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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」6-5


561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 17:21:46.06 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕

魔王「……」
勇者「どうした? どこからだったんだ?」

魔王「ふむ。鬼呼族の姫巫女からの親書だ」
勇者「どんな?」

魔王「停戦に同意する、と」
勇者「おお。……つっても、
 あそこは元から交戦派じゃないよな」

魔王「いや、この意味合いは小さくはない。
 “交戦したくはない”と“停戦をしたい”では
 その示すところが大きく異なる。
 鬼呼族は大勢力であるしな。
 先の乱世では 蒼魔族とは感情的なもつれがある仲だ。
 蒼魔族を説得、とはいわぬが、意志をかえさせるには
 鬼呼族の側面支援はありがたいだろう」

勇者「そうか。……機怪族はどうだ?」

メイド長「勇者様に運んで頂いた、鉱石、土壌サンプルなどを
 全て届けさせました。大きな興味を示されたようです」

魔王「そうでなくては、かなわぬ」
勇者「これでテコ入れになったかな?」

魔王「確実に効果はあろう。機怪族は発展のためにも、
 一族を増やすためにも希少鉱石と鉄が必要不可欠だ。
 この二つが、地上世界との交易により安定的に
 供給されるとあらば、一族の意志は根底から
 問い直されることとなろう」

勇者「良い方向だな」
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 17:22:49.08 ID:2wq60CIP
勇者「それにまぁ、荒療治だけど、
 獣人族の方も云われたとおりにしてきたぞ」

メイド長「いかがでした?」

勇者「メイド長の思惑どおり、矛は収めてくれたよ」
メイド長「そうでしたか。ふふふっ」

魔王「どういう事なんだ?」
勇者「いや、獣人族の女性蔑視が酷いって言ってたじゃないか」

魔王「ああ」

勇者「その辺いじって喧嘩をふっかけさせてさ。
 そのうえで十人抜きとかいって、その侮辱を撤回させてきた」

魔王「そんなこと出来るのか?」
勇者「おいおい、一応は勇者だぜ」

魔王「でも、余計に感情が悪化しなければいいが」

勇者「その辺は、メイド長の作戦でな」
メイド長「はい」

勇者「適当なところでこっちも譲って、
 相手を持ち上げていおいたんだ。成功したとは思うけれど」

メイド長「しばらくはぎくしゃくするかと思いますが
 悪い方に転がってはいないでしょう。殿方ですからね」

魔王「ふぅむ、やるな」
勇者「ちょっとつついただけさ」
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 17:23:54.49 ID:2wq60CIP
魔王「だが、こうなると。そろそろ頃合いか」
勇者「うん」

魔王「……迷うが」

勇者「でも、そろそろ時間的にも押してきているんじゃないか?
 なんとなくだけど、他氏族の長も苛々している印象を受ける」

メイド長「そうですねー。あまりにも長引きすぎると、
 温度は魔王様の指導力の問題も感じさせてしまいますね」

勇者「だけどまだ、蒼魔族は全然攻略できてないんだよな」

メイド長「ですね」

魔王「いや、一度押してみる時期か」

勇者「いくのか?」

魔王「ああ、この件で鬼呼族が当てに出来ると判った以上、
 他氏族の反応も含めて探るべきだろう。
 特に機怪族の意見について変化があったかどうかを知りたい。
 うまくいけば、蒼魔族の底意が開戦であったとしても
 全体の意見の圧力で雰囲気を一気に停戦に
 持っていけるかも知れない。

 そうなれば蒼魔族の1氏族だけでは、そこまで強固に
 交戦の主張も出来ぬであろうしな」

勇者「確かにそうなるか」

メイド長「では、明日にでも」

魔王「うむ、最初の激突といこう」
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:13:48.69 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕

ざわざわ……

魔王「さて、議論も出尽くした感がある。
 我ら魔界を支える偉大なる八大氏族。その氏族の長がたに
 今一度、この先の人間界との関係について意見を求めたい」

紋様の長「ふむ……」

蒼魔王「そんなものは決まっている。踏みつくし侵攻すべきだ」

銀虎公「おう! 人間何するものぞっ。
 そもそものところが、われらが緑なる大地に盗賊のように
 忍び込み、火を放って侵略を進めてきたのは人間ではないか!」

鬼呼族の姫巫女「しかし、勝ちが決まったとういう訳でもあるまい」

巨人伯「そうだ……。関わり合っても……。
 人間とは……被害、増える、だけ……」

碧鋼大将「地上世界の鉱物資源には気を引かれますがな」

蒼魔王「鉱物資源など、征服してしまえばいかようにでもなる!」

火竜大公「……これは勇ましい」

妖精女王「わたしは反対です。せっかく二つきりの世界。
 戦争は多くを踏みにじり、踏みにじられ、
 互いに疲弊する選択肢。
 ここは平和への道を模索するべきです」

銀虎公「ふんっ。腰抜けの妖精族がっ」
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:15:46.37 ID:2wq60CIP
魔王「銀虎公。忽鄰塔の場だ、無駄な挑発は慎んで頂こう」

銀虎公「ふんっ」

魔王「わたしはなにも、停戦して即座に人間世界と
 共存しようだなどとは考えてはいない。
 だがしかし、現在の地下世界と地上世界の戦力を考えると
 戦争をして勝てるとは言いきれぬ。
 いや、緒戦もしくは短期間であるならば、
 奇襲を中心に勝ちを収めることも出来ようが
 長期に渡る遠征は費用から見ても難しいだろう。

  そもそも勝ってどうする?
 人数では圧倒的に勝る人間の地を我ら魔族が支配して
 その支配を維持できるのかが疑問だ。

  当面の間、ゲートが破壊された“極”には十分の防衛軍を置き
 出入りに関してはな警戒を続ける。
 我ら地下世界にとって有利で有益な貿易であれば、
 制限しつつ続行をしても良いが人間となれ合う気はない。
 開門都市を取り返したとは言え、我らは侵略を受けた側なのだ。
 謝罪の必要は認めぬ。
 ただ現在の状況を見て、戦争を継続するのが合理的かどうかを
 判断して欲しい」

   勇者「上手い言い様だな。あれなら反感もかき立てない」
   メイド長「魔王様ですから」

紋様の長「我ら人魔族は、最初からの意見を変えるつもりはない。
 この件に関しては氏族の中でも議論も意見も割れている。
 よって立場としては中立、どちらにも与せぬ」
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:17:06.97 ID:2wq60CIP
蒼魔王「われら蒼魔の意見は統一されておる、
 このさい人間は滅ぶべきだ。彼らには彼らの罪の深さを
 炎の中で思い知らせるのが我らの道だと考える」

銀虎公「我が一族も同様。人間どもの狩り場を
 我ら魔族の物とすれば、遠征にかかる費用など容易く
 取り戻せよう。……ただし」

火竜大公「ただし?」

銀虎公「そのための準備期間として、しばらくの停戦が
 必要だというのであれば、その声に耳を傾けぬでもない」

蒼魔王「銀虎公っ。臆したかっ」

銀虎公「何を言うっ!」

鬼呼族の姫巫女「わが鬼呼族は戦争には反対だ。停戦を求める」

蒼魔王「っ!!」

鬼呼族の姫巫女「万事考え合わせるに、
 こたびの戦は我が方の受ける被害が
 甚大であろうという結論に達した。

  おのおのがたも覚えておいでだろうが、
 我らは一度は人間界の版図、極光島を占領したのだぞ。
 しかし、その極光島を維持することは出来なかったのだ。

  それはなぜか?
 われらが維持に必要なだけの兵力や物資を
 あの島に供給し続けられなかったのが大きな要因といえよう。

  確かに口惜しいことではあるが、現在の我らは
 仲間内で争うばかり。この戦争をやり遂げる実力に
 欠けるのではないかという疑念をぬぐえん」
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:18:48.21 ID:2wq60CIP
妖精女王「私ども妖精族も停戦には賛成です。
 もとより戦を望んだことは一度もありません。
 しかるべき使いを立てて、人間との交渉に当たらせるべきです」

巨人伯「俺たちは……戦争……しないで……すむなら……
 停戦に……合意……する……」

碧鋼大将「停戦するにしろ、地上世界の物資は我が氏族に
 とって必要だと判断する。
 よって停戦の場合の条件に何らかの交易取引、
 もしくは賠償としての物資要求をしていただきたい。
 ――そのような条件下で停戦に合意しましょう。
 かなえられない場合は、一戦を辞さないと我が氏族は考えます」

火竜大公「まぁ、このような流れになってしまっては
 仕方ありませぬなぁ。
 竜族としても停戦に合意いたしましょう。
 懸念であった開門都市もまた、
 人間族からは奪い返し魔王殿の直轄領となった。
 あの地が征服されたままでは絶対に合意することは
 ありませんでしたがな」 ぼうっ

魔王「ふむ、ではとりまとめると……
 条件はあれど、停戦に合意できるとする氏族が6。
 中立が人魔族一統、そして交戦すべしが蒼魔族……。
 このようになるな」

   勇者「思ったよりも良い流れだぞ」
   メイド長「ええ。獣人族が曲げてくれたのが大きいです」

蒼魔王「なんて軟弱な奴らなのだっ。おのおのがた!
 魔族の誇りはどうなされた! 我ら魔族が人間の風下に
 立ってなんとするっ!」
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:20:58.03 ID:2wq60CIP
妖精女王「しかし、停戦は魔王様の意志でもあります」

銀虎公「ふんっ。小癪だが魔王は、魔王だ」
巨人伯「そう……だ……」

鬼呼族の姫巫女「われらが魔族の大協定。
 魔王の言葉にはそれだけの重みがある。
 一考しなければなるまい?」

蒼魔王「っ! 敗北主義者どもが」

魔王「どうだろう? 蒼魔の勇士よ、ここは曲げてもらえぬか?」

紋様の長「あえて、というならば人魔の意見も停戦だ。
 なにもことさら人間と和議を結びたいわけではないが、
 ここで会議の結果が割れては、
 またしても魔界は乱世をむかえてしまうだろう。
 それだけは避けねばならぬ」

蒼魔王「――そんなにも」
銀虎公「?」

蒼魔王「そんなにも魔王の言葉が重いのか。
 では、各々がたに問おう。
 たしかに三十四代魔王“紅玉の瞳”の意志は停戦に有りとて
 しかしその魔王ご自身が決戦を決意されたならどうなさる!」
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:22:26.35 ID:2wq60CIP
巨人伯「……それは……しかたない」

碧鋼大将「魔王のご意志であれば、我ら鋼の民はくつわを並べて
 戦場にはせ参じ、人間らと一戦交えるのみ」

銀虎公「それこそが我ら獣牙の勇者の望みよっ。
 そのような雄々しい魔王の指揮の下、新たなる肥沃な世界に
 領土を求めることこそ、戦士の誉れっ」

妖精女王「しかし、戦はっ。戦争は互いの氏族を滅ぼす
 諸刃の剣っ。そのようなことでは氏族の命脈保てませぬっ」

蒼魔王「それこそ魔王の責務であろうっ。
 魔族を導き魔界に大いなる繁栄をもたらすことがっ。
 優れた魔王であるならば、
 妖精族から被害を出さずに勝利を手にすることも可能なはずだ。

 妖精族は魔王に信頼を置くことが出来ないというのか?
 それともなにか? 妖精族は我が氏族可愛さに
 魔界全ての繁栄を否定するというのかっ」

妖精女王「そのようなことはありませぬが……」

蒼魔王「我ら蒼魔の一族は、ここに
 三十四代魔王“紅玉の瞳”の廃位を要求するっ!!」

巨人伯「っ!」
火竜大公「なんじゃとっ!?」

鬼呼族の姫巫女「そのようなこと、許されると思うてかっ!」
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:23:34.25 ID:2wq60CIP
魔王「っ!?」

   勇者「なっ、なんだ!? そんなことあるのかっ!?」
   メイド長「判りませんっ。そんなことが出来るか
    どうかなんて考えたことさえありませんでしたっ」

妖精女王「馬鹿なことをっ! どのような権利を持って
 たかが一介の氏族長がそのようなことを要求するのですっ!」

蒼魔王「出来るのだ。『典範』にも明記されている。
 非常に希なことではあるが、第八代の治世に前例がある」

巨人伯「前例……」
火竜大公「うかつっ」

鬼呼族の姫巫女「前例とは?」

蒼魔王「『典範』によれば、“魔王を除いた忽鄰塔参加族長の
 半分の賛成を持って魔王を廃位出来る”となる。
 すなわち、4名だ。
 使われたことが一度しかない権利だが、前例は前例だ」

銀虎公「そのような前例が……」にやり

碧鋼大将「魔王殿はその在位の間一度も戦の経験がおありではない。
 このような魔界存亡の危機にその資質が問われると?」

蒼魔王「我ら蒼魔族はそのように考える」

銀虎公「そうだな。魔王たるもの相応の実力を持ってなきゃいかん」

碧鋼大将「……理に叶うのであればそれも道」

巨人伯「……魔王は……おおきな……ほうが……良い」
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:26:18.09 ID:2wq60CIP
   勇者「何だってんだこいつら」ぎりっ
   メイド長「落ち着いてくださいっ」

火竜大公「ふぅ……」
鬼呼族の姫巫女「魔王の廃位か。……して、新魔王は?」

蒼魔王「それは魔王が倒れた時と同じように、
 新しい星が魔王を選ぶだろう。
 候補者の中から魔王選定の武会を開催して決めればよい」

銀虎公「今度こそ、我が獣人から魔王を出すのだっ」

蒼魔王「これは頼もしいことですな。だがしかし、
 われら蒼魔族も忘れて貰っては困りますぞ。
 どちらにせよ、次代は雄々しい魔王をいただけるというわけだが」

巨人伯「我ら……巨人の子らに……栄光は……輝く……」

鬼呼族の姫巫女「……そのようなことを考えておったか」

魔王「……」

   メイド長「まおー様が、真っ青です……」
   勇者「魔王っ。どうにかならないのか」

   メイド長「まったく予定にないことですから……」

蒼魔王「では、決を採るとしましょう、各々がた」

火竜大公「いや、またれよ」

蒼魔王「は?」
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 18:28:46.55 ID:2wq60CIP
火竜大公「これはこれで、重大事。
 しばし協議の時間をいただきたい」

蒼魔王「何を話合う必要がある。
 この評決は全会一致を目指す訳でもない。
 己が信じるところの意思を表明すればそれで事足りるわ」

銀虎公「その通りだっ」

鬼呼族の姫巫女「いや、火竜大公の云うことももっとも。
 氏族への説明も無しに決めることは、出来ないこともあろう。
 それぞれがそれぞれの事情を抱えているのだ」

蒼魔王「ふんっ」

巨人伯「日没……来る……」

蒼魔王「良いでしょう。日没まで後二時間ほどだ。
 採決は日没に行いたい。
 そのために二時間を協議に当てると云うことで宜しかろうな」

火竜大公「……良かろう」
鬼呼族の姫巫女「心得た」

妖精女王「そんな……」

魔王「……では」

紋様の長「いや、これは魔王“紅玉の瞳”殿の進退を問う評決。
 魔王殿、あなたが発言することは重大な『典範』への
 挑戦となりましょう。二時間を、心安らかにお過ごしあれ。
 結果如何によっては、今宵、開戦の決が取れるやもしれませんぞ」
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 20:29:22.37 ID:2wq60CIP
魔王「やられたっ」どんっ

メイド長「まおー様……」

魔王「あんな手に出てくるとは、予想してなかった。
 こちらの読みが甘かった……。
 わたしも魔王の権威に頼っていたというのかっ」

勇者「……」

魔王「……すまぬ。良いところまで議論を
 追い詰めていたというのに。このままでは……」

勇者「いや、これは俺の責任だ」

メイド長「勇者様……?」

勇者「警告は受けていたんだ。――魔法使いから。
 『典範』を探して、調べろって。それを突き詰めなかった
 ――俺の責任だ」

メイド長「……」

魔王「いや、そうではない。
 結局は目先の停戦ばかりを追いかけて、魔族の中に信頼を
 育てることが出来なかったわたしの無為が招いた結果だ」

勇者「駄目なんて云うなよ」
メイド長「そうですよ、諦めるには早すぎます」

魔王「しかし、この二時間で打てる手がない。
 あそこまではっきりと釘を刺された以上、
 わたしが他の族長の説得をすると云うことは、
 保身以外の何者でも無かろう。
 残されるとすれば、採決の場にて魔王廃位に票を投じた長を」
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 20:31:12.87 ID:2wq60CIP
勇者「殺しちまう、ってやつか」

魔王「そうなる」
勇者「だが、この状況になっては意味がないな」

メイド長「そうですか?
 まおー様だって云ってたじゃありませんか。
 過去には言うことを聞かなかった
 長を消し炭にした魔王さえいるって。
 それこそ前例があります」

魔王「だが、しかしそれは1名だったのだ」

勇者「ああ。つまりは、全会一致のために、
 その1名を取り除く必要があったんだ。
 消し炭って云う過激な手段に目が行くけれど、
 結局魔王は他の7氏族の支持を受け代表して粛正したに等しい」

メイド長「……」

魔王「この状況で、たとえば4名の長がわたしの
 廃棄に票を入れたとする。
 その長を皆殺しにして決定を破棄させたとしても、
 “半数の氏族が魔王を支持していない”と云う事実は
 消えることがない」

メイド長「そんな……」

魔王「今までも支持をしていたわけではないだろうが、
 それでも魔王の名前が持つ権威に従ってくれていたのだ。
 蒼魔族は判っているのだろうか。
 わたしの廃位うんぬんではなく、
 ここで決定的な亀裂が起きてしまえば
 また魔族の内部分裂が始まる。
 乱世の再来を自分たちで招いていることに……」

勇者「……」

魔王「事は魔王が廃位する、と云うことより深刻なのに
 ただ見ているしかできないとは……」
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:06:12.56 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕

蒼魔王「さて、時間だ」

魔王「……」

   勇者「大丈夫だ。いざとなれば力尽くでも」
   メイド長「でもそれじゃ」
   勇者「魔王を護る。そうすればまだチャンスはあるはずだ」

紋様の長「日が沈むな……」

蒼魔王「さよう。緑の太陽がその輝きを衰えさせる」

銀虎公「評決と行こうではないか、皆の衆」

碧鋼大将「良かろう」

巨人伯「……わがっだ」

火竜大公「……」

蒼魔王「では、動議を提出させて貰ったわたしから行こう。
 われら魔族が戦を望もうと望むまいと、
 現に今は戦時下である。人間が何時攻め込んでくるやもしれぬ。
 そのような時に、怯懦な魔王を頂くとは
 氏族の民に対する裏切りにも等しい。
 わが蒼魔は、現魔王の廃位に票を投じる」
609 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:08:21.73 ID:2wq60CIP
妖精女王「妖精族は現魔王の今までの業績を評価します。
 魔族同士の争いを止め、紙や土木技術などの面で
 魔界の文化に貢献なされました」

銀虎公「文化? ふんっ」

妖精女王「我らは小さきもの、かそけきもの。
 月光と森羅に住む妖精族は現魔王を支持します」

魔王「……」

銀虎公「わが獣人族にとって力が全て。力あるものに従い
 戦においては武功を立てて、平時にあっては力を蓄える。
 現魔王は1回の親征も行ってない故にその実力は未知数。
 わが獣人族は伝統に従い、力計れぬものに信頼は置けぬ。
 獣人族は、現魔王の廃位を求める」

鬼呼族の姫巫女「我らが戦に対する求めは
 先に話したとおりの現状維持。魔王を変えてなんとする。
 次に選ばれる魔王が、戦に狂った狂人でない保証はなく
 現魔王よりも力に溢れているという保証もない。

  我らは常に何時の世代であれ、
 配られた札での勝負を余儀されなくされてきた。
 それがこの世界の不文律。
 限られた選択肢の中で知恵をしぼる尊さを理解する故に、
 我ら鬼呼の民は現魔王を支持する」

碧鋼大将「地上に溢れる宝はやはり我が氏族に不可欠。
 その素晴らしさを教えてくれた現魔王には感謝するが
 やはり我らと人間はわかりあえぬ。
 魔族の中ですらその異形ゆえ、
 長い間権利も認められず機械人形の類として虐げられてきた我らは
 人間との交わりの中で、
 一度得た我らが権利が失われることをこそ恐れる。
 やはり人間と共には暮らせぬ。
 ――我らは、現魔王の退位を望む」
610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:09:47.40 ID:2wq60CIP
紋様の長「我らが人魔一統は、この件に関しても中立を
 貫かせて頂く。つまり、棄権だ」

蒼魔王「ふんっ。その優柔不断がそのうち手ひどい
 火傷になって自らを焼かないように気をつけることですな」

巨人伯「……魔王は……ちいさ、すぎる……。
 俺たちは……小さいひとより……おおきな、ひとが、良い……
 ……いくさは。なくてもいい……が……
 魔王は……変わるなら……変わった、ほうが……
 良い……」

魔王「……っ」

   勇者「よっつだ……」
   メイド長「駄目――なのですか……」

銀虎公「魔王は廃位。これで次代の魔王が生まれるのだっ!」

碧鋼大将「新魔王、か」

蒼魔王「早速ふれを出さなければ。しかし、在位20年。
 長くはないが、けして短くはない。
 しかも、存命のまま魔王の座を降りることが出来るなど
 ある意味限りなく幸運なことと云えましょうな」

火竜大公「黙れ」

蒼魔王「は? なにを云っているのですか? 老公。
 もはや結果は出たのです。今さら何をかばう必要があります」

火竜大公「黙れ、と云ったのじゃ」 ごうっ!
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:24:51.07 ID:2wq60CIP
鬼呼族の姫巫女「……」

蒼魔王「では黙りましょう。ご老公。何か仰りたいことでも?」

火竜大公「我がまだ票を入れていない」

銀虎公「何を言っている、もう結果は出たのだ!」

蒼魔王「さよう。ご老公が現魔王を支持したとしても、
 結果は変わりませぬ。何を言い出すのです」

火竜大公「そのようなことを云っているのではない。
 我はこれでももっとも古くから魔界の氏族として
 成り立ってきた竜の一族、そのとりまとめたる火竜大公ぞ。
 何故その言葉を聞かれることもなく
 かような重大な決議を下されねばならぬっ!」

銀虎公「だから結果は変わらないと……」

火竜大公「黙らっしゃい!!
 我が一族を軽んじるのではない! そのように云っているっ!!」

鬼呼族の姫巫女「それは、もっともな仰りようではあるな」

紋様の長「確かに」

蒼魔王「ふむ。一理あるようだな。
 是非ご老公の判断も伺いたい。
 たとえその意見が結果にいささかも影響を
 与えられないとしても、ですがな」
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:25:55.06 ID:2wq60CIP
銀虎公「早く言って欲しいな、こちらは年寄りではないのだ」

火竜大公「……」

妖精女王「火竜大公、最後の意見を」

魔王「……」

紋様の長「ご老公、票を投じ為されませ」

火竜大公「……」

蒼魔王「ええい、何を押し黙っているのだ!
 みずから軽んじるな、発言を重んじろと云っておきながら
 沈黙を通すとは、いかなる了見か。応えて頂こうっ」

銀虎公「そうだ、ご老公。その態度はわれら八大氏族と
 忽鄰塔を愚弄することに他ならぬぞっ」

バサッ

東の砦将「遅れましたかい?」
副官 ぺこり

魔王「え?」
勇者「砦将……? なんで」
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:27:22.12 ID:2wq60CIP
火竜大公「では、我が竜の一族から申しあげよう。
 我が竜の一族は、ここに改めて、新しい氏族を紹介したい」

蒼魔王「なっ、何を言い出す! この危急の時にっ!」ダンッ
銀虎公「氏族だと!? 聞いたこともないっ!」

鬼呼族の姫巫女「説明して頂けるか? ご老公」

火竜大公「もちろんだ。
 だがひとまずは彼の者の口上を聞くのが宜しかろう」

東の砦将「あー。俺、じゃねぇや。
 えーっと。それがしは東の砦将と申す者。
 ここに忽鄰塔本会議すなわち大氏族会議への
 参加を求めてやってきた」

魔王「参加……?」

蒼魔王「何を言う! 忽鄰塔本会議は魔族のなかでも
 もっとも実力ある八大氏族と魔王が意志決定をする
 魔界の最高機関。
 貴様のような木っ端魔族が参加するような所ではないわっ!」

東の砦将「そいつぁどうも。俺は魔族でもない人間なもんで」

蒼魔王 がたっ!
銀虎公「人間だとっ!?」

巨人伯「に、人間……!」

蒼魔王「どういうつもりだ、火竜大公っ!!」

火竜大公「どういうつもりもこう言うつもりもない。
 そもそも魔族とはなんぞ? この地下世界、魔界へ住む
 ものの総称であろうがよ。この者は魔界に住んでいる。
 故に魔族だ。人間でもあるのだろうがな」
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:28:35.56 ID:2wq60CIP
銀虎公「そんな説明が納得できるかっ!」

火竜大公「『典範』のどこにも、人間を魔族と認めぬとは
 書いていないではないか」

鬼呼族の姫巫女「あははははは!!!」

紋様の長「その人間がこの会議に何用なのだっ!」

東の砦将「ええ、それをこれからご説明しますよ。
 俺、あー。それがしは、族長として」

蒼魔王「人間の次は族長だとっ!?」

東の砦将「そうですな。
 それがしは衛門族の族長として、氏族四万八千を背負い、
 この忽鄰塔大会議への参加を要求します」

銀虎公「……」
碧鋼大将「な、なんだ、それは……」
妖精女王「四万八千……?」

火竜大公「さよう。この忽鄰塔大会議は魔王と魔族の中の
 有力部族の長による会議。
 別に八大氏族などと決まっていたわけではない。
 思い出すが良かろう?
 そもそも機怪族が参入したのは、たかだか6代前ではないか」

碧鋼大将「我らはその権利を勝ち取った」
巨人伯「あれは……戦争の……結果……」

火竜大公「何も戦は必須ではない。4万を超える氏族と
 すでに会議に参加している二氏族の長からの推挙があれば
 それでよい」
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:30:35.71 ID:2wq60CIP
妖精女王「4万……?」

紋様の長「ばかな、それでは中小の氏族でさえ、
 大会議に参加できることになる」

蒼魔王「そうだ、そのような民の数で何故有力を名乗れる!」

火竜大公「そんなことは、わしのあずかり知ったことではないわ!
 前例があり、『典範』に記述がある。それだけよ」

副官「私から説明させて頂きます。
 えー。
 おそらくは前例の作られた時代による要因が
 大きいのではないでしょうか?
 つまり当時であれば、おそらく4万は十分な
 大氏族であったのかと考えます」

紋様の長「時代……だと……」

火竜大公「しかし、前例は前例だ。前例は絶対なのであろう?」

銀虎公「だ、だれが推挙するというのだっ!
 人間の治める氏族などっ!!」

東の砦将「頼むよ、爺さま」

火竜大公「我が後見に立とう。後1名は、そうじゃな……」

鬼呼族の姫巫女「あはははははっ! これは愉快、痛快じゃ。
 よかろう。わたしが立とう。妖精女王でも引き受けては
 くれようが、わたしもこの人間の言い様が気に入った」
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:33:49.52 ID:2wq60CIP
副官「こちらが氏族四万八千の連名書。
 および氏族の本拠地たる開門都市自治政府の信任状。
 ただいま後見を頂きました両氏族の長の言葉を持ちまして
 全ての条件を整えましてございます」

蒼魔王「我らの声はどうなるっ」

火竜大公「この前例は評決さえ必要とはせぬよ。
 手続きが終わった今よりこの男は衛門族の族長。
 この会議に参加し、発言する権利を完全に備えた参加者じゃ」

鬼呼族の姫巫女「はははっ! して、どうする」

魔王「っ!」
蒼魔王「……まっ、まさか」

東の砦将「問うまでも無きこと。我が衛門族が望むは平和と繁栄っ。
 すでに我が都市には多数の人間が暮らし、
 魔族と手を携えてやっておりますよ。

 もちろん面倒揉めごとはありやすがね。
 それでも何とかやっていけるもんでさぁ。
 俺たちゃべつにガキじゃねぇんだ。
 腹立ち紛れに殴り合うこともあれば、
 同じ釜の飯を食って肩をたたき合うこともある。

  人魔族、獣人族、妖精族に、竜族、蒼魔族、
 数は少ないが巨人族さんや機怪族、鬼呼族さんだって
 いらっしゃるんだ。
 ルールは一つだ。仲良くやって豊かになれ。

  俺たち……あー、なんだ面倒だな。
 それがしと衛門族は、現魔王を支持しますってことで」

火竜大公「さて。おぬし。半数は取れなんだようじゃの」
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:49:03.77 ID:2wq60CIP
勇者「砦将っ! 砦将っ! ば、馬鹿やろうっ!
 知らなかったぞ、俺はっ!!」

東の砦将「すまねぇな、勇……黒騎士さんよぅ。
 俺たちだって馬を何頭もつぶしてさっきついたばっかりなんだ。
 どうもその、二時間か? その間についちまったらしくて
 どうやっても魔王の天幕には近づけなくてな」

魔王「これだけのことを……。
 わたしはその恩に応えるほどの事もしていないだろうに。
 あの都市に砦将殿が残された遠因はわたしにもあるのに」

東の砦将「いいってことさ。あの馬鹿な司令官の
 煤払いをしてくれたんだって思えば有り難いくらいで。
 って、魔王さまだったな。
 えー、ありがたく思っているんです」

魔王「ふふふっ。普段どおりで良いのだ」

東の砦将「ほう。なんだよ、笑うじゃねぇか」
副官「ま、その辺は後ででも」

火竜大公「そうだの。卿の会議はこれ以上進むまい?」

鬼呼族の姫巫女「宜しかろうな、皆様方」

銀虎公「ちっ! 切り上げだ! 帰るぞっ!」

蒼魔王「不愉快だ。失礼するっ」ガタッ

紋様の長「あれが開門都市の……」がたり
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 21:50:40.53 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕前

魔王「そうか、それで馬を飛ばして……」
勇者「魔法使いが『典範』を届けてくれていたのか」

副官「そうなんですよ。でも、解読するのに時間が掛かって。
 それで、もしかして何か役に立てるかもと思って信任状を
 とったり慌ただしかったものです」

魔王「手間をかけたな。深く礼を言う」
勇者「魔王がこんなに感謝するのも珍しいぞ」

魔王「何を言う、わたしは恩知らずではないぞ!」

メイド長「あらあら、まぁまぁ」

勇者「まぁ、ともかく天幕で一息つこう」
東の砦将「喉もからからだし腹も減ったよ」
副官「そうですねぇ」

メイド長「とびっきりのお茶を入れますわ。
 ねぇ、魔王様。お祝いですから、紅葉色の深煎り茶でも」くるんっ

ヒュン! ヒュンヒュンヒュン!!

魔王「え」 トスっ

勇者「狙撃っ!? どこだっ!?」
東の砦将「弓矢かっ、伏せろッ!!」

副官「なんて威力だっ」

メイド長「魔王様っ!? 魔王様っっ!!!」

魔王「あ。……ん。……ゆう、しゃ」
勇者「魔王っ!!!!!」
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:21:22.12 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕

バサッ!!

火竜大公「魔王殿が倒れたというのは真実かっ!」

東の砦将「……」
鬼呼族の姫巫女「そうだ」

火竜大公「何が起きたというのだ。説明せんかっ!」

副官「あの会議の後、わたし達は魔王様の天幕へと
 短い距離を談笑しながら移動していました……。
 何者かが、無防備な魔王様を弓矢による狙撃で……」

火竜大公「魔王殿は、魔王殿は無事なのであろうなっ」

紋様の長「今は遅延の紋様を施した奥の部屋にて」

火竜大公「遅延……とは?」
紋様の長「毒をお受けです。その効果をゆるめるために」

東の砦将「弓矢は、肺を貫いた。どうあっても相当な重傷だ。
 いや、本来即死でもおかしくはねぇ。
 それを黒騎士が尽きっきりで食い止めようとしている」

副官「……」

紋様の長「紋様の唱え師と鬼呼族の癒し手に
 祈呪をさせてはいますが、あまりにも傷が深すぎ
 毒性も強すぎる……」
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:22:48.45 ID:0Bi87sEP
鬼呼族の姫巫女「なにゆえ……」

火竜大公「どこの誰がやったのだっ。
 このような時に、このような場所で。
 かつて忽鄰塔において魔王が討たれたことなど一度たりとて無いっ」

東の砦将「……っ」

鬼呼族の姫巫女「このようなやり方で魔王を討ってなんとする。
 そのような卑劣なやり口、
 我らが魔族において受け入れられると思うているのか。
 ――痴れ者がっ。
 卑劣な暗殺などで意を通そうとしても八大、
 いや九大氏族ことごとく背くことがなぜ判らぬ」

紋様の長「人間、ですか……」

副官「何を仰るんですっ!?」

紋様の長「このような方法で魔王を討ったとしても
 それは汚名になりこそすれ、武名とはなりません。
 魔族においてそれは判りきったこと。
 我ら族長を動かすことなど……。
 であれば、魔王を討つための人間の刺客を疑うのは必然」

火竜大公「……いや、さように考える我らたればこそ。
 ことさらに魔族かも知れぬ。
 討っ手が露見さえせねば汚名もまたかぶる必要がない。
 “障害が取り除かれた”。
 その一事を持ってよしと考える輩かも知れぬ」

鬼呼族の姫巫女「今は祈るしかないのか……」
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:24:04.91 ID:0Bi87sEP
ぱさり……

勇者「……」
火竜大公「黒騎士殿っ」
鬼呼族の姫巫女「魔王殿の様態はどうなのだ!?」

勇者「……一両日が峠だ」

東の砦将「っ!」

鬼呼族の姫巫女「何かいりようなものはないか?
 氷か? 薬草か? いま本拠に最高の癒し手を
 呼びに行かせておる」

勇者「……いや、お二方には世話になった。
 望める限りの援助の手をさしのべて貰って、感謝の言葉もない。
 いまはメイド長がついているが……。
 奥には入らないでくれ。
 ――壊死が、ひどい」

副官「そんな……」

勇者「……魔王が倒れたら、次の魔王の選出はどうなる?」

火竜大公「今はそれどころでは」

勇者「教えてくれ」

紋様の長「……星が魔王の候補者を選びます。
 候補者は身体のどこかに刻印が現われる。
 刻印がくっきりと大きいほどに魔王になる素質が高いと
 一般には言われています。
 事実、歴代の魔王は濃い刻印を持っている」
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:25:40.85 ID:0Bi87sEP
鬼呼族の姫巫女「刻印を持つ者は多くの場合複数現われる。
 と云っても、二人から三人だが。
 現魔王が即位した時は、例外的に刻印を持つ者が多かった。
 あのときは確か……」

紋様の長「六人でした」

鬼呼族の姫巫女「刻印を持つ者が一人であれば、その者が魔王だ。
 複数であれば、魔王を決めるための継承候補者戦を行う。
 魔王本人、もしくは従者を代理に立てての勝ち抜き試合だ。
 この勝者を持って魔王とする」

勇者「……そうか」

ざっざっざっ

火竜大公「どこへ行く、黒騎士殿っ」
東の砦将「おいっ!」

勇者「魔王の意に沿いに行く」

火竜大公「何を!? どこへじゃ」

勇者「……戦いを止めるには時を移す訳にはいかない。
 魔王の命を燃やす時は黄金の一粒より貴重だ」

副官「そんな……」

鬼呼族の姫巫女「黒騎士殿」
紋様の長 ざっ

鬼呼族の姫巫女「鬼呼族の長としてわたしはここに留まろう。
 結果をうけあえぬは断腸の想いなれど癒しの祈り手と共に
 最善を尽くしましょう」

勇者「感謝する」

ばさっ!
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:26:33.82 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、天幕の街

ひゅん、しゅばっ!
 たったったったっ、たったったったっ。

勇者「夢魔鶫っ」
夢魔鶫「御身の側に」

勇者「足跡は?」
夢魔鶫「申し訳ありません、たどれませんでした」

勇者「位置の把握は出来たか」
夢魔鶫「北東の丘の一つです」

勇者「案内しろっ。“加速呪”っ」

ひゅん、しゅばっ!

――。 ――――。

夢魔鶫「こちらです」
勇者「……ここから狙撃したのか」

妖精女王「黒騎士様」

勇者「こちらにいたのか」

妖精女王「はい。妖精族は氏族をもって都市を封鎖しています。
 もっともわたしたちの戦力では、封鎖と云うよりも
 監視に過ぎませんが……」

勇者「それで良い」
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 12:27:26.96 ID:0Bi87sEP
妖精女王「魔王様は……?」
勇者「危険だ」

妖精女王「……」

勇者「そのまま監視を続けてくれ。変事があれば報告を頼む」

夢魔鶫「主上」
勇者「どうした?」

夢魔鶫「逃走経路を探索した結果、複数の形跡を発見。
 おそらく犯人は、数人から十人程度の組織で行動中です。
 互いに移動の痕跡を消しあいながら移動している様子」

妖精女王「集団なのですね」

勇者「そいつには聞きたいことがある、色々とな」
妖精女王「はい」

夢魔鶫「主上、おかしな痕跡を発見しました」
勇者「……なんだ」

妖精女王「何もないではありませんか」
勇者「これは……戦闘か?」

夢魔鶫「判りません」
妖精女王「妖精族の魔力でも、何かあったかどうか
 かろうじて感じることが出来る程度ですが……」

勇者「“影の中の一矢”。……爺さんか」
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 13:08:29.97 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、天幕の街外縁

羽妖精「イタ?」
羽妖精「イナイー」

羽妖精「ミタ?」
羽妖精「ミナイー」

羽妖精「デモ」

羽妖精「デモ」

羽妖精「ナンカ、キタ」
羽妖精「兵隊ダヨ、兵隊ガイルヨ」

羽妖精「息ヲ潜メテイルヨ」
羽妖精「隠レテイルヨ」

羽妖精「ゴ注進ダ-!」
羽妖精「女王様ニゴ注進ダ-!」

羽妖精「黒騎士様ト魔王様ガ危ナイヨ」
羽妖精「危険ダヨー!」

羽妖精「ゴ注進ダ-!」
羽妖精「女王様ニゴ注進ダ-!」

羽妖精「谷間ニハ兵隊ガ潜ンデイルンダッテ!」



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