玄霧藩国 @ ウィキ

詠唱用

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相変わらずながら、敵は強い。

たけきの藩国に攻め入った緑オーマとの戦いの中、玄霧藩国の暗殺者達は敵陣への侵入を果たした。
彼らの目的である敵重要目標の撃破は慎重を期して行われる必要があり、そして今、奇襲攻撃による暗殺が開始されることになる。

「にゃあー。敵も必死にゃ」

そんな中に、何故か一匹ほど猫が混じっている。その猫は黙ったまま敵を睨み付けている美形の男の傍らで気の抜けた声で鳴いており、名を猫野和錆という。
寡黙な男が連れた猫、というか寡黙な男を連れた猫、というか、とにかく男と猫で一組であり、
そしてどんな時でも、猫は猫だった。

「ですね。けど、やるしかないです。やりましょう!」

そんな猫相手でも平然と檄を飛ばすのは、しじま。
まだ経験こそ少ないが非常に優秀であり、玄霧藩国でも数少ない、暗殺者の資格を持つ青年である。
本格的な戦争は初めてのはずであるが、動じてはいない。

「しじまさん、中々元気があっていいのにゃ」

そんな二人を見て、こいつら強いなと思う雅戌。緊張で手に汗握っている。

「……でも、まあ。そうだね。やりましょうか」
「そうにゃ、やることは変わらないのにゃ」

彼に頷く猫和錆。猫と人だが、息は合っていた。


『そろそろ時間だ。総員、攻撃用意開始』

指揮官からの指示が入る。
頷きあう三人。視線だけで語った後、詠唱に入る。

「いくつもの闇を越えてきたにゃ」

「いくつもの悲しみを見てきました」

「いくつもの苦労を重ねてきた」

それは、怒りの言葉。毒を使い、狙撃を行い、たけきの藩国の無辜の民を殺し、辱めた敵への。

「でも、もうそれも終わりだ!」

しじまが叫ぶ。音としては決して大きくなく周囲に響くわけでもないのだが、それでも何故か、その声は叫び声に聞こえた。

「この糞悪党どもめ! お前らのやり方だけは僕は、心の底から呆れ果てた!」

口汚い雅戌。だが、怒っているのは彼一人でもないようだ。

「もはにゃこの世で、お前達と分かり合える余地は全くにゃい!」
「……ない」

猫語なのに妙に迫力のある猫和錆。そしてその隣には寡黙な男。

3人の並列詠唱は徐々に淡い光を集め、周囲が青く照らされだす。
怒りを載せた言葉すらも、周囲の力を練り集めるためのキーとして使っている。

「こうなれば、僕はお前達を全部まとめて冥界へ叩き落して待って、何百年後かの再会には性根が叩きなおされている事を期待するしかない!」

しじまが高らかに叫んだ後、それまで順番に詠唱を続けていた彼らの声が、初めて一つに揃った。
仲間と心が繋がる。繋がる心が世界と繋がる。そして理力は集まっていく。



「「「これより、我らは剣を執り!!」」」

集った光が更に収束されていく。靄のような輝きが、光り輝く珠の如く姿を変えていく。

「世界に!!」
雅戌。

「……幸福な未来を!!」「にゃ!!」
猫野和錆。



「築いてみせる!!」
そしてしじま。

「「「完成せよ! 明日昇る陽!!(いつかきたるかがやき!!)!!」」」

三人の詠唱が完成する。
光輝く青い珠が猫野和錆によって高速で射出された。
稲妻のような轟音。
「いけ!!」「いけ!!」

「まだまだ!!!」



そしてそれは、雅戌の正面に展開された円盾のような膜を通った途端、更に密度を上げて青い光筋へと変化する。
敵へ狙いを定めた。


だが、どうやらこの力のうねりは敵に気づかれてしまったらしい。緑オーマが防御姿勢をとると、光り輝く盾が現れた。
山の盾か、はたまた彼らの武楽器かもしれない。どちらにせよそれは光筋の進路上にあり、このままでは防がれるか、そうでなくとも威力を大幅に減衰させられてしまうだろう事が予想された。

「「…………」」

それでも、雅戌も猫野和錆も何も言わない。まるで己の仕事をもう終えてしまったかのように、残心に身を任せている。
    ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
そう、『もう己の仕事は終えて、後を誰かに任せられると信じている』かのように。

「いけえええええええっ!!」

そして、三つ目の叫び声。しじまの咆哮。

途端、それまで一直線に緑のオーマを目指していた光筋が急に進路を変えた!
注視すれば気づけるだろう。敵の周囲に、水晶のようなオブジェクトが浮かんでいる事を。
そして、今そのうちの一つが、光筋の起動をそらした事を。

「!!?」

敵緑オーマに、一瞬だが動揺が走る。だがこのままでは、向きを変えた青い光線が敵へ届かないのは事実。
……だが。


進路を変えた青い光線は更にもう一度方向をかえ、更に二度三度と偏光されていく。
まさしく稲妻のように。敵の周囲を飛び回る。



そして次の瞬間!

緑オーマの対処が遅れた一瞬だった。その光は盾に防がれる事なく、敵の体を貫通する!
それは複雑に何度も軌道を変えながら、正確に敵を撃ち貫いたのだった。

膝を突く、緑オーマ。


「ここまでだ!!」
「……次はいい奴になって生まれ変わって来い」
「決まりにゃ!」


三者三様のシメのセリフと共に、爆発。
彼ら三人がくるりと180度振り向いた途端に、敵の居た場所は朝日が輝いたかの如く、眩しい光に包まれた。

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