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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」6-4


467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 19:57:39.38 ID:GDf918.P
火竜大公「消し炭にでもなりに来たのか」
青年商人「いや、消し炭にならなかった“ソレ”もいるでしょう?」

火竜大公「……っ」
青年商人「ええ、そうです。黒騎士です」

火竜大公「知っているのか」
青年商人「ほんのりと」

火竜大公「近習っ」
近習「「「はっ!」」」

火竜大公「さがっておれっ」

近習「たっ、ただいまっ!」
 ザッザッザツ

青年商人「……」
火竜大公「貴様、何者だ。何をしにきた?」

青年商人「実はさる契約がありまして。
 商業上の道義的な責任において、
 わたしはその契約に縛られているんです」

火竜大公「……」

青年商人「その契約者との約定に基づき、
 “火竜大公をこてんぱんにしてこい”と。このようなわけでして」

火竜大公「ふっ。商人風情が、そのようなこと出来るのか」

青年商人「出来ません」
火竜大公「ふっ。白旗か。……あの男に似た気配かと思えば」

青年商人「しかしながら降伏も出来ない案件で」
火竜大公「契約者には腹を捌いて詫びるのだな」
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 19:59:27.36 ID:GDf918.P
青年商人「いえいえ、そうも行きません」
火竜大公「なにゆえ?」

青年商人「契約を守られなかった契約者の鬱憤は
 その謝罪で多少は癒えるかも知れませんが、
 契約を守りたかったわたしの鬱憤は少しも癒えませんので」

火竜大公「大きな口を叩くではないか」

青年商人「そこでお願いがあるのですが、
 ……負けてはいただけませんか?」

火竜大公「何を言っているのだ。気でも狂ったか。
 いや、やはり消し炭になりたいものと見える。
 安心をしろ。一瞬で燃えかすまで焼き尽くしてくれようっ」

青年商人「塩を止めます」

火竜大公「は?」

青年商人「『開門都市』に流れている塩の流通量の95%を
 現在わたしが掌握しています。その塩を止めることも可能です」

火竜大公「……なっ。なにを」

青年商人「魔族豪商殿は竜一族でもっとも力のある商人ですね。
 彼の元へと卸される塩の蛇口を私どもが握っている。
 その事実を申し上げました」

火竜大公「卑劣なっ」

青年商人「今回ばかりは、正真正銘命がけですから」しれっ
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:01:48.47 ID:GDf918.P
火竜大公「……貴様」

青年商人「塩がこの地において貴重品であるとの認識は
 わたしも持っています。
 わたしとしても、依頼者としても竜族と事を
 無駄に荒げたくはない。
 いや、地下世界における交易において、
 竜族が新しいパートナーとしてもっとも相応しいと
 敬意を抱いております」

火竜大公「脅しておいて今さら世辞を言うつもりかっ」

青年商人「そこで買って頂きたいものがありまして」
火竜大公「……何を売りつけようというのだ」

青年商人「じつは、先年人間の軍に奪還された極光島。
 あの島を私どもは租借する結果となりました」火竜大公「租借?」

青年商人「ええ、島ごと借り上げた形です。
 現在旧来の設備に加えて、塩田を整備しています。
 その塩田からあがる塩を」

火竜大公「買い取れと云うのか?」

青年商人「いいえ」火竜大公「では、どういう用件なのだ」

青年商人「塩そのものではありません。
 この塩田から毎年採取される塩の、その総量の1/3を
 優先的に買い付けることの出来る権利。
 これを買って頂きたい」

火竜大公「権利、か」
青年商人「あくまで権利です。対価は毎年頂きましょう。
 しかし、価格については市場価格から両者が合意できる
 額を決定できるように取りはからいます」
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:04:41.44 ID:GDf918.P
青年商人「念のために申し上げれば、この“総量の1/3”は
 かつて魔族の軍は極光島を占領していた際、
 地下世界へ送っていた塩の量にほぼ匹敵します。
 塩田設備の差と、効率採集によるものだと考えてください」

火竜大公「……」
青年商人「……」じっ

火竜大公「強気じゃの」
青年商人「交渉は、それが可能なら強気で行うべきです」

火竜大公「ふんっ。……我が氏族にとってその塩は
 なければならぬもの。塩がなければ命を落とすものも出よう」
青年商人「……」

火竜大公「何が欲しいのだ。我の首かっ。商人っ!」ギロッ

青年商人「……」
火竜大公「……」

青年商人「“わたしと戦って負けた”と云うことにして頂ければ」
火竜大公「……何故かは知らんが、心底嫌そうだの」

青年商人「当たり前です。わたしは商人です。
 今回のような圧力をかけるような交渉だって
 けして好ましくはない。
 ましてや個人のプライドを対価に取るなど」

火竜大公「ふんっ。ここまで来て騎士道とやらか?」

青年商人「いえ、ただ利潤追求上、無意味であるばかりか
 不利益であるということです。
 将来的にパートナーになりうる可能性があるのならば、
 顔まで出して恨みを買う意味などどこにもない。
 同様の交渉は代理人や何枚かの壁を間に挟んでも
 出来たはずなのですが……」
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:06:12.66 ID:GDf918.P
火竜大公「出来なかった、と」
青年商人「ああ。面倒くさいですね。やめましたっ」

火竜大公「ぬっ?」

青年商人「さて、ここに極光島塩田開発の計画書および
 その生産量、塩の品質、輸送計画、コスト計算に関する
 資料、それらに基づいた事業計画書があります。
 われら『同盟』はとりあえず20年間、あの島を租借して
 塩田開発事業、およびその輸出事業の許可を受けている。

  本来は購入権利などでお茶を濁すべきかも知れないが
 それはわたしの商人としての勘もそろばんも矜持ですら
 “ぬるい”と告げている。

  直裁に申し上げる。
 我らはこの事業全体を“分割”する用意がある」

火竜大公「分割……?」

青年商人「そうです。この事業に出資して頂きたい。
 この事業全体は人間の金貨にして6000万の規模を持ちます。
 見返りとして、出資額に応じ、相応の割合の塩を
 毎年お届けしましょう。またそれとは別に塩を好きなだけ
 買い取って貰っても結構」

火竜大公「結局は塩の買い取りではないか」

青年商人「まったく違います」

火竜大公「……」

青年商人「これは一種の協定だと考えて頂きたい」
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:07:48.55 ID:GDf918.P
火竜大公「協定とは?」

青年商人「この契約が存在する限り、
 わたしどもの組織『同盟』は、竜の一族に塩を供給します。
 この事業が発展すれば、地下世界で塩を扱うことにより
 竜の一族がより交易での繁栄を願うことも可能でしょう。
 同様に、竜の一族が健在で、この契約を守っていてくれる
 限りわたし達はこの事業から手数料や正当な利潤を経て
 着実な利益を上げることが可能となる」

火竜大公「……」

青年商人「お解りのはずです。
 これは、塩の交易を媒介とした安全保障条約です」

火竜大公「そのようなことを信ぜよと?」

青年商人「全ての情報はそこに書いてある通り。
 現地の視察をなさっても構わないし、
 魔族豪商どのに塩の運び入れ状況と品質について
 お尋ねになるのも構わないでしょう」

火竜大公「……」

青年商人「私どもはこの魔界に販路を持ちたく願っています」

火竜大公「販路、か」
青年商人「……」

火竜大公「依頼者は公女か?」
青年商人「守秘義務のためにお答えできません」
476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:10:10.36 ID:GDf918.P
火竜大公「良かろう、この話、検討しよう」
青年商人「……」

火竜大公「出資については追々詰めるべきであろうが、
 人間界の金貨は持ち合わせがない。
 砂金で払っても構わぬであろうな?」

青年商人「もちろん」

火竜大公「そちらの希望、および当方の事情からすれば
 出資金による金銭授受の他に、いくつかの物品について
 相互に物資をやりとりすることにより、空荷での
 交易を取りやめ利益を上げるべきかと思うが?」

青年商人「はい」

火竜大公「こちらから供出、輸出できる品目については、
 追ってリストを届けさせよう。これら取引の窓口は
 魔族豪商にて依存は?」

青年商人「ありません」

火竜大公「――覇は求めぬのか?」
青年商人「商人の手には余ります」

火竜大公「負けた。……公女にはそう言っておこう」
青年商人「……」

火竜大公「嫌そうな顔をするな。これは我のあずかり
 知らぬ事情なのだ。商人と依頼者の問題であろう?」

青年商人「はぁ……」

火竜大公「黒騎士殿に詫びる必要があるかどうかは
 じきに判るのであろうな。ふわーっはっはっはっは!」
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:38:12.02 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕

勇者「あ゛~」 へたぁ
魔王「ううう……」 くたぁ

メイド長「あらあら、二人ともだらしない」

魔王「そんなことは云っても」 へろぉ

勇者「なんだ。会議だの根回しだのってのは
 こんなにも疲れるのか。合戦並みの疲労だぞ」 よぼよぼ

メイド長「神経を消耗するという意味では同じですからね」

魔王「で、どうだったのだー勇者」
勇者「そっちこそどうだったんだよー魔王」

魔王「……」
勇者「……」

魔王「せーので、云うか」
勇者「わぁった」

魔王「せーの」

勇者「蒼魔族はだめだめ」 魔王「獣人族は話通じない」

魔王「……」 がくっ
勇者「……」 ぽてっ

メイド長「あらあら」
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:39:53.69 ID:GDf918.P
魔王「獣人族の奴ら、はなっから話を聞かないのだ。
 どうもうさんくさい感じはするのだが、
 挨拶をした次の瞬間から帰れと言われる始末。
 挙げ句の果てには、女が魔王になっても
 ろくな事にはならないなどと陰口を叩かれる。
 あそこまで女性蔑視が強い氏族であったとは思わなかった」

勇者「蒼魔族は、なんていうか、表面上は最敬礼だぞ。
 よく判らんが、黒騎士ってのは強い戦士なんだろう?
 戦士部族らしい下にも置かないもてなしを受けたぜ。
 ただ、話はさっぱり通じてる雰囲気がない。
 “平和? 戦士である我らがそんな冗談を言ってはいけませんよ”
 くらいの温度感だ。あいつらどっかいかれてるよ」

魔王「はぁ……」
勇者「ふぅ……」

魔王「なかなか先行き厳しそうだなぁ」
勇者「もーあれだよ。なんだっけ? 昔の魔王みたいに
 ぱかーんとトップをやっちまうか?」

魔王「綺麗事を言うつもりはない。だからそれで氏族の意志が
 変わるならやむを得ないとも思うのだが、そうでないならば
 ただの押さえつけだ。いずれ噴出することになるだろう」

勇者「そうなー」

メイド長「お茶ですよ」

とぽとぽとぽ

魔王「ありがたい……」もそもそ
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/19(土) 20:41:25.64 ID:GDf918.P
勇者「話すにしても交渉するにしても、もうちょっと
 情報というか、背景みたいなのが判ってこないと
 何にも見えてこない感じだ。
 蒼魔族ってのは、あれかな。教会なのか?」

メイド長「?」
魔王「いや、違うと思うが」

勇者「なんだろうな。うまくは言えないけれど、
 信仰みたいな匂いを感じたぞ。
 信仰と云うよりは、確信なのかな。
 疑いのない強さみたいな」

魔王「ふむ……。氏族に特定の宗教的な教えはなかったと思うが」

勇者「そうか……」

魔王「まぁ調べてみよう。
 獣人族の方はもっとあからさまな女性蔑視を感じたな。
 これはなぜだろう。新たな長と、その取り巻きのせいなのか……」

勇者「どんどん時間がたっていくな」
メイド長「ええ……」

魔王「そろそろ本腰を入れて交渉を開始せねばならぬのだが」
勇者「切っ掛けが欲しい」

魔王「軍人子弟と商人子弟、それに貴族子弟にまかせてある」
勇者「大丈夫なのかよ、あいつら」

魔王「信用するしか有るまい。信用できなかったら
 そもそも共存の道など探る意味がない」
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 14:47:51.85 ID:pOGbuk6o

――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、鬼呼族の天幕

鬼呼執政「では、停戦派にまわると?」

鬼呼の姫巫女「そうだ」

鬼呼執政「ご決断賜りまして」

鬼呼の姫巫女「我が鬼呼の地は極とは遠い。
 ゲートが無くなったとは言え、地上界への道のりは
 ずいぶんな距離になろう。
 戦を傍観すれば被害も少なかろうが、
 うまみも少ない」

鬼呼執政「人界への領土は作らぬ、とお考えで?」

鬼呼の姫巫女「領土が増えれば民は潤うだろうが、
 その間の線を保つ労力は潤いととんとん、だと。そう踏んだ」

鬼呼執政「それも道理でしょうな」

鬼呼の姫巫女「蒼魔族の専制地を迂回するのならば、
 竜族や人魔族の土地を踏み越えねば極へは至れぬ。
 交易をするにしても、何らかの方法を考えねば
 利を挙げることは叶わぬ。

 最悪、魔族を挙げての大戦争に兵を取られて、
 うまみは蒼魔族や竜族に全て持って行かれる
 などと云うことにもなりかねない」

鬼呼執政「と、なるとまた形勢が変わりますな」
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 14:50:40.78 ID:pOGbuk6o

鬼呼の姫巫女「そもそも、今の魔王は停戦を望んでいるようだ」
鬼呼執政「ええ、はっきりとは申されませんでしたが」

鬼呼の姫巫女「……ふむ」

鬼呼執政「魔王様も、得体が知れない方ですな」

鬼呼の姫巫女「先代は考えの判りやすい方だったからな」
鬼呼執政「ええ」こくり

鬼呼の姫巫女「そもそも今回の魔王殿は、
 聞いたこともない小氏族の出身だ。
 確固とした自分の領土も、支援を誓う氏族も持たずに
 しかも、見せしめの処刑や戦争もせずに
 よくぞ20年も持ったものよな」

鬼呼執政「そろそろ、命脈尽きると?」

鬼呼の姫巫女「占術官の言葉によれば、あと一月」
鬼呼執政「……ほう。病ですかな、それとも討たれるのか」

鬼呼の姫巫女「しょせん、占術。気力と意志であろうな」
鬼呼執政「いやいや、しかし。馬鹿にしたものでもありませぬ」

鬼呼の姫巫女「わたしはあの頼りなくて危なっかしい
 魔王が嫌いではないのだが……。他人ごととも思えぬゆえ」

鬼呼執政「しかし、まつりごとは自ずと別でございましょう」

鬼呼の姫巫女「心得ておる」
鬼呼執政「では、停戦。ということで」

鬼呼の姫巫女「その方向で、枝族の族長達への
 内々に説明を頼む。親書の草稿を文官に書かせよう」
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 14:52:58.30 ID:pOGbuk6o

――冬越しの村、魔王の館、厨房

メイド妹「いいの、お姉ちゃん?」
メイド姉「いいのいいの。
 皆様ちゃんと頑張って働いたんですからね。
 美味しい料理をどんどんお願いね」

メイド妹「うん♪ んっとね、次はベーコンと
 アスパラガスのパイ、それから肝臓の煮込みだよ。
 それにクレソンのサラダ」
メイド姉「上出来よ」にこっ

商人子弟「で、そっちはどうなんです?」
軍人子弟「拙者もう、へろへろでござるよぉ」 ぱたり
貴族子弟「エレガントさが足りないね。君たちは」

商人子弟「いや、そういう君も弱ってない?」
貴族子弟「曇りの日だって時にはあるさ」
軍人子弟「書類が。書類がぁ」

商人子弟「そんなこと喚いたって武勲を立てて出世したんだろ?」
貴族子弟「聞いているよ。なんでも護国卿だっていうじゃないか
 僕たちの中じゃ一番の出世頭だと思うよ」

軍人子弟「騙されたんでござるよ……」

メイド妹「はーい! 新作のパイだよぉ♪」
メイド姉「ワインもありますよ?」

商人子弟「おお、ありがとう!」
貴族子弟「お二人はいつも可愛らしいですな」
軍人子弟「飲まないとやってられないでござる」
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 14:54:25.23 ID:pOGbuk6o

メイド妹「あのねー。軍人のお兄ちゃんは、鉄の国で
 私たちを助けてくれたんだよ? 格好良かったよ」

メイド姉「ええ、凛々しかったです」

商人子弟「なんだお前。見せ場あったんじゃないか」

貴族子弟「そうだそうだ。
 女性を助けるなんて僕にふるべき役所だろう?
 君は自分の顔をわきまえたまえよ」

軍人子弟「軍人は民間人を助けてなんぼでござるっ」むぅ

メイド妹「喧嘩はダメだよー?」
メイド姉「そうですよ。注いであげませんよ?」

商人子弟「いやいや。これは喧嘩って云うか。なぁ?」
貴族子弟「そうそう。仲間内の愚痴ですよ」

とくっ、とくっ、とくっ

軍人子弟「騙されたんでござる……」

商人子弟「それに、なんだ。貴族子弟も……。もぐもぐ」
貴族子弟「?」

商人子弟「湖の国と赤馬の国での話は聞いているぞ?」
貴族子弟「まぁね」

軍人子弟「拙者も聞いたでござるよ!」

メイド妹「なになに、なーにぃ?」ちょこん
メイド姉「どんなお話ですの?」

貴族子弟「たいした話じゃないんですよ、淑女がた」
軍人子弟「いーや! たいした話でござる」
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:02:19.01 ID:pOGbuk6o

商人子弟「修道院で働いていた湖の王族の外戚がいましてね。
 まぁ、色んな事情で恵まれない環境でしたが、
 それでも王族の一人。
 歳は花も色づく16歳、美しく貞淑なること百合のごとし少女」

軍人子弟「おぬし語りが上手いでござるなぁ。
 このパイも絶品でござるが……。もしゃもしゃ」

商人子弟「なぁに、僕のは吟遊詩人の受け売りさ。
 で、この事情が事情なら、王宮で暮らしているはずの王女。
 この王女と、遊歴の身の上で修行中の赤馬の国の王子と
 知り合った。――修道院の光さす庭で、
 互いにそうとは知らぬまま」

メイド妹「わぁ。お話みたい!」

商人子弟「一目で恋に落ちる二人!
 しかしお互いの名も知らず身分も知らず、
 何度かの逢瀬を繰り返すもすれ違うばかり。
 時は風雲急を告げ、中央の国家に降りかかる未曾有の国難。
 物価の高騰に、なにやら戦の気配。
 赤馬の王子は国元へ呼び戻され、
 おり悪くその外戚の王女も宮殿へと力尽くで移されることに」

メイド姉「……王族の方も、自分の意志では生きられないのですか」

商人子弟「王族であらばこそ。って云うのもあるんでしょうね」

軍人子弟「きっと騙されたんでござるよ……」

商人子弟「もはや巡り会うことのない星の定めの二人。
 かたや湖の国の淑女としてゆくゆくは政略結婚の道具。
 かたや赤馬の国の王子として、いずれは長兄を王にいただき
 戦場へと赴く身。どう考えても二人の運命は
 離れて行かざるを得ない」
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:03:10.14 ID:pOGbuk6o

貴族子弟「……」
商人子弟「そこで我らが貴族子弟の登場だ。

 赤馬の王子と夜盗と化していた盗賊団と戦い
 酒を酌み交わしたと思えば、馬術大会で競いあう。
 かたや湖の国の宮殿にて、市井の卑しい生活を送っていたと
 陰口を叩かれ、友の一人もいなかった孤独な王女の
 話し相手となり、ダンスの手ほどきをする。
 やがて彼女は生まれながらの典雅さを備えたとも思える
 優美で清楚な姫君へと変わる」

メイド妹「かぁっこいい!」

商人子弟「舞踏会で再会をした二人。
 気が付かないままに赤馬の王子は二回目の恋に落ち、
 群舞曲の調べのままに、花のような娘と踊る。

 意を決した王子が赤馬の王へと出奔を願い出て
 二人でどこか他国へと駆け落ちするかと思えたその夜に

 貴族子弟が知恵を貸し、父王を鮮やかに説得。
 四方丸く収めて王子と王女の早春の恋も成就と聞けば
 ――これはもう、歌物語のようではないですか?」

メイド姉「素敵なお話じゃないですか」
メイド妹「うんうんっ!」

軍人子弟「なんでお前にだけ格好良い役が
 回ってくるでござるかっ」

貴族子弟「別に格好良くはないだろう?
 僕の役回りなんて、聞いての通り、徹頭徹尾脇役じゃないか」

商人子弟「いやいやいや。なかなか出来る事じゃないと思うぞ」

軍人子弟「夜盗の一団と戦ったのでござるか?」
貴族子弟「まぁ、やりあったけれど」
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:05:03.50 ID:pOGbuk6o

貴族子弟「あんな街角で歌われているような
 派手な戦いではなかったよ。
 傭兵崩れだったけれど、100人なんて嘘っぱち。

  本当は15人ほどしか居なかったし、酔っていたんだって。
 その殆どだって王子が格好良く切り伏せてしまったのさ。
 首領との一騎打ちは、それは流石に見応えがあったけどね。
 僕がやったのは、斥候して見張りを倒して。
 ……まぁ、僕が出来るのは、そんなものさ」

メイド妹「ねぇねぇ。お姫様は本当にそんなに綺麗だったの?」

貴族子弟「それはぁ。
 ――うん。
 でも、お話よりもずっとおてんばでね。
 穀竿なんて振り回したりして、勇ましかったよ。
 明るかったし聡明だったし、なによりも気品があったね。

 修道院勤めで、繕いだらけの古着を着ていた時にさえ、
 月の移る湖面みたいな美しくて、優しい娘だった。

 ……笑うと子供みたいなんだけどね」

メイド姉「……」

軍人子弟「何でこいつばかりが……ううう」
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:07:23.47 ID:pOGbuk6o

メイド妹「わぁ、美人さんなんだねぇ」

貴族子弟「メイド妹だって、十分キュートだよ?
 あと5、6年も立てば男の子が放っておかない
 淑女になること、間違いなしさ」

メイド妹「えへへへ~♪」

商人子弟「何にせよ大活躍だ」

軍人子弟「だいたい、そんな可愛い娘にダンスだの
 教えて、おぬしの方はなーんにも無かったんでござるか?」

貴族子弟「ははははっ。ないない、全然さ。
 そもそも相手は、慕ってる男がいるんだよ?
 そこに僕が登場するなんて野暮も良いところじゃないか。

 僕はちょっぴり話し相手になって
 宮廷生活に付きものの細かい仕来りやマナーを教え、
 ダンスを1、2曲手ほどきしただけさ。

 なんていうのかな……。
 あんまりにも、彼女が必死なものだからさ。
 手助けしてやらずにはいられないほど健気で
 諦めを知らないものだから。つい、だよ。

 それに、花のような笑顔とでもいうんだろうね。
 あんな風に微笑まれたら、手助けせずにはいられないよ。
 ぼかぁこれでも貴族だからね」

メイド姉・商人子弟「……」
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:10:13.09 ID:pOGbuk6o

軍人子弟「さようでござるかぁ……。
 拙者も可愛い娘と知り合いたいでござるなぁ」

メイド妹「じゃぁ、貴族のお兄ちゃんは、がんばったんだね!
 えらいよぅ。もう一個パイをあげる!」

貴族子弟「これはこれは、レディ。光栄でございます」にこっ

商人子弟「まぁ、まだこの先色んな機会があるさ」
メイド姉「はい」

貴族子弟「そうさ、軍人君? 君にだって出会いがね」

軍人子弟「有るんでござるかなぁ……」

メイド妹「軍人のお兄ちゃんには、この馬鈴薯をあげます。
 たすけてもらったもんね!」

軍人子弟「なんかこのしょっぱい馬鈴薯だけで、
 拙者いきていける勇気がわいてくるでござるよ」

メイド姉「立派な仕事を為されているのですわ」くすくすっ

貴族子弟「税収と通商の方はどうなんだい?」

商人子弟「忙しいねっ」
軍人子弟「まったくでござるよ」

貴族子弟「おいおい、それが仕事なのだろう?」
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:12:55.05 ID:pOGbuk6o

商人子弟「追われてるよ。……でもまぁ、おかげさまで。
 この半期は前期と比べて、馬鈴薯の収穫量は倍だ。
 戸籍と里家制の効果が出始めてきた」

軍人子弟「その辺の制度、鉄の国でも運用できないでござるかね」

商人子弟「里家制はともかく、戸籍は早期に把握すべきだろうな」

貴族子弟「うちのほうで、紙の生産工房をふたつ増やしたそうだよ」

商人子弟「丁度良いじゃないか。過去の羊皮紙の記録も
 紙に移し替えた方が断然便利だぞ。かさばらないし」

軍人子弟「そこも手をつけるべきでござるかねぇ」

商人子弟「記録から手をつけなきゃだめだろう。
 記録、保存、参照は経験を蓄積するための基本だって
 授業でも何度も出てきたじゃないか」

軍人子弟「いやしかし、そこに手をつけるとなると、
 高官の皆様方に話を通す必要があってでござるなぁ。
 面倒くさい仕事がねずみ算式に……」

商人子弟「まーその悩みは判るけどね。
 ……となると、冬の国は王が若く変わったタイミングで、
 僕が士官したんだな。それで、結構やりたい放題やっても
 老臣さん達はあんまり文句を言ってこないのか。
 何事も都合が良かったんだな」

貴族子弟「エレガントにこなすためには、
 付き合いや根回しは重要なのだよ。諸君。
 ……それが社交という言葉の意味だよ?」
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:14:06.77 ID:pOGbuk6o

軍人子弟「いやはや」
商人子弟「で、我らが妹弟子の方はどうなんだい?」

貴族子弟「そいつは、是非聞かないとね」くるっ

メイド妹「美味ひぃね……。もきゅもきゅ」
メイド妹「はい?」

軍人子弟「お二人でござるよ」

メイド妹「??」
メイド姉「弟子って……」

商人子弟「おいおい。同じ師匠に教わったじゃないか」
メイド姉「でも、わたし達、そんな授業なんて」

貴族子弟「授業だけが学ぶ場ではないでしょう。
 ぼくたちが授かったモノはそんな小さくはないはずですよ」

軍人子弟「授業だけで学んだのなら、
 あんなにお尻が腫れ上がることもなかったでござる」

メイド妹「わたしはぁ、去年は40個新作のレシピを
 作りました! みんな美味しいと大好評でしたっ♪」

貴族子弟「それは素晴らしい。この煮込みなんて宮廷でも
 ちょっと食べられないくらい柔らかくて美味しいですよ」

軍人子弟「まったくでござる。鉄の国の酒場は量が多いばかりで、
 味付けはどんな料理でも一緒でござるよ」

商人子弟「うんうん。妹くんはどこに勤めるにしても
 我々三人の推薦状つきでコックになれるよ」にこにこ
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:16:19.56 ID:pOGbuk6o

メイド姉「わたしは……」

貴族子弟「ん?」

メイド姉「わたしは何もしてないです……」

商人子弟「おいおい、そんなことを云っちゃダメだよ」
貴族子弟「僕たちは、あの演説の学士が
 本当は君だって知っているんだし」

軍人子弟「そうでござるよ」 むしゃむしゃ

メイド姉「でもあれは、何かしたというわけでもないです。
 みんなに迷惑ばかり掛けて、戦争になりかけていうるわけで。
 正しいことなのか、間違ってはいないかって
 ずっとずっと思い悩んでいるのに」

商人子弟「それは結果だよ」

メイド姉「……っ」

貴族子弟「君は僕らの妹弟子なんだから、
 もうちょっとしゃんとして欲しいね。
 自信のなさは女性の麗質を曇らせるんじゃないかと僕は思うよ?」

軍人子弟「でも、子女はこのくらいがたおやかで良いでござるよ」

メイド妹「お姉ちゃん……?」

商人子弟「お節介かも知れないけれど、
 “そこ”にいつまでも隠れているわけにも行かないだろう?」

貴族子弟「……」
軍人子弟 こくり
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 15:17:48.18 ID:pOGbuk6o

商人子弟「まあね」にこっ

メイド妹「?」

商人子弟「まだ時間はあるさ!」

メイド姉「……」

貴族子弟「今日のところは、別件がありますしね」
軍人子弟「あ! そうでござった!」

商人子弟「たまに頼ってきてくれたかと思えば
 師匠の人使いの荒さってのは言語に絶するな」

貴族子弟「まったく。僕が一番の重労働だと思うね」
軍人子弟「こっちでござろう?」

商人子弟「懐が痛いのはこっちだよ。各種貴石を金貨で
 5万枚分だぜ? 痛いじゃ済まない」
貴族子弟「こっちは、12地方の土壌サンプルだ」
軍人子弟「拙者は純度別の鉄鉱石、馬車一台相当でござる」

メイド姉「あっ。はい。話は聞いています」

商人子弟「ここに預けるで構わないのかな?」

メイド姉「ええ、後で取りに来るって仰ってました」

商人子弟「師匠は何をやっているのだか」
貴族子弟「師匠のことだから、何かとてつもなく迂遠なことを
 天才的な手腕でやってるのではないかな」

軍人子弟「井戸の底から月を射貫くような人でござるからなぁ」

メイド妹「当主のお姉ちゃん達も、
 一緒にご飯食べられればいいのにね-」
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:24:18.28 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、天幕で作られた街、広場

おおおお! すっげぇ! 六人抜きだっ!

ドガシャァー!

勇者「俺の勝ちだ」
銀虎公「くっそぉぉぉぉ! 次だっ!
 誰かおらぬのか!? 我ら獣牙の勇士はっ!」

白狼勇士「わたしが相手だっ!」くるくるくるっ! すたっ!

勇者「銀虎公、魔王を侮辱した件。10人抜きで謝罪して貰うぞ」

銀虎公「良かろう、黒騎士よっ!」

白狼勇士「その戦、見事! しかしここまでだっ!」

 ガギィィンっ!

勇者「お。強いな」
白狼勇士「何を抜かす! 我と打ち合ったが最後、
 狼族の脚力から繰り出す必殺のっ!」

勇者「ヤクザキック」

 ぼぐぅ

白狼勇士「かはっ!? ……腹が。俺の腹が……
 無くなったようだぁっ!」

す、すげぇ。あの猛者、白狼が泡を吹いて……
悶絶してるよ……。起き上がらないぞ……

勇者「悪い、あんまり加減できなかった」
546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:25:48.09 ID:2wq60CIP
銀虎公「次だっ! 次へ掛かれっ!」

銅熊勇士「我が無双の剛力をしかと受けよっ!」ずだーん!

勇者「しっかし、獣人族は層が厚いな。
 こんだけ強いのがわんさといるのかよ。
 ……呪文無しじゃ結構きついぞ」

銀虎公「ふふんっ。戦士の名誉にかけて
 証明するのではなかったか?」

勇者「云われなくてもっ」
銅熊勇士「せいやぁ!」 ずどーん! ずだーん!

勇者「せやっ!」 ひゅばっ!! キン!

銅熊勇士「!?」

鉄の六尺棒を一太刀で切った!? なんて切れ味だ。
あれが剣の魔王がかつて使ったと云われる黒の武具の力か……

勇者「武具じゃねぇよ、自前だよ」

銀虎公「ええーい! 五神将! 五神将はおらぬか、かかれっ!」

赤鮫将「ようやく出番かっ! 行くぞ、黒騎士っ!!」

ギン! キン! ガギンギンギン!

勇者「……って。ナニ食ったらこんなパワーが出るんだっ」
赤鮫将「骨が丈夫になる小魚だっ!」

勇者「冗談でもねぇっ!」
赤鮫将「はははっ! そらそら、足がもつれているぞ!」
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:26:58.60 ID:2wq60CIP
勇者「こういう場合は、いなすっ」 シュキンっ
赤鮫将「ぬぉっ!?」

 ずるっ

勇者「一手!」 ひゅばっ! 「二手ッ!」 ギンッ!
赤鮫将「早いっ! これほどとはっ!」

勇者「んでもってぇ」ひゅぅぅんっ「見えない刃っ!!」

ズダン!!

勇者「ふっ。峰打ちだ」

な、なんだ? 何が起きたんだ!? 黒騎士が一瞬素手になって
赤鮫将軍が起きれないぞ。痙攣してるっ。
今のはやばいだろ、垂直に落ちたぞっ!?

勇者「いま9人だ。引くならここだ」
銀虎公「……っ」

勇者「銀虎公に申し上げるっ! ここに集まった皆も聞けっ!」

ざわざわ、ざわざわ

勇者「魔王は弱いっ」

……え。
な、なんてことを言い出すんだ!? 黒騎士殿はっ。
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:29:46.73 ID:2wq60CIP
勇者「確かに魔王は弱い。銀虎公殿は別格として、
 今戦ったどの勇士にも、魔王は戦場では勝てないだろう」

そ、そんな……。魔王様は弱いのか?
でも魔王様なんだぞ? そんなわけが……。

勇者「いや、ちゃんと弱い。大抵の魔物より弱い。
 配下の俺が言うのも何だが、メイドよりも弱い。

 しかし、本当の強さとは何か?
 確かに銀虎公どのは戦場では無双の勇士だろう。
 しかし、万の大軍にたった一人で勝てるか?
 勝てはしまい。
 そのときは銀虎公どのも軍を率いて戦うだろう。
 それが長の強さというもので、己一人の力では
 成し遂げられぬ事をも成し遂げる指導者の器だ」

勇者「魔王は個人としての武力は弱いがそれで構わない。
 むしろ己のみが強く軍を率いることの出来ない魔王よりも
 己はか弱くても、大軍を率いて勝てる
 そんな魔王の方が、この魔界において強大なのは自明だ。
 さらにいえば、かの魔王はその上を行く。

 それは“戦をせずに勝つ”ことだ。
 かの魔王の目指す地平は遠く、
 誰にもが理解できる物ではないがな。

 魔王が在位してから、魔族同士も含めて戦で命を落とした
 ものがどれだけ減ったか」

銀虎公「……っ」

白狼勇士「それこそ怯懦の証ではないか!
 戦を避けてこそこそ逃げ回っていただけのことよっ!」

勇者「貴公は俺に倒されて今は死体だ。死体は喋るな」
白狼勇士「っ!」
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:31:40.01 ID:2wq60CIP
勇者「いかがか、銀虎公」
銀虎公「……」

勇者「魔王の強さを認めても、
 銀虎公の強さはいささかも揺らがぬ」
銀虎公「……」

勇者「魔王は弱い。戦場では力強き腕の力が必要だ。
 銀虎公どのの万夫不当の力が必ずや必要となろう」

銀虎公「……わかった」

勇者「では」

銀虎公「魔王に謝罪するとしよう。
 かの魔王殿は、その名にふさわしい実力を持っていると。
 黒騎士どのは魔王の剣だ。
 その武力があるのならば、獣人一党は魔王殿を侮らぬ」

勇者「ありがたい」すちゃ

銀虎公「だがしかし、魔王に武力が必要だという考えは変わらぬ」
勇者「……」

銀虎公「いまは我が武将に勝った黒騎士の顔を立てよう。
 戦場での差配に関する話もその通りだと認めよう。
 しかし、魔王は戦場で指揮を執ったこともないではないか。
 実際、戦功を立てるまで、あの魔王殿の実力はまだ判らぬ。
 判らぬものに、信頼は置けぬ」

勇者「……そんな戦場自体をこちらはなくしたいんだがなぁ」

銀虎公「そのような戯れ言判らぬわっ」

勇者「まぁ、とりあえずはこんな手打ちで良いかぁ」
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:39:45.21 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の天幕街

執事「ここが忽鄰塔の会議場。まるで街が出来たかのような」

諜報局精鋭「局長。後続部隊8名到着」

執事「にょっほっほ。交代要員は適当な丘をさがし
 天幕を張り商人を装うこと。
 そちらをしばらくの間本部とする。班編制の上哨戒を実行」

諜報局精鋭「はっ」

 ザッザッ!

執事「さぁて、どうなっていますかな」

諜報局精鋭「先行偵察、戻っています」

執事「聞きますよ~」

諜報局精鋭「はっ。この天幕街には少なく見積もっても
 6000名以上の魔族が集まっているようです。
 周辺の渓谷などには今少しの護衛などが分散しており、
 激しくはありませんが、一種の軍事的拮抗が存在します」

執事「ふむ」

諜報局精鋭「ここに集まっている魔族の約1/3は
 族長や、族長に準ずる魔族の有力者、その側近、召使い、
 護衛などのようです。
 残りの2/3にはそう言った有力者や今回の会議を対象に
 商売をしようとする商人たち、また自分の腕を売り込もうと
 する士官希望者達も含まれています」
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/20(日) 16:40:54.65 ID:2wq60CIP
諜報局精鋭「忽鄰塔なる魔族の族長会議は
 中央の専用大天幕で連日のように行われています。
 文化的背景については未だはっきりとしないものの
 ここに集まった多くのものたちは、
 この会議が今月末までは最低でも続くと思っているようです」

執事「あと一週間ですか」

諜報局精鋭「中央の天幕の隣にあるのが魔王の天幕のようです。
 魔王は初日に演説をしたとのこと。
 驚くべき事ですが、現在の魔王は女性。
 つまり女王だとのことです」

執事「ふむ。女王……」

諜報局精鋭「しかし、以降姿は公には見せず、
 会議に専念している様子。先ほども云いましたが
 中央の大天幕との往復、もしくは会議に出席をする
 八大氏族と呼ばれる特に有力な氏族の族長を訪ね
 協議を重ねているのだと思われます」

執事「接触は?」

諜報局精鋭「現在までに機会はありませんでした。
 こちら側の情報が漏洩しないことを第一に考えて
 相当に防御的な配置で諜報をしています」

執事「そのままで結構」

諜報局精鋭「はっ」
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/20(日) 16:42:47.05 ID:2wq60CIP
執事「しかし、ふむ」

諜報局精鋭「局長はいかが為されますか?」

執事「ここはわたしも潜入することにしますかね」

諜報局精鋭「大丈夫でしょうか」

執事「もちろん十分に注意はします。
 しかし、今までに巷間に流れた噂と会わせて
 会議は地上世界との戦争についてだと考えて
 ほぼ間違いがないでしょう。
 これについてはなんとしてでも確度の高い情報を
 入手するべきでしょうな。にょっほっほ。

  もし、必要であれば」

諜報局精鋭 ごくり

執事「“突然死”という二つ名の由来を指導せねばなりません」

諜報局精鋭「はっ、はいっ」

執事「にょっほっほっほ」

諜報局精鋭「ではっ、探索に戻ります」

執事「判りました。連絡は本部を使用してください」

諜報局精鋭「はっ」



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