LEC・国民主権論

<目次>


LEC『C-Book 憲法Ⅰ《総論・基本的人権》』 p.65~ 国民主権

一 主権の意味

国家の統治権としての主権 統治権としての主権国家権力そのもの(国家の統治権)というときの主権 ex. 「日本国ノ主権ハ、本州、北海道、九州、及ビ四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」(ポツダム宣言8項)
最高独立性としての主権 国家への主権の集中(最高独立性)というときの主権 ex. 「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」(前文3段)
国政の最終決定権としての主権 国家における主権の所在(国政の最終決定権)というときの主権 国の政治の在り方を最終的に決定する力または権威という意味であり、これが国民に存することを国民主権という。
ex. 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」(前文1段)

ニ 国民主権の意味

《問題の所在》

日本国憲法は、前文第1段で「主権が国民に存する」、1条で「主権の存する日本国民」と規定し、国政の最終決定権が国民に属するという国民主権原理を採用している。
それでは、ここにいう「国民」を 全国民 と考えるべきか、それとも 有権者の総体 と考えるべきか。
国民主権の原理において、国の政治の在り方を最終的に決定する権力を国民自身が行使するという 権力的契機 と、国家の権力行使を正当づける究極的な権威は国民に存するという 正当性の契機 をどのように考えるかという点と関連して問題となる。

《考え方の筋道》

Step① 憲法は個人の尊厳を確保するため、政治は国民の自律的意思による政治でなければならず、国政の最終決定権が国民に属するという国民主権原理を採用した(前文1段、1条)
   ↓ この点
Step② 主権者たる国民を有権者の全体と捉え、「主権」の本質を憲法制定権力であるとして、有権者としての国民が国政の在り方を直接かつ最終的に決定すること(権力的契機)が国民主権であると考える見解もある。
   ↓ しかし
Step③ それでは、独裁を許す危険があり、また、国民が主権者たる国民とそうでない国民とに二分され、治者と被治者の自同性に反し、妥当でない。
   ↓ そこで
Step④ 基本的には、国民主権とは、主権者たる国民は一切の自然人である国民の総体と捉え、国民主権とは全国民が国家権力の源泉であり、国家権力の正当性を基礎づける究極の根拠であると解する。
   ↓ ただ
Step⑤ 憲法改正権の存在(96条)等から、国民(有権者)が国の政治の在り方を直接かつ最終的に決定するという権力的契機も不可分に結合していると解すべきである(折衷説)。
   ↓ 
Step⑥ 以上のように解すると、原則として国民は直接には権利行使をなしえないから、代表民主制の採用が必然となり、代表者たる議員は「全て」の国民の代表者となる(43条Ⅰ参照)。

《アドヴァンス》

有権者主体説 「国民」を有権者の総体と考える見解。
  a-1
主権=憲法制定権とすることを根拠とする説(清宮)
主権を憲法制定権(力)、すなわち一定の資格を有する国民(選挙人団)の保持する権力(権能)とする。
従って、憲法制定権の主体である国民には天皇を含まず、また権能を行使する能力のない、未成年者も除外されるとする。
→権力的契機を重視するが、そこから導かれる具体的な制度上の帰結を示していない
(批判)
①全国民が主権を有する国民と主権を有しない国民とに二分されることになるが、主権を有しない国民の部分を認めることは民主主義の基本理念に背く。
②選挙人の資格は法律で定めることとされているため(44)、国会が技術的その他の理由に基づいて年齢・住所要件・欠格事項等を法律で定めることによって主権を有する国民の範囲を決定することとなり、論理矛盾となる。
③代表民主制を国政の原則とする前文の文言と、解釈上必ずしも適合的でない。
a-2
フランスの議論を採り入れる説(杉原)
日本国憲法は、リコール制を認めたと理解しうる15条1項や、95条、96条1項のように人民(プープル)主権に適合する規定もあるが、基本的な性格としては、43条1項や51条に示されているように国民(ナシオン)主権を基礎とする憲法である。
しかし、憲法の歴史を踏まえた将来を展望する解釈が必要であるから、日本国憲法の解釈は人民(プープル)主権の論理に基いてなされなければならない。
従って、国民の意思と代表者の意思を一致させるために、43条の国民代表の概念や51条の議員の免責特権の再検討が要請される。
→権力的契機の重視とともに、そこから導かれる具体的な制度上の帰結を示している。
(批判)
上記①から③の批判に加え、フランスの議論は必ずしも全ての国の憲法に法律的意味においてそのまま妥当する議論ではない、という批判がなされている。
全国民主体説(宮沢、橋本) 「国民」を、老若男女の区別や選挙権の有無を問わず、一切の自然人たる国民の総体をいうとする見解。
→このような国民の総体は、現実に国家機関として活動することは不可能であるから、この説にいう国民主権は、天皇を除く国民全体が国家権力の源泉であり、国家権力の正当性を基礎づける究極の根拠だということを観念的に意味することに過ぎなくなる。
(批判)
国民に主権が存するということが、建前に過ぎなくなり、国民主権と代表制とは不可分に結びつくが、憲法改正の国民投票(96)のような、直接民主制の制度について説明が困難になる。
折衷説(芦部) 「国民」を、有権者(選挙人団)及び全国民の両者として理解する見解。
→「国民」=全国民である限りにおいて、主権は権力の正当性の究極の根拠を示す原理であるが、同時にその原理には、国民自身(≒有権者の総体)が主権の最終的な行使者(憲法改正の決定権者)だという権力的契機が不可分の形で結合しているとする(ただし、あくまでも正当性の契機が本質)

【ナシオン(Nation)主権とプープル(peuple)主権】
フランスの主権論 ナシオン主権 プープル主権
憲法 1791年憲法 1793年憲法
主権者 Nation <仏> (= Nation <英>) Peuple <仏> (= People <英>)
国民 観念的統一体としての国民 →具体的人間の集合体という意味はない 具体的に把握しうる諸個人の集合体としての国民
権力行使 授権によってのみその権力を行使しうる →専ら代表制(代表者としての立法府と君主を指定) 国民が直接権力行使を行う →直接民主制が徹底した形
授権の内容 代表者意思に先行するナシオン自身の意思なし 代表機関の意思のほかにプープル自身の意思あり
契機 国家権力の正当性の根拠が国民に存する 主権の権力契機が前面に出て、最高権力を行使するのはプープル
諸制度 制限選挙・自由委任 普通選挙・命令委任
歴史的意義 絶対王政を否定すると同時に市民革命がより貫徹されること抑圧す機能をもつ(現状維持的) 市民革命の課題をより貫徹する勢力のシンボルとして機能(現状変革的)

《One Point》

学説では、折衷説が近時の通説であり、全国民主体説はかつての通説、有権者主体説は少数説です。
なお、本論点は、憲法が明文で定めた場合(79Ⅱ、95、96)以外に国政において直接民主制の採用(ex. 一定の事項についての国民投票、有権者による衆議院解散請求の制度)が認められるかという論点と関連します。
この点に関しては、フランスの議論をとり入れる説に立てば当然に肯定説につながりますが、それ以外の説からは論理必然的に帰結が導かれるものではありません。

《How To》

近時の通説である折衷説に立つのがよいでしょう。
なお、折衷説を論じる際、論証が長くなりがちです。
直接民主制の採用に関する問題等、本論点が前提として問われた場合には、コンパクトに論じることが必要でしょう。

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