2-4


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」2-4


690 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:07:00.60 ID:vGBiMEoLP
司令官「そうだ、そこまで文句があるなら、
 貴様がやれば良いではないかっ!」

東の砦将「はん!?」

司令官「き、貴様が司令官だ! 貴様がこの街を守れば良かろう!
 それだけ大口を叩くからには貴様はこの街を
 治められるのだろう? あ? 歴戦の傭兵様なのだろう?」

東の砦将「……わかった」

司令官「そうかそうか、貴公が誓約をするのだとなれば、
 我も安心して援軍を出せるというもの! あははははは。
 この先この都市を万が一魔族に奪い返されるようなこと
 あれば全て貴公の責任であると。そう心得よっ!!」

東の砦将「我が砦の将兵に、民間人のために命を惜しむような
 不届きものは一人もいはしないっ」

司令官「いいや、極光島にいるのは魔族の猛将、南氷将軍と
 聞いた。わたしはあくまで全軍をもって援軍に向かうぞ。
 この魔界のような訳のわからぬ地を、兵を減らして移動
 するバカは居はせぬわっ!」

東の砦将「~っ!」

司令官「ははは! 同じ軍のよしみ、500ほどは置いて
 行ってやる。それでどうにかするが良い! 傭兵めっ!」
692 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:12:33.26 ID:vGBiMEoLP
ダッダッダ、バタン!!

東の砦将「あーあ、んったくよぉ」ボリボリ
副官「大将、大変なことになっちまいましたね」

東の砦将「ん? まったくだ。やりきれんな」
副官「どうしやす?」

東の砦将「どうもこうもない。仕方がねぇ、四方砦は
 全て退去だ。守るだけの兵力はねぇ。全員都市に  よびよせちまえ」

副官「はっ!」

東の砦将「それから街の有力商人を呼び寄せろ。
 街に住む魔族の主立ったメンバーも、そうだな、
 合わせて10人位招くんだ。
 付近の有力魔族にも特使を送り出せ」

副官「え? どうするんですか!?」

東の砦将「兵力がないんだからしかたねぇだろう。
 頭下げて頼むんだよ。臨時の自治政府だ。
 今日をもって、この開門都市は人間の領地じゃねぇ。
 交流都市として自治してくっきゃなかろうがよ」
697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:29:20.62 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、橋頭堡天幕

伝令「報告ですっ! 極光島城塞から、
 魔族軍出撃しました! その数、おおよそ7500!!」

女騎士「全軍だな」

伝令「魔族軍、南方樹氷、謎の援軍に向かって高速で進軍中!!」

女騎士「伝令ご苦労っ!!」

魔王「早かったな」

女騎士「おそらく、援軍と我らが合流して、連携行動に
 出るのを嫌ったんだろう。突破するのなら今が最後の
 チャンスだ」

魔王「果断な決断だが、予想範囲内だ」

女騎士「魔族7500と援軍1万弱か」
魔王「どうなるかな」

女騎士「その援軍は、聖鍵遠征軍なのだろう?
 で、あれば練度も装備も、人間界最高のはず」
699 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:35:41.86 ID:vGBiMEoLP
しゅぃんっ!

勇者「そりゃどうかな? 存外だらしない奴らかもしれないぜ」
魔王「勇者!」
女騎士「帰ってきたのかっ」がしっ

魔王「……ごほんごほんっ」じぃ

勇者「え、えと。まぁなっ! こんなタイミングで良かったか?」
女騎士「ああ、ばっちりだ。だがどうやって聖鍵軍を
 呼び寄せたんだ?」

勇者「それよりも、タイミング合わせるために迷わせたり
 足止めしたりしたからな、結構疲労してるぞ、あいつら」
魔王「それでは、戦力は拮抗するやもしれんな」

バタン! 伝令「謎の援軍と魔族先端が接触! 援軍の軍様は縦に
 長く伸び、先頭は少数! 蹴散らされてゆきます!」

勇者「な?」

女騎士「遠征軍ともあろうものが情けないっ」
魔王「助けに行かないとまずそうだな」

女騎士「とはいえ、島の向こう側だ、時間がかかる」
魔王「それくらいは持つだろう、いくら何でも」
700 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:40:24.18 ID:vGBiMEoLP
ゴオォォン!!

勇者「なんだっ!?」

バタン!
伝令「伝令!! 伝令!! 一騎の巨大な魔族が
 こちらの陣営に向かってきます! 南氷将軍を名乗っています!
 軽装歩兵の一隊が壊滅ッ!!」

女騎士「退かせろっ!」

伝令「はっ!」

魔王「しんがりを自ら務める気か」
勇者「暑苦しいヤツだ」
女騎士「指揮官としての矜持だろうな」

魔王「だが、救援に向かうには倒す必要がある、か。
 出来れば魔族の被害も出さず、逃走させたかったのだが……」

勇者「仕方ないだろう。信念があるヤツなんだ。
 おれがいって、ちょっと捻ってくるよ」

女騎士「……いや」
勇者「へ?」

女騎士「それは、わたしの役目だ。
 ここは任せてくれないか? 勇者。
 武人の最後の願いだろう」
750 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:03:39.33 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、夕暮れの戦地

南氷将軍「はぁあぁっ!」
女騎士「はっ!」


ギンッ! ガギンッ!

南氷将軍「ははは! 嬉しいぞ! この勝負を受けてくれてなっ!」
女騎士「勝てる勝負、捨てる気はないっ!」

王国軍兵士「す、すごいぞ!」
騎兵将官「大地がめり込み、崩れるほどだ……」

南氷将軍「大言壮語しよる、これはどうだっ!」


ドガァンっ!!

女騎士「遅いっ!」


ヒュバッ!!

南氷将軍「我は天下無双! そのような攻撃、効かぬ」
女騎士「天下無双が聞いて呆れるっ」
753 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:07:29.71 ID:vGBiMEoLP
南氷将軍「なんだと?」
女騎士「退くなら追うな、と命を受けている」

南氷将軍「っ! 愚弄するかっ!」


ギンッ! ガギンッ!

南氷将軍「敵に情けを受けるこの南氷将軍ではないわっ!
 食らえ、“凍える吹雪”っ!!」


ひゅごぉぉぉっ!!

女騎士「勇者直伝っ! 岩盤返しっ!!」


ずだんっ! ダダダダダンッ!!!

王国軍兵士「ば、ば、ばけもんだっ!」
騎兵将官「だがなんて可憐なんだっ」 「え?」

南氷将軍「はははははは! 見事、さぁいくぞっ!」
女騎士「良かろう。引導を渡してやろうっ!」

南氷将軍「軽いわっ! 所詮女か、しゃらくさいっ!」
女騎士「女扱いしてくれるのは嬉しいが……」
758 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:14:44.49 ID:vGBiMEoLP


ギィィン!!

王国軍兵士「噛み合った!?」
騎兵将官「五倍は体重差があるんだぞ……」


ギリギリギリギリ

南氷将軍「やるではないかっ」
女騎士「非常識が身近にいると、これしきは身につく……
 い、く、ぞっ! せいやぁぁぁ!!」


ザカッ!

南氷将軍「っ!?」
女騎士「まだ、まだっ!」


ザシュ! ザシャッ! ヒュバッ!!

王国軍兵士「なんて、なんて早さだ」
騎兵将官「姫将軍はこんなに強かったのかっ!!」

女騎士「いえぇぇええーい、やぁっ!」
南氷将軍「……ぐふっ」


ドサンッ!!

王国軍兵士「勝った……」
騎兵将官「勝ったぞ!」
王国軍兵士「「「俺たちの、勝ちだぁ!!」」」
763 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:23:00.69 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、早春

小さな村人「本当なのけ?」
中年の村人「本当だなやっ」
狩人「そうか、凱旋かぁ!」

小さな村人「ガイセンってなんだぁ?」
中年の村人「馬鹿だなぁ。戦に勝って帰ってくることだぁよ」
狩人「女騎士様も、学士様も帰ってくるって言うことだよ!」

メイド妹「こーんにーちは~♪」
メイド姉「こんにちは」

小さな村人「おんやまぁ。館の姉妹さんだなや」
中年の村人「おめでとうだなや!」
狩人「おめでとうだなや!」

メイド妹「はいっ!」
メイド姉「ありがとうございますっ」

小さな村人「いつ帰ってくるだなや?」
中年の村人「もう戦は終わったんだべ?」

狩人「馬鹿だなや。マゾクっちゅーのが居なくなんない限り
 戦は終わったりしないんだなや。今回は、極光島っていう
 のをとりもどしたっちゅー話だぁよ」

766 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:29:33.23 ID:vGBiMEoLP
小さな村人「そうなのけ?」 ほけぇ
中年の村人「でも、女騎士さんは、軍の将軍になって
 お話の英雄みたいに活躍したっておら聞いただよ」

メイド妹「そうなんだよ♪」

小さな村人「さっそく吟遊詩人さんが歌さ作ってただ!
 格好良かっただよぉ~」
中年の村人「酒場にきとるんけ?」

狩人「酒場も二つになって、随分大きくなったべぇ」

メイド妹「あのね、あのね!」
メイド姉「当主様たちは、今から冬の王宮に向かうそうですよ」

小さな村人「王様のところだべか?」
中年の村人「ああ、きっとご褒美をもらえるだべよ」

メイド妹「きっとねー。ごちそうがでるんだよー」じゅる
メイド姉「もうっ……。何でこんな食いしん坊に
 なっちゃったのかしら……」

メイド妹「えへへへ~♪」

小さな村人「何はともあれ、今年も春だぁよ!
 ああ、ここは良い村になっただなやぁ」
769 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:38:38.26 ID:vGBiMEoLP
――冬の王宮、爵位授与式

吹奏楽隊 ~♪ ~~♪

冬寂王「すまんな、こんな儀式に付き合わせて」

女騎士「いえ」
魔王「かまわん」

冬寂王「そなたらは目立つのは苦手なのだろうが
 これも王族のもってる義務の一つでな」

女騎士「心得ております」
魔王「万民に威を示すことも責務であろうな」

執事「準備万端整ってございます」

冬寂王「さぁ、行こう」


ぎぃぃぃぃっ!
 来駕の万民 わぁぁぁ!!!! わぁぁぁ!!!
773 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:42:12.05 ID:vGBiMEoLP
吹奏楽隊 ~♪ ~~♪

冬寂王「我が民、我が祖国よっ!」


来駕の万民 わぁぁぁ!!!! わぁぁぁ!!!

冬寂王「諸君らの働きに感謝する。極光島奪還は成った!
 これもひとえに諸君らの忠誠、赤心によるものだと心得る。
 こののち、極光島の防備に関してまた難しい計画があり
 それについては諸君ら、文武百官の力を借りることも
 あるだろう。また、このたびの戦役に恩賞も行わねば
 ならぬ。この冬寂王、力を貸してくれた諸君を決して
 粗末には扱わぬ」


女騎士「まだまだ貧乏国ですけどね」
  魔王「それでもマシになる途中の貧乏国だ。それに、
   なんだ。身も蓋もない言い方だが、貧乏だからと
   云って恩賞を値切っていては人が居着かぬ」


執事「まこと身も蓋もない話でございますなぁ」

冬寂王「今宵は小さいながらも宴を用意した。
 楽しんで欲しい! 乾杯だ!」
777 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:51:13.90 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「杯を手に聞いて欲しい、この王宮に今日は客人を
 迎えている。知っている者も多いとは思うが、かつて
 勇者とともに魔界を駆け抜け、人界に大きな貢献をなした
 三人の生きた伝説、その一人、女騎士殿だっ」

すっ 女騎士「ご紹介預かった、女騎士だ」

冬寂王「女騎士殿はこたびの戦役において、前線司令官
 という非常に重い役目を担って頂いた。
 さらには一騎打ちにて南氷将軍を仕留めるという
 まさに英雄に相応しい貢献もして頂いた。
 実を言えば
 我が国の将軍を打診したのだが、断られてしまったよ」

来駕者 あははははは!!

冬寂王「いやいや、もちろん冬の国が貧乏なせいもあるの
 だがな! だがしかし、女騎士殿は湖畔修道会の指導者
 と云う責任有る立場についておられる。
 湖畔修道会は、南部にとって無くてはならない組織だ。
 我が国一つにその御身を縛り付けることは、精霊の意にも
 そむくことになろう!
 しかし、我が国の、人類の恩人であることには変わりない。
 女騎士殿は、我が国の名誉伯位である!
 みなのものもそう心得よ!」
778 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 22:58:49.93 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「こちらは、紅の学士殿。
 話を聞いたことはあるであろう?
 この地に奇跡の作物、馬鈴薯をもたらしてくれた、
 我が国の恩人の一人だ」


「おお、あの噂の……」「風車もあの人の計画だとか」
  「羅針盤を海軍に提供したと聞きましたぞ?」
  「天才だ……」「万物見通せぬもの無し、と聞きます」

魔王「ご紹介にあずかった紅の学士だ。
 生来の不調法もの故このような席で語る言葉を持たぬのだが、
 このたびの戦勝にお祝いを申し上げるためにまかり越した。
 この国は……流れ者のわたしに本当によくしてくれる。
 その暖かさが胸の痛みを溶かすようだ。
 わたしは、この国の人々の穏やかな笑みを忘れぬ。
 この国の四季と四方に億千の幸いがありますように」

冬寂王「……」

執事「若、若っ」

冬寂王「ああ、すまん。
 学士殿のありがたい言葉を頂きこの国の長として嬉しく思うっ。
 もし願えるのならば、この国のさらなる発展のために、
 その知恵を貸して頂きたい。
 学士殿も学究野道がある故、宮殿へ招くことは叶わなかったが、
 その功績、名誉爵位である!」

来駕者 わぁぁぁ!!!
785 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:06:55.22 ID:vGBiMEoLP
参加者「乾杯!」「南部の安定のために!」「王の勝利に!」


女騎士「正式な授与式にせず、気を遣って頂いたのですね」
  魔王「かもしれんな」

冬寂王「さらに皆には報告することがある。
 今回の極光島奪還作戦において、南部諸王国は
 一層の結束を強めた。
 また、いままでのような対魔族軍事作戦のみならず、
 通商、学術、技術分野でも協力が不可欠であるとの
 結論に達した。

 南部はその歴史において、一年の三分の一を雪に閉ざされた
 寒く、貧しい国々として過ごしてきた。
 しかし、地の宝は民である。
 南部諸王国の民には興武の気風と、質素、倹約、素朴さ、
 勤勉さ、暖かさが有るとわたしは信じる。

 我が冬の国は、鉄の国、氷の国と条約を交わした。
 これは通商および技術開発の各分野においても基本的な
 協力の合意である。だがしかし、それのみならず
 将来的な連合国家を視野に入れた取り組みだ。

 我らは肩を並べ共に戦った。これから先、あらゆる分野で
 共に進めると信じる。諸君らの協力を願いたい!!」

来駕者 わぁぁぁ!!! 冬寂王! 冬寂王!
798 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:14:08.62 ID:vGBiMEoLP
――冬の王宮、宴の間

吹奏楽隊 ~♪ ~~♪


質実な貴族「ほほう、三倍と!?」
   若手騎士「作付けの方法はいかがなのです?」
   魔王「今では種芋の管理を修道会に一任しているの
    ですがさほどの難しさでもない。種芋は購入して
    貰う形なのだが、農業技術支援とコミだと考えて
    もらえば決して高い買い物では無かろうな」

冬寂王「……それにしても」


工業ギルド長「はは! それで銅の価格があがると?」
   魔王「そうだ。分業体制における比較優位の法則という。
    この国にはまだ有用な鉱物資源が多いはずだ。すぐに
    利益には成らぬかもしれないが調査には利益があるの
    では無かろうか」

冬寂王「“生来の不調法もの故このような席で
 語る言葉を持たぬ”――だと?
 どうだ、あの落ち着き、あの涼やかな態度。気品と美しさ。
 貴族……。いや、王族のようじゃないか?」

冬寂王「なんて人なのだ。あの知恵、落ち着き。
 発想の全て。……彼女も英雄なのか? 勇者のように。
 それとももっと違う者なのか?
 いやはや、王になった途端にこんな奇跡ばかり
 目にするとは! 世界とはまったく油断がならんな!」
809 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:25:12.48 ID:vGBiMEoLP
――冬の王宮、宴の間、人のいないバルコニー

吹奏楽隊 ~♪ ~~♪

勇者「おお! 邪魔してる」
執事「おやおや、お帰りでしたか。勇者」

勇者「あんまびっくりしないのな」
執事「にょははは! 童貞のまま死ぬのは魔法使いと
 きまっていますからな。勇者は童貞のままでは
 死ねないでしょう?」

勇者「おお、ったりめぇだ」
執事「……お代わりをお作りしましょう」

勇者「ああ、あんがとな。……ん、美味いなこれ」
執事「にょははは。コックも喜びます」

勇者「うまうまっ! がふがふっ」
執事「……恨んでますかね、勇者」

勇者「なんでさ?」
執事「一人で行かせてしまいましたからね」


勇者「あれは俺がみんなを撒いて勝手に行ったんだ
 恨んでるわけ無いじゃん。それじゃ逆恨みだ」
執事「まったくですなぁ。にょはははは」
812 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:29:35.24 ID:vGBiMEoLP
執事「まぁ、そんなことではありませんよ」
勇者「じゃ、なにさ」

執事「さ、リキュールたっぷりのカクテルですぞ?」
勇者「お、あんがとな!」

執事「……」
勇者「ん、美味い。ああ……。
 いつだったか、鬼面都市の酒場でも、作ってもらったっけなぁ」

執事「そうでしたねぇ」
勇者「懐かしいなぁ」
執事「ええ」

勇者「……」

執事「……勇者は」
勇者「ん?」

執事「勇者は、あなたは強すぎる」
勇者「うん」

執事「あなたはその気になれば、まぁ、魔将軍クラスは
 ともかくとして、千人軍隊とでも戦えるのでしょう」
勇者「まぁ、そうな」
817 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:35:06.55 ID:vGBiMEoLP
執事「足手まといだから、我らを置いて行かれた
 訳ではないでしょう? もちろん足手まといでもあった
 わけですが。本当の実力を出せないという意味では」

勇者「……」

執事「わたしが勇者に申し訳なく思うのは
 勇者を一人で行かせたことではないんですよ。
 勇者を孤独にさせてしまったことです。

 勇者は強い。
 戦えば軍にでも勝つ。
 でも、その力を使えば使うほど、勇者はこの世界では
 寂しくになってしまうでしょう? 普通の人間は
 そんな強さを受け入れることなんて出来ないのだから。
 あなたは強さにおいて人間とは隔絶している。

 あなたは、私たち三人を“孤独”にさせないために
 置いていったのでしょう?

 でも、あなたは人間だ。人間であるはずだ。
 その勇者を私たちは、孤独にさせてしまった。
 それは私にはやはり、私たち人間の罪に思える」
823 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:40:26.18 ID:vGBiMEoLP
勇者「……そんなことねぇって」

執事「寂しい思いをさせて、申し訳ありません」

勇者「いやいやいや。爺さんには色々教えて貰ったから!」
執事「にょほほ!」

勇者「おっぱいとかな! 尻とかな!
 パフパフの見極めとかな!!」

執事「偽パフパフはガチムチ兄貴ですからね~!!」


カチャカチャ

執事「……」すっ

勇者「うまっ! 美味っ!」
執事「ああ、勇者。今宵は良い夜です!
 でもね、聞いてください」


~♪ ~~♪

勇者「ん?」 執事「我々だって捨てたものではないのですよ。
 我々だって、月を目指して、歩くことが出来るのです!」
827 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 23:43:20.83 ID:vGBiMEoLP
執事「二年前には出来なかったことが、少しは出来るように
 なっているのですよ? あなたと別れてから私も
 すこしは、努力をしてきたのです」

勇者「……?」

執事「あの音楽が聞こえますか? 広間の明かりが見えますか?
 私が若を育てたんですよ。勇者、聞こえますか?
 あの笑い声が」

勇者「ああ、聞こえる」

執事「良い国でしょう?」

勇者「うん、全くだ」

執事「もう、勇者を孤独にはしませんよ。
 勇者の桁外れの戦闘力が無くても、なんとかする。
 もちろんまだひよっこですからな、よちよち歩きで
 危なっかしいものですが、それでもやっていこうとしています。
 勇者。勇者一人に罰を押しつけない国ですよ。
 きっと、勇者が孤独ではなくなれる場所があります」

勇者「ああ……」

執事「お帰りなさい、勇者!」
勇者「ああ。爺さん。ただいまだ!」
908 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 12:48:05.32 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、晩夏、メイド妹の日記

「夏が終わろうとしてます。
 勇者のおにーちゃんが帰ってきてから、もう半年がたちました。
 当主のおねーちゃんはずっと機嫌がよいです。
 騎士のおねーちゃんは毎日来ます。
 剣の訓練がない日も、なんだか理由をつけて毎日来ます。
 おねーちゃんはお昼ご飯を6人分つくることにしてしまったので
 雨が降ったりして騎士のおねーちゃんがこないとこまります。
 わたしがぷにぷにになっちゃうからね!
 眼鏡のおねーちゃんは、この間までしばらく旅に出ていました。
 帰ってきて怒られました。
 勉強サボってごめんなさい。
 でも、掃除はさぼってないよ! それに、花の名前は
 今年は沢山覚えました。
 今日は勇者のおにーちゃんのお弁当を届けに行きました。
 勇者のおにーちゃんは毎日どこかへ行くけれど
 大抵夕方には帰ってきます。今日はイノシシ狩りでした。
 イノ鍋です。
 でかしたぞ、おにーちゃん」
913 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 12:55:44.19 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、魔王の屋敷、裏庭で訓練中

女騎士「遅い! 腕を上げろ!」
若手兵士「やぁ!」 びゅんっ!
若手騎士「そいや!」 びゅんっ!

女騎士「ちがう、盾を持つ側だ。
 喉を晒すな! 半身を崩すな! 重心の切り替えを
 素早く! 弱点を晒すのははこちらが攻撃したときなんだぞ!」

若手兵士「や、やぁ!」 びゅびゅん!
若手騎士「そりゃー!」 びゅん!

勇者「ちげー! もっとこう……グワっと来てズパン! だ!」
貴族子弟「ひぇー!」 びゅんっ!
軍人子弟「どりゃっ!」 びゅんっ!!

勇者「いいぞ、もっと後ろ足をひきつけろ!」
貴族子弟「こ、こうかな?」 おずおず
軍人子弟「きっとこういう感じでゴザル」 びゅん!
貴族子弟「そうか、こうか?」 びゅ
軍人子弟「そうそう!」 びゅんっ!

勇者「やれば出来るじゃねぇか、あと3000!!」

貴族子弟「ひぃぃぃ!?」
軍人子弟「な、なんとぉ!?」
915 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:00:17.71 ID:I63MLpWkP
女騎士「では、仕上げだ! ため池の廻り5周!」
若手兵士「はぁ、はぁっ」
若手騎士「5、5周でありますか!?」

女騎士「疲れてる時じゃないと意味がない。
 戦場で逃げ出すのはさんざん戦ったあとだろう?
 つまり、へとへとになったときに足が動くかどうかで、
 生き死にが決まるんだ。とっとと行け!!」

若手兵士・若手騎士「「は、はいっ!」」

勇者「ってなわけで、お前らも行け。負けるなよ」

貴族子弟「ひぁ!?」
軍人子弟「はっ!」

勇者「ちょっとまった、お前らは馬鈴薯の袋担いでけ!」
貴族子弟「な、なぜそのような!? お、横暴だ!」

勇者「逃げてる最中に子供見つけたら背負って逃げてぇだろ?」
貴族子弟「うううう」
軍人子弟「わ、判ったでござる! いくでござる!!」

貴族子弟「ひ、ひぇぇ!」
919 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:06:23.34 ID:I63MLpWkP
勇者「あ~! いい汗かいた! 気分爽快!!」
女騎士「ちっとも運動して無いじゃないか」

勇者「そんなことないぞ、他人に教えるってのは疲れるな」
女騎士「お前のは半分くらいいじめだ」

勇者「そうかなぁ。あれくらいやれるって」
女騎士「そのうち死ぬぞ」

勇者「だいじょぶだいじょぶ。半分くらい殺した方が育つって!」
女騎士「ホントにこいつは……」

勇者「うわぁ、暑いな」 がちょん、がしゃん
女騎士「鎧を投げ出すな。はしたない」

勇者「女騎士は厳しいなぁ。……もう。これでいいか?」
女騎士「そうだ、命を守る武具だぞ。丁寧に扱うべきだ」

勇者「暑ぃ~。おれ、井戸行って水浴びしてくる」
女騎士「ん、そうか?」

とことこ
  とことこ

勇者「ん?」
  女騎士「どうした?」
922 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:12:39.57 ID:I63MLpWkP
勇者「何でついてくるの?」
  女騎士「わたしだって暑い。水浴びをしたい」

勇者「そうか」
  女騎士「うむ」

勇者「よし、くみ上げるぞ? んしょ、んしょ」
  女騎士「おー。ご苦労! このポンプなるものは便利だな」
勇者「まったくだな……。水貯まったか?」


ざぁぁぁぁ!!


女騎士「ああ。気持ちよいぞ! もう一杯頼む」
勇者「よしきた……んしょ、んしょ」


ざぁぁぁぁ!!


女騎士「ああ、涼しい! 爽快だ! もう一杯!」
勇者「どんどん行くぜ! ……んしょ、んしょ」
  女騎士「勇者は本当にいいやつだな」


ざぁぁぁぁ!!


女騎士「ふぅ、訓練のあとの水浴びは最高だな」
勇者「そうだなっ!」
  女騎士「さぁ、もう一杯頼んだ」

勇者「任せろ……ってか俺は汗みどろで暑いままだこのやろ-!!」
925 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:18:22.84 ID:I63MLpWkP
女騎士「男のくせに細かいことを」
勇者「水浴びは俺の発案だっての!」

女騎士「ほれ、濡れ布巾だ」
勇者「ちべてー! 気持ちいいな! じゃねぇよっ!」

女騎士「仕方ない。わたしが汲み上げをやろう。代わってくれ」
勇者「よしきた!」


女騎士「よっこいしょ」
 勇者「……」びきっ


女騎士「どうした?」
 勇者「お、お、ひょ、ひょ」


女騎士「スライムみたいな顔で固まるなよ」
 勇者「おま、な、なんか。なんで肩タオル?」


女騎士「水浴びしてたからだろ?
 ああ、なにか?
 おい勇者。それとも私の胸が肩タオルで隠れちゃってるぜ、
 どんなサイズだよそれって云う突っ込みなのか!?
 爺さんと再会してから品が無くなったな!
 しまいには斬るぞ!」


勇者「ま、まっしろ、ま、まっしろ」
929 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:24:50.02 ID:I63MLpWkP


女騎士「ほれ、とっとと下に行け」
 勇者「あぅあぅ」 ふらふら


女騎士「まったく。混乱呪文でもくらってるのか。
   いくぞー。勇者、水でるからなー」
勇者「あぅあぅ」


女騎士「ん、せぇっの! ……んっしょ、んしょ」
勇者「き、きたぞー」


ざぁぁぁぁ!!


女騎士「ちゃんと髪も流すんだぞ ……んっしょ、んしょ」
勇者「子供じゃねーよ!」


ざぁぁぁぁ!!


女騎士「そうだ、勇者」ひょいっ
勇者 びきっ


女騎士「これ貸してやる。修道会で作った石鹸だ」
勇者「お、お、おぅ」


女騎士「お前挙動不審だ」


ざぁぁぁぁ!!
932 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:30:42.23 ID:I63MLpWkP
勇者「ふわぁ。さっぱりしたぁ!」
女騎士「こっちもさっぱりしたな」

勇者「……」ぴょこぴょこ
女騎士「何してるんだ? 呪われてるのか?」
勇者「耳に水が入った」
女騎士「子供か、勇者は。ほら、タオルだ」

勇者「おお。あんがとよ」
女騎士「良く拭けよ。勇者の髪はもふもふだからな。
 水分をちゃんと取っておかないと、あとで余計に汗をかくぞ?」

勇者「んぅ、わかってるって」 わしゃわしゃ
女騎士「櫛ももってないのか、お前は」

勇者「魔王がしてくれっからなぁ、自分のはねぇや」
女騎士「そうか……」

勇者「ふわぁ!」 とさっ
女騎士「どした?」
勇者「ちょっとベンチで休憩」
女騎士「ああ。良い風だな……」 すとん

勇者「夏の終わりのこの国は、最高だな」
女騎士「ああ、これから栗も美味しくなるだろうな」


さわさわさわ……

勇者「……」
女騎士「……」
935 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:36:58.76 ID:I63MLpWkP
女騎士「ずっとこうなら良いんだけどな」
勇者「そうな」

女騎士「……」
勇者「……」


さわさわさわ……

女騎士「そうもいかないか」
勇者「うん」

女騎士「妻妾同居にしてもどちらが妻か決っせんと」
勇者「魔界にしても何時までも指をくわえてない、そろそろ動きが」

女騎士・勇者「え?」

女騎士「あ、ああ! そうだな! 戦は今は膠着状態だが
 この膠着状態が保証されているわけでは無論無い」
勇者「だよな」

女騎士「……疑問なんだが、勇者」
勇者「ん?」

女騎士「思うにだな」
勇者「うん」
939 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:43:05.61 ID:I63MLpWkP
女騎士「弓兵の爺さんと、私と、勇者と……
 しゃくだが胸のでかい魔王とでな。
 それでパーティーを組んで
 魔族の主立った将軍と砦、軍勢を全て撃破すれば
 案外、この戦はあっさり終わるのじゃないか?」

勇者「あー。かもなー」

女騎士「ダメなのか?」

勇者「……」
女騎士「魔王は人間の味方になったんだろう?」

勇者「それは違うさ」
女騎士「そうなのか?」

勇者「魔王は、“勝ちでも負けでもない”戦争の終わりを
 目指しているんだ。だから、そんな殲滅作戦みたいなのを
 提案したら同意してくれないと思うぜ」
女騎士「そうか」

勇者「あいつはあいつなりの方法で、魔族を救おうとしてるんだ」
女騎士「そう……なのか?」

勇者「たぶん」
943 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:50:17.55 ID:I63MLpWkP
女騎士「ままならないな」
勇者「そうでもないさ。俺はかえって良かった
 かもしれないと思う」

女騎士「そうか?」

勇者「確かに俺も女騎士も、強いさ。
 『外なる図書館』へ行った魔法使いもな。
 敵を倒すことは出来ると思うよ。
 でも、敵を倒すことと味方を守ることは、似ているようで違う。
 俺たちが魔族の軍を倒すのは良いけれど、
 その間。俺たちがいない場所で
 魔族の軍の逆襲を誰が防ぐ?」

女騎士「それは聖鍵遠征軍をはじめ人間の軍が守る」

勇者「本当にそれで解決になるかな?」

女騎士「出来るさ、きっと」
勇者「それに、そうやって魔族の強硬派を
 粛正したあとどうするんだ?」

女騎士「え?」 きょとん
946 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:54:11.46 ID:I63MLpWkP
勇者「それでもものすごい数の魔族が残るんだぜ?
 戦争に直接参加していない魔族も、中立ぎみの魔族も居る。
 人間は魔族の軍を全て殲滅しました、魔族は無防備です。
 魔族の首具には全て敗戦国です。
 ――で、その後は?」

女騎士「そ、それは……」

勇者「魔族狩りか? 奴隷か?
   なんだっけ、魔王は云ってたな
 そう、『植民地』だ」

女騎士「なんだそれは?」

勇者「“他人の土地に攻め込んで支配して、
 自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること”
 だ、そうだ」

女騎士「そんなこと、人間はそんなことっ」
勇者「俺もそう答えかけたけど」

女騎士「っ!」
勇者「言い返すことは出来なかったよ」
950 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:07:58.61 ID:I63MLpWkP
勇者「それにさ、そうやって奴隷にされて、人間に
 支配された魔族の怒りはどれほどのものだろうな。
 もちろん、その後の人間側の対応次第だけど
 世界中の有りとあらゆる場所に憎しみの火だねが
 ばらまかれるんじゃないかな」

女騎士「それは……」

勇者「魔族が人間の主要な軍を全て殺し尽くし、
 進軍をしてきて、南部諸王国を突破し、
 聖王都を征服。人間は最後の一人に至るまで
 魔族に征服されたとする。
 世界のあちらもこちらも、家畜のように扱われる
 人間でいっぱいだ。夏は灼かれ、冬は凍え、常に飢えて
 ムチに怯えて、哀れを誘う懇願だけが続く。
 そうなったら、女騎士はどうする?」

女騎士「命が果てるまで魔族を殺すっ!!」

勇者「ほれみろ。同じじゃねぇか」

女騎士「……」

勇者「そうなったら、それはもう、
 世界中で戦争が起きているのと同じだ。
 俺たちたかが5人や6人程度でどうにかなる騒ぎじゃない。
 世界が終わるまで憎しみが続くんだ」
954 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:17:15.78 ID:I63MLpWkP
勇者「魔王は弱いよ。魔王のくせに笑っちゃうけど。
 一対一で戦ったら、そうだなぁ……冬寂王と互角じゃないか?
 あの王様、あれでしぶとそうだしな。
 でも、その程度。
 爺さんでも女騎士でも、余裕で勝てると思うよ」

女騎士「……」

勇者「でも、あいつは最初から、
 下手をしたら生まれた次の瞬間には気が付いてたんだ。
 “並外れた戦闘能力でこの戦争を終わらせることは出来る”
 でも“争いの火種を鎮火することは出来ない”ってな」

勇者「あいつ、すげーよ?
 知識ももちろんすげーけど
 考えてることがすげーよ」

女騎士「だ、だから……」
勇者「?」

女騎士「だから、勇者は、魔王のこと……」

勇者「うん。仲間になった」

女騎士「……」

女騎士(わたしは、卑しいな……)
956 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:25:18.52 ID:I63MLpWkP


さわさわさわ……

勇者「それにさー」
女騎士「……」

勇者「女騎士もすげー」
女騎士「え?」

勇者「だって、魔界から帰ってきたら修道会の院長だぜ?
 農民の生活を底上げするんだ、とか言い出してやがるの。
 その一年前は猪豚鬼のケツの肉を3cmずつスライスする
 練習してたくせにさっ!!」

女騎士「ばっ、あれはお前らが乗せたんじゃないか!!」
勇者「でも、すげぇよ」 にかっ

勇者「なんだろう、正解が判る嗅覚でもついてるのかなぁ?
 お前たちはみんなすごいよ。びびるよびっくりだよ。
 そうだよな、毎日腹一杯食えて、温かくて幸せなら
 隣人に優しくできるもんな-。冴えてるよ」

女騎士「あれは、成り行きなんだ」
勇者「そうなのかー? でも、なんかもー。てへへ」

女騎士「……」


さわさわさわ……

勇者「俺は斬った張ったしかできないから、
 二人とも……。いや、みんなが……まぶしいなぁ」
959 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:36:11.81 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、魔王の屋敷、台所


がちゃり

勇者「おーっす!」
魔王「おお、教練は終わったのか?」
勇者「おわったおわった、ばっちりさ」
魔王「お疲れ様だ」

勇者「魔王も休憩か?」
魔王「うむ、提出案件への評価が終わったからな」

メイド妹「当主のおねーちゃん、
 お兄ちゃんが帰ってくると思ってそわそわ待って」

魔王「何を言うか、この口かっこの口かっ」ぎゅっ
メイド妹「うーうー。もがもが……もがもが」

勇者「仲良いな、ほんと」
メイド妹「うー。けほっけほっ。もうっ」

魔王「余計なことを云うからだ」
メイド妹「はーい。座っててくださーい。
 ちゃんとオレンジ水だします」

魔王「なんだそれは?」
勇者「お、なんか冷たいぞ?」

メイド妹「井戸水で瓶ごと冷やすのです♪
 わたしが発見したのだー!」
960 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:44:41.27 ID:I63MLpWkP
魔王「まったくもう」
勇者「お、美味いぞ! これ」
メイド妹「えっへーん♪」

魔王「これは……炭酸か?」
メイド妹「当主のおねーちゃんに教えて貰ったから、
 工夫してみましたー!」

魔王「醸造職人もまっさおだな」
勇者「これ、しゅわしゅわで美味いなぁ。
 蜂蜜の甘さも良いあんばいだ」
メイド妹「えへーん♪」

魔王「妹は、良い料理人になるやもしれんな」
勇者「へ? こんな食いしん坊が?」
魔王「良い料理人というものはえてして食いしん坊だ」
勇者「そうなのか?」

メイド妹「料理人?」

魔王「うむ、美味しい料理を作ったり開発したりするのだ」

メイド妹「うわぁん、それすごい♪」

勇者「すげぇ、花しょってるぞ」
魔王「恋する乙女の魔術か?」
勇者「よだれを垂らしてるところが違うな」
963 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:50:19.13 ID:I63MLpWkP
メイド妹「お姉ちゃんに報告してくるっ!」
勇者「何を?」

メイド妹「料理人になるって!
 毎日好きなご馳走を作って食べるんだって!!」

勇者「何か誤解してないか?」

メイド妹「行ってくる-!!」


バタン! トタタタタッ!

魔王「騒がしいな、まったく」
勇者「ああ。でも、元気になったなー。あいつ」
魔王「ん?」

勇者「最初の頃は、姉ちゃんのうしろで半べそだったもんな」
魔王「そうだな。そのくせ、噛みついてきてな」

勇者「“めがねのおねえちゃんはいじわるなのっ”だろ?」
魔王「ああ、そうだな。  メイド長のやつ、びっくりしておったなぁ!」

勇者「そうなのか?」
魔王「ああ。あのあとでな。“人間にもなかなか根性のある
 娘がいる”と云っていたよ」

勇者「そうだったのかぁ」



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