ケインズv.s.ハイエクから考える経済政策

「ケインズv.s.ハイエクから考える経済政策」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ケインズv.s.ハイエクから考える経済政策」(2019/12/22 (日) 15:03:09) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

#CENTER(){&italic(){&sizex(4){科学とは、明瞭にものを考えること、空想と現実との違いを検証すること、数字を使って定量的に考えることだ。}}} #RIGHT(){&SIZE(15){&BOLD(){~ アヴリオン・ミチスン(イギリスの動物学者・免疫学者)}}} ---- 要旨■「福祉国家(大きな政府)」あるいは「市場原理主義」などのレッテル貼りではなく、「国民負担率」という具体的な数字で政府の規模を論じることが必要である。 ---- <目次> #contents ---- *■1.このページの目的 ---- ケインズvs.ハイエクというと、たちまち「放漫な福祉国家・大きな政府はダメだ」(ケインズ批判の場合)とか「市場原理主義・自由放任主義はダメだ」(ハイエク批判の場合)という風に、一方的に相手にレッテルを貼って(少なくとも部分的には明らかに事実に反する)お粗末な批判・中傷を繰り返す者が目立ちます。 特に、歴史問題や政治問題にはそれなりに詳しい自称「保守主義者」の有名識者までが、経済政策となると条件反射的に「ハイエクは市場原理主義だ」とか「小泉改革は冷酷非常な間違った改革だ」といった罵詈雑言レベルのレッテル貼りに終始してしまうケースが散見されます。 このようなレッテル貼りオンリーで内容検討を欠いた批判・非難は無意味で恥ずかしいことであり、各々の批判者は、少なくとも自分が批判している「福祉国家」なり「市場原理主義」なりが具体的に何を意味するのかを、①以下に説明する「国民負担率」などの数値や、②客観的な概念定義によって、まずきちんと示さなければいけません。 ここでは、ケインズ・ハイエク双方の政策スタンスの実質的な内容を、なるべく①客観的な数値や、②比較的中立的な辞書の用語定義、を活用して解説していきます。 ---- *■2.動画ケインズvs.ハイエク第1ラウンド(2つの経済政策) ---- #CENTER{&youtube(http://www.youtube.com/watch?v=3EkcQJkudoY&feature=channel){500}} #CENTER{[[ケインズvs.ハイエク>http://www.youtube.com/watch?v=3EkcQJkudoY&feature=channel]]} ※上の動画に現れたケインズとハイエクの経済政策を、日本やアメリカの実例に即して簡単に図式化します。 **◆1.経済政策の対立軸~「新自由主義経済政策」か「ケインズ派経済政策」か ---- &include_cache(経済政策part1) **◆2.問題は国民負担率の増減 ---- 通常期はハイエク型の政策、金融危機が発生した場合には短期でケインズ型の政策を採る、というふうに両政策を使い分けるとして、国民生活や国家の中長期的な経済成長の可能性に関して広い視野で注目しなければいけない重要な事項があります。それが「国民負担率(national burden rate)」です。 ***◇1.辞書による説明:「国民負担率」 |BGCOLOR(#CCCC99):広辞苑(岩波書店)|こくみん-ふたん-りつ&br()【国民負担率】|国・地方租税負担と社会保障負担(社会保険料負担)の合計額の、国民所得に対する比率。負担には税外収入・受益者負担などは含まれない。| |BGCOLOR(#CCCC99):ブリタニカ国際百科事典|こくみんふたんりつ&br()【国民負担率】|一般的に国民所得に対する国民全体の①租税負担と②社会保障負担の合計額の比率をいう。&br()厳密な定義はないが、国民の公的負担の程度を示すおおよその指標としてよく使われている。&br()国民負担率は、①租税負担率(租税負担の対国民所得比)と②社会保障負担率(社会保障負担、すなわち社会保険料負担の対国民所得比)とに大別される。&br()国民負担率は、地方自治体も含めて政府部内の財政規模の拡大や医療保険をはじめとする社会保障制度の充実を伴い必然的に増加する傾向にある。&br()1992年の統計では&br()(1)ヨーロッパの負担率が50%前後と高く、&br()(2)アメリカは36.2%となっている。&br()(3)日本の場合、<1>1955-65年には20%台の水準であったが、<2>1970年代後半から上昇傾向にあり、95年には37.8%と予想されている。| つまり、国民負担率とは簡単にいえば、我々の収入から政府が勝手に徴収するお金の割合のことです。 ***◇2.国民負担率の上昇は“自由の喪失”を意味する &include_cache(経済政策part2) **◆3.政治的スタンスと経済政策 ---- &include_cache(経済政策part3) **◆4.増税が好きなリベラル左翼 ---- &include_cache(経済政策part4) **◆5.「福祉国家」「市場原理主義」批判をする者は共に国民負担率の目標を示すべき ---- &include_cache(経済政策part5) **◆6.ここまでのまとめ ---- &include_cache(経済政策part6) ---- *■3.動画ケインズvs.ハイエク第2ラウンド(対立構図の一般化) ---- 以下では、ケインズvs.ハイエクの経済政策の対立を、リベラル左派(大きな政府)vs.リベラル右派(小さな政府)の政治的な対立構図に一般化します。 #CENTER{&youtube(http://www.youtube.com/watch?v=-65T-ZqINwI&feature=related){500}} #CENTER{[[ケインズvs.ハイエク第2ラウンド>http://www.youtube.com/watch?v=-65T-ZqINwI&feature=related]]} |&size(12){2番目の動画で&color(crimson){ケインズ}が強調している「&color(crimson){トップダウン}」は政府が経済の在り方の大部分を設計・計画し管理する「&color(crimson){設計主義(的合理主義)}」(⇒全体主義に繋がる)を、また&color(crimson){ハイエク}が強調している「&color(crimson){ボトムアップ}」は政府の経済的介入が少なく民間が個々に自主的に経済活動に携わった結果としての 「&color(crimson){自生的秩序}」(⇒自由主義に繋がる)をそれぞれ含意しています。}| #CENTER{|BGCOLOR(#CCCC99):ハイエクの自由論・解説ページ ⇒ &SIZE(15){[[リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜]]}|} **◆1.リベラル左派vs.リベラル右派(図解) ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ※下図の解説は [[保守主義とは何か]] 参照(ハイエクの政治的スタンスを「経済保守=新保守」ともいいます。) &include_cache(保守主義と対抗思想・周辺思想) #endregion **◆2.ケインズvs.ハイエク用語解説 ---- ***◇1.ケインズと修正資本主義 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ※下記は、ブリタニカ百科事典(日本版)より引用(ただし※&COLOR(crimson){注}はこちらで追記) |BGCOLOR(#CCCC99):ケインズ&br()Keynes, John Maynard|>|1883.6.5 ケンブリッジ生 - 1946.4.21 サセックス,ティルトン没&br()イギリスの経済学者。J.N.ケインズの子。1905ケンブリッジ大学キングズ・カレッジを卒業。&br()卒業後3年間インド省に勤務し、09年にケンブリッジ大学のフェローとなり金融論を担当。&br()15年には大蔵省に勤務し、パリ講和会議の大蔵省主席代表となった。&br()連合国のドイツに対する過酷な賠償要求に反対して辞任。&br()第1次世界大戦後、イギリスの金本位制度復帰に反対して管理通貨制度を主張。&br()また保守党の自由放任政策を批判した。&br()大不況が生じるやマクミラン委員会委員として活躍した。&br()36年には『雇用・利子および貨幣の一般理論』The General Theory of Employment, Interest and Money を著わし、完全雇用を前提として、セーの法則をとる従来の正統的経済理論・雇用理論を批判し、以後の経済学・経済政策に絶大な影響を与えた。&br()第2次世界大戦中は大蔵省顧問として戦時財政、金融政策の計画と実行に参画、41年にはイングランド銀行理事となり、42年には男爵に叙せられた。&br()44年ブレトンウッズにおける連合国国際通貨会議のイギリス首席代表として戦後の国際通貨体制再建策のイギリス側原案(⇒ケインズ案)を提示し、アメリカのホワイト案と対立した(⇒ブレトンウッズ協定)&br()46年国際通貨基金IMFおよび国際復興開発銀行のイギリス側理事となった。&br() 上記以外にも『平和の経済的帰結』The Economic Consequences of the Peace(1919)、『貨幣改革論』A Tract on Monetary Reform(23)、『貨幣論』A Treatise on Money(2巻、30)、『説得評論集』Essays in Persuasion(31)など多くの著書・論文があり、71年以降、王立経済学会の手で『ケインズ全集』Collected Writtings of John Maynard Keynesの刊行が始められた。| |BGCOLOR(#CCCC99):『雇用・利子および貨幣の一般理論』&br()The General Theory of Employment, Interest and Money|>|1936年に公刊されたJ.M.ケインズの主著。&br()1920年代のイギリスの不況や30年代の世界的不況を背景に古典学派・新古典学派経済学との対決として書かれた。&br()主な内容は所得決定理論としての乗数理論と利子率決定理論としての流動性選好説とから成る。&br()乗数理論とは投資の増加に応じる所得の増加の過程をとらえたもので、古典派の理論が貯蓄と投資の利子率を媒介とした均等化を論じたのに対し、所得の変化を媒介として貯蓄と投資が均等化することを主張した。&br()また投資誘因の一つとしての利子率の決定は、古典派が主張したように貯蓄・投資によって決まるのではなく、貨幣需要関数である流動性選好関数と中央銀行の政策による貨幣供給により決まると主張した。&br()これらの理論により新古典学派の雇用理論を批判し、不完全雇用下の均衡の可能性を説き、さらに不況からの脱出のためには国家の経済への積極的介入が必要であると主張した。&br()また方法論的には所得分析ともいわれるマクロ分析が中心であり、動態的要素を多分に含んでいるが、形式的には経済全体としての均衡状態を問題としているため静学分析である。&br()また資本ストックの変化・完全雇用水準の変化を考慮しておらず、短期分析である。| |BGCOLOR(#CCCC99):修正資本主義&br()revisionist capitalism|>|本来の資本主義経済の無計画性に基づくさまざまな弊害を国家が政策的に是正し、福祉国家を目指そうとする思想。&br()資本主義における弊害としての所得分配の不平等は、労使の協調と国家の所得再分配政策によって、恐慌の発生は経済計画によってそれぞれ是正され、克服されるとする。&br()この思想は1929年に始まる世界大恐慌、ソ連の第1次5ヶ年計画などを背景とし、33年のアメリカ大統領F.ルーズベルトによるニューディール政策後に登場したものである。&br()理論的にはJ.M.ケインズの雇用理論、A.ピグーの厚生経済学などにより基礎付けられる。| #endregion ***◇2.ハイエクと新自由主義 &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ※下記は、ブリタニカ百科事典(日本版)より引用(ただし※&COLOR(crimson){注}はこちらで追記) |BGCOLOR(#CCCC99):ハイエク&br()Hayek, Friedrich (August) von|>|1899.5.8. ウィーン生 - 1992.3.23 フライブルク没&br()オーストリア生れの経済学者。&br()ウィーン大学卒業後官吏となり、1927~31年オーストリア景気研究所長、29~31年ウィーン大学講師を兼任、31年ロンドン大学客員教授、同正教授を経て、50年にシカゴ大学教授、62年に西ドイツのフライブルク大学教授に就任した。 &br()第2次世界大戦前はオーストリア学派第3世代の代表的理論家の一人として貨幣的景気理論を展開し、景気の安定のためには貨幣の中立性を維持すべきであるという中立貨幣論を堅持する一方、経済政策面では最小限の計画と社会保障を容認しながらも徹底的な自由主義を主張した。&br()その後、社会哲学面に関心を移し、47年世界の自由主義者の国際団体モンペルラン・ソサエティーを創立、初代会長(のち名誉会長)となり、新自由主義の指導者として活動した。&br()『貨幣と景気』Geldheorie und Konjunktur theorie(1929)や『価格と計算』Prices and Production(31)などの著作を通じて、かってはその貨幣的経済理論によって著名であったが、今日ではむしろネオ・オーストリアンの理論的源流の一人として、あるいは経済理論の枠組みを超えた思想家として評価されている。&br()74年ミュンダールとともにノーベル経済学賞受賞。&br()主著『資本の純粋理論』The Pure Theory of Capital(41)、『隷従への道』The Road to Serfdom(44)、『個人主義と経済秩序』Individualism and Economic Order(48)など著書多数。| |BGCOLOR(#CCCC99):『自由の条件』&br()The Constitution of Liberty|>|F. von ハイエク著。1960年刊。&br()現代福祉国家思想とそれを背後で支える狭義の近代合理主義に対して、徹底的な批判を加えた自由主義政治哲学の代表的著作である。&br()ハイエクが擁護するのは個人の自由であるが、その重要な論拠となるのは無知の自覚である。&br()我々がもし全知全能の存在であれば、未来を完全に予見し合理的な計画を立案することが可能である。&br()しかし現実には我々は限られた知識を持ち得るのみであり、予測不可能な事態に対応する個人的自由が必要となる。&br()そして自発的な活動の中から秩序は自生的に形成される。&br()その意味でハイエクは、強制のない状態を自由の本質とみなすイギリス的伝統を高く評価する。| |BGCOLOR(#CCCC99):新自由主義&BR()neo-liberalism|(1)|1870,80年代から勃興したイギリスの理想主義運動、なかんずくT.H.グルーンが主唱した社会思想。&BR()グリーンは、道徳哲学としてはJ.ロック、J.ベンサムなどの功利主義的自由主義ではなく、カントやヘーゲルの影響を受けた観念論的・理想主義的自由主義を、社会哲学としては、自由放任主義(経済的自由主義)ではなく国家による保護干渉主義(社会政策)を主唱した。&BR()しかし決して国家専制主義や全体主義に陥らず、個人の自我の実現、個人の道徳的生活の可能な諸条件の整備に国家機能が存在するとして、自由主義の中心である個人主義を継受した。&BR()この思想はイギリス自由党の労働立法・社会政策に思想的根拠を与えた。&BR()⇒※&COLOR(crimson){注}:こちらは正確には &COLOR(crimson){new liberalism}であり、訳すと文字通り「新自由主義」だが、&COLOR(crimson){現在はこちらの意味では使用されなくなった}ので注意が必要。| |~|(2)|1930年代以降の全体主義国家の台頭や第二次世界大戦中から戦後にかけてのケインズ政策に反発して、再び個人の自由の尊厳を説き、政府の恣意的政策の採用を排し、法の下での自由を強調する思想。&BR()このような思想をもつW.オイケン、W.リプケ、L.ミーゼス、G.ハーバラー、&COLOR(crimson){F.ハイエク}、L.C.ロビンズ、M.フリードマンらの多彩な人材を擁して、47年にモンペルラン・ソサエティーを結成している。&BR()恣意的・強権的権力の行使に反対する点ではかっての自由放任的自由主義と共通する面をもつため、その単なる復活と誤解されがちであるが、普遍的な法の強力な支配の必要を説き、法秩序の下での自由を強調する点で、かっての自由放任とは異なる。&BR()経済政策面でのその端的な表れは、ドイツに代表される社会的市場政策とシカゴ学派に代表される新貨幣数量説である。&BR()⇒※&COLOR(crimson){注}:こちらが、&COLOR(crimson){neo-liberalism}(正確に訳すと「&COLOR(crimson){再興自由主義}」)すなわち現在使用されている意味での「&COLOR(crimson){新自由主義}」である。&BR()[[リベラリズムと自由主義>リベラリズムと自由主義 ~ 自由の理論の二つの異なった系譜]]参照| #endregion **◆3.「福祉国家」と「小さな政府」 ---- ***◇1.福祉国家(welfare state) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ※下記は、ブリタニカ百科事典(日本版)より引用(ただし※&COLOR(crimson){注}はこちらで追記) |BGCOLOR(#CCCC99):福祉国家 welfare state|>|国民に生存権を保障し、平等に福祉を分配する国家をいう。&br() 歴史的には絶対主義国家もすでに慈恵的な福祉国家観をもっていた。&br()しかし、現代の福祉国家は、19世紀末頃から社会問題の解決が国家の手に委ねられるとともに現れた。&br()従ってそれは、社会保障の確立された国家をさすものと言ってよい。&br()この意味では福祉国家は社会国家ともいわれる。| ※上記の説明(日本版ブリタニカ百科事典)はいささか内容が足りないので、英語圏の辞典の該当項目を翻訳して追加説明します。 |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(welfare stateの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):国家が、市民達の経済的・社会的な安寧幸福(the economic and social well-being of the citizens)の保護と促進に関して、鍵となる役割を演じる、とする政治的概念(concept of government)| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):(福祉国家が)基礎を置く原則は、①機会の平等、②富の公平な分配、③良好な生活の最小限の用意が欠落している人々に対する公的責任、である。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):この言葉は、多様な経済的・社会的有機体の形態に対して用いることが出来る。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):福祉国家の基本的な提供物の一つは社会保険である。それは恩恵が大いに必要とされる時節に供給されることを目的としている(例:老齢・疾病・失業)| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):福祉国家は、また通常、①教育、②健康サービス、③住宅、の公的な供給を包含する。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):多くの欧州諸国では、包括的な健康保険と国家助成金支給による大学水準の教育が一般的となっているのに比べると、アメリカ合衆国の公的供給は展開されている範囲がより小さい。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):中央計画的な経済を持つ国々では、福祉国家はまた①雇用と②消費者価格の管理をも包含する。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):殆どの国々は、少なくとも福祉国家に関連した何らかの方策を制度化している。英国では1948年に包括的な社会保険が採用された。アメリカ合衆国ではニューディールやフェアデールといった社会的-立法プログラム(social-legislation programs)は福祉国家の原理に基礎を置いている。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):スカンジナヴィア諸国は、個人に対して生活のあらゆる側面に関する国家的扶助を供給している。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(welfare stateの項)より抜粋翻訳| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):国家が、市民、特に金融的・社会的必要に迫られている人々に、交付金・年金その他の恩典によって健康と安寧幸福の保護を引き受ける制度。&br()英国における近代福祉国家の設立は、1942年のベヴァリッジ報告によってその路線が敷かれた。&br()国営の健康サービス・国営の保険スキーム(仕組み)の設立といった、その報告の提案は、1948年に労働党政権によって実施された。| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):そうした制度を実行している国家のこと。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(welfare stateの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):英国や他の幾つかの国において、福祉国家とは、政府が健康や教育などの無料サービスを供給し、例えば老齢や失業や疾病によって労働することが出来ない人々に金銭を付与する制度をいう。| #endregion ***◇2.小さな政府(limited government) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region ※下記は、ブリタニカ百科事典(日本版)より引用(ただし※&COLOR(crimson){注}はこちらで追記) |BGCOLOR(#CCCC99):小さな政府&br()(limited government)&br()&br()※&COLOR(crimson){注}:項目なしのため、&br()&COLOR(crimson){安価な政府}&br()の項目で代用&br()※補注参照|>|「小さな政府」ともいう。&BR()18世紀末頃より用いられた自由主義の財政的標語で、財政規模のあまり大きくない政府をいう。&BR()ナポレオン戦争後のイギリスでは、軍事費の削減はもとより、航海法・独占特許制度の撤廃などの自由主義施策の推進と並んで一般経費の縮減が進められた。&BR()このため1870年頃まで国家財政の規模は年々減少、または漸増するにとどまり、史上ほとんど唯一の「安価な政府」が出現した。&BR()その思想的背景にあるものは、国の役割を国防・警察などに限るA.スミスの夜警国家観である。&BR()しかし、前世紀(&COLOR(crimson){注}:19世紀)末以降イギリスを含めて経費膨張が避けがたい傾向となったことは、帝国主義の風潮に追うところが大きい。&BR()第二次世界大戦後は、福祉の充実など各経済分野での公共部門の拡大が「高価な政府」へと拍車をかけているが、1980年代アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権下では「小さな政府」への動きがみられた。&BR()その趣旨は、経済・社会政策の領域での政府の役割を削減し、市場機構と競争に多くを委ねることによって財政赤字・政府規制を改め、公営企業の民営化を促し、自立・自助の精神により資本主義経済の再活性化をはかることにあった。(⇒経費膨張の法則)| ※補注:[[実際には「安価な政府(cheap government)」という政治・経済用語は英語圏には存在しない。>http://www.lib.kagawa-u.ac.jp/metadb/up/AN00038281/AN00038281_52_1_76.pdf]](cheap government は「安っぽい・みすぼらしい政府」の意味になってしまい、用語として不適切)⇒英語に疎い日本人学者の間で使用される誤った用語と思われるが、ここでは日本語版ブリタニカ百科事典の記載内容をそのまま転記する。 #endregion **◆4.右派と左派の2種類ある「リベラル」 ---- &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) &bold(){※「リベラリズム」(liberalism)の辞書的定義および説明} #include_cache(左派・左翼part1) #endregion **◆5.「左派」「左翼」の辞書的定義 ---- ***◇1.左派(left) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(leftの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):政治に関して、一般的に、①平等主義(egalitarianism)と、②政治的・経済的生活の主要な諸機構の人民または国家による管理(popular or state control of the major institutions of political and economic life)、とに結びついた政治的帯域(political spectrum)の一角。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):この言葉は、フランス革命時の議会で、社会主義者の代表達が、議長席の左側に陣取った1790年代に由来する。| ||BGCOLOR(#CCCC99):左派は、|>|>|>|BGCOLOR(#CCCC99):①富裕者や貴族階級のメンバーを含む伝統的なエリート達(traditional elites)の利益に対して敵意を持ち、| ||BGCOLOR(#CCCC99):かつ、|>|>|>|BGCOLOR(#CCCC99):②労働者階級(working class)の利益に対して好意を持つ傾向がある。(プロレタリアートの項を見よ)| ||BGCOLOR(pink):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):彼らは、社会福祉(social welfare)を政治の最重要目標とみる傾向がある。| ||BGCOLOR(pink):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):社会主義(socialism)は、世界の殆どの国々で、左派の標準的なイデオロギーである。| ||BGCOLOR(pink):<3>|>|>|>|BGCOLOR(white):共産主義(communism)は、いっそう急進的な左派のイデオロギーである。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(leftの項)より抜粋翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):急進的(radical)、革新的(reforming)、または社会主義的(social)な見解を好む集団または政党。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(leftの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):社会主義の政治的理念を支持する人々を左派(the left)という。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):彼らは、しばしば右派(the right)つまり資本主義と保守主義の政治的理念を支持する人々と対比される。| #endregion ***◇2.左翼(left-wing) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(left-wingの項)より抜粋翻訳| ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):政党または政治体制のうち、急進的(radical)、革新的(reforming)、または社会主義的(social)な部分。| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):サッカー・ラグビー・ホッケーの競技場でチームの左側をいう。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(left-wingの項)より全文翻訳| ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):左翼の人々は、社会主義的(socialism)に基礎を置く政治的理念を保持している。| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):人々の集団、特に政党としての左翼(the left wing)は、その他のメンバーに比較して社会主義により近い信条を持つメンバーによって構成されている。| #endregion ***◇3.左派には3種類ある &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ※要約すると、左派には次の3種類がある。(ブリタニカ百科事典(leftの項)のピンク色部分参照) |BGCOLOR(olive):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:内容|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:キーワード| |BGCOLOR(#DB0000):COLOR(white):CENTER:極左|BGCOLOR(white):共産主義(communism)即ち、いっそう急進的な左派のイデオロギーを支持する立場|BGCOLOR(white):①共産主義、②マルクス主義、③弁証法的唯物論、④ヘーゲル主義| |BGCOLOR(#F25B00):COLOR(white):CENTER:左翼|BGCOLOR(white):社会主義(socialism)即ち、左派の標準的なイデオロギーを支持する立場|BGCOLOR(white):①社会主義、②社会民主主義(社会民主制)、③集産主義| |BGCOLOR(#FF8E8E):COLOR(black):CENTER:リベラル左派|BGCOLOR(white):社会福祉(social welfare)を政治の最重要目標とする立場。左翼理念の持ち主|BGCOLOR(white):①福祉国家、②リベラリズム、③J.ロールズ、④社会契約、⑤自然法、⑥人権| ※詳細は [[左派・左翼とは何か]] へ &include_cache(円環図) &size(11.5){※政治的スタンス5分類・8分類について詳しくは [[政治の基礎知識]] 参照。} #endregion **◆6.「右派」「右翼」の辞書的定義 ---- ***◇1.右派(right) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):ブリタニカ・コンサイス百科事典(rightの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):保守的な政治思想(conservative political thought)に結びついた政治的帯域(political spectrum)の一角。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):この言葉は、保守的な代表達が、議長席の右側に陣取った1790年代のフランス革命時の議会の座席配置に由来する。| ||BGCOLOR(#CCCC99):19世紀には、|>|>|>|BGCOLOR(#CCCC99):この言葉は、①権威(authority)、②伝統(tradition)、③所有(property)を擁護する保守主義者に対して用いられた。| ||BGCOLOR(#CCCC99):20世紀には、|>|>|>|BGCOLOR(#CCCC99):ファシズム(fascism)に結びついた、④逸脱した急進的な形態(a divergent, radical form)が勃興した。| |||>|>|>|BGCOLOR(white):左派(left)を見よ。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(rightの項)より抜粋翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):(しばしば the Right)保守的な見解(conservative views)を好み、資本主義の原則(capitalist principles)を擁護する集団や政党。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(3)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(rightの項)より全文翻訳| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):資本主義と保守主義の政治的理念を支持する人々を右派(the right)という。| ||>|>|>|>|BGCOLOR(white):彼らは、しばしば左派(the left)つまり社会主義の政治的理念を支持する人々と対比される。| #endregion ***◇2.右翼(right-wing) &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(1)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):オックスフォード英語事典(right-wingの項)より抜粋翻訳| ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):政治思想または政治制度の中で、保守的(conservative)または反動的(reactionary)な部分。&br()[起源はフランスの国民議会(1789-91)を参照。そこでは貴族達(the nobles)は議長の右側に座り、平民(the commons)は左側に座った。]| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):サッカー・ラグビー・ホッケーの競技場でチームの右側をいう。&br()軍隊の右サイドのこと。| |BGCOLOR(olive):COLOR(white):(2)|>|>|>|>|BGCOLOR(olive):COLOR(white):コウビルド英語事典(right-wingの項)より全文翻訳| ||BGCOLOR(#CCCC99):<1>|>|>|>|BGCOLOR(white):右翼の人または集団は、保守的(conservative)または資本主義的(capitalist)な見識を保持している。| ||BGCOLOR(#CCCC99):<2>|>|>|>|BGCOLOR(white):ある政党の右翼は、最も保守的または最も資本主義的な見解を持つメンバーによって構成されている。| #endregion ***◇3.右派には4種類ある &size(12){&color(green){↓本文はここをクリックして表示}} #region(open) ※要約すると、右派には次の4種類がある。(ブリタニカ百科事典(rightの項)のピンク色部分、コウビルド英語事典(right-wingの項)参照) |BGCOLOR(olive):CENTER:|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:内容|BGCOLOR(olive):COLOR(white):CENTER:キーワード| |BGCOLOR(#220099):COLOR(white):CENTER:極右|BGCOLOR(white):ファシズム(fascism)即ち、逸脱した急進的な形態(a divergent, radical form)|BGCOLOR(white):①全体主義、②ファシズム、③国民(国家)社会主義、④ジンゴイズム| |BGCOLOR(#007EFD):COLOR(white):CENTER:右翼|BGCOLOR(white):権威主義(authritalianism)即ち、権威(authority)を擁護する立場|BGCOLOR(white):①権威主義、②ナショナリズム、③パトリオティズム| |BGCOLOR(#A4FFE9):COLOR(black):CENTER:保守|BGCOLOR(white):保守主義(conservatism)即ち、伝統(tradition)を擁護する立場|BGCOLOR(white):①保守主義、②E.バーク| |BGCOLOR(#BFDB00):COLOR(black):CENTER:リベラル右派|BGCOLOR(white):資本主義(capitalism)即ち、所有(property)を擁護する立場|BGCOLOR(white):①資本主義、②自由主義、③F.A.ハイエク、④K.R.ポパー| ※詳細は [[右派・右翼とは何か]] へ #endregion **◆7.自生的秩序論と設計主義的合理主義 ---- |⇒|BGCOLOR(#CCCC99):&SIZE(15){&BOLD(){[[「個人主義」と「集産主義」 ~ ハイエク『隷従への道』読解の手引き]]}}|に包括的な説明があるので、そちらを参照下さい。| **◆8.まとめ ---- &include_cache(経済政策part7) ---- *■4.参考図書 ---- &include_cache(経済政策part8) ---- *■5.ご意見、情報提供 &BOLD(){&color(green){ページ内容向上のためのご意見・情報提供}を歓迎します。} ---- &size(12){&color(green){↓これまでの全コメントを表示する場合はここをクリック}} #region(close) &include_cache(コメント/ケインズvs.ハイエクから考える経済政策) #endregion ---- &color(crimson){&bold(){&size(17){以下は最新コメント表示}}} #pcomment(reply,200,,size=300) &color(crimson){ラジオボタン(各コメントの前についている○)をクリックすることで、そのコメントにレスできます。} #include_cache(政治理論・共通)
&include_cache(ケインズvs.ハイエクから考える経済政策)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: