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**魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」6-7
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****916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:39:59.82 ID:0Bi87sEP
魔王「ええい。わたしがいないところで
余計なことをべらべらとっ」
メイド長「……」ぎゅっ
紋様の長「魔王殿っ」
銀虎公「魔王っ」
魔王「何時までも寝てはいられない。……こふっ」
メイド長「まおー様っ」
碧鋼大将「気をお確かにっ!」
魔王「見ての通りのざまだ。……やはり戦闘の出来ない
そのつけが回ってきてしまった。笑ってくれ」
火竜大公「いや、魔王殿」
鬼呼族の姫巫女「笑う者などいようはずもない」
魔王「すまないな。……体力が持たない、手身近に済ませるとする。
わたしはこの通りのていたらくだ。わたしの意志は勇者が
ここで喋ったと思うが、それは一事忘れてくれても良い」
勇者「……おまっ。せっかく俺がっ」
魔王「良い機会だ。魔界は魔族のふるさと。
その長の肩には氏族の重みが乗る。
そして長達の方々にのし掛るは全魔界の重みだ。
わたしは魔王としての権威を一時、この会議に預ける」
紋様の長「なん……ですとっ!?」
****917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:41:52.53 ID:0Bi87sEP
魔王「云ったとおりだ。火竜大公」
火竜大公「はっ」
魔王「会議の議長をお願いしたい」
火竜大公「承った」
魔王「妖精女王」
妖精女王「はい」
魔王「九大氏族以外の、小氏族のことも気にかけてやってくれ」
妖精女王「はい」
魔王「小氏族の件は妖精女王を後見とし、黒騎士に一任する」
勇者「……わかったよ」
魔王「重大事については、過半数の賛成を持って決と
するのが宜しかろう。ただし、万端に配慮し交渉を
尽くして欲しい」
火竜大公「承りましたぞ」
魔王「二月、三月もあれば戻る」
銀虎公「魔王! 魔王殿っ!」
魔王「なにか? 銀虎公殿」
銀虎公「獣人族は今回の件には無関係だっ。
我らは暗殺などと云う卑劣な攻撃によって
武勲を得ようだなどと考えたことは一度もないっ。
今回の件は間違いなのだっ。俺はよい。
しかし、我が氏族に今回のような不名誉を与えないでくれ。
この雪華山、銀虎公。切にお願い申し上げるっ」
がばっ!
****918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:43:50.64 ID:0Bi87sEP
魔王「銀虎公、手を挙げられよ」
メイド長「まおー様っ。傷に障られますっ」
銀虎公「魔王殿、どうかっ! どうか、切にっ。
我ら獣人は戦の民。誇りの民っ。
卑怯にも同胞を暗殺し、
しかも謀略によってその事実さえもなかったことにして
ただ勝利をむさぼろうとは
我が民はそのような恥辱にまみれるくらいなら
死を選ばざるを得ないっ。
どうか我が一命を持って。
我が民の、我が氏族の恥を注ぎたまえっ」
魔王「銀虎公。銀虎公と獣人の一族を疑ったことは一度もない」
銀虎公「っ!」
魔王「それよりも、わたし自身が氏族の長がたに詫びねばならぬ。
偽りの死を持って長がたを謀った事についてだ。
ゆえあってとはいえ、誇り高き、魔族の中に大きな勢を
振るう長がたを騙し、偽るような仕儀となってしまった。
すまなかった。
あのときああせねば、今回の暗殺の犯人は誰なのか、
そして犯人は判ったとしても
その背後には誰が立っているのか
それを知るすべはわたしには無かった。
全ては賭けだった。長がたの助力無くば
わたしの命はとうになかったものと思う……。
全てはわたしが、長がたの信頼を得るために
すべきことをしなかったため起きたこと。
自身一人で全てを進めようと傲慢にも思っていたせいだ。
……すまなかった」
****920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 20:45:44.76 ID:0Bi87sEP
碧鋼大将「いや、魔王殿はその器をしめされた」
巨人伯「……もう……小さいとは、見えぬ……」
鬼呼族の姫巫女「我ら一同は魔王殿の帰りを待とう」
東の砦将「ここは任せて、身体をいたわってくれ」
妖精女王「何かあれば、至急お耳に入れましょう」
銀虎公「魔王殿。魔王殿よ。
……覚えておいてくれ。
我と我が一族は魔王殿に大きな恩義をおった。
戦場において、魔王殿の命を三度かばうまではこの恩義は消えぬ。
我ら獣牙の一族は、魔王殿に従い
常にその身命を護る盾となりましょう」
魔王「ありがたい……ことだ」ふらっ
メイド長「まおー様っ!」
碧鋼大将「限界だ、すぐに寝所に運ばれよ」
メイド長「はいっ」
鬼呼族の姫巫女「癒し手を差し向けよう」
ばさっ ザッザッザッ
東の砦将「書状を書く。副官、お前は開門都市へと戻れ。
自治委員会への報告と、色々入り用なものもあるだろう」
副官「はっ!」
紋様の長「それにしても……。魔王殿不在の忽鄰塔とは」
火竜大公「さりとてこれは大きな課題を残されたものだ。
我らも我ら自身の大地と民を護れと?
魔王殿の仰ることもごもっとも。
我らもその責を果たす季節がやってきたということ。
この歳になって、負うた子に教わるとはっ。はははははっ」
****927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 21:03:32.41 ID:0Bi87sEP
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、忽鄰塔の大天幕、上部
ひゅんっ!
執事「そういう事情でしたか」
勇者「聞こえていたんだろう?」
執事「あなたがわざと聞かせたのでしょう」
勇者「あの場面を聞き逃すなんて事、
爺さんはするはずがないからな」
執事「にょっほっほっほ」
勇者「あーっ」とさっ
執事「どうされました?」
勇者「やっぱあれだよなー。俺って人間の裏切り者だよなっ?」執事「はぁ……」
勇者「指名手配だよなっ!? うぉおおお」ごろごろっ
執事「さようですなぁ」
勇者「おまけに魔族の中では外様も良いところじゃね?」
執事「はい」
勇者「今は魔王の懐刀って云うか黒騎士だから
見逃してもらえているけれど、そうじゃなくなったら
ふるぼっこじゃね? っていうか、魔王だって勇者の
俺とつるんでいたら最悪殺されちまうよなっ? なっ!?」
執事「そうなっても逃げるくらいなら造作もないでしょう?」
勇者「そーいう問題じゃないじゃん」がくりっ
****929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 21:05:15.09 ID:0Bi87sEP
執事「ふむ」
勇者「だってそんなことになったらもてないじゃん?」
執事「それは仕方ないでしょう」
勇者「これからが勝負の年齢なのにっ!!」
執事「そう思っている内にこの歳ですよ」
勇者「だって女の子にちやほやされないんだよ!?」
執事「わたくしだってされてませんぞ」
勇者「だって爺さんは目つきがいやらしいから」
執事「勇者にだけは言われたくありませんなっ!」
勇者「はぁ……」
執事「結構本気で落ち込んでいますか?」
勇者「まぁ……」
執事「なぜです?」
勇者「……」
執事「……」
勇者「いや。やっぱし、嫌われたくは、ねぇよ」
執事「さようですか」
勇者「魔族の味方だもんな。
正直、爺さんに撃たれても文句は言えねぇよ」
執事「ふむ。好かれるために勇者をやっていたのですか」
勇者「それは違う。みんなを、世界を救いたかったからだ」
執事「では、そのままで良いではありませんか」
****931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 21:07:23.70 ID:0Bi87sEP
勇者「え?」
執事「勇者のままで。
人の世界を救うために魔族を討っていた勇者のままで。
だってそうでしょう?
もうゲートはなくなった。
魔界は地下世界だったのですから。
二つの世界など最初から無かったですぞ。
世界は一つしかない。
いや、一つしかない故に世界と呼ぶのかも知れませんなぁ。
勇者。違いますか?
世界を救うのが、勇者の仕事なのでしょう」
勇者「――ああ。そうさっ。ったりまえだ」
執事「では、多少嫌われてもへこたれぬ事ですよ。
大丈夫です。
確かにわたし達はあまりにもちっぽけな存在で
持って生まれた邪悪で残虐な性質と云うよりは、
あまりにも盲いていて愚かなために
時に自分が何をしているかも判らずに
人を傷つけ害してしまいますが、
それでも、そんなに救いようがないほど
馬鹿なわけでもないと思うのですよ。
いつか判ってくれる時も、人も、あるでしょう」
勇者「爺さん……」
執事「それに、素晴らしいこともあるでしょう」
勇者「なんかあったっけ?」
****933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 21:10:10.72 ID:0Bi87sEP
執事「揉んだのですか?」
勇者「へ?」
執事「揉んだのですか、あのふよんふよんの大質量を。
心躍る魅惑の楕円回転運動体をっ!?
小悪魔的に跳ね回る我が儘なたゆたゆおっぱいをっ!」
勇者「えーっと、ね?」
執事「勇者、ぱふぱふ道の教えをお忘れか? ひとつっ!」
勇者「“ボインはお父ちゃんの為にあるんやないんやで~”!」
執事「二つっ!」
勇者「“会えば拝め、拝めば触れ、触れば揉めっ!”」
執事「三つっ!!」
勇者「“おっぱいは文学! おっぱいは人生っ!”」
執事「よろしい。で、揉んだのですか?」
勇者「いや……機会が無くて……」
執事「にょほっ。とんだ臆病勇者ですね」
勇者「うっわ、すげぇ上から笑顔!? まじでっ!?」
執事「免許皆伝にはほど遠いです」
勇者「でも、(腕を寝ている間に)
はさんだ(はさんでもらった)し……」
執事「なんですとっ!?」
勇者「……さ、(偶然)触ったし」
執事「さぁ、裏切り者決定ですな。にょほほほっ!」
勇者「何で、云ってることがさっきと違うじゃん!?」
執事「人間世界のではなく、男性の裏切り者ですぞっ!!」
****954 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:14:03.03 ID:0Bi87sEP
――重力の衰えるとき、ゲートのあった大空洞
ゴゥゥーン!
奏楽子弟「それにしても、壮観ね!!」
中年商人「はっはっは! わたしなんか何回きても
目がくらんでしまいますよ」
ゴォォーン!
奏楽子弟「何であんな巨大な岩が浮かんでいるのかしら?
不思議でしょうがないわ。それにこの鐘の鳴り響くような音!」
中年商人「ええ、まったく」
土木子弟「やー」しょぼしょぼ
奏楽子弟「やーって、あんた! 目の下真っ黒じゃない。
寝てないんでしょう!? まったく」
中年商人「調子はいかがですか?」
土木子弟「あはは。いやはや、すごいところですね」
奏楽子弟「もうっ! 土木馬鹿」
ゴォォーン!
土木子弟「そう言うなよ、こんなすごい場所なんだぞ?
わくわくして当然だろう?」
奏楽子弟「そりゃ、すごいけれど」
土木子弟「まぁ、何とか目処は立ったよ」
****955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:15:30.17 ID:0Bi87sEP
中年商人「ほほぅ、なんと!」
土木子弟「まず、この空中に浮かんだ岩は、引力のせいだ」
中年商人「引力?」
ゴォォーン!
土木子弟「ああーっと。そうか、聞き慣れないか。
モノが地面に落ちる力、みたいなものです。
それが地上世界と地下世界では反対方向に働いている。
我々は、一枚の板の表裏に住んでいるような関係にあるんです。
その板が全てのものを引き寄せているから、
どちらの側に立っていても、転がり落ちないで済む」
奏楽子弟「そう言うことだったのね……」
ゴォォーン!
中年商人「なんとこれはまた……。奇怪な話ですな」
土木子弟「で、この大空洞は差し渡し20里はある円筒状ですが
いわば、その“板”にあいた穴のようなもの。
穴の途中で引力は弱くなって、方向が切り替わる。
そのせいであのような巨岩が、いわば
“どちらにも落ちることが出来ない”状態で浮かんでいます」
中年商人「ほほう」
土木子弟「あの巨岩は小さなものでも
馬小屋ほどの大きさがあるけれど、
浮かんでいるから重さはないに等しい。
それがわずかな気流や接触に寄ってふれ合い、
おそらく金属質のこの空洞の内壁に反射して
この鐘のような音を立てるんだ」
****956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:17:35.28 ID:0Bi87sEP
奏楽子弟「で、予定の方はたったの?」
中年商人「おお。そうでしたな」
土木子弟「うん、これが図面だ。こっちは工程表。
もっとも、この図はおおざっぱなもので概略でしかない。
必要な橋はプランに寄るけれど、
大小合わせて12から30。
個別の橋の設計は大体は想像できているけれど
図面起こしにはもっと時間が掛かる」
中年商人「何故数に幅があるのですか?」
土木子弟「商人さんが通り抜けてきたとおり、
ロープを伝って危険な場所は荷物を手運びすれば、
この空洞は今でも通り抜けできます。
キャラバンではなく、徒歩の旅であれば、
危険はあるけれど普通の人でも通り抜け可能でしょう。
それに対して道と橋を整備するのは、
安全性の確保と、移動のしやすさを考えてです」
中年商人「そうですね」
土木子弟「地質も調べていくつかのルートを考えてみました。
概略図を見てください。この赤い線のラインならば
工期は約四ヶ月。造る橋は12。一カ所が石造で残りは木造。
最低限の手間で、おそらく中型の馬車が通れるようになる」
奏楽子弟「ふむ」
****957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:19:03.80 ID:0Bi87sEP
土木子弟「こちらの二重線で示したルートは、
かなり大規模な工事が必要になります。
通す道も要所要所は二重にして崖崩れへの備えをするわけですね。
作る橋は30。
全て石造で作ったとして、おそらく工期は8年」
奏楽子弟「随分大規模だねー。お金もかかりそう」
中年商人「まずは四ヶ月でおねがいします」
土木子弟「随分即断即決ですね」
中年商人「ええ。金が惜しいわけではありませんが
それ以上に時間が惜しい。一刻も早く馬車が通れる道が
欲しいのです」
土木子弟「職人と人夫が入れば、真っ先に安全索を
張りましょう。それで多少は楽になると思います」
奏楽子弟(なんだ、格好良い表情もするんじゃん)
中年商人「ありがとうございます! あなたに会えて良かった!」
中年商人「では一度開門都市へ?」
土木子弟「ええ、戻りましょう。俺も作業をする人を
見て選びたいですし、人数や細かい点についても
相談しなけりゃならない」
中年商人「そうですね。わたしもいくつか連絡を出さねば」
土木子弟「商談成立ですね」
中年商人「二つの世界へ渡る道を目指してっ!」
がしっ
****962 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:29:31.21 ID:0Bi87sEP
――外なる図書館、停時庫
ゴゴゥン!!
女魔法使い「……足りない」
ゴゴゥン!! ドグォォン! ゴォォォン!
女魔法使い「……まだ、たりない」
ぽうんっ♪
明星雲雀「ご主人、ご主人。そんなにしたら倒れちゃいますよぅ」
女魔法使い「でも、足りてない」
明星雲雀「そんなにしょんぼりしなくたって
ご主人最強じゃないですか。ピィピィピィ!
そんなに魔力あげなくたって勝てる人なんていやしませんよ!」
女魔法使い「……」
明星雲雀「また考え込むー」
女魔法使い「……すぅ」
明星雲雀「説明が面倒だとすぐ寝る」
女魔法使い「……うるさいピィピィ使い魔」
ピィピィバタバタ! ピィピィバタバタ!
明星雲雀「やっ! やめてっ! フライドはやめてっ!!
せめてタツタにしてぇ! ピィピィ!!」
****966 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/21(月) 22:31:16.58 ID:0Bi87sEP
女魔法使い「瀬良は昴。昴は統ばる。その意は、集合。
束ね、一つになる結束点。収斂の先」
明星雲雀「??」
女魔法使い「収斂とは常に1点。それが何故2つも?
“良き問いは、常に良き答えに勝る”。
それを問うべき」
明星雲雀「ご主人の云っていることはさっぱり判りません」
女魔法使い「……すぅ」
明星雲雀「寝てちゃ余計に判りませんっ! ピィピィ」
女魔法使い「……足りない」
明星雲雀「ピ?」
ゴゴゥン!! ドグォォン! ゴォォォン!
女魔法使い「……まだ、たりない」
明星雲雀「そんなに鍛えたら、また倒れちゃいますよぅ!
もうごめんですよぅ、あんなに血をおはきになって!!」
ドグォォン! ゴゴゥン!!
女魔法使い「……間に合わないかも、勇者」
ゴゴゥン……!!
女魔法使い「……許して」
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