マイクロソフトの繁栄の原因は技術力だけではなく、犯罪と紙一重の法務戦略による独占的市場の確保。買収により、相手を廃業させることもある。
「起業のインセンティブ」
人間の欲望を深く、広く拡大することで近代産業が発展してきた。
ベンチャー企業経営者のイメージは大学関係者で大金持ちになったインテリというカリフォルニア・イメージが多い。
日本もそれを志向しているが、社会的な仕組みと規制がやや異なる。
欲と道連れでないビジネスはありえない。
「日本のベンチャー」
日本では優秀な人材は大企業に偏在している。終身雇用制などが理由。産業の二重構造がベンチャーの発展を抑制した。しかし、高度成長期に発展した企業も元々はベンチャーであった。今ベンチャーが成功しない理由は何か?
人材の囲い込みが一番大きな理由。
さらに、当時の日本人は安全志向な考え方ではなかったのも理由の1つ。
「大学とベンチャー」
これからは大学発信のベンチャーが大きな期待がされている。
『大学における研究と産業界の要求の距離』
「大学とは何か?」
大学は、最高の高等教育機関で、学術と教育における最高権威
大学の大学院重点化のあとは大学院がそれに代わる。
国立大学の場合、授業料のシェアは大体1.5割から2割。私立大学の場合は6割から7割。
私立大学は約1割、国立大学は7割から8割が国負担。
なので、大学は国民に貢献する義務を負っている。
大学では、ビジネスのお金を所有することは出来ない。
「中世ヨーロッパの大学」
大学の2つの要素
- 高度な研究と教育が地域的に集中してなされる場としての「学苑」
- 研究・教育に集う知識人集団のギルド
「近代日本の大学と主体」
設立当時は私立大学に対する国立大学の妨害が激しかった。
帝国大学
- 明治19年帝国大学令によって設置
- 国家の要請で出来上がった大学
利益集団ではない、自律性が本質ではない
私学
「日本の大学と工学」
大学の中に工学部として設置
- ヨーロッパの大学と根本的に異なる
- 招聘大学教授と技術者:自国にはない大学内工学部を作った
社会資本形成に貢献
- 土木・建築技術者、採鉱・冶金技術者、機械・工業・電気技術者、応用化学技術者
「人材供給」
大学の大きな役割は人材教育。大学で教えることは普遍性、汎用性があること。それが使命。
大学の卒業生たち:欧米の技術導入に大きな働き
- 形は外から与えられ、大学が自律的に設定したものではない
この発生期では、学術研究の成果ではなく、教育の結果としての人材供給
「大学の自我と個別問題」
権利を学校法人が持てるか議論がある。
知財問題
意志決定問題(学問の自由による民主主義)
産学連携は大学を主体として考えたときに典型的な問題
- 外部社会と連携を明示的に持った瞬間に大きな戸惑い
- システム的な不合理噴出
「資本主義」
江戸、明治、戦後
第二次世界大戦敗戦前後
- 戦前の大政翼賛統制経済
- 敗戦復興準社会主義的経済
- 傾斜生産と偏在投資を重工業に
- 中工業:繊維、紙パルプ>重厚長大産業:造船、製鉄、化学工業
- 政府主導(政治ではない)で産業構造を変化:技術発展の本質
「美しき誤解」
よその芝生は青く見える
- 未来技術あるいは産業を生み出す研究果実があるのではないか・
- 産学連携話には夢を感じさせる
大学側基盤整備
必要な誤解
- 美しき誤解は大事にせよ、ただし、限界を知らないと落胆は大きい
産学連携における知的財産
- 工学における知的活動の一側面
- 技術や工学の本質でない
「産学連携を機能させる工夫」
一般的な民間企業の純利益は5%くらい。
企業:利潤をあげるために必死の技術開発活動
大学:自由な発想と、場を駆使して、学術研究を深める
同床異夢を上手に行う工夫が必要
大学は知識を「公開自由の場」、企業は独占しようとする
研究の時間のタイムラグがある。
「企業が考えていること」
利益を求める企業
- 製品開発など売上に結び付かない共同研究は荷が重い
- 企業がその存亡をかけて開発すれば速度は到底大学がフォロー出来るものではない
- 資本投下も全く異なる時定数で進む。そこに大学が入り込む可能性はないし、するべきでもない。
「同床異夢はかなりのもの」
産業界
- 技術の先進性や秘匿性により競争者を排除することにより得られる胃液を目指す
大学
- 工共生、公開性を基本とする学術の社会への敷衍を目指している
「学における産学連携」
技術開発:利益を得る可能性のある主体が実施
学が活性化に産の貢献を求めるならば自分の寄与する貢献が必要
- 生産に直結する技術開発ではない
- 生産現場のビビッドな情報により活性化された研究かつどうの成果
- 身近にその研究活動をみて、また自ら参加して育った若い人たちの供給
「学の産に対する貢献」
現在の経済的利益ではない
将来の便益:国家あるいは民族に残す
未来への投資
- 同床異夢を上手にこなしていく工夫が必要
- きわめて近い床ではあるが違う床にいることがベストかもしれない
日本以外の国では敗者復活戦が簡単に出来る状況。
「知的財による利益取得」
ビルゲイツの経済的な成功
- 技術開発によるものではない
- 巧みな権利確保
- 競争者に対する仮借なき要求
- 訴訟の巧みさ
- これらの技術で独占禁止法上の塀の上を渡ってきた
競争相手を排除する、あるいはつぶす、あるいは法律んによってマーケットをとるというのが経済的に正しいやり方。
「経済的成功の本質」
技術的、学術的な成功とは無縁なこともある
技術上の優位性を経済的な実利に転換すること
- 技術の本質ではないけれど、技術革新の協力なインセンティブ
- 技術革新の当事者も資本を出している人間も経済実利を意識すれば本気になる
「いい意味での拝金主義」
食を手にすること善ではない
「武士は食はねど高楊枝」
- 金銭的利益を得ることに対する後ろめたさ
- その結果としてきわめて不透明な利益隠し
- 経営の効率化とはほど遠い世界
- 評価を受けることに伴うベネフィット
それがないところに活力はない
対価を得るのは悪いことではなく、当然だと認めさせる工夫が必要。公開性の工夫。自分の稼ぎに応じた給料を要求していくスタンスが必要。
「フクロウは黄昏に飛ぶ?」
ミネルバはローマの知恵の神:知恵は事実と事象のあとからついてくる
理学的科学
- 自然現象を対象にして
- 神の決めたもうた規則を観察し
- 一般化すること
「黄昏にしか飛ばないフクロウ」
人工物・人工環境の学術である工学
- 人間が作った物質や製品を対象にその学術化を図るのが大学における工学
- 学術は事実と事象を見つめない限り何の進歩もない
- その意味で産学連携は工学分野では絶対に必要
- 学術を学術しても何も生み出さない
大学は主体的な場所ではない。外の者が大学に働きかけて変わる。
「産学連携の本質」
大学の学術研究活動から、直接産業は興るということはなかなかに難しい
大学の工学教育と学術研究が必須>>産学の相互作用が絶対に必要
つまり、学術研究と教育のための産学協同>>未来の我々への投資
ただし、その方法にはたくさんのオプションがある
『日本における産学連携とキャンパスベンチャーへの期待』
「日本学術振興会とは」
文部科学省の特殊法人。博士課程もしくは研究者になったら関係が出てくる。
特別研究員という奨学金や研究費つきで若手の研究者養成事業、科学研究費補助金や研究費の申請書事業、学術分野の国際交流
「大学の存在意義と産学連携」
日本が苦しくなると科学技術の振興によって未来を切り開こうとする。
科学技術基本法が平成7年に成立し、5年おきに「科学技術基本計画」が策定。日本の研究費の8割は民間企業が支えている。国の研究費負担を欧米並みにしようとして成立した。基本計画では、研究費の拡充と同時に研究セクターの相互連携の強化、研究基盤の整備、国際交流の促進、厳正な評価の実施
お金の話と研究システムの流動化・柔軟化が一番強調
大学の研究機能も経済の活性化に役立てようという議論が出てきた
学問と社会との関係が今問われている。
「新たな学問の展開」
過程知識
モード2
特定の社会問題なりを解決するための知識の再編成なり、再編成の過程で新しい知識が生まれるとか、そういったものを従来のモードとは違う科学の方法論の進め方
「スパイラルモデルの出現」
情報・通信科学、生命科学というハイテク分野でベンチャーが発展
研究開発のモデルが、基礎研究→応用研究→開発研究というリニア型のモデルからスパイラルのように行ったり来たりする研究モデルになった。
何が基礎研究か応用研究か開発研究か分けることの意味がなくなってきた。
「大学人の意識の変化と産学連携の実績」
10年前と比較すると伸びている(平成10年度)
「共同研究・出資金事業」
共同研究を支援するための税制上の優遇措置が企業にある。
受託研究が増えている。
理由:建設国債をもとに未来に対する投資として「将来の国民の知的資産を形成する」観点から、国の出資金による特殊法人を通した大学への受託研究が伸びているから。技術の進歩を通じ後世代も利益を享受できるということ。
未来開拓学術研究推進事業
「奨学寄付金」
大学の研究に対する目的を指定しない寄付金。しかし、シビアになってきていて受託研究契約や共同研究契約のように成果を出してもらう形になりつつある。
「受託研究」
共同研究は研究者が交流しながら研究成果を求めていく。
受託研究は民間企業の研究を大学が請け負う。
「外部資金関係予算と大学の主要研究費」
教官当積算校費
大学の共通経費を取られ、研究室には1/3くらいしか行っていない。
基礎的な研究で使われる。
科研費
申請書を書き、審査を経た上での研究費。採択率は25%程度。4,5年に1回くらい。
外部資金
奨学寄付金、受託研究等の資金。
研究費自体は増えているが、競争的な研究費や自分で稼いでくる研究費が増えている。
アメリカには国立大学はなく、州立大学。州が3割から5割出している。残りは連邦政府からの外部資金。
「産学連携の推進体制(共同研究センター等)」
共同研究センター
大学と企業のコーディネーションの拠点
センター自体が運営費の予算があまりないため、ベンチャー企業を発展させる機能を持つまでに至っていない。
- 名古屋大学の先端技術共同研究センター
- 東大の国際産学共同研究センター
- キャンパスインキュベーションという形の東工大
- 東北大(第一線級の人材を投入し、学生に対する教育義務を免除して5年間のプロジェクトをやってもらって失敗したらクビ)
TLO法
研究者の交流や共同研究の促進に加えて、技術ものを移転するような仕組みを構築していこうとするのが目的。技術移転のための組織を、大学内ではなくて外部に独立して作ろうということで考えた。民間と大学との特許を通したコーディネーションの機能を持つ期間を公に認めて財政的な支援をする。
「特許と技術移転」
日本では研究結果が特許という形で権利化されていず、そして有効に活用されていない。
国立大学では、発明があると発明委員会にかけて、特許をどこに帰属させるか決定。国立大学の場合は国。国が承継する国有特許。
「大学が新しい産業をつくる」
最終更新:2010年07月02日 05:58