お宝強奪作戦~奪い取れ、我らが食糧~



 食糧増産命令。
それがにゃんにゃん共和国大統領府から告知されたある日の夜。
玄霧藩国の森の中、一人歩いていく人影があった。
名を如月敦子というこの文族は、文族であるにもかかわらずお国の責任者の一人である。
最近では回数の増えた奇声と数々の様々な逸話によって、国の名物人物としても有名らしい。

 本人はまったく喜んではいないが。

 会議も終わり、政庁勤めの者たちみんなが寝静まった夜中に、森の中で女性が一人何をするつもりなのだろうか。
辺りをキョロキョロ見回しながら、彼女はどんどん奥へと進んでいく。
「誰も見てない、誰も見てない……」
そんなことを呟きながら、一歩、また一歩と森の奥へと歩を進めていく如月。
おわかりであろうが、彼女の目的は、この森の奥にある。

 先日の玄霧藩王とこの如月敦子の悪ふざけ合戦にて、彼女は甚大な被害を被っていた。
藩国成立時からこつこつ溜め込んだへそくりを藩王(正確にはその手となり足となり働かされた雅戌)に発見され、
あまつ国家資金へと投入されたのである。
 如月敦子は国家会計士でもある。自分のポケットマネーを自分の意に反しながら国庫に入れる苦悩が、誰にわかろうか。わかるはずもない!
 そんなことが以前あり、彼女は危機を感じていたのである。
「あれだけは……あれだけは阻止しないと……!」
ズンズンズンズン森の奥へ進んで行く敦子。あたりはどんどん暗くなっていく。
木々は進むにつれ深まり続け、夜も更けていく。道明かりは月光のみである。
その月光さえも、今はもう皆無に等しいほどだ。

 暗い森の中を、歩き続けること25分。それはあった。

「よかった、まだある!」
歓喜の声を上げる如月。彼女の目の前には、彼女の求めていた光景が確かにあったのだ。
藩国の森の中、一箇所だけ開けた土地。月の光を真っ直ぐに浴びて佇むそれは、美しく輝いているかのようだった。
青々と茂る葉っぱの間に、赤々と実る美麗なる紅玉。それは、宝石の如き輝きを放っていた。
俗に言う、リンゴというやつである。
如月敦子というこの女性、果物というか、甘味に目がない。ジャムも大好きだ。
そんな彼女にとって、森の奥のこの秘境は、一種宝物であった。というか財産だ。

「うんうん、よかったよかった!無事で!」
「へぇー。そんなによかったかぁー」
「うんそれはもう!………へ?」

 ―――――衝撃。

「へにゅぅ……」
「悪いなー。これも収穫させてもらうぜ?よーし、運び出せー」
 顔の覆面をちょっとずらして、にやりと笑う影。言わずもがな、我らが玄霧藩王の醜悪な笑み(誇張あり)がそこにあった。
「「「Sir!Yes sir!」」」

 ―――――ザッザッザッザッザッザ

 大きな籠にリンゴを次々と放り入れていく、藩王の部下(猫忍者)たち。
 その中に雅戌や越智、黒霧含め、如月に恨みを持つものが多数いたことは、語るまでもないだろう。


 朝。
 日の光の中、如月は目を覚ました。
「んぁ……あれ?なんでわたし外で寝てるの…?」
 ぼやけた頭で思考すること5分。この女性、低血圧である。
 ―――――嫌な予感が頭をよぎる。
 バッと顔を上げて、正面を見る如月。


「ッ―――――イヤァァァァァァァァァッッッッッ!!!!」


 響き渡る奇声。藩国全土に響き渡ったそれは、全藩国民の目覚まし代わりになったそうだ。
 ちなみにこの日、如月敦子は出仕に遅刻、更に減給を喰らったという。

 注釈。
 いつかこの恨み晴らしてやる。彼女はそう決心した。


(製作:如月敦子)