともない」

ザシュ!

紋章官/暗殺者「ひげっ! ひぎぃぃ!! ふしゅるしゅる。
 な、なにを、なにをする、じ、爺ぃいしゅ」

蒼魔の刻印王「何者だっ!」
蒼魔上級将軍「我らが家臣に何の狼藉を働くっ!!」

執事「だまらっしゃい!
 儀礼の最中に取り乱すなど王族ともあろう者がはしたない
 若でさえもうちょっとお上品でしたぞ」

東の砦将「あ、あ……あの方は。昔戦場で見たことがあるっ」

勇者「爺さん、遅いぞ。遅すぎだぞ」

執事「にょっほっほっほ。お待たせして申し訳ありません」

火竜大公「何が起きているのだ」

執事「にょっほっほ。これを持っていると確信できる、
 そのチャンスを伺っていたのですよ。
 ほれ……。こいつの懐に」

ごそごそっ

紋章官/暗殺者「それはっ! へぶしゅるしゅるっ!
 その瓶はやめろぉ!!」
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:07:14.87 ID:0Bi87sEP
銀虎公「瓶……!?」

執事「壊死の毒ですよ。
 ……この毒のせいで、追っ手に差し向けた
 わたしの可愛い部下が五人もやられてしまった。
 恐ろしい毒です。
 既知の解毒方法では効果も望めない」

碧鋼大将「毒……まさか……」
巨人伯「暗殺……?」

蒼魔上級将軍「~っ!!」

東の砦将「おう。なんで、魔王を殺したのと同じ毒使いが
 蒼魔の陣中にいるってんだ? え?」

紋章官/暗殺者「離せしゅるっ! 離すのだ、じぃ!」

紋様の長「それについてはじっくりとこの暗殺者に問う
 必要があるでしょうな……」

紋章官/暗殺者「貴様、爺っ! 俺を足蹴にっ!」 がばっ!

ザシュッ!!

紋章官/暗殺者「カハっ! あ、そ、そんな……。
 ふしゅ、しゅる……しゅ……しゅ……」

蒼魔の刻印王「危ないところでしたな、ご老人」ちゃきん

東の砦将「貴様っ! 大事な手がかりをっ!
 口封じのつもりか、蒼魔族のやり方はそうなのかっ!?」
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:08:09.14 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「とんでもない、これはご老人を助けようと
 しただけにすぎません」にこり

蒼魔上級将軍「ふっふっふっ」

東の砦将「そのような言い訳が通ると思っているのかっ!」
副官「重大な疑惑行為ですよっ!」

紋様の長「蒼魔の王よっ!
 自らの口で、容疑者を捕縛し
 詮議しなければならぬと云ったそばから、
 重大な手がかりを握っているに違いないその者を
 殺すとはいったい何事ですかっ!?」

銀虎公「そうだ、信義に悖るにもほどがあるぞっ!」

蒼魔の刻印王「ふっ」

こつんっ――ばさっ……

碧鋼大将「こ、これは……。仮面……?」
巨人伯「この、おどご……」

火竜大公「この暗殺者は……。蛇蠱族だったのか……」

副官「蛇蠱族……?」

銀虎公「そんな……。獣人の一族だと……?
 ……ちがうっ!
 俺たちは違うっ! 確かに俺たちは力を発揮するための
 戦場を望んでいたが、暗殺なんぞ力を貸したりはしないっ!
 違うんだ、俺たちはこんな事はしないっ!!」

蒼魔上級将軍「誰が信じる、そのようなことっ」
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:09:23.38 ID:0Bi87sEP
碧鋼大将「それを言うならば、蒼魔族とて同じであろう!」

火竜大公「そうだ、その蛇蠱族を紋章官として
 雇い入れていた蒼魔族も疑念を避けることは叶わぬっ!」

蒼魔の刻印王「何か勘違いをなさっているようですね」

鬼呼族の姫巫女「何っ!?」

蒼魔の刻印王「言い訳? 疑惑? ふふふっ」

副官 ぞくっ

蒼魔の刻印王「僕はね、魔王なんですよ?
 言い訳などする必要はない。
 疑念を晴らす必要などさらにない。

  それが魔王。
 唯一にして絶対。
 至高にして無二。
 魔界の全てを統べる者。

  今さらそのようなご託を聞く耳はありません」

紋様の長「だが魔王は忽鄰塔において、
 氏族の長の半数を持って廃位出来るっ!
 このような状況下で魔王を続けられるわけがない!」

蒼魔の刻印王「僕は忽鄰塔の終了をここに宣言する。
 そして、再び忽鄰塔の招集を出来るのは魔王だけだ」

碧鋼大将「っ!!」
妖精女王「そんなっ」
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:12:54.86 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「宣言しますが、僕は二度と忽鄰塔など
 開催しませんよ。
 こんな会議は自分の意志を押し通す実力のない、
 三流の魔王が頼る弱者の藁に過ぎない。
 覇道を進む魔王は、絶対の支配者。
 僕は、あの腐った女とは違う。

  魔界の秩序とは我が身、この魔王のこと。
 全ての法を越えた支配者が魔王っ。
 判っていないのはあなたたちのほうだっ!

  ふっ。これで詰み。……お仕舞いですよ、諸卿」

ざっ

「そのような考え方をこそ改めたかったんだがな」

蒼魔上級将軍「誰だっ」

魔王「誰だとは挨拶だな……。ごほっ」

メイド長「まおー様、ご無理は」
女騎士「まだ法術が不十分なんだ。戻ろう」

魔王「必要があるんだ、目をつぶってくれ」

火竜大公「魔王……どの……」
東の砦将「魔王さんよっぅ!!」

妖精女王「魔王さまぁっ!!」
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:14:15.82 ID:0Bi87sEP
蒼魔上級将軍「何故っ!! 何故貴様が生きているっ!」

魔王「ここで一度云っておく。
 魔王の身でこんな事をいうのもなんだが
 そもそもこの魔王というシステム自体が過渡期的性質を
 持っているのだ。
 たった一人の絶対者によって、その権威と武力と調整力によって、
 氏族間の意見の相違やバランスの欠如を
 全て吸収させようだなどという考えそのものが前時代きわまる。

  良いか? 忠義だなどと云えば聞こえはよいかも知れないが
 その内とちくるった魔王が出てきて、積み上げたものを
 全て根こそぎおじゃんにするのが世のおちだ」

執事「学士殿……」

魔王「済まなかったな。疑った」
執事「しかし、信じてくださった」

魔王「勇者が真剣にいうからな。
 “あの爺はD以上は絶対に殺さないんだ”って。
 それに、毒を使うのは流儀に反するのであろう?」

執事「わたしは紳士で通っていますからね。にょほっほっほ」

勇者「――と、云うわけだ“候補止まり”くん。
 俺の剣は魔王のもの。俺の剣は魔王の示したものを貫く刃」

蒼魔の刻印王「黒騎士、貴様ッ!!」

魔王「勇者っ!」
勇者「あいよぉっ!」

魔王「蒼魔の王を捉えよ! 出来れば生かしたまま。
 だが手向かいするならそれはそれで構わんっ!」
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:17:01.32 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「はぁ!! まだ終わらんっ!!」

 ガギィィン!!!

勇者「っ!?」

女騎士「な、なんだ。あの異常な魔力はっ!?」
メイド長「あれは冥府殿の負の気っ!」

 ヒュバンッ!

蒼魔の刻印王「はぁっ! せやっ! せぃやぁぁ!!」

勇者「こいつっ。桁外れだっ」
 ギン! ギキン! ガギン!!

勇者「“加速呪”っ! “雷剣呪”っ! “被甲呪”っ!」
蒼魔の刻印王「“飛脚術”っ! “火炎鳴動術”っ!!!」

 ギンッ!! ガッギギギギ!!

東の砦将「な、なんて奴らだっ!」
副官「銀光しかっ、見えないっ!?」

魔王「勇者っ!」

蒼魔上級将軍「いまだ! 黒騎士は我が君が押さえる。
 今のうちに魔王を討ち取れっ! 魔王は軟弱だ!
 ましてや今は毒で弱っている、どの将兵にでも討ち取れるぞ!!」

勇者「なっ! ちょ。まて、それはたんまっ!」
蒼魔の刻印王「死にたいのか、貴様っ!」

 ヒュギンッ!!

勇者「まずいっ。こいつ……戦力だけで云えば真魔王かっ」
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:18:52.62 ID:0Bi87sEP
蒼魔上級将軍「行けぇ!!」

蒼魔騎兵「はいやっ!」「どうっ!」「突撃ぃぃぃ!!」

東の砦将「騎兵だって!? おい副官っ!」
副官「はっ!」

東の砦将「族長をまとめろ、天幕は役に立たない。
 蹴倒して足跡の防塁を造れっ!」

碧鋼大将「どこにこれだけの兵をっ!?」
銀虎公「うぉぉぉ!! やられる訳にはいかぬぅ!」ズダーン!!

  勇者「夢魔鶫っ! 行って魔王を護れっ!」
  蒼魔の刻印王「死人鴉っ! 行かせるな!!」
   ギン! ギキン! ガギン!!

巨人伯「おおん……魔王……まもる……」

魔王「このような身体が。……けふっ。げふっ。」
メイド長「まおー様!」
女騎士「寄るなっ! 寄らば斬るぞっ!!」

蒼魔上級将軍「弓兵隊っ! 構えぇぇぇーい!!」
蒼魔弓兵隊 ざしゃっ

東の砦将「ありゃまずいっ!」

メイド長「っ!?」

蒼魔上級将軍「近づくなっ! 矢の数で攻めよっ!
 一斉射撃準備っ! 撃てぇぇーい!」
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:19:55.28 ID:0Bi87sEP
ヒュ………………ッ!!!!

蒼魔弓兵隊「え?」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「なんだ」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「なんで、おまえ。……弓を捨てて」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「首がっ! あいつの首がっ!?」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「どこだっ!? 何をされてるんだっ!?」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「見えないっ。俺の目がっ。目がぁ!!」

 ッカ

蒼魔弓兵隊「うわぁぁぁああああ!!」

 ッカ

執事「ふむ。二流の下というところですな」
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:21:48.25 ID:0Bi87sEP
東の砦将「あの爺さん、何やったんだ。あれは何なんだっ」
女騎士「射撃で倒したんだろう」

東の砦将「だって爺さん、何も持ってなかったじゃないかっ!」
女騎士「あの爺さんが何か持ってるところなんて見たことが無い」

東の砦将「あの爺さんは伝説の“弓兵”じゃないのかっ!?」
女騎士「そうだよ。でも、見たことはない」

東の砦将「なんで“弓兵”なんだよっ」
女騎士「相手は矢に刺されたように死ぬからだ」

  勇者「行けぇ!! “上級雷撃呪”っ!」
  蒼魔の刻印王「はじけっ! “凍結壁術”っ!」
   ドッシャァァーーン! ビリビリビリッ!

蒼魔騎兵「いまぞ! 魔王を討ち取れっ!」
蒼魔騎兵「蒼魔に魔王を取り戻せっ!!」

 ダカダッダカダッダカダッ

女騎士「っ! まずいっ。こっちは二日近く解毒に回復に、
 もう体力も法力も限界なのに。数で押されるとは……」

メイド長「わたしが行きます」

魔王「だめだ……けふっ。お前だって」

蒼魔騎兵「我に続け! 魔王を討つぞっ!!」

 ダカダッダカダッダカダッ

火竜大公「こわっぱどもがっ! 黙りんしゃいっ!!」
  ゴオオオオッッゥッツ!!
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 15:24:27.51 ID:0Bi87sEP
蒼魔の刻印王「はぁっ! はぁっ……。
 黒騎士よ、ここまでやるとは思わなかったぞ」

勇者「はっ……。はっ……。
 それはこっちの台詞だ、“候補止まり”くん」

蒼魔の刻印王「だがここまでだ。受けてみろ!!
 魔力充装っ“超高域炎撃死滅術式”っ!!」

メイド長「っ!?」

勇者「っ! 間に合えっ! 魔力結晶っ!
 “超高域雷撃結界呪文”っ!!」

ヒュダァァアン! ガキィィィィン!!

東の砦将「空がっ! 燃えあがる!?」

魔王「勇者っ!」
蒼魔上級将軍「わが君っ!!」

ゴゴオオオン!!

勇者「……はぁっ。はぁっ」
蒼魔の刻印王「……はぁっ、はぁっ。くっ」

執事「勇者。このままでは、学士殿がっ!」
蒼魔の刻印王「わが君、ここはっ」

蒼魔の刻印王「……兵を引かせよっ! 退却だっ!!」
勇者「……」ぎろっ

蒼魔の刻印王「……ふっ。命拾いをしたな」
勇者「魔王は守った。俺の勝ちだ」

蒼魔の刻印王「これは新たな戦乱の始まりに過ぎぬわっ。
 ふはーっはっはっはっは!!」
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:12:33.25 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕
――その夜


鬼呼族の姫巫女「それで、魔王殿の様態はいかがなのだ?」

紋様の長「それが心配だ」

勇者「一命は取り留めるだろうが、二週間は絶対安静だ。
 その後も数ヶ月は不自由だろうな」

銀虎公「そうであったか……」

碧鋼大将「蒼魔族は?」

妖精女王「蒼魔族はどうやら付近に相当数の軍勢を
 伏せていたようです。そちらと合流して、領土へと
 帰還する進路を取っています」

東の砦将「……」

紋様の長「戦か」

碧鋼大将「蒼魔族の大会議に対する裏切りは明白だ」
巨人伯「……裏切り……よくない」

鬼呼族の姫巫女「きゃつらとの決着をつけるべき時が来たか」

勇者「現在魔王は病臥中だ。
 その判断はいま少し待つべきかと思う。
 今回の忽鄰塔にあたって、
 蒼魔族は独自の予定や策謀を持って動いていたという印象を受けた」
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:14:00.91 ID:0Bi87sEP
火竜大公「それについては同感じゃな」ぼうっ

勇者「で、あれば現在の逃走も何らかの策謀である
 可能性も否定できないだろう」

紋様の長「暗殺者についても詮議をしませんとね」

銀虎公「獣人族は無関係だっ。信じてくれ」

碧鋼大将「今さらそのような申し開きを!」

(その商人は、たしかに蒼魔族の人と会ってました……
 えっと、背は副官さんくらいで……
 でも、横幅は、細くて、フードかぶっていて……
 なんか、その……呼吸音が、変で)

(漏れるような……蛇みたいな……)

東の砦将「いや、それについては、思い当たる節がないでもない」

火竜大公「なんだと?」

東の砦将「開門都市で“蛇のような呼吸音をさせる男”が
 ある捜査線上に浮かんだことがあってな」
副官「ありましたね。結局捕まえることは出来ませんでしたが」

紋様の長「それが今回の暗殺者だと? しかしだとしても
 銀虎公や獣人の一族が無関係という証拠にはなりません」

銀虎公「本当だ、信じてくれっ」

東の砦将「その捜査自体は四ヶ月もまえのことで、
 当時はその男は人間だと思われていた。
 確かに人間の商人として開門都市に入り込んだはずなんだ」
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:15:51.57 ID:0Bi87sEP
副官「砦将……。そのようなことを。人間に対する疑義を
 いたずらに煽ってしまいかねません」

東の砦将「いいや。腹ぁ割っといたほうがいい。
 俺たちゃどうあがいたって新参なんだ。
 知恵を借りた方が良い結果もでらぁ」

紋様の長「……」

勇者「そうだよな……。うん。この兜ももういいだろう」
がちゃり

銀虎公「人間っ!」
碧鋼大将「まさかっ!?」

巨人伯「……その風貌」

勇者「ああ、俺も出身は人間だ。
 今でも魔界に完全に定住しているとは言いがたい。
 火竜大公の言葉を借りたとしても“半魔族”だな」

火竜大公「ふっ。はははっ。なるほど」
鬼呼族の姫巫女「人間が何故魔王の鎧を着ることに?」

勇者「俺はかつて人間に『勇者』と呼ばれていた男だ」

東の砦将「……云っちまうのかよ」

紋様の長「なっ!? 勇者ですって!」
銀虎公「魔族の宿敵、最強の人間!」

鬼呼族の姫巫女「やはりあの戦いの中、魔王殿が
 叫んでいたあの言葉は聞き間違いではなかったのだな」

碧鋼大将「万機千刀の猛者、我が眷属千をたった一人で
 屠ったというあの勇者かっ」
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:18:42.21 ID:0Bi87sEP
勇者「そうだ。……すまなかったな。
 あれは戦争だった。綺麗事は言わない。
 多くの魔族が俺に恨みを持つのは当然だ。
 俺が倒した」

紋様の長「……っ」

銀虎公「あれほどの手練れ、どこの魔族が
 隠れ潜んでいたのかと思ったが……っ」

火竜大公「ふぅむ。ふぅむ。得心がいったぞ」

鬼呼族の姫巫女「その勇者がなにゆえ、黒き鎧を着る?
 その鎧はかつての旧き魔王が纏ったもの。
 魔王の許し無くば触れることも出来ない、魔界の宝の一つぞ」

勇者「魔王に口説かれてな」

妖精女王「口説く……?」

勇者「――三年前の秋、俺は魔王城に忍び込んだ。
 魔王を討つためだ。
 人間は魔族と激しい戦争を続けていて。
 その頃の俺は、魔族が人間にたいして宣戦布告をして
 人間を虐殺していたと思い込んでいてな」

紋様の長「それは違う。攻め入ってきたのは人間だっ」

勇者「今は判っている。しかし、あれは戦争だったんだ。
 そして戦争にはその種の思い込みや誤解も付きもの。
 少なくとも人間世界ではそのように事実は喧伝されていた。
 酷い言い方だが、どちらに原因があったかは
 少なくとも俺にとっては重要ではなかった。
 魔族が人間を殺していた。それで十分だった」
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:19:37.57 ID:0Bi87sEP
銀虎公「……」

勇者「ともかく、俺は魔王の城に忍び込んだ。
 罠は仕掛けてあったが、それまで多くいた魔族の衛兵や
 戦士は姿を見せなくなっていた。
 俺は仲間とも別れて、一人で奥へ奥へと魔王の城の中を
 進んでいった。

  そこで魔王と出会ったんだ」

碧鋼大将「魔王殿と」

勇者「自分を殺しに来たこの俺を魔王はたった一人で迎えたよ。
 皆にも云ったように魔王は弱い。
 あった瞬間に判ったよ。
 ああ、こいつ今まで出会った魔物よりも格段に弱いって。
 でも、あいつはたった一人で俺を待ち構え、
 たった一人で俺を迎撃した。必死で。

  剣を交える以外のことをしようとした。
 言葉をつくして、信念を、自分の全てを賭けた。

  今なら何となく判る。あいつがあのとき死んでいたら、
 魔界がどうなったかも。人間の世界がどうなっていたかもな」

鬼呼族の姫巫女「どうなる……とは?」

勇者「あいつの言葉に寄れば、
 二つの世界は互いの存在に依存している。
 互いに憎しみあい、争いながらも
 互いの存在がなければ成立しないんだ」
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:36:46.36 ID:0Bi87sEP
東の砦将「……」

勇者「人間世界には疫病と飢餓という問題があってな。
 ……こちらから見れば、人間の世界は鉄やら塩やらがあって
 豊かに見えるそうだが、実際暮らしている人間にとっては
 そうでもない。食料が足りなかったりしてな。
 人が飢えて死ぬ。それをまぁ、言葉は悪いが
 ごまかすために魔族との戦争を決意した節がある」

副官「そう言われれば、頷ける節もあります」

勇者「一方魔界は血みどろの乱世だった。
 俺が見た素直な感想を言えば、魔界には魔族が多すぎるんだ。
 その上で居住可能な豊かな土地と、そうでない荒野の差が
 激しすぎる。それが戦乱の本質的な原因じゃないか?
 魔族同士を結束させ、まがりなりにも未来を見つめさせるために
 人間との戦争は有用だった」

紋様の長「……」
銀虎公「それは……」

勇者「魔王はそれがイヤだったんだな。
 こればっかりは理屈じゃない。
 いや、理屈はどうとでもつけられるだろうさ。

 本質をごまかした戦争は消耗戦にならざるを得ない。
 それは文明都市族の全てを浪費する戦いでしかない。
 とか。
 じゃなければこのまま一進一退の攻防を繰り広げることは
 乱世よりも甚大な人的被害を魔界にもたらす。
 とかな」
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:38:19.42 ID:0Bi87sEP
勇者「でも、おそらく。そうじゃなかった。
 ただ魔王は、イヤだったんだろう。
 そんな非建設的なことをするのが。

  魔族は――それを言うならば人間もだが、
 とにかく自分たちが生まれてきた意味は、
 そんなつぶし合いではなくて
 もっと他にもあるんじゃないか、って。

  そう信じたかったんだろう」

勇者「だから人間の勇者である俺に云った。
 そんなことは止めよう。もっと別の結末を見に行こう。
 そう云ったんだ」

勇者「俺は勇者だ。そう呼ばれてきた。人間を救う英雄だと。
 そうおだてられて魔界へ攻め込んだただの殺し屋だったよ。
 でも、魔王は違う。
 魔王は真剣に考えてた。
 自分に出来るどんな手でも使って魔界を救おうと考えていた。
 魔王が……本当の勇者だよ」

妖精女王「魔王様が……そんな……ことを……」

東の砦将「……」
副官「……」

勇者「ああ、別にあいつは戦争も争いも否定した訳じゃないぜ?
 ただなんて云うのかな、いまの『これ』は
 あまりにも不自然だ。歪んでいる。どこにもたどり着かない。
 そんなことが云いたかったんだと、今の俺は思ってる。
 あいつはちょっと頭が良すぎて、
 云ってることの半分も
 俺には理解できないことが多いのだけれど。

  あいつの考える『豊か』とか『平和』ってのは
 決して争いのない楽園じゃないよ。
 ただ、争いが自らを滅ぼさず未来へ繋がるって事なんだと思う」



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