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夕日が赤く染めた玄霧藩国の道を、通り過ぎた道に長く伸びた影を並べながら彼と歩く。

彼に近い右手は、買い物袋の右端を握っていた。
が、あまり重くはない。おそらく彼が気を利かせてくれているのだろう。そう思うと、頬が自然と緩むのを感じた。
最近、彼と居ると自然と笑顔になることが多くなっている気がする。
悪いことではないのだが、まるで病気だ。
そう考えると、思わず笑みがこぼれる。それを見た彼も、やや困ったような微笑みをやめて、自然な笑顔を見せた。

ふいに、冷たい風が吹く。暖かくなってきたとはいえ、日が落ちてくれば昼場を涼めてくれていた風のおかげで冷え始めてくる。
スカートだと、まだちょっと寒いかな。
肩を強張らせ、微かに震えた瞬間、ふわっと肩に何かが掛けられる。彼の上着だ。
少し驚いて彼のほうを見ると、変わらない笑顔が向けられる。
袋を持ちながら、器用に脱いで掛けてくれたのかと思うとその笑顔もすこし可笑しく感じられる。私は再び無意識のうちに微笑んでいた。

「ありがとう」
「どういたしまして」

こんなどうでもいいようなことでも、私たちの間には笑顔が生まれる。
この楽しい日々は、あとどれぐらい続くだろう。あとどれぐらいで終わるのだろう。
不安が頭をよぎる。それを振り払うように坂を駆け上がり、赤く染まった空を背景にしてくるっとターン。坂の下に居る彼を、微笑みながら見下ろした。
彫りの深い、困惑したような顔。誰よりも自分を想ってくれる、大切な彼。
……大丈夫。私たちなら、きっと何があっても乗り越えて行ける。

「こっちよ、ワサビーム」

私は困ったような顔の彼に手を差し伸ばす。
そう、これからも貴方と。ずっと。
夕日が赤く染めた玄霧藩国の道を、通り過ぎた道に長く伸びた影を並べながら彼女と歩く。

本当は手を繋ぎたかったが、彼の左手は買い物袋の左端を握っていた。
ずっしりとした重みが、左肩に圧し掛かってくる。さりげなく袋の中身をこちらに偏らせた結果だ。
しかし、その重ささえも幸せに感じている自分が居た。
こんなことでもこの様では、まるで病気だ。いやまあ、病気か。
一人納得して苦笑する。同時に、彼女が微笑んだ。つられて苦笑をやめ、自然と出来た笑顔で応える。

ふいに、冷たい風が吹く。暖かくなってきたとはいえ、日が落ちてくれば昼場を涼めてくれていた風のおかげで冷え始めてくる。
隣の彼女はスカートだ。おそらく、やや寒いだろう。
そう思って買い物袋を右へ左へと持ち替えながら上着を脱ぎ、そっと彼女の肩へ掛ける。
驚いたような顔。しかしそれは次の瞬間に笑顔に変わる。
上着がなくなったので今度はこちらが寒くなったのだが、それだけで暖かくなるような気がした。

「ありがとう」
「どういたしまして」

こんなどうでもいいようなことでも、俺たちの間には笑顔が生まれる。
この楽しい日々は、あとどれぐらい続くだろう。あとどれぐらいで終わるのだろう。
一瞬の不安。しかし次の瞬間に彼女は、一人で坂を駆け上がり、赤く染まった空を背景にしてくるっとターンして俺を、笑顔で見下ろす。
風にスカートと美しい長髪を靡かせたシルエット。誰よりも愛おしい、最愛の女性。
……大丈夫。俺たちなら、どんな困難だって乗り越えてみせる。

「こっちよ、ワサビーム」

微笑みながら彼女は俺に手を差し伸ばす。
そう、これからも君と。ずっと。
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