食糧増産風景?~ある吏族の場合~




              報告者 睦月

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フィーブル藩国への義勇隊の出兵を目前にしたある日の事。
にゃんにゃん共和国大統領府より食糧増産命令が下った。
これを受けて玄霧藩国でも吏族、技族、文族、大族を召集し緊急の会議が開始された。
その席で玄霧藩王は『というわけでちゃっちゃと食糧を増やそう』
とか、やる気無さそうに言った。
皆はまたこの藩王は・・・それがどれだけ大変な事か・・とかちょっと思ったが、
顔には出さない、藩王だって大変な事は分ってるのだ。
藩王は藩国の最高責任者と言えど共和国全体で見ると中間管理職に過ぎない。
無理だったら藩国は御取潰しらしいからどうしようもないしね。
玄霧藩王『即座に藩国中に通達を出せ。技族、文族は勿論、吏族も各地で食糧増産の指導を行なってくれ。以上、かいさ~ん!』
あっ、と言う間に会議も終わり。各自が迅速に行動を開始する。時間が無いのだ、急がなくては!

~吏族睦月の場合~

睦月は藩国の中でも一番大きな果樹園にやってきていた。
この果樹園はその敷地面積もさる事ながら、収穫できる果物も巨大な事で有名だった。
ただ・・・一つだけ問題があるのだが
「なんで私がこんなやっかいな場所に・・・」ボヤク睦月。
原因不明の体調不良(と言う名の仮病)で会議を欠席していた吏族の睦月は同じ吏族仲間に瞑想通信で呼び出され、強引にここに来させられたのである。もう罰ゲームに近い。
そこには平常時の数倍の速さ、人員で収穫を進める国民の姿があった。
食糧増産命令は藩国各地の農業地帯に瞑想通信によって伝えられていたのである。
『おぉ、良く育ってるっぺ。収穫するっぺ』
『時間が無いべー 早く作業すすめるっぺー』
『わしらのあいどる文月様の為にも頑張るっぺ(謎』
『こっちにも誰か回してくれー。人食いりんごが出たぞー!(ぇ』
『ぎゃー!』
もう分ったであろう、ここの果樹園には人食いりんごと呼ばれる巨大肉食植物が生育しているのである。
成長しきりまでは普通のデカイりんごに過ぎないのだが、成長しきると知能を持ち、動き回り、動物を食べだす。
何とも厄介なのでこの時期には理を使える吏族が派遣されるのだが・・・これが非常に大変で危険な作業なので誰もやりたがらない。
「・・・・(うへぇ・・・だからここは嫌だったのよ・・)」
睦月は彼らの姿を横に眺めつつ、この地域の長老殿の下へ。
「おー、これはこれは吏族殿、ようこそいらっしゃいました」
「村長さん、どうやら作業は順調のようですね」
『ぎゃー!与作ドンがやられたー!』
『村長―!今年の人食いりんごは強すぎだっぺー!』
『誰カー!誰かー!』
「・・・・・・そう見えますか?」
「ええ、もう、私の出番などどこにもありませんわね(輝くような笑顔」
人食いりんごの事は超無視する睦月。とことん仕事がやりたくないのである。
「とりあえずあの人食いりんごを何とかして欲しいのですが・・・」
それも無視する長老。この国は図々しい奴等ばっかりのようだ。
「・・・・はぁ、しょうがないですわね。」
うんざりしたような顔で睦月は承諾した。
そこに丁度よい事に突撃してくる人食いりんご、何と農民達はこちらが承諾しようがすまいがお構い無しに人食いりんごをこちらに誘導していたようだ。
本当にこの国の国民は厚かましいというか、吏族使いの荒い奴等だ
(自分の仕事だから、しょうがないとは思わない辺りこの人も厚かましい)
人食いりんごの大きさは実に3mにも上る。というか、これホントにりんごなのか?
睦月は突撃してくる巨大なりんごに向かって杖をむけ、呪文を唱えだす。
瞬間。理の力が発動し、人食いりんごは強い衝撃を受け動きを止めた。
『おー、さすがは吏族様だっぺ!』
『これで食料も安泰だっぺ!』
『吏族様がいれば人食いりんごも怖くねえっぺ!』
農民達は倒された人食いりんごを運んでいく。
人食いりんごはその凶暴性で恐れられる存在であるが、
その味は藩国で取れるりんごの中でも最高級品と言われている。
しかも育成が早く、量も多い事で緊急時の食糧としても重宝されているとかいないとか
「ふう、ちかれた・・・(面倒くさそうな表情」
「おぉ、さすがは吏族様。どうもありがとうございます」
「では、これで私の仕事は終わりですわね・・・」
「いえ、実は・・・・」
ドーンと後ろで爆音が響く。
『ぎゃー!また出たぞー!今年は人食いりんごが多いっぺー!』
「という事ですので・・・どうか、よろしくお願いします」
満面の笑顔の長老。それとは逆にうんざりしている睦月。
「・・・・はぁ」
睦月は深いため息をつき、次の人食いりんごに向かっていく。

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その後睦月は体力の続く限り馬車馬のように働かされたという。
ともかく食糧増産とは本当に大変な作業であったとさ。



(製作:睦月)