経済政策part1

麻生政権は、サブプライム・ローン危機に対応して、小泉政権期の経済政策から大胆に軌道修正を図りましたが、政策効果が漸く現れ始めた所で政権交代となってしまいました。
  新自由主義経済政策 ケインズ派経済政策
政府介入 小さな政府を志向 大きな政府を志向
典型例 小泉政権
なお福田赳夫(元首相)以来の清和会(町村派)の基本的経済政策
小渕政権、麻生政権
なお田中角栄(元首相)以来の経世会(津島派)の基本的経済政策
マクロ政策 金融政策重視
市場の自立調整機能を信頼
財政政策重視
政府の介入による市場調整
財政方針 財政再建を優先 財政出動を容認
構造改革 構造改革を推進 構造改革に否定的
物価動向 デフレ傾向・長期で円高 インフレ傾向・長期で円安
その他 市場効率化の結果として(一時的な)格差拡大を招来
市場全体の成長力は伸張(パイの拡大)
競争制限・政府介入の結果として比較的均等分配
市場全体の成長力は衰弱(パイの萎縮)

結論から先に言うと、実は経済政策を巡るケインズvs.ハイエクの争いは、現在では、どちらかが常に一方的に正しい、という性格のものではなく、

(1) 1930年代にみられた大不況期や、2008年のリーマン・ショックのような深刻な金融危機・経済危機が発生した場合には、短期的に政府や金融当局が各々大規模な財政出動や大幅な金融緩和を実行して積極的に景気を刺激する必要がある。(=ケインズ派の主張する政府当局による大胆な裁量政策の採用)
(2) 危機が終息に向かう趨勢が見えた後は、なるべく速やかに財政規律を確保し、金融調整を市場を通じた自律調整機能に委ねる方向に復帰する。(=ハイエクなどの主張する新自由主義経済政策の採用)

という2段階で使い分けるのを良し、とする事がアメリカ政界・経済界の共通認識として確立されつつあります。

日本においても、こうした経済政策の巧みな使い分けを活用して維持されたアメリカの1980年代及び1990年代の両期の長期かつ安定的な経済好況を参考に、

2000年代初めから中期にかけては小泉政権下でどちらかといえばハイエク流の市場調整機能を重視した新自由主義政策の採用、そして
金融危機の発生した2008年後半からは麻生政権の下で一転して大胆な財政出動というケインズ型の政府裁量政策の発動

という弾力的な経済運営の方針転換が行われました。
(但し、その後発足した民主党政権では、強力な財政再建論者の与謝野氏が経財相として入閣したこともあり、経済政策の方向性が定まっていないように見受けられます)

※(参考)
経済学革命 復興債28兆円で日本は大復活!
木下 栄蔵 (著), 三橋 貴明 (著)

経済状態には「通常経済」と「恐慌経済」という二つのモードが存在し、「セイの法則」や「リカードの比較優位説」の妥当性、あるいは小さな政府vs大きな政府など,経済環境での殆どのイシューで適合性が真逆となってしまう。従って「通常経済」モードではハイエクなどの主張する新自由主義経済政策が妥当するが、数十年~100年に1度起こる「恐慌経済」モードではケインズ型の経済政策が必要となる、ということを分かりやすく解説し現在の日本に必要な経済政策を提言。

★なお三橋貴明氏は福祉国家・大きな政府推進派と勘違いされる場合が多いのですが、新世紀のビッグブラザーへblog で、
「ちなみに、わたくしは頻繁に「ケインズ主義者」とか言われますが、別にケインズを信奉しているわけでも、ついでに否定しているわけでも何でもありません。日本の現在の環境に新自由主義によるアプローチが適していると判断したなら、平気で、「くたばれ、ケインズ主義者!」とか叫びますから、はい。」
と発言しているように、経済情勢にあわせて最適な政策方針を採るべきだとするケインズ・ハイエク両方のスタンスの使い分け派です。このことは三橋氏のblogを長期間にわたって愛読している人には周知の事柄です。

◇経済政策の使い分け

基本 例外
経済状態 通常経済 恐慌経済
経済政策 新自由主義経済政策 ケインズ派経済政策
支配原理・原則 自由競争、私的自治の原則 雇用の確保、公正の原理
価値観 自由主義、個人主義、機会の平等 共助、連帯、共同体の維持、結果の平等
実現経路 ボトムアップ(自生的秩序、市場の自律調整) トップダウン(設計主義的合理主義)
政治的スタンス リベラル右派(小さな政府を推進) リベラル左派(大きな政府を推進)
代表的論者 ハイエク、フリードマン ケインズ、ロールズ
※アメリカでは1980年代以降の経験を踏まえて、この図式が共和党・民主党間でほぼコンセンサスを得ているが、政治家にも学者にも「大きな政府」を好む左派の多い日本では、これが必ずしも理解されていない。

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最終更新:2019年12月22日 14:50