2-3


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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」2-3


549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:16:22.37 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、村はずれの館……年越祭の夜

(勇者に膝枕してみたいっ!)
(よしきた)

――勇者

(勇者の頭、もふもふしてるぞ)
(魔王も良い匂いだぞ?)

――勇者に

(そうか? 太くないか?)
(寝心地良いぞ)

~♪ ~~♪

魔王「……んぅ」

魔王「ん……。どうやら、うたた寝してしまったようだな」

魔王「今何時だろう、日は暮れているようだが……。
 だれかー……。だれか……。いないのか。
 村長の所へ行くとか言っていたものな」
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:20:54.26 ID:vGBiMEoLP
魔王「……」もそもそ

魔王「資料だらけだな」

魔王「んぅ……。背中が痛い。こんなところで
 寝てしまったからだ」

~♪ ~~♪

魔王「……勇者か」

魔王「……」

魔王「もう一年も、だ」

魔王「……」

魔王「もう一年も、触れてない」

魔王「声が聞きたいんだ」

魔王「わたしは勇者の物なのに……」

魔王「勇者のものなのに」
557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:26:53.49 ID:vGBiMEoLP
魔王「勇者、わたしは弱虫になってしまったよ。
 世界を変えることが恐ろしい。
 戦争とはこんなに恐ろしい物だったんだな。
 それではわたしもやはり、血に抗争の遺伝を
 流れさせる魔族の一人であったのだ。
 あんなに躊躇いなく流せていた血なのに……」

魔王「わたしは……。がんばっているぞ?
 勇者。
 勇者も頑張っているのか?
 褒めて欲しいぞ」

勇者「おう。――偉いぞっ。魔王」
魔王「勇者ッ!?」 がたんっ

勇者「おっす」にこっ
魔王「勇者、勇者っ! 勇者っ」
勇者「お、なんだよっ」

魔王「このうつけ者っ。一年もの間どこをほっつき
 回っていたんだっ。糸の切れた凧とはお前のことだっ」

勇者「痛っ、痛いぞ、魔王。ぼこぼこ殴るなっ」

魔王「えい。この程度では飽き足らない!」

勇者「わぁった。ごめん。すみませんっ。
 わたくしが悪ぅございましたぁ~」

魔王「謝罪に誠意が足りないっ!!」
562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:31:15.17 ID:vGBiMEoLP
勇者「だ、だ、だいたいなっ!」
魔王「ふんっ」

勇者「ちゃんと報告書は届けていたじゃないかっ」
魔王「あんなものは報告書とは言わん。絵日記というのだ!」
勇者「え、え、絵日記!?」

魔王「その。か、顔を見せに来ても良いではないかっ」

勇者「仕方ないだろうっ。こっちはこっちで忙しかったんだよ。
 いまだって『開門都市』の件でてんやわんやなんだ。
 北の砦に物資を運ぶ方法で頭を痛めているしっ」

魔王「何故そんなことをしてるんだ」

勇者「魔王が言ったんだろうっ。強硬過激派の芽を
 そいでおけって! 忘れたのかよっ」

魔王「勇者のでたらめな超絶破壊魔法で
 やってしまえば良いではないか」

勇者「出来るわけ無いだろっ」
魔王「……?」

勇者「みんな生きてるんだ。がんばってるんだぞ。
 毎日毎日少ない手持ちと、なけなしの希望でさ。
 そんなのいっしょくたに壊すなんて、出来るわけ無い」
565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:35:17.72 ID:vGBiMEoLP
魔王「勇者……」
勇者「妖精の女王だって、森歌族だって」

魔王 ぴくっ

勇者「竜の公女だって、鎧族の娘だって、酒場の子だって」

魔王 びきびきっ

勇者「みんな、一生懸命なんだもんよ。勇者だからって
 壊して良いなんて事、あるわけない」

魔王「そんなことを云って、本当はもてもてで
 娘たちに囲まれて鼻の下を伸ばしておったのではないか!?」

勇者「そっ。そんなことはナナナ無いぞ! 断じてないっ」

魔王「そうなのか? 本当にそうなのか!?」
勇者「えー。その件につきましては誤解があるのでしたら
 前向きな調査の上説明して差し上げたく」

魔王「その調査には是非串刺しを取り入れるべきだな」ぎらっ

勇者「そ、そ、そんなこと云ったって……あっちから……」
魔王「なにか?」ぎろっ

勇者「そ、そうじゃなくてだなっ!」
571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:38:19.90 ID:vGBiMEoLP
勇者「魔王だってなんだよ。若い公子とか、都の貴族とか
 エリート商人かなんかかららぶらぶ光線出されてたん
 じゃないのかよっ」

魔王「あっんの、メイド長めっ。口止めしておいたのに」

勇者「え? マジなの?」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「あ、あれはだなっ! 決してやましいものではなく
 いわば決闘にも似た交渉の場での出来事でだなっ!!
 そもそも高度な交渉というのは妥協と駆け引き、
 決意と損益が火花を散らす戦場と言っても良い場所でっ」

勇者「……」 ずぅぅぅん

魔王「勇者っ。なんだそのざまはっ
 沼地にはまった石巨人のような顔をしおって!」

勇者「いや、だって」 ずぅぅぅん

魔王「ええい、この軟弱者っ」
575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:43:02.07 ID:vGBiMEoLP
勇者「軟弱とは何だよっ。俺頑張ってたのにっ!
 ぷにぷに魔王めっ!!」

魔王「ぷっ!? ぷにぷにっ!? ぷにぷにと云ったか!
 この口かっ! この口かっ!」ぽかぽかっ

勇者「痛いっ、やめれっ!」

魔王「わたしはこれでも毎日すとれっちとか体操してたのだ!
 逆立ちだって頭をつけば出来るようになったのだ!」

勇者「お前魔王のくせに何でそう、みみっちい努力が得意なんだよ」
魔王「みみっちい云うな!
 全ての野望は一歩目の努力から始まるのだ!」

勇者「このバカ魔王っ!」
魔王「アホ勇者っ!」
勇者「ひきこもりめっ」
魔王「放浪うつけ者っ!」

~♪ ~~♪

勇者「……はぁ、はぁ」
魔王「……むぅー」

~♪ ~~♪

勇者「やめよう」
魔王「うむ」
577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:50:40.29 ID:vGBiMEoLP
勇者「……これ、なんだ?」
魔王「これか、これは村長の家から流れてくるらしい」
勇者「年越祭の、音楽か?」
魔王「そうだろう」

~♪ ~~♪

勇者「明かりつけて良いか?」
魔王「いや、ダメだ。白衣はしわしわだし、寝癖があるのだ」
勇者「自分でばらしてたら意味ないじゃないか」
魔王「そんなことはない。予告編と本編では衝撃が違う」

勇者「あー。もうっ!」
魔王「?」

勇者「ま、魔王はいつでも美人で、その……素敵だよっ」
魔王「え、ええっ!? な、な、なにをっ」

勇者「べつにっ」ぷいっ
魔王「ううううう」

勇者「――ご馳走食べに行かなくて良いのか?
 年越祭なら、子豚の丸焼きやら、酒やら、マスのはいった
 香ばしいパイやら、香草包みやら、キノコのオムレツも
 出るだろう?」

魔王「いい。ここにいる」
勇者「じゃぁ……あー。えー……。一曲、どうだ?」
578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:54:36.09 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪
 ――right step foward. right step foward.

魔王「こ、こ、これでいいのか?」
勇者「もうちょい胸を張って」

魔王「こうか?」
勇者「上等」

~♪ ~~♪
 ――1/4 turn left step left.

魔王「あ、足を踏んでも赦すんだぞ? 真っ暗だから」
勇者「いや、雪明かりで見えるよ」
魔王「それはそうだけど」

勇者「白くて、キラキラして、きれいだ」

~♪ ~~♪
 ――1/2turn right step left back.

魔王「……優しい曲だ」
勇者「古王国の輪舞曲だって聞いたことがある」
581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:56:38.50 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪
 ――Touch left next to right & Clap.

勇者「そこで右へ半歩」
魔王「こうか? こうか?」
勇者「上手いじゃないか」

魔王「もっとましな服を着ておくんだった」
勇者「誰も見てないよ」

~♪ ~~♪
 ――right step foward. right step foward.

魔王「だ、だって。あっ」
勇者「大丈夫か?」
魔王「すまん」
勇者「魔王は良い匂いだな」

~♪ ~~♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.

魔王「目が回りそうだ」
勇者「輪舞曲は苦手か? ターンが多いからなぁ」

魔王「そうじゃない……けど」
584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:00:42.06 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪
 ――right step foward. right step foward.

勇者「これ」

魔王「これは……私が使っていた櫛だ」
勇者「魔王城へも行ったんだ」

~♪ ~~♪
 ――1/4 turn left step left.

魔王「この櫛は小さな頃から使っていたんだ。
 無くしたかと思っていた……」
勇者「大事に使っていたっぽい感じだったからさ。
 もしかしたらと思ってな」
魔王「うん……」

~♪ ~~♪
 ――1/2turn right step left back.

勇者「安上がりで悪いけど、それが年越祭のプレゼント」
魔王「……勇者」
勇者「ん?」

魔王「プレゼント、無い。……わたし用意してないんだ」
587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:04:02.91 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪
 ――Touch left next to right & Clap.

勇者「気にするなよ。礼を期待してやってるわけじゃない」
魔王「それはそうだろうが……」
勇者「魔王は俺のものなんだよな?」

魔王「もちろん」
勇者「それを聞きに帰ってきたんだよ」

~♪ ~~♪
 ――right step foward. right step foward.

魔王「どうしたんだ? なにか辛いことでもあったのか?」
勇者「いや、頭が悪くてさ。俺。回り道して」
魔王「……」
勇者「勇者の頃は、出てきた敵を順番に倒していれば
 みんなに褒めてもらえたんだ。勇者なんて簡単なものだよな」

~♪ ~~♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.

魔王「勇者」
勇者「ん?」

魔王「わたしも、やっぱり勇者に、その……」
589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:07:48.76 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪
 ――right step foward. right step foward.

魔王「あの、そのぅ、だな。
 勇者にあげられる価値あるものなんてだな」
勇者「……え、あ?」

魔王「何でこのような時に限って、
 手のひらが汗でペとぺとするのだっ」

~♪ ~~♪
 ――1/4 turn left step left.

魔王「うううう。……静まれ我が魔心臓よ。
 そは決戦の時ぞ、ゆ、ゆ、勇者っ」

勇者「ま、ま、魔王? すごい気迫だぞ?」

~♪ ~~♪
 ――1/2turn right step left back.

魔王「ゆ、勇者。えっと……」ぎゅっ

勇者「それじゃステップ踏めないって魔王。
 ……魔王?」
591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:11:32.45 ID:vGBiMEoLP
~♪ ~~♪

魔王「勇者とくっつくのも、一年ぶりだ」
勇者「こっちだって」

~♪ ~~♪

魔王「その……勇者が良ければだな。持ち主として
 褒美を取らせてもだな、もちろんまだまだ駄肉で
 ぷにってる訳で褒美というか罰ゲームかもしれないという
 疑いはなきにしもあらずなのだがいやそれは
 横に置いて報償というものは信賞必罰と云ってだな」

勇者「えっとその」
魔王「勇者……?」

勇者「……」
魔王「……」

~♪ ~~♪ ……♪ ……

魔王「お、音楽終わってしまったな!!」 ばっ
勇者「そ、そうだなっ!! 離れないとっ」 ばばっ

魔王「……うううー」
勇者「……」 わたわた

魔王「――も、もうちょっとだったのにっ」
594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:18:53.12 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、雪明かりに照らされる一室

魔王「行くのか?」
勇者「ああ。魔王と会えたから、勇気百倍さ」


かちゃ、がちゃ。

魔王「みんなとは、良いのか?」
勇者「魔王は随分人間くさくなったな」
魔王「弱くなったのだ」
勇者「それはこっちも同じだ」
魔王「今度は程なく会えような」
勇者「ああ。一月もかけず、『開門都市』を攻略する」
魔王「出来るのか?」
勇者「魔王と話したからな。糸口は見えたよ」
魔王「こちらも見えてきた」

勇者「次に会うのは」
魔王「戦火の交わるところになるだろうな」
勇者「おっし、準備できた!」
魔王「勇者」
勇者「おうっ」
魔王「構えて遅れは取るまいぞ?」

勇者「心配無用。……俺は魔王の剣にして道だ」

しゅわんっ!!

魔王「君は……わたしの光だよ」
625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:26:30.42 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、冬の国野営地

義勇軍兵「ほーうい!」
志願兵「交代だ! 差し入れをもってきたぞ」
兵士「ありがたい、なんだ?」

義勇軍兵「ナッツとベーコン入りの黒パンだよ」
志願兵「豪勢だなぁ!」
兵士「年越祭の残り物だそうだよ」

義勇軍兵「そうなのか? 祭りのご馳走もたっぷりだったのに」
志願兵「自分はあんな祭りは初めてでした」
兵士「ああ、今年はひときわ豪勢だったよ」

義勇軍兵「そうなのか?」
兵士「うん。我が国は、少しずつ暮らし向きが
 良くなってきているようだ。
 ねぇ、そうでありますよね! 士官殿」
士官「うむ、そうだなぁ。……ええい、ちゃんと
 見張りをせんかっ!」

義勇軍兵「はっ!」 がしゃ
兵士「はぁっ!」 がしゃん!

士官「まぁ、今のところ敵軍も見えないが」
義勇軍兵「こちら側の陸地へは攻めてこないのでしょうか」

士官「過去の大規模進行の記録はないが、
 人間軍がここに野営地を築いていることは
 向こうも承知だろう。油断は禁物だ」
627 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:32:03.15 ID:vGBiMEoLP
義勇軍兵「それにしても……」
志願兵「ん?」
義勇軍兵「いいのかな。俺たち、ここでもう二週間だぞ」 志願兵「ああ、そうだな」

義勇軍兵「確かに寒い中、厳しい訓練をさせられているけれど
 それだけで戦に勝てる訳じゃないだろう?
 こうやって、ただ飯を食っていて良いのかなぁ」
志願兵「お偉方には、お偉方の考えがあるんだろうさ」

兵士「船が足りないんじゃないか?」
義勇軍兵「ふむ」
志願兵「そうなのか?」
兵士「ここにある船じゃ、半分も乗せられない。
 おそらく船が到着するのを待っているんだろう」

女騎士「見張り、ご苦労!」
士官「敬礼っ!」


ザザザッ

女騎士「ここが耐えどころだ。気を抜くな」
義勇軍兵「はっ!」

女騎士「訓練はどうだ?」
志願兵「剣の使い方を教えて貰いましたっ!」

女騎士「戦場で己を生き延びさせるのは、常に己だからな。
 わたしも守ってやることは出来ない。腕を磨けよっ!」
628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:36:42.00 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、臨時作戦本部

冬寂王「……補給物資は? ふむ」
執事「斥候が戻りました。まだ動きはないそうで」

女騎士「なかなかに、焦れるな」
冬寂王「将軍でもそうか?」
女騎士「将軍と呼ばないで欲しい。臨時の肩書きだ」

執事「にょほほ。誰に恥じることない胸ですのに」
女騎士「斬られたいか」ぎろり

士官「よろしいでしょうかっ!」
執事「む、入れ」

士官「お客様がお見えですっ」

冬寂王「客?」

士官「紅の学士、と名乗っております。荷馬車隊と一緒でして」
女騎士「学士殿か。来て頂けたんだなっ」

執事「おお」 冬寂王「噂の天才的学者殿か? かねてから一度お会いしたいと
 は思っていたのだが、なぜ戦場へ?」

女騎士「王よ、学者だとは思わない方が良いぞ」ぼそり
631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:43:04.03 ID:vGBiMEoLP
魔王「わたしは紅の学士を名乗るもの。お初にお目にかかる」

執事「こ、これはっ」
女騎士(まさか、魔の気配に気付かれるのかっ!?)

執事「にょほー。たいそうな胸でございます」
女騎士 がっ
執事「~っ!」

冬寂王「挨拶痛み入る。わたしが冬の国の冬寂王だ。
 もっとも即位したての若造だがな」

魔王「いいや、王の器量は冬越し村にまで響いてきている」
冬寂王「実績がないゆえ、期待感だけがあるのだ」

執事「お茶でも入れますかな」
魔王「ありがたい」

冬寂王「ところで、どのようなご用件で?
 我が国の農業を支えてくれている方だと伺っている
 是非一度お目にかからねばと思っては居たのだが
 無理難題を積み上げられてしまってな。
 ご挨拶も出来ぬままだった。申し訳ない」

魔王「ご丁寧に。すまないことだ。
 ところで、王よ」
冬寂王「なんだろう?」

魔王「勝つつもりなのだろうな?」
634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:47:32.48 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「無論」

魔王「是が非でも?」

冬寂王「あの島を取り戻すことは、
 今の南部諸王国には必要なのだ」

魔王「どのような意味合いで?」
冬寂王「南部諸王国の、誇りを取り戻す」

魔王「ふむ」

冬寂王「現在の南部諸王国は、
 云われるままに戦をする使い走りのような
 国とも言えないような国でしかない。
 あの島を取り返せば、わずかとは言えいくつかの交易路が
 安定をするはずだ」

魔王「……」にやり

冬寂王「金のために将兵の命を掛けるとそしられようが」

魔王「いや、良い。理解は浅いが十分だ」

女騎士「まったく……」
635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:51:34.98 ID:vGBiMEoLP
執事「若に対して無礼な!」
女騎士「弓兵。私たちの出る幕じゃない」

魔王「無礼はわびよう」

女騎士「もしかしてブラックパウダーですか?
 そんなものが無くても、わたしは負けたりはしないと
 云ったじゃないですか」

魔王「いや、ちがう。もってきたのは、塩だ」

冬寂王「……っ!」
女騎士「塩……」
執事「どこでそれを……」

魔王「馬車に6台分ほど用意してある。何かの役に立つかとな」 冬寂王「あなたは……」

魔王「……」

冬寂王「50里の彼方にいて、我が手の内を読むか」
女騎士「そうゆうことがある人だから」

執事「学士とは……そこまで……」

魔王「勝つつもりでいるのなら、あるいはと思っただけだ」
640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:57:15.54 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「この戦に何を望まれる? その塩の代価は?」
執事「報償ですか? それとも宮殿の地位?」

魔王「地位は、とりあえず……そうだな。
 登城が出来る程度の肩書きがあれば面倒がないな」

冬寂王「よし、許そう。だがそれだけだとも思えない」
魔王「時間が所望だ」

冬寂王「時間……?」
魔王「あるいはそれは戦場において黄金よりも
 価値があるやもしれないが」

冬寂王「……」

魔王「わたしは勝利を求めたことはない。
 だから勝利では足りない部分を司ろうと思う。
 そのためには時間が入り用だ。
 長くて一昼夜」

冬寂王「ありえんっ。奇襲が成立せんではないかっ」

魔王「それでも方策はある。女騎士殿ならばな」

執事 ちらっ
女騎士「まぁ、学士様が言うんなら有るんでしょう」
642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:03:35.91 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、中央砦

遠征軍士官「……ま、まただっ!?」
遠征軍士官「こ、ここもだぁ」
遠征軍士官「呪いだ、呪われたんだっ!」

遠征軍士官「呪いなどである者か、これは暗殺者だ!」
遠征軍士官「それにしたって、ほんの五分だぞ?
 たった五分目を離しただけで、小隊一つが……」

遠征軍士官「こ、これは……」
遠征軍士官「ひからびて死んでる」
遠征軍士官「こっちは、炭化してるぞ」

遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ」
遠征軍士官「気が狂ってる!?」

遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ! 夜、夜が来る!
 月、月がふくれて、蒼く笑う。来る、やつが来る!
 ゲタゲタゲタゲタ! ゲタゲタゲタゲタ!」

遠征軍士官「な、なんだっていうんだ!?」


ギャァァァアアア!!!

遠征軍士官「こんどは第三見張り鐘楼だ! 急げッ!」
645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:08:30.22 ID:vGBiMEoLP
ダダダダッ!

遠征軍士官「な、なんだこれは」
遠征軍士官「何でこんな泥とぬかるみが……ヒッ! ひぃっ!」
遠征軍士官「こっこんなっ」
遠征軍士官「呪いだ。人間業じゃないっ」

勇者「……フフフ。フフフハハ」

遠征軍士官「だっ、誰だ!?」
遠征軍士官「で、出てこいっ! 我らは地上最強の
 聖鍵遠征軍だぞ! で、出てこいっ!!」

勇者「……腕が無くても、しゃべれるだろう?」


ギンッ! ズザンっ! ザガッ!!

遠征軍士官「ギャ、ギャァ!」
遠征軍士官「黒い、黒い悪霊だっ! 亡霊騎士だぁぁ!!!」

遠征軍士官「退けッ!」
遠征軍士官「退却だ、相手は悪霊だ!! 呪いが現れた!」

遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ!!」
遠征軍士官「ああああ! 無数の死者が!? 悪魔だぁ!!」
647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:13:51.39 ID:vGBiMEoLP
勇者「ふんっ。腰抜けばかりだな」
羽妖精「黒騎士サマッ! カッコイー!」

勇者「あいつらがよわっちーだけだ。
 それにしてもこれ、すごい顔な」

羽妖精「アハハハッ! 妖精ハ幻術、得意! エヘン!」

勇者「ああ、上手いぞ! この調子で、手分けして
 あちこちに幻を掛けるんだ」

羽妖精たち「「「「ハーイ!」」」

勇者「とびっきりの怖い幻で行くんだぞ?」

羽妖精「怖イ?」 羽妖精「怖イ!」 羽妖精「怖ーイ♪」

勇者「それから、夢魔鶫はいるか?」
夢魔鶫「御身の側に」

勇者「司令室一帯に夢の回廊を作り上げろ。
 思い上がった貴族どもに毎晩の悪夢を送り込んでやれ」

夢魔鶫「仰せのままに」
650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:19:45.04 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、貴族たちの豪華な寝室

司令官「ぎゃぁぁぁぁ!!??」

司令官「はぁ……。はぁ……はぁ……
 ゆ……夢? 夢、なのか……?」

司令官「なんて……なんて夢だ。
 あんなに無数の手が……死者が……
 た、たかが魔族じゃないか。光の精霊の正義は
 我らにあるのだ。あんな家畜、いくら殺そうが……。
 さ、酒だっ! 酒をもてっ!」

魔族奴隷「御、御酒でござい……ます……」

司令官「獣臭い手で触れるな下郎っ!!」


どがぁ!

魔族奴隷「きゃぁんっ!」
651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:25:57.79 ID:vGBiMEoLP
司令官「だ、だから俺はいやだったんだっ!」


ガチャン!

司令官「こんな辺境! 地獄の都市! なにが占領地だ!
 何が栄光だ! こんな所、流刑地ではないかっ!」

司令官「おれは聖王家につらなる、霧の王国の血を
 引いているのだぞ。何でこんな獣臭い魔族の都市に
 ひきこもっておらねばならぬのだ!
 そ、そうだっ。俺の功績は世に並ぶものとてない。
 聖王国へ帰れば栄耀栄華も思いのままだというのにっ」

魔族奴隷「やめてっ! ら、乱暴はっ」

司令官「黙れ! この二等魔族っ、動物もどきめっ!
 貴様らがっ! 貴様らが居るから俺は帰れんのだっ!」

司令官「瀟洒な夜会もない、美しく着飾った淑女も居ない。
 こんな田舎の砂埃にまみれた陰鬱な都市で、一生を
 おえるなどゆるされるものかっ!!」


がちゃん!!

遠征軍士官「指令っ!」
654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:31:23.15 ID:vGBiMEoLP
司令官「何事だっ!」
遠征軍士官「またです! また死霊騎士が現れました!」

司令官「なにっ」

遠征軍士官「こんどは街中に繰り出していた休暇中の
 将官数名がその……」

司令官「報告せんかっ!」

遠征軍士官「水たまりで、溺死したと……」

司令官「……っ!!」

遠征軍士官「そ、それでその……士官たちが」
司令官「なんだというのだ」

遠征軍士官「これは魔族の呪いだと。中には帰国申請を
 出す者すらいる始末で」

司令官「ええい! 何を抜かす! 今までさんざん
 飽食の限りを尽くしてきたではないか!!
 帰りたいと抜かすヤツには、魔族の娘でもあてがえ!
 酒と金を掴ませろっ」

遠征軍士官「その、それは、どこから……」
司令官「街から奪えば良かろうっ!」
656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:38:58.69 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、海岸線、深夜

漁師「来ました、王様!」
冬寂王「うむ、見えておる」
執事「本当に来ましたな!」

冬寂王「時期の読みもぴたり、だ。でかしたぞ」

漁師「いやぁ、こんなこと、ここらの漁師だったら
 あったりまえだでよぉ」

冬寂王「年越祭が終わってしばらくすると、
 一週間ほどだけ、だったな」

開拓民「うわぁ、でっけぇ!」
開拓民「でっけぇなぁ!」

漁師「そうですだ。おれたちゃ、
 あれをこう呼んでます、王様。
 ――流氷 と」

冬寂王「よし、うかつに船で近づくな。つぶされるぞ!
 アンカーを打て! ロープを掛けろ!
 岸に引き寄せるのだ!
 氷の固まり同士をつなげたら、ロープを張り、
 結合部に海水を掛けろ!! 流氷をつなげるのだ!」
657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:45:03.42 ID:vGBiMEoLP
開拓民「判りました、王様っ!」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!!」
漁師「おでは小型船で、他の流氷城もみてくるだぁよ」

冬寂王「たのんだぞ」
執事「わたしも斥候を飛ばしましょう」

開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」
若い傭兵「ほーぅい! ほーぅい!」
兵士「おーせぃ! おーせぃ!」

女騎士「結合部に海水を掛ける! 班を組織しろ!
 周辺には十分注意を払い、石弓兵は空中を監視!!」

冬寂王「海水を掛けたら塩をまくのだ!
 1時間もすれば凍り付く!
   手袋を忘れるな! 二時間ごとに休憩を取るのだっ」

開拓民「おらたちは大丈夫だよ、王様!」
開拓民「王様こそ天幕で温かくしていてくだせぇ」

冬寂王「わたしの方が若いではないか! あははは」

開拓民「まったくだなぁ! あはは!
 王様には負けてらんねーべや!」
開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」

冬寂王「橋を架けるぞ。流氷の橋を。いや、橋とはいわない。
 この海峡を……騎馬の駆ける戦場としよう」
660 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:54:42.33 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、極光島沖合、早朝

女騎士「重装歩兵団、整列っ!」


ザザッ
王国軍兵士「「「「はっ!」」」」

女騎士「これより第二次極光島奪還、上陸作戦を開始する!
 重装歩兵団諸君、中央を突破し、極光島湾岸部に橋頭堡を
 築くのだ! 流氷の末端部は脆い。中央500歩分を隊列の
 目安とせよ!」

王国軍兵士「「「「はっ!」」」」

女騎士「中佐、上陸後一隊を率い、湾岸部西方の岩山を
 占拠せよ! 物見の監視体制と、防空拠点としたい」

王国軍中佐「拝命いたしました!」

女騎士「石弓部隊、先行して空中および水中を監視せよ。
 この流氷、船ほど簡単に沈みはしないが、それでも
 水棲魔族を甘く見るな! もし現れた場合は撤退を繰り返し、  射撃しながら後続を待て!

石弓傭兵「「「「はっ!」」」」
662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:57:54.56 ID:vGBiMEoLP
女騎士「義勇兵のおのおの方!」

義勇兵「「「おー!」」」」

女騎士「おのおの方には、ソリの防衛と、運搬警護をお願いする。
 このソリは頑丈に作られている。また中型のものでも馬車
 数台分の長さをもっている上、鉄の板で補強が為されている」

女騎士「替えの鎧や馬などを運ぶと同時に、それらの
 ソリは簡易型の防御柵、いや、小型の砦となるように
 設計されている!
 水棲魔族や大型魔族などが現れた場合、それらのソリを
 盾として戦うのだ。
 義勇軍槍兵と石弓兵を連携させれば、大型魔族や飛行魔族で
 会っても十分対応可能だ。
 重ねて云う。これは海戦ではないっ!
 我らが人間の得意とする陸戦である!
 個の力で戦う必要はない! 兵を回転させよ。
 遊軍を頼れ。信頼が我らの力だ!」

兵たち「「「「おおおおー!」」」」

女騎士「第一目標、湾岸部! 橋頭堡を築き
 補給線と陣地を確保するぞ。今回は、奇襲はお預けだ!
 勝つべくして勝つ! 諸王国軍の力、見せてやれ!!」
666 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:18:01.37 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、極光島上陸部

王国軍兵士「押せ! 押せ!」
王国軍兵士「第三隊、前へ!」

伝令「後方右翼に大型魔族! 巨大烏賊です!」

将官「義勇兵と軽装歩兵に任せろ!
 この場所を死守すれば後続は来る! 退くな! 王国のために!」

王国軍兵士「「冬寂王のためにっ!!」」

王国軍兵士「「我らが姫騎士将軍に勝利を!!」」

うわぁぁぁぁ!!

伝令「左翼、後退! 蜥蜴人族、およそ1000!!」

将官「重装歩兵第四隊、押し出せ! 突進力を止めよ!!」

王国軍兵士「行くぞ! 第四隊の勇猛を精霊にお見せするのだ!」

王国軍兵士「大槍構え! 突撃ィッ!!」」
668 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:21:28.63 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、簡易司令部

女騎士「はぁっ……はぁっ……。だれか! だれかある!」
兵士「はっ!」

女騎士「伝令、斥候を20出せ! 橋頭堡は確保した。
 通信体制を確立させよっ。
 何もなくとも20分ごとに使いを出せ!」

兵士「はっ!」

女騎士「換えの馬を頼む。こいつの汗を拭いてやってくれ。
 何度もわたしを助けてくれたからな」
馬 ぶるるるんっ

冬寂王「騎士将軍! 戦況は?」
執事「タオルですぞ」

女騎士「上陸作戦に成功、橋頭堡確保。岩山についても
 抵抗戦力はほぼ制圧、占拠に移っています。
 大型魔族の撃破は12」

冬寂王「12か……前回目撃された数のほぼ全てだな」

女騎士「どれくらい余剰戦力がいるか判りません。
 決して油断できる数字はありませんけれどね」
670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:27:32.68 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「して、損害は?」
女騎士「ざっと見たところ、500弱」

執事「なんと!」
冬寂王「大成功ではないか、ここまでの戦果を挙げられるとは」
女騎士「だがしかし、ここまでです」

冬寂王「……」

女騎士「ここまでは中央突破力と兵種連携で損害を減らして
 前線を押し上げることが出来ました。首尾良く、極光島に
 橋頭堡も確保できて、いま工兵にソリを解体させて
 防備柵への組み替えをさせていますが……」

女騎士「極光島には天然の洞窟も多く、また山城は
 堅固な要塞。そこに魔族の猛者、南氷将軍が居るのならば
 籠城作をとってくるでしょう。
 もちろん、包囲しているのはこちら。
 勝つことは出来るでしょうが、ここからは時間のかかる
 包囲線になるでしょうね。
 消耗戦となれば、こちらの被害も無視し得ません。
 そもそもそう言った戦いとなれば、水に潜り、
 闇に溶けることが出来る魔族の方が有利です。
 でも、まー」
671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:30:51.10 ID:vGBiMEoLP
執事「まぁ?」
魔王「戦には勝った。もう勝ちは決まったのだろう?」

女騎士「おおざっぱには」

魔王「その先はわたしの出番だ」

冬寂王「学士殿」

魔王「さて、古来城攻めとは難しいものだ。力押しで
 解決するためには、攻城側は守備側の三倍の兵力を
 要するという。わたしの見たところ、魔族の残存
 兵力は約8000。私たちとより4000は少ないが
 倍の差はない。勝てはするが、双方大きく消耗する」

女騎士「甘さのない読みだと思うな」

魔王「問題点は?」

女騎士「なるべく訓練を施したとは言え、こちらの兵の
 練度のばらつきだ。特に義勇軍兵は、単独で敵の正面に
 立たせたくはない。それからさっきも云ったが、
 持久戦にも不安が残る。夜襲や攪乱を使われれば
 こちらが不利だ」

執事「では」

女騎士「魔族は巻き返しが図れると思ってこの状況に
 乗っているとも云える」
675 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:48:30.78 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「聞いていても簡単な状況とは思えないんだが」

女騎士「まったくです。本当ならここからが
 本番。ここはスタート時点ですからね。
 ここから胃の痛くなる神経戦の始まりなんですが」

執事「学士様には策がある、と」

魔王「うむ」

冬寂王「どのような?」
女騎士「……」
魔王「もう、手は打った」

冬寂王「?」

バタン!!

伝令「伝令! 伝令でございます!!」
冬寂王「かまわん! 報告するが良い!!」

伝令「極光島のさらに南、魔界への大陸から軍勢出現ッ!!
 その数1万以上ッ! み、み、み、味方ですっ!!」

魔王「なんの芸もない。――援軍だ。この数の圧力で
 南氷将軍は降伏……はせんだろうが、逃亡する」
677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:51:00.73 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、作戦会議室

司令官「げ、限界だっ!!」
将官「……」
東の砦将「そんな声荒げなくたってよぉ」

司令官「そなたは外部の砦にいるから判らないのだ!
 この都市は悪夢だ。毎晩のように死霊が……。
 街中には邪悪な死者の呪いが横行してるのだぞっ!」

東の砦将「そんなこと云ったって、
 魔族娘のぼいんぼいーん☆にきゃっきゃうふふで
 街中に居座ったのはあんたら近衛隊じゃねぇですか」

司令官「傭兵風情がっ!」

東の砦将「へぇへぇ、俺たちゃ傭兵ですがね。
 それがなにか?」

司令官「ぐぅっ!」

東の砦将「大体、夢見にびびるってのは一人前の
 男としていかがなものでござんしょねぇ」
680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:54:11.31 ID:vGBiMEoLP
司令官「これ以上は士気の限界だ。
 わ、わ、我々は撤退を行う!」
将官「司令官殿っ!」

東の砦将「おおっと、そいつはどんなもんですかい?
 仮にもこの都市は人間世界全てが総力を結集して落としたと
 云っても良い、魔界の重要戦略拠点だ。
 そいつを放り投げて司令官が逃げ出すってのは
 そりゃー軍律違反もいいところでしょうがよ」

司令官「~っ!!」

将官「貴公も口を慎め! 総司令官をなんだと心得る!」

東の砦将「へいへい。だが軍律は、軍律だ」

司令官「え、え、え……援軍だっ!」

将官・東の砦将「はぁ?」

司令官「これは援軍なのだ」

東の砦将「どこから援軍が来てくれるんです?
 援軍要請でも出したんですか? まさか?
 戦らしい戦もしてないのに?」
683 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:57:58.08 ID:vGBiMEoLP
司令官「ちがう! 聞けば先日、極光島を舞台に
 白夜王が奪還作戦を繰り広げたというではないか!!
 白夜王は優れた指導力を発揮し勇戦したのだが
 頼むに足りない無能な南部諸王国の王侯に
 足を引っ張られたせいで苦い敗北を喫したという」

東の砦将「ああ、それなら俺も聞いてますけどね」

将官「白夜王は司令官の叔父上と
 縁続きになられたとか」

東の砦将「あー」

司令官「ええいっ! それは関係ない! これは人類全体の
 沽券に関わる重大事なのだ! かかる決戦とも云うべき
 戦を前に、わが遠征軍が手をこまねくわけには行かぬ。
 全軍をもって、極光島へと援軍に向かう!」

東の砦将「ばっ、ばっ、バカか、あんたっ!?」
将官「しぃーっ」

司令官「ええい! うるさい! これは総司令官たる
 わたしの命令だ! わたしの命令と云うことは、
 聖王国、ひいては光の精霊の命令に等しいっ!!」
688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:03:47.32 ID:vGBiMEoLP
東の砦将「だからってこの都市を放っておく訳にも
 いかんでしょうが! この都市には軍の物資を
 扱うために軍属ではない人間の商人だって沢山
 いるんだぞ!? 彼らの安全をどうするっ!!」

司令官「黙れ、黙れ! そんな奴らは裏切り者だ!
 魔族と交流しているような劣等民を守るために
 尊い遠征軍の血を流せるものかっ!!」

東の砦将「……」 めらっ

司令官「そんの輩、勝手に来たのだ、勝手に死ねば
 良いではないか。いや、いっそ都市に火をかけるか。
 むざむざ魔族に都市を明け渡す必要もないだろうっ
 そうだっ!」

東の砦将 ダンッ!!

司令官「ひっ!? 」
東の砦将「……」 ギラッ

司令官「な、なんだ? 文句でもあるのかっ! 貴様!
 ううう、貴様なぞに、貴様なぞにっ!!」



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